あなたは、誰かの大切な人 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
3.51
  • (176)
  • (494)
  • (591)
  • (110)
  • (16)
本棚登録 : 8412
感想 : 502
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062936606

作品紹介・あらすじ

勤務先の美術館に宅配便が届く。差出人はひと月前、孤独のうちに他界した父。つまらない人間と妻には疎まれても、娘の進路を密かに理解していた父の最後のメッセージとは……(「無用の人」)。歳を重ねて寂しさと不安を感じる独身女性が、かけがえのない人に気が付いたときの温かい気持ちを描く珠玉の六編。

文庫版刊行に寄せて 原田マハ
「見知らぬ町を歩くとき、心地よい風が吹き、なんともいえない幸福感に包まれることがある。それはきっと、おだやかな日常がそこにあるからだ。その日常は、誰かが誰かを大切に思っているからこそ、そこにあるのだ。
 あなたがもしも、いま、なんということのない日々を生きているとしたら、それはきっと、あなたが誰かの大切な人であることの証しだ。それが言いたくて、私は、この物語たちを書いた。あなたは、きっと、誰かの大切な人。どうか、それを忘れないで。」

最後の伝言 Save the Last Dance for Me―母が亡くなった。だが、告別式に父の姿はない。父は色男な以外はまったくの能無し。典型的な「髪結いの亭主」だった……。

月夜のアボカド A Gift from Ester´s Kitchen―メキシコ系アメリカ人の友人エスター。彼女は60歳で結婚をして、5年後に夫と死別したのだという。その愛の物語とは……!?

無用の人 Birthday Surprise―勤務先の美術館に宅配便が届いた。差出人はひと月前に他界した父。母には疎まれながらも、現代アートを理解してくれて……。

緑陰のマナ Manna in the Green Shadow―イスタンブールを訪れた。トルコを紹介する小説を書くために。そこで聞いたトルコの春巻と、母親の味の話は……。

波打ち際のふたり A Day on the Spring Beach―学時代の同級生ナガラとは年に4回くらい旅をしている。今回、近場の赤穂温泉を選んだのには訳があって……。

皿の上の孤独 Barragan´s Solitude―メキシコを代表する建築家、ルイス・バラガンの邸までやってきた。かつてのビジネスパートナーの「目」になるために……。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • あなたは、自分が他の人からどのように思われていると感じていますか?
    
    私たち人間は他者とのコミュニケーションの中で毎日を生きています。そんな私たちには当然に感情というものがあります。目の前で一見楽しそうに会話をしている人たちがいても、お互いがお互いを心の中でどう思っているかは分かりません。握手をしているからといって心の底から仲良くしようという気持ちがあるかどうかだって怪しいものです。まあ、あまり世の中を斜めに見すぎるのもどうかとは思いますが、一方で人間は目の前に見えている光景だけで全てが測れる生き物でないことも事実です。

    そんな私たちには誰でも一人は大切に想う相手がいるはずです。

    あなたにとって大切な人は誰ですか?

    そんな質問をしたとしたら、あなたは特定の誰かのことを頭に思い浮かべるでしょう。それは、友達かもしれませんし、恋人かもしれません、そして家族のことかもしれません。関係性は多々あれ、誰でも誰かしらそんな相手が思い浮かぶと思います。では、この考え方を逆に見てみるとどのような場面が思い浮かぶでしょうか?つまり、あなた自身のことを誰かが大切だと考えてくれている人がいるのではないか?という視点です。

    ここに、そんな考え方の先にある感情を小説にした作品があります。『いちばんの幸福』がなにかを考えるときに『大好きな人と、食卓で向かい合って、おいしい食事をともにする』瞬間を思うこの作品。それは、あなたのことを『きっとどんなことより大切』に思う人がこの世界にきっといることを教えてくれる物語です。

