将棋殺人事件 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 203
感想 : 19
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  • Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062936163

作品紹介・あらすじ

謎々を拾った者が、次第に心を病み、墓地で死体を掘り返す――六本木界隈である怪談が広まっていた。そんなとき静岡で大地震が発生、土砂崩れの中から二つの屍体が発見される。屍体と怪談との類似点に注目、調査を始めた天才少年棋士・牧場智久が到達する驚愕の真相とは? 書き下ろし短編「オセロ殺人事件」収録。

感想・レビュー・書評

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  • 囲碁殺人事件に続くゲーム三部作の二作目。終盤に至るまであっちこっちに散りばめられた謎がどう解かれるのかさっぱりわからなかったな。謎解きされてようやく「あー、あれがそういうふうになるのか!」と気持ちよかった。

  • 将棋殺人事件
    竹本健治
    2019年7月5日読了

    竹本健治氏の、ゲーム三部作、囲碁殺人事件、将棋殺人事件、トランプ殺人事件の第2部作。
    天才囲碁棋士、牧場智久を主人公に、大脳生理学の須藤、牧場の姉の典子などを中心に繰り広げられるミステリー小説。

    将棋というよりも詰将棋をモチーフに、詰将棋の様なパズル性と、六本木で噂になっていたという都市伝説「恐怖問題」を絡めて展開される。

    散りばめられた謎と奇妙な出来事がポツポツと出ては、途中までしか繋がらず終盤になって繋がっていく様は読んでいて面白かった。

    詰将棋なので、伊藤宗看や伊藤看寿、詰将棋の作り方など詰将棋にまつわる有名な人物や作品も出てくるのでそこも面白いですね。詰将棋のルールなんかも出てきます。

    文庫版にあたってオセロ殺人事件が短編書き下ろしとして収録されてます。

    謎解きが好きな人は楽しく読めるかも。

  • ○ 総合評価  ★★★☆☆
    〇 サプライズ ★☆☆☆☆
    〇 熱中度   ★★☆☆☆
    〇 インパクト ★★☆☆☆
    〇 キャラクター★★★☆☆
    〇 読後感   ★★★☆☆

     ゲーム3部作の2作目。「将棋殺人事件」というタイトルだが,テーマとなっているのは「詰将棋」と「恐怖の問題」という六本木界隈で流行しているという噂
     将棋殺人事件は,2つの流れがあり,1つに収束していく。1つ目は詰将棋の盗作問題をめぐる話。2つ目は静岡県掛川で見つかった男女の死体と,六本木界隈にある「恐怖の問題」をめぐる話。
     恐怖の問題関係については,牧場智久と牧場典子の姉弟による調査がされる。その調査の中で,女子寮が噂の出どころと突き止める。
     詰将棋に関する話は「赤沢真冬」という詰将棋作家の作品の盗作に関する話。こちらの話は主に将棋雑誌関係の人の視点が描かれる。
     そして恐怖の問題と詰将棋の盗作問題が「加納房江」という人物を介してつながる。
     この小説のオチ・メイントリックは,犯人が二重人格だったというもの。女子高生である秋村紗貴が二重人格で,二人目の人格が狂っていたために,脅迫行為や殺人をしていた。しかし,二重人格モノ(多重人格モノ)は夢オチみたいなもので,上手く処理しないと「何でもあり」という印象を与え,陳腐になってしまう。この作品も,竹本健治好きでないと陳腐に感じてしまう可能性がある。
     竹本健治好きの目から贔屓目に見ても,「将棋殺人事件」は傑作とは言えない。詰将棋に関するうんちくは読んでいて面白いし,牧場智久と典子による捜査と推理は,それなりに読ませる。しかし,全体の構成がもっと深い謎を持っているように感じさせるにもかかわらず,二重人格で落としてしまっている点が物足りない。解説にも書かれているが「将棋殺人事件」には隠されている空白があるように感じさせる。何か,もっと深い秘密・真相が残されているように思わせる。とはいえ,結局,読者に最後まで分からない真相は存在しないものと変わらない。単に伏線の回収不足と感じてしまった。
     最後のオチが「二重人格でした。」だったので,サプライズ感は薄い。ときおり挟まれるよく分からない記述が物語への没入感を妨げるので熱中度も低い。
     キャラクターは牧場智久や牧場典子などそれなりに描かれている。総合評価としてはどうだろう。甘めに見ても★3といったところか。
     なお,追加で収録されている書下ろし作品「オセロ殺人事件」はオセロに似た源平碁をテーマとした作品。源平碁が白と黒ではなく白と赤の駒を利用するという点をトリックにしている。駒に高価な貨幣が隠されていたというオチ。分かりやすい短編小説。傑作とまでは言えないが佳作。これも含めたトータルで見ても総合評価は★3だろう。

  • 将棋でも詰将棋がミステリーのメインになっている。実際の殺人事件とつながりのある噂の元を調べていくうちに詰将棋との妙な関連が疑われてくる。人間の精神の謎を含んだ奥深いミステリー小説。オセロ殺人事件の短編を含む(オセロとリバースと源平碁の違いが判る)。

