スペードの3 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
3.45
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本棚登録 : 777
レビュー : 95
  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062936132

作品紹介・あらすじ

ミュージカル女優、つかさのファンクラブを束ねる美知代。小学校の同級生の出現によって美知代の立場は危うくなっていく。美知代を脅かす彼女には、ある目的があった。つかさにあこがれを抱く、地味で冴えないむつ美。かつて人気を誇っていたが、最近ではオファーが減る一方のつかさ。それぞれに不満を抱えた三人の人生が交差し、動き出す。私の人生は私だけのもの。直木賞作家朝井リョウが、初めて社会人を主人公に描く野心作!

感想・レビュー・書評

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  • 分かる!
    分かる分かる!

    小学校時代の学級委員気質から抜けきれずに、妙齢になってもなお自分を取り巻いてくれる人がいる環境に身を置きたがる美知代の気持ち。

    みんなが憧れていたり畏れていたりする存在に一歩でも近づいて、それを何とも思ってないように絶妙にひけらかしながら自分の特別感を強調しようとするんだよね!

    それから、自分の背景に、特別な理由や物語が何もないことにコンプレックスを持って、後付けを創ってしまおうとするつかさの気持ち。

    死ぬほどじゃないけど憐れんでもらえる持病だったり、二度と会えない訳じゃないけど身内との別れだったり、絶望的に呆れられるほどじゃない問題行動だったり、そういうものを持っていて注目される人を「ズルい」って思っちゃったりね!


    だけど、本当は分かっていたりして。
    どんなに特別感を示そうとしても、
    どんなに背景にドラマを演出しようと、
    勝負できるのはここにいる私という人間ひとり。
    この人間ひとりで向かっていくしかないんだって。

  • 人間味溢れてて面白い
    この感じ分かるっていうのが何度も、、、

  • 女子だからこそ解る心理、あの頃の女子特有のドロドロした関係が、何故著者に解るのだろう。
    一緒になろうね、クダラナイ約束、群れるのが当たり前の班決め。そこから排除された者は敗者とみなす。修学旅行なんて、美しい風景に似合わぬ幼い少女達の、作り笑いの裏に潜む腹の探り合いなのでした。
    待っているだけじゃ革命は起こらない。スペードの3は、切り札でもなければ救世主でもないのだ。

  • 選んでも選んでもずっと続く岐路。
    想像によって人は理想的に広げられる。
    だけど本当は広がってなくて、一瞬一瞬の積み重ね。

  • 個人的に好きな朝井リョウさんの本。
    前から気になっていて、文庫化されていたので即買い。

    元スター女優、ファンクラブのまとめ役、新メンバー、3人それぞれの視点から成り立つストーリー。
    身近な3人の物語にも関わらず、それぞれの主観から見ることで世界の見え方、感じ方がまったく異なるところがとても面白い。

    朝井リョウさんは、こういう小さなコミュニティー内に生じる感情(特に嫉妬、妬み、蔑み等の負の感情)を描くのが本当に上手い作家だと思う。
    「何者」では「就活生」、「桐島、部活辞めるってよ」では「高校」、また今回は「ファンクラブ」と実に多彩なジャンルを描いている。
    作品を読みながら「意地悪だなぁ…」、「えぐいなぁ…」と感じる一方で、それを理解できる、つまり同じような感情を持っている自分に毎回気付かされてしまう。
    何となく他人に朝井リョウ作品を勧められないのは、自分の黒々とした内面がバレて、人間性を疑われるのが怖いのかもしれない…(笑)

    個人的に一番印象に残ったのは「スペードの3」。

    自分も「失敗を犯さないように確実に待ちながら進める」タイプであり、何となく美知代と近いものがあるなぁと感じながら読み進めた。
    もちろん、ここまでネチっこくはないけれど…(笑)

    「自らが気持ちの良く過ごせるフィールドで生きることの心地良さ」は理解できる部分もあった。
    この本では、それが悪いコトのように書かれていたが、一方でそのフィールドを守ろうとすることは誰しもがあるのではないだろうか。
    もちろん、どこまで他人に迷惑をかけながら押し通すかというサジ加減は必要だと思うけれど…