    『すがすがしい秋晴れの空のもと、母の告別式の日を迎えた』のは、主人公の栄美(えみ)と妹の眞美。そんな姉妹の母親である平林トシ子は『享年七十三』で亡くなりました。『十八歳のときに郷里の茨城から上京』し、『東京郊外の小さな町で美容室を開業』していた母親は『美容師一筋、元祖ワーキングマザーとして』二人を育ててくれました。そんな二人には『いちおう父親』もいました。『さしてなんの才能もなければ、働く意欲も気力もない』という父親は『典型的な「髪結いの亭主」』で『母よりひとつ年下』で『平林三郎、通称サブちゃん』と呼ばれています。そして、『遺族控え室に、そろそろお時間です』と『葬儀社の係の人が声をかけに』来て『喪主は変更ということで、よろしいんでしょうか』と確認します。『告別式の日だというのに、どこへやら姿をくらませたまま』という父親。しかし、栄美は『もう少しだけ待ってください』と決定を保留にします。そんなところへ、『まったく義兄さんたら…』と『母の妹、たつ子叔母さん』が声をかけてきました。『働きもしないで遊んでばっかり』で、『この期に及んで行方不明だなんて』と呆れるたつ子は、一方で父親のことを『色男で、たいそうモテた』と語ります。そんな父親と母親が結婚したのは母親が三十歳の時でした。『自分の容姿にかなり自信がなかった』という母親は、『父と出会って、なんとたったの三ヵ月で結婚し』ました。当時『ナンパ師のサブちゃん』と呼ばれていた父親『に引っかかり、人生を捧げてしまった』母親。しかし、母親はそんな父親に『あたしと一緒になって、人生をやり直してちょうだい』と全てを分かった上で父親のことを受け入れていました。そんな母親にある時『お願いがあるんだけど』と言われた栄美は『あたしにもしものことがあったら…』と、万が一の時にある場所に置いてある手紙を見るように伝えます。『隣町の葬儀屋さん』宛だというその手紙のことを聞いて、自分達に手紙はないのかと訊く栄美に『あんたたちは、立派に育ってくれた。それでじゅうぶん』と言う母親。念のため父親宛のことを訊く栄美に『ないに決まってるでしょ。あんなろくでなしに』と母親は答えるのでした。『それからちょうど一週間後』、『眠るように天国へと旅立った』母親の前に結局『「ろくでなし」と呼ばれた父は』現れません。しかし、『お通夜の夜遅く』『すっかり肩を落とし、ほうけたような顔つき』の父親が自宅の門前に姿を現しました。『もう遅い。お母さん、逝っちゃったよ』、『卑怯者ッ』と栄美の口から相次いで言葉が出ます。そして…という最初の短編〈最後の伝言〉。原田マハさんらしいユーモア溢れる文体の中に、じわっと家族の温かさを感じる好編でした。

    “歳を重ねて寂しさと不安を感じる独身女性が、かけがえのない人に気が付いたときの温かい気持ちを描く珠玉の六編”と宣伝文句にうたわれるこの作品。一部、登場人物に重なりが見られますが基本的には独立した六つの短編から構成される短編集です。まずは、そんな六つの短編をご紹介しましょう。

    ・〈最後の伝言〉: 『美容師一筋、元祖ワーキングマザー』だった母親を亡くした主人公の栄美。しかし、『典型的な「髪結いの亭主」』だった父親は病院にも訪れ仕舞いでした。そんな父親が『お通夜の夜遅く』に一度姿を現すもまたいなくなり、いよいよ告別式が始まります。

    ・〈月夜のアボガド〉: 『メキシコ移民の子』のエスターと知り合った主人公のマナミ 。そんなエスターは『これが私の料理の、とっておきの秘密よ』と庭に実るアボガドから『アボガドペースト』を作りメキシコ料理を調理します。マナミ はそのレシピのメモをある人に渡します。

    ・〈無用の人〉: 勤務先の美術館で、他界した父親からの宅配便を受け取った主人公の聡美。『死の一ヵ月まえに』、『二ヵ月後に、私の手元に届くよう』『誕生日の贈り物』としたその宅配便には『鍵』が入っていました。『え?』と思う聡美は父親の暮らしていた部屋へと向かいます。

    ・〈緑陰のマナ〉: 『これが二度目のイスタンブール』と旧市街のB&Bに『トルコの紀行文を書く』ために滞在する主人公の『私』。そんな『私』はネットで知り合いになったエミネさんから『私が大好きな春巻を、ほとんど毎日、作ってくれました』と彼女の母親の話を聞きます。

    ・〈波打ち際のふたり〉: 姫路にある『実家に行く用事』のついでに『友だちと赤穂温泉に行こう』と計画し、友人の妙子と旅をするのは主人公の喜美。そんな喜美は認知症の母親の介護のため東京と姫路の往復を続けていました。そんな日々を『もう、限界で』と、妙子に打ち明ける喜美。

    ・〈皿の上の孤独〉: 『とうとうここまで来ました。メキシコシティ、バラガン邸』と『かつてのビジネスパートナー』である青柳にメールを出したのは主人公の咲子。『男女の仲を超えた「同志」のような関係』と青柳のことを思う咲子は、『僕、失明するんです。緑内障で』と告げられた時のことを思い出します。