  • 講談社文庫からの復刊分、2冊目。
    相変わらず将棋も、詰将棋もまったくルールが解らないのだが、解らないなりに面白かった。
    尚、前作同様、年代を特定する記述は削除されている。

  • 竹本さんは『匣』が素晴らしかったんだけど、それ以外がどうにも微妙だなあ…。
    〈ゲーム三部作〉2作目にして〈狂気三部作〉の1作目らしいけど、うーん…なんか、中途半端。将棋の部分も本筋と絡むというより、ただアイテムの一つにしかなってないし(併録「オセロ殺人事件」はそこんとこよくできてた)、〈狂気〉というのでどんだけ怖いんだと期待を煽られたんだけど、正直そうでもなく。ミステリ的にももう何十年も前の作品だからだろうか、やはり荒削りな部分は否めない。

  •  天才将棋少年と牧場智久その姉の典子、大脳生理学者の須藤は、六本木界隈で広まっている怪談を調査することになった。その怪談は、ある人物が墓地へ行き、そこで死体を掘り起こし、現場を目撃した者が殺害されていくというものであった。
     墓地を訪れた水野礼子が殺害された理由は何か、水野が訪れた墓に刻まれていた加納房江とは何者でどういう関係があるのか、怪談を広めたとされる秋村沙貴と関係者たちとの関係は何か、秋村が通う女学園の校長はそれらとどのような関係にあるのかなど、調査をするにつれ、様々な出来事が複雑に絡み合ってくる。そんな中、須藤がこれらを結びつける(解決する)鍵として導き出したのが、犯人が二重人格であるということであった。

     正直なところ、おすすめはできない。以下その理由を羅列する。
    ・数ページごとに登場する人物が変わり、その者が全体のうちに占める位置が分かりにくい(特に序盤)。
    ・難語を用いた情景描写が多く、読むのが面倒になる。
    ・将棋が暗号として使われているのではなく、被害者や犯人など関係者の共通項が将棋であるだけといえる。
    ・27ページ「四 北極星は千年」の節の存在意義が全く分からない(余計な情報)。
    ・事件が須藤のひらめきで解決するため、ロジックに乏しく、最後の数十ページ(事件の概要が言葉で整理できないほど)あっという間に完結してしまう。

    評者の力不足も当然あろうが、少ししか出てこない登場人物が多すぎること、事件で考えられる場合分けが多すぎることから、混乱したまま読み進めてしまい、結局よく分からないまま読み終わってしまった。その点が少々残念なところであり、タイトルから将棋が暗号に絡んでいることを期待していた評者は、本書のハードルを上げすぎていたと後悔している。
     ただ、本書で真相解明のキーとなっている二重人格や死亡していたと思われていた者が実は(記憶喪失となって)生存していたというパターンは、ミステリーの典型であり、それについて学ぶことができたという点では、決して本書を読んで無駄であったとは思えない。
     今後読もうと思っている『涙香迷宮』に期待したい。

  • 詰め将棋のくだりは面白く読めたけど、将棋と事件を無理矢理繋げようとした挙げ句の果てに、風呂敷を畳みきれなかった印象を受けてしまった。⌈オセロ殺人事件⌋は題材と絡めて、シンプルにまとまっていたので、余計に惜しまれる。

  • 竹本作品三作目。ゲーム三部作、第二弾。真相としては普通だけれど、そこまでの過程が面白い!魅せ方が巧いよね^^ 詰将棋がいくつか出てくるけど、駒の動かし方くらいしか分からないから、その点が凄く残念…。

  • 文庫書き下ろしの「オセロ殺人事件」目当てに購入。
    「将棋殺人事件」の方は既読なんだけどすっかり内容忘れてたので読んでて新鮮でした。都市伝説+詰将棋の話だったか。
    竹本作品独特の、フワフワした空気感(匣っぽいと言えば良いかなぁ)を堪能。調査を進めるにつれ明らかになる事実から着地点が全く見えず、カットバックも入ってるし、解決に向けてはかなりアクロバティックに展開するので、これは幻想小説か?みたいな気分になる人がいるのも判る。私はこういう展開嫌いじゃない。

    オマケの『オセロ殺人事件』は、大変ベーシックな推理小説で、解決のあのキーになる所とか痺れましたね。なるほど!と。

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著者プロフィール

竹本健治:
一九五四年兵庫県生れ。佐賀県在住。中井英夫の推薦を受け、大学在学中に『匣の中の失楽』を探偵小説専門誌「幻影城」上で連載。デビュー作となった同書は三大奇書になぞらえ「第四の奇書」と呼ばれた。
ミステリ・SF・ホラーと作風は幅広く、代表作には『囲碁殺人事件』『将棋殺人事件』『トランプ殺人事件』の「ゲーム三部作」をはじめとする天才囲碁棋士・牧場智久を探偵役としたシリーズや、自身を含む実在の作家たちが登場するメタ小説「ウロボロス」シリーズなどがある。近著に大作『闇に用いる力学』。

「2022年 『竹本健治・選 変格ミステリ傑作選【戦後篇Ⅰ】』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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