    そして最後のシーン、待っているだけでは何も起きないことに気付く美知代。
    「在庫数、また、直接聞きに来ます」、すごく爽やかで素敵なセリフだった。
    唐木田さんと、上手く行けばいいな。

    <印象に残った言葉>
    ・家に帰るためではなく、どこかへ向かうために乗る終電だなんて、一体、いつが最後だったのだろう。大学を卒業して、もう七年が経つ 。(P28、美知代)

    ・美知代ちゃんは、この世界で、また学級委員になったつもりでいるの? (P103、むつ美)

    ・ どれだけ待ってても、革命なんて起きない。(P150、むつ美)

    ・ 在庫数、また、直接聞きに来ます(P158・美知代)

    ・ 自分のためでいいのだと、むつ美は思った。こんな自分をごまかすことができるだけの理由や言い訳を探すことに時間がかかってしまったけれど、そうでなくていいのだと思った。私は、私のために、よりよくなりたい。そう思うことでこんなにも呼吸がしやすくなるのならば、きっとそれは醜い欲望ではないのだ。(P244)

    ・ 謙虚さを大切にしよう、と思ってしまった時点で、もう後戻りはできない。意識して大切にしている謙虚さなど、本当の謙虚さではない。(P261・つかさ)

    ・ ごめんね。ずっと、私のほうがずるくて。(P323・円)

    ・ その人の背景や、余白や、物語は、それ以上のものにはなり得ない。それ以上のものになり得るように見えるときもあるけれど、決して、なり得てはいない。そのときそのときに出会ったものを積み重ね、吐き出して生きている私たちにとって、そのときそのときに想像されたかもしれない物語なんてどうでもいいのだ。そこにあるのは、そのときのその人自身、それだけだ。(P343・つかさ)

  • 朝井リョウさんの作品は全て読んでます。

    第1章 スペードの3
    ファンクラブのまとめ役をこなす学級委員タイプの女性とそれを乱す存在との関わりを小学校時代と重ねながら物語が進んでいく。
    相変わらず、ドキッとさせられる。それも、何気ない日常をホラーに変えてくる。特に、美知代が小さな優越感を大切にする描写。これって、やっぱダメなんですか?汗 僕はそこだけではないにしてもそこにはこだわりがあって、常に自分が”上”の存在でありたいと思って努力する節があるんです…。周りからしたら、やっぱ痛いんかなぁ。
    アッキーのミスリードは騙されたけど、そこまで驚きはなかったです。

    第2章 ハートの2
    スクールカーストの中でも特に下の人を主人公にした話。
    朝井さんってこの辺の人の気持ちまで掬えるのかと驚き。休憩時間に友達がいないときの時間経過の長さとかリアル。なんか、村田沙耶香さんに近いものを感じなくもない。

    第3章 ダイヤのエース
    たまにある優しいメッセージ回。
    どんな物語があろうとなかろうと表現活動をやってはいけないなんてことはない。ましてそれを辞めたところで得られる反響なんて知れている。
    木皿泉の脚本に通ずる優しさを感じることが最近増えてきたと感じます。

    総じて、今作も変わらず朝井リョウ成分を補給できて充実感です。
    一つ思うのは、もしかしたらパターン化しつつあるかもしれない。物語の構成が論理に塗り固められているというか。またこの構造かとは思ってしまう。
    朝井リョウさんのことだから、その辺は色々考えているんでしょうけど。

  • 隣の芝生は、青いです。
    3人の女性の気持ちの揺れが面白かったです。誰もがどこかに共感して、反発するお話なんだろうなと。
    なれなかった自分も、なりたい自分も、人の所為ではなく、自分の中に全てあるってことですね。気持ちも、行動も、自分次第だ。

  • 文章は読みやすく、ボリュームは少なめ。
    一気に読める。

    舞台女優のファンの世界。
    メインの登場人物はすべて女性。
    自分にとってまったくの未知の世界ということもあり、次の展開が気になり、どんどん読む。

    そして、9割ほど進んだところで、気づく。
    あ、もう終わりだ。

    各章の主体になっている3人以外の人物のことも、もっと知りたかった。
    特に、2章に出てくる志津香とか。あ、飯島ちゃんとかも。
    もっと言えば、美知代とつかさは人物像が見えたけど、アキ(メインキャラの方の)に関しては、もう少し続きも読んでみたかった。
    まぁ、でも、はじめの一歩を踏み出すまでを描くという意味では、三者とも共通だからいいのか。