    六つの短編の主人公はいずれも四十代で、独身という共通点を持っています。そんな彼女たちはどこか孤独感を纏っています。独身だからということが殊更に強調されるわけではありませんが、まだ四十代にも関わらずそこはかとなく孤独感を感じさせる主人公たちの心の内が繊細な描写によって描かれていきます。一方でそんな主人公たちは自らが関係してきた人、関係している人のことを考えます。その中でも冒頭の短編〈最後の伝言〉の描写は秀逸です。『典型的な「髪結いの亭主」』とされた父親、『色男な以外はまったく能無し』という父親に娘の栄美は複雑な思いを抱いていました。それは、母親も同じことで、『あんなろくでなし』と父親のことを呼んでいます。その一方でそんな『母は、父を待っている。死ぬ直前も、死んでからも、いまもなお、父がもう一度自分を抱きしめてくれるのを、待っている』とその心の内を思う栄美は、『この父がいたからこそ、母は、強く、凜々しく、たくましく生き抜くことができた』とも考えます。そして、そんな栄美自身も『このとんでもない父を、内心、自慢に思っていた』と父親のことを思います。『母にとってはいい夫ではなかった』という父親、『私たち姉妹にとってもいい父親ではなかった』という父親、そんな父親が結末に見せる姿には、「あなたは、誰かの大切な人」という原田マハさんがこの作品に与えた書名がふっと浮かび上がるのを感じました。

    “旅をしているとき…ここにも、あそこにも、誰かの人生があるのだと、いつも思う”と語る原田マハさん。そんな原田さんは、”その誰かは、ほかの誰かのことを大切に思っている。けれど、自分も誰かに大切に思われていることに気づいていない”と続けられます。そして、そんな状況にあっても、つまり”気づかなくても、誰かが誰かを大切に思っている限り、それが幸せな世の中を作り出すんじゃないか”とまとめられます。

    人が他者を思う気持ちというものはなかなかに他人からは伺い知ることはできません。“喧嘩するほど仲がいい”と言われるように、喧嘩ばかりしているように見える者同士が実際にはとても仲が良く、最後まで寄り添いあった、そんな関係性もあるのだと思います。むしろ誰かのことを大切に思うからこそ、感情が表に出やすいとも言えるのかもしれません。この作品では主人公がさまざまな形で関係した人たちのことを思う中で、そこにお互いに思い合う関係性がふっと浮かび上がる物語が描かれていました。そう、それは人であれば誰でも同じこと、このレビューを読んでくださっているあなただって、誰かのことを大切に思う一方で、『誰かの大切な人』でもあります。気づくようで気づけない、人が人を思いやる感情の機微がこの作品では六人の主人公の目を通して柔らかな筆致の中に描かれていました。

    原田さんらしくアートに関連するキーワードが、そこかしこに散りばめられたこの作品。

    『いちばんの幸福は、家族でも、恋人でも、友だちでも、自分が好きな人と一緒に過ごす、ってことじゃないかしら』。

    そんなことを私たちに気づかせてくれたこの作品。

    『大好きな人と、食卓で向かい合って、おいしい食事をともにする』。

    そんな時間が何ものにも勝ることを教えてくれたこの作品。

    優しさに満ち溢れた六つの物語にほっこりと魅了された、そんな作品でした。

  • 誰しも人生で決定的な出会いってありますよね。私は誰だろう。

  • 原田マハさんは『リボルバー』でずっと気にはなっていたが、美術の知識がないと楽しめないかなという先入観が邪魔しており、なかなか手を伸ばせずにいた。ひとまず作品一覧でざっとあらすじを確認し、ハードルの低そうなこちらの短編からチャレンジしてみようと思い、いざ読んでみたら、美術の知識なんて無くても全然楽しめる内容で、むしろ個人的に好きな作風だった。
    以下、あらすじと感想をレビューします。
    ※ネタバレ注意

    ・最後の伝言 Save the Last Dance for Me
    自分の容姿に自信がなかった母と、ハンサムでモテモテだった父の、夫婦愛の物語。
    離婚の危機に陥った際に父から母に伝えた「おれ、昔っからコーちゃんが好きだった。トッコと結婚したのも、お前がよく似てたからなんだよ、コーちゃんに。でもいまは、トッコの方がいいな。コーちゃんよりも、ずっと」の言葉、容姿に自信がなかった母にとっては、本当に本当に、嬉しかっただろう。
    そして、母から父へ、コーちゃん(越路吹雪)の曲の歌詞にのせて送った最後の愛のメッセージ"ここにいることだけ忘れないで"。自信のない控えめさと、愛の深さが同居していて、母らしい最期の伝言だった。
    原田ハマさん初めて読む本作の第一章。早くも心打たれた。

    ・月夜のアボカド A Gift from Ester's Kitchen
    メキシコ料理が繋ぐ、国と世代を超えた3人の女性の友情の物語。
    アマンダとエスターの開放的で温かい人柄がこちらまで伝わってくる。
    エスターが作るメキシカンに食欲をそそられた。

    ・無用の人
    寡黙で地味だった亡き父から娘に贈られた最後の誕生日プレゼント。
    まさか、満開の桜が綺麗に見える一室とは…!
    「美」の真理を追究していた父と、同じ道を進んだ娘。たとえ長年離れて暮らしていても、言葉を交わさなくても、「美」という共通の世界観を通して、娘の気持ちを読みとる父からの深い愛が伝わってきた。


    ・緑陰のマナ Manna in the Green Shadow
    トルコの紀行文執筆の為に二度目のイスタンブールを訪問した主人公が、イスラムの文化に触れ、同行してくれたエミネさんと互いのマナを共有する。
    ムスリムに対するイメージが歪みであったことに気づいたというところは、読んでいてハッとさせられた。
    『月夜のアボカド』に続き、こちらはイスラムの食文化が物語の軸となる。 
    エミネさんが作ったシガラボレイに対する父からの「マナ」(さあ、行きなさい。お前が行くべきところへ。そこで、こつこつと暮らし、するべき仕事をしなさい。そうすれば、どこかで、誰かが、きっと見ていてくれるはずだから――。)の答えには温かい気持ちにさせられた。私にとってのマナは何だろう?と考えたら帰省したくなった。

    ・波打ち際のふたり A Day on the Spring Beach
    仕事をバリバリこなしてきたナガラ(長良妙子)とハグ(波口喜美)の「女ふたり旅」の物語。
    関西弁のキャッチボールが読んでいて心地良い。互いのプライベートには踏み込みすぎず、けれど、たまに共に旅に出て近況を報告し合える二人の関係性が素敵。
    一方で、40代独り身の二人が抱える悩みはリアルだ。"そのとき、私の目の前にいたのは、母ではなかった。私自身だった。…。私だって、いずれ、ひとりになる。"この、唐突に沸き起こる寂しさと不安はとてもよくわかる。今30手前の私だが、歳を重ねるごとにこの感情は強まっていくものなのだろうか…不安でたまらない。
    さらに、親の介護も切実な問題。ここではハグは母と一緒に生活することを選択するが、認知症の介護は生優しいものではないはず。残された母と娘の時間が限られていて、大事にしなければと思う気持ちと、自分の人生に捧げたいと思う気持ちを天秤にかけて葛藤する気持ちが痛いほど突き刺さる。
    だからこそ、こうして歳を重ねても共に旅に出て、痛みや悩みを分かち合える交友関係、とても憧れる。ひとりだけど、ひとりじゃないと思える友達の存在はとても大きいんだなと思った。

    ・皿の上の孤独 Barragan's Solitude
    咲子は、緑内障で視力が失われつつあるビジネスパートナーの青柳に代わり、ルイス・バラガン邸を訪問する。
    青柳との再会場面の回想と、バラガン邸訪問が交互に織り交ぜられる描写が目の前に浮かんでくる。
    "人は、孤独になれる空間を必要としている"
    というバラガンの言葉と、お皿の上に刻まれた"Soledad"(孤独)の文字。自分の好きなものだけを選び、家に置いたということは、バラガンは心の底から孤独を愛したのかもしれない。
    一人の時間が大切であることは共感できるが、"孤独"というと、寂しさ、悲しさ、冷たさが先に連想され、響きとしてもマイナスなイメージが強く、今の私には忌避感の強いワードだ。だからこそ、この言葉に惹きつけられたバラガンは人として気になるし、彼の作品に興味も湧いてきた。
    もともと、美術についての知識も乏しく、美術館や博物館に行っても、いまいち世界観に浸ることができないでいたが、この作品では、小説の中にも関わらず、建築物をイメージしたり、芸術家の気持ちを想像してみたりということが、なぜだかすんなりと実践できた。小説から美術へ興味を広げるというルートもあるんだなと気づくことができてとても嬉しい。

    原田さんの作品は舞台が、日本、メキシコ、トルコとスケールが大きいうえに、その国の食、美術、宗教まで様々なジャンルの文化を網羅しており、情景描写もわかりやすく、登場人物が見ている景色や食べているものの絵が頭の中で想像しやすい作品だった。多様な文化とヒューマニティーがかけ合わさった作品で読み応えあり。気になった方はぜひ。

  • 大切に思う人はいても、自分のことを誰かが大切に思ってくれている、なんて考えたこと今までなかった。

    日々の仕事や人間関係による煩わしさ、家庭内の些細な揉め事など、気の滅入ることがあると急に一人ぼっちになったような寂しさで押しつぶされそうになる。
    まして身内の死に直面すると、自分の味方を失った喪失感・孤独感は計り知れない。
    子供時代と違い大人になって一人立ちすると、身内との距離も離れてしまい、身内のありがたみも薄れてしまう。それがいきなり死に直面すると…亡くした存在の大きさは想像以上に違いない。