  •  女子たちのマウント合戦を、なんとトランプの大貧民(大富豪)になぞらえて描いた快作( ´ ▽ ` )ノ
     面白いこと考えたものだね( ´ ▽ ` )ノ

     もはや宗教と化したヅカヲタグループを、小学校の学級委員時代そのままに仕切り悦に入っている上級カード「スペードの3」( ´ ▽ ` )ノ
     その前に突如現れ「革命」を起こす最底辺カード「ハートの2」( ´ ▽ ` )ノ
     そんな彼女らの現人神であるヅカレディ「ダイヤのエース」もまた、小学時代以来のライバル女優に対する鬱屈に悶々( ´ ▽ ` )ノ
     オナゴの魂百まで( ´ ▽ ` )ノ
     男もそうだけど、女もまたサル山ならぬヒト山というヒエラルキーの中でしかアイデンティティを確立できない序列動物なんだね( ´ ▽ ` )ノ

     一瞬だれの発してるセリフか分からなくしたり、時間軸を混乱させたり、わざと読みづらくするのはリョウちゃんおなじみの手法( ´ ▽ ` )ノ
     これがじゃまになるときもあるけど、今回みたいなミステリータッチの作品だとかなり効果的な技法だね( ´ ▽ ` )ノ

     一話目、二話目、まったくの途中で物語をぶった切って後は読者の想像に任せる、という結び方も面白い( ´ ▽ ` )ノ
     この世の中、ドラマみたいにスッキリけりがつくことの方が珍しいわけで( ´ ▽ ` )ノ
     三話目のみ小綺麗にフィニッシュ(嘘くさい感動)を決めているのは、これが浮き世離れした芸能界を舞台にしているからだろう( ´ ▽ ` )ノ


     最年少受賞だの奇抜なタイトル(「やめるってよ」)だの、話題「だけ」で名前を売ってすぐに消えていった作家は山ほどいたけど(椎名桜子・処女作執筆中……)、明らかにリョウちゃんは彼ら彼女らと違ってるみたい( ´ ▽ ` )ノ
     文章力・着眼センス・時代と寝る感性、そして多産脳力&体力( ´ ▽ ` )ノ
    「限りなく透明に近い」村上龍コースに乗った、かな?――乗れる、かな?( ´ ▽ ` )ノ
     デビュー作・受賞作が最大にして唯一の代表作ってのは、やはり本物の作家とは言えない( ´ ▽ ` )ノ


     本作ではまだ「学校(時代)」というデビュー以来のテーマを引きずっているけど、このオタマジャクシのシッポもさっさと自分で引きちぎったほうがいいね( ´ ▽ ` )ノ


    2019/10/14
     
     
     
     
     

  • ◯著者の特徴的な心理描写は引き続きと行った感じではあるが、桐島と比較すると、青臭さが抜けた印象。
    ◯面白い…とは思うものの、読者に対する共感のありようがその面白さの濃度を決めているのか、テーマというか小説の舞台自体に入り込めず、桐島ほどの共感は無く。
    ◯ただ、そのテーマで小説を書くこと自体の難しさも感じるところであり、それを違和感なく描写しているところはさすがだなと思った。
    ◯また、物語として、第3部後半の展開はドラマティックというか、一種のカタルシスを感じられ、爽快ですらあった。
    ◯引き続き作品を追って、筆者の心情及び状況の変化を追ってみたいと感じた。

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著者プロフィール

朝井 リョウ(あさい りょう)
1989年、岐阜県生まれの小説家。本名は佐々井遼。早稲田大学文化構想学部卒業。
大学在学中の2009年、『桐島、部活やめるってよ』で第22回小説すばる新人賞を受賞しデビュー、後年映画化された。
大学では堀江敏幸のゼミに所属し、卒論で『星やどりの声』を執筆。2013年『何者』で第148回直木賞を受賞。直木賞史上初の平成生まれの受賞者であり、男性受賞者としては最年少。『世界地図の下書き』で、第29回坪田譲治文学賞受賞。
その他代表作に『少女は卒業しない』、映画化された『何者』がある。

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