    寂しさ・喪失感といったマイナスな感情で埋め尽くされた日常の中で、自分を肯定し大切に思ってくれる人がいると分かった時、塞いだ気持ちも一気に浮上するはず。
    その人がたとえ亡くなっていたとしても、心に灯された温もりは消えはしない。

    短編集の中で特に『緑陰のマナ』が印象深い。亡き母お手製の梅干し。残りが僅かになった梅干しをお守り代わりに旅先に持って行った主人公の気持ちに共感した。そしてその大切な梅干しを、新たにできた大切に思う人と分かち合う気持ちも素敵だった。

  • 原田マハはお気に入りの作家だが、そのために読む前の期待値が高すぎるのか、本作は思ったよりもあっさりしていたように感じた。
    実は最初の短編「最後の伝言 Save the Last Dance for Me」はものすごく良かった。思わず最後は涙してしまった。タイトル通りの誰かの大切な人ってこういう事もあるんだなぁと納得もした。しかしその後の5編が最初ほどの感動もなく、読み終えると全体に物足りなさを感じてしまった。
    とは言え、いつもの原田マハの作品であり、決して悪い作品ではない。勝手に期待値を上げた自分が悪いのはよく分かっている。

    • ベルガモットさん
      こんにちはhighriverさん
      いつも的確な感想、また自分が読めない難しい本を読んでいらっしゃるので、 いつも参考にさせていただいています...
      こんにちはhighriverさん
      いつも的確な感想、また自分が読めない難しい本を読んでいらっしゃるので、 いつも参考にさせていただいています。

      「期待値を上げてしまっている」に思わずコメントしてしまいました。
      本当に同感です。
      好きな著者さんのマハさんも池井戸さんも、すでに水準以上の作品なのに、自分の今の気持ちとマッチしない時などに低い評価をつけてしまいがちです。
      評価は今後のためにしたいので悩みどころではあります。
      ちょっと模索してみたいと思いました。

      いいきっかけをありがとうございました。これからも感想を楽しみにしています!
      2023/12/01
    • highriverさん
      こんにちは、ベルガモットさん。
      コメントありがとうございます。共感して頂ける方がいてとても嬉しいです。
      次は何を読もうかと考える時もついつい...
      こんにちは、ベルガモットさん。
      コメントありがとうございます。共感して頂ける方がいてとても嬉しいです。
      次は何を読もうかと考える時もついつい好きな作家の作品ばかりになってしまうので、なるべく色々な作家も読んでみようと思うのですが、やっぱり多少は偏ってしまいますよね。そして期待もしてしまう…(苦笑)
      これからも評価は試行錯誤するので、ベルガモットさんや他の方の評価も是非参考にさせて頂こうと思います。
      2023/12/01
    • ベルガモットさん
      お返事ありがとうございます。何はともあれ作家先生にリスペクトをしつつ、こちらも真剣に読まないといけませんね
      お返事ありがとうございます。何はともあれ作家先生にリスペクトをしつつ、こちらも真剣に読まないといけませんね
      2023/12/01
  • 幸せは自分で決める、かな。
    歳を重ねると人は幸せと不幸は別々の時期にやってくるのではなく同時にあるものなんだなと。何かを抱えながらも楽しむ事をする。物事は周りの人達の基準ではなく自分が良いと思えればそれは幸せ。
    生きているってそういう事かもと思える短編集。

  • 原田マハ『あなたは、誰かの大切な人』講談社文庫。

    2019年に最初に手にした1冊は原田マハの短編集である。日本だけではなく海外も舞台にした心暖まる6編を収録。いずれの短編も人と人との繋がりを描きいた素晴らしい作品なのだが、『無用の人 Birthday Surprise』が最も心に響いた。

    『最後の伝言 Save the Last Dance for Me』。母親の死に姿を見せぬ父親は生来の色男で典型的な髪結いの亭主だった。数日後に姿を見せた父親の心の底と母親の思い……

    『月夜のアボカド A Gift from Ester´s Kitchen』。60歳で再婚し、僅か4年の結婚生活で夫と死別したメキシコ系アメリカ人、エスターの半生……

    『無用の人 Birthday Surprise』。勤務先の美術館に熟年離婚の果てに一月前に他界した父親からの宅配便が届く。無用の人と周囲から疎まれた父親の真の姿は……最も心に響いたのは、ラストの描写で目の前に鮮やかな絵を見せてくれたからだろう。

    『緑陰のマナ Manna in the Green Shadow』。トルコを紹介する小説を書くために訪れたイスタンブールで聞いたトルコの春巻と日本の母親の味……

    『波打ち際のふたり A Day on the Spring Beach』。毎年、旅を共にする大学時代の同級生ナガラと今回訪れたのは近場の赤穂温泉……

    『皿の上の孤独 Barragan´s Solitude』。メキシコを代表する建築家、ルイス・バラガンの邸を訪れたのは、かつてのビジネスパートナーの目となるためだった……

  • 原田マハを読むのはこれで11冊目になる。けれど、短編を読むのはこれが初めて。

    収録されたエピソードは6つ。それぞれ、人生の転機を迎えた40代の女性を描く。

    「無用の人」はずば抜けて素晴らしい。なるほど、短編を書くとこのような仕上がりになるのかと、新鮮な気持ちになった。それでいて納得感が有り、そして満足感があった。このエピソードだけなら、文句なしに星5つ。原田マハの美術的なエッセンスと人生描写がキラリと光った名作。

    「月夜のアボカド」と「緑陰のマナ」は星4つ。人生と生き方、そして幸福について、明るく前向きに描く。それを異文化と特別な料理が彩る。これもまた原田マハらしさ。

    「最後の伝言」「波打ち際のふたり」「皿の上の孤独」は星3つかな。ハズレではないけど、良すぎることもない。ちょっとした大衆小説として読めば、まぁ悪くない仕上がり。

    総評としては、さすがの原田マハ。平均点が高い。お得意の美術要素あり、大衆小説的な要素あり。そして異文化、料理、人とのつながりなど。原田マハらしさが凝縮されている。

    「あなたは誰かの大切な人」というタイトルももちろん良い。安心できる優しさがあるのだけど、決して押し付けがましくない。

    原田マハのファンなら読んで損なし。むしろこの短編集から入門するのもいいかも、と思えるような万人向けの短編集だった。

    (ネタバレを含む、各エピソードのメモや感想などは、書評ブログの方から宜しくお願いします)
    https://www.everyday-book-reviews.com/entry/%E6%97%85_%E6%96%99%E7%90%86_%E7%95%B0%E6%96%87%E5%8C%96_%E4%BA%BA%E7%94%9F%E3%81%AE%E8%BB%A2%E6%A9%9F%E3%81%A8%E5%B9%B8%E7%A6%8F%E3%81%AB%E3%81%A4%E3%81%84%E3%81%A6_%E3%81%82%E3%81%AA%E3%81%9F%E3%81%AF

  • 「最後の伝言」
    「月夜のアボガド」
    「無用の人」
    「緑陰のマナ」
    「波打ち際のふたり」
    「皿の上の孤独」の六篇の短篇集。
    タイトル通り、テーマはすべて「大切な人」。
    その中で、最初の二篇が特に心に残りました。

    「最後の伝言」
    色男で髪結いの亭主、そのままだった栄美の父。
    母の葬儀にやってきません。
    母が父に遺した最後の手紙。
    そして葬儀社の人に託した母から父への最後の伝言。
    色男だった父に夢中だった母。
    そして浮気ばかりしているかにみえた父もまた…。
    夫婦の本当の事情は当人同士にしかわからないものですね。
    父にとっても、母にとっても同じようにお互いが、大切な人だったのですね。
    最後の演出は、グッときます。

    「月夜のアボガド」
    マナミの年上の女友だちでメキシコ料理の達人のエスター・シモンズは四十歳の時に出会ったアンディと六十歳の時に二度目の結婚をし、アンディが亡くなるまでわずか四年間の結婚生活を送ります。
    「たった四年間の結婚生活だったけれど、あの四年間のために、彼も、私も、この人生を授かったような気がするの。いちばんの幸福は自分が好きな人と一緒に過ごすってことじゃないかしら。大好きな人と、食事で向かいあっておいしい食事をともにする。笑ってしまうほど単純で、かけがいのない、ささやかなこと。それこそがほんとうは、何にも勝る幸福だって思わない?」このエスターの言葉から本当に大切な人を思う気持ちが伝わってきて心に染みました。

  • 両親を大切にしようと思った。
    父の日がもうすぐだ、その日は実家に帰ろう。

  • 大人の独身女性を主人公とした6つの短編を収録。単行本は2014年刊行。

    「最後の伝言 Save the last dance for me」、「月夜のアボガド A gift from Ester's Kitchen」、「無用の人 Birthday surprise」、「緑陰のマナ Manna in the Green Shadow」、「波打ち際のふたり A day on the Spring Beach」、「皿の上の孤独 Barragan's Solitude」

    「波打ち際のふたり」(母親の介護に直面した悩める女性のお話)は、「ハグとナガラ」にも入ってた(本書に先に収録されてたんだな)。

    経済的にはそれなりに安定した独身仕事女性たちの様々な人生の断片。6作品の中では、何といっても「最後の伝言」が印象的。父親がイケメンの遊び人、いわゆる"髪結いの亭主" というヤツで、母親の葬儀にも遅参して呆れられる(でもちょっとホロッとする)、という強烈な話だった。

  • 心が疲れた時にちょいちょい読み返している。
    みんな色々あるよね…みたいな感じに癒される。

  • 「おもしろくて、残りのページが減っていくのがさみしい」という感覚を初めて味わった気がする。

    元々そこまで長文を読むのが得意ではないから、本を読むこと自体は好きではあるけど、それより読み終わった時の達成感やストーリーが完結したときの満足感を楽しみにしてるところがあって。

    でも、この作品は読んでいる"その時間"が本当に充実してました。

    本作のような作品を書きつつ、「旅屋おかえり」みたいなアットホームで陽な雰囲気な作品も書けちゃうんだから、マハさんすごいなぁ。

    本作は大人の女性たちの6話短編集。生きてりゃ色んなことがあって、歳を重ねるほど、過ごした月日の分だけ人間関係も深くなったり、複雑になったり、それに伴う感情もまたしかり。頭じゃ分かってるけど、白黒つけられないこともある。案外グレーのままでいいときもある。ポジティブもネガティブもまるっと受け止めるしかないことを経験で学んだような大人の女性たち。そんな女性たちの大切なひととの関わり。

    社会人2年目の頃。求人広告の新規営業で、目標売上に追われて、毎日当たり前に残業続きだった。年末の最終日、旅行の準備を駅前のコインロッカーに忍ばせて、就業時間になるやいなや同期の女の子と飛び出して、越後湯沢へスノボ旅行に行ったの思い出した。
    数時間前まで銀座でスーツで仕事してたのが嘘のような雪景色と露天風呂。露天風呂の入り口に「雪が多いときにご利用ください」って笠地蔵みたいな藁の笠が置いてあって、24歳の女子2人、全裸に笠だけかぶって笑いながら露天風呂入ったのは本当にいい思い出。

    あれから15年。娘が産まれて2年8ヶ月、いろんなことへの不安、不満、イライラ、焦り、悲しみ、疲労。もちろん娘の成長の喜びや可愛さなどポジティブなこともあるけど、圧倒的にネガティブな感情に覆われてる毎日。もっと大変なママはもちろんたくさんいるだろうけど、娘の健やかな毎日のための健康管理や、笑顔で接すること、おどけること、娘のイヤイヤに冷静に対応すること、自分の感情を殺して褒めたり叱ったりすること。言葉にすれば当たり前のことだけど、陽キャもどきの根暗な私にはソウルジェム( )が曇るように自分でも自覚がないうちに溜まっているのだなぁと思う。
    爆発してヒステリックになったり、溜め込んで育児ノイローゼになったりって聞くけど、そりゃあるよなぁと思う。

    そういう今までの日々の頑張りを肯定されるような時間を過ごせました。




    子育てママならみんな同じしんどさ、なんなら私はお金に困らない専業主婦をやらせてもらってる分、幸せなはずなのに何がしんどいのかなって答えが出なくてしんどかった。

    専業主婦だから職場もない、旦那の転勤についてきてるから近くに友達どころか知り合いもいない、そういった社会的欲求の不満。
    上記のことが無いので承認欲求も満たされない。そして自己実現の欲求も満たされない。

    マズローの五段階欲求でいうところの生理的欲求と安全欲求が人一倍満たされたところで、それ以上のことが満たされてないことには変わりがないのだなと気付いた。

    仕事がしんどくて鬱病になったこともあったけど、今のように社会人としても女としても市場価値が下がっていく事実と、それに対して努力もできない状態がしんどいのだなと思った。

    なので、ボクシングジムに入会した(唐突)
    ジムに"所属"して、頑張りと上達を"承認"され、目標は妊娠前の体重(約20kg!)を戻すことで市場価値を上げるという"自己実現"!www

    自分の人生を充実させるのは、頑張ることも諦めることも自分の腹落ち感ひとつ。できる範囲でできることをしていこうと思いました。




    ◆内容(BOOK データベースより)
    勤務先の美術館に宅配便が届く。差出人はひと月前、孤独の内に他界した父。つまらない人間と妻には疎まれても、娘の進路を密かに理解していた父の最後のメッセージとは…(「無用の人」)。歳を重ねて寂しさと不安を感じる独身女性が、かけがえのない人の存在に気が付いた時の温かい気持ちを描く珠玉の六編。

  • 最近はできるだけ英語に力を入れていて本もYouTubeも日本語のものはできるだけ控えていたけど、最近疲れてしまい久しぶりに大好きな作家、原田マハさんの「あなたは、誰かの大切な人」を読みした。やっぱりこの人の描く物語が好きということ、読書は私の生活の一部で必要なんだとということを再確認しました。まだまだ寒い冬が続きそうですが、皆様も温かくして元気でいてください(^_^)v

  • 6人の女性の6人の物語。

    著者の言葉はいつも、
    優しい気持ちにさせてくれる。

    本のタイトルから、
    とても素敵じゃない?

  • それぞれの物語の主人公が全員アラフォーやアラフィフの大人の女性。
    そして全員過去に結婚歴があっても現在は独身。

    自分はもう少し下の年齢で、既婚だし、ここに出てくるような誇らしい仕事にも就いてないし、全然違う境遇だけど、それでも引き込まれてしまう文章のあたたかさがとても良かった。
    【最後の伝言】なんかはすごい泣けた。

    小さい頃からの友達じゃなくても、大人になってから出来た友達だとしても、それが異性だとしても大事にできる友情って宝物だなと思う。
    それが【あなたは誰かの大切な人】ってことなんだと思う。

    友人でも家族でも、私にとって大切な誰かをこれからも大切にしたい。
    私も誰かにとっての大切な人になれますように

  • 独身女性6人を主人公にした短編集。なのだが、男性目線で読んでしまった。「最後の伝言」「無用の人」「皿の上の孤独」あたりが好み。家族という幸福追求の最小集団を様々な角度から捉え、「こんな生き方もありだよね」と包み込んでくれる感じかな。あと、メキシコ料理が食べたくなった!

  • 短編集。
    中でも、『月夜のアボカド』が良かった。

    私にとって料理は面倒なことのひとつだけど、もしかしたらかけがえのない時間なのかもしれないと気づかせてくれる物語だった。
    エスターのようなお母さんになりたい。

  • 自分の死に際を想像したことがありますか?

    読んでいて何度も出てきた人の"死に際"。
    それは母や父だったりする。
    後悔して思い出して、自分のかけがえのない大切な人だったと改めて気付く。

    私は今のところ幸運なことに、肉親や近しい人を亡くしたことがない。
    そしてこちらは私よりも少し歳上の女性の話だったことから、感情移入出来ぬまま終わってしまった。残念。
    もう少し大人になっても読めば感じるものが違うだろうか。

    ただ、今日を大切に生きること。
    それから自分を大切に思ってくれる人を大切にすること。を改めて学んだ。
    私が逝くとき、周りに人はいるだろうか。それは誰だろう。

    好きだった章だけ残しておく。
    【緑陰のマナ】
    マナとは旧約聖書に登場する、奇跡の食べ物。飢えに苦しむ人々を救いたまえとの預言者モーセの祈りを聞き入れて、神が天から降らせた、霜のように薄く、白く、甘い食物。
    この食物のおかげで人々を40年間飢えることがなかったそう。
    主人公にとってのマナは、母の漬けた梅干しだった。いつも旅先に持っていくお守りのようなもの。
    しかし母は去年末に亡くなり、もう梅干しを作ってもらうことは出来ない。
    そんな大切な梅干しを大切な人と食べることを選んだ主人公。
    私にとってのマナはなんだろうか。やはり母の味だろうか。

    月夜のアボカドのアマンダが最終章の皿の上の孤独で出すのずるいなぁ。綺麗にまとめられた感じ。

  • どれもそれぞれ良くて、2回ずつ読み返した。特に②と③は、優しそうだったり気弱そうだったりする登場人物の内なる情熱に圧倒される。

    何かを主人公に決意させる、「大切な人」の後押し、言葉、そして、遺したモノ。

    ①最後の伝言
    逝った母が、最後に男前だけが取り柄の父に遺したもの。
    ②月夜のアボカド
    40も年上の友達エスターがマナミにくれたのは美味しい料理とレシピと・・・。
    ③無用の人
    母に見限られ、孤独に死んで行った父から私の誕生日を指定して封筒が届いた。
    ④緑陰のマナ
    私を2度目のイスタンブールに誘ってくれたエミネさん。私が母親の梅干しの話をすると彼女にも物語が。
    ⑤波打ち際のふたり
    忙しい「旅友」にランチの誘いを送ったら一泊二日近場で、と嬉しい返事。
    ⑥皿の上の孤独
    ワールドカップで無人の通り。咲子は、バラガン邸の写メをかつての同僚、青柳に送る。

  • 6人の女性を主人公にした短編集。

    年齢も職業も背負っているものもちがう彼女たちに共通なこと。
    ”一生懸命に生きている”ということ。
    困難な状況になったとき、見えてくる”大切なこと”、”大切な人”

    解説の中にあったことば。
    <自分は、自分の大切な人>
    納得!!!

    6編のうち、一番好きなのは『波打ち際の二人』
    ハグとナガラの物語。
    【星がひとつほしいとの祈り】【さいはての彼女】にも登場するあの二人です。

  • 6つの短篇からなる短篇集。いずれも大人の女性が主人公。
    家族との関係だったり、はたまた友人や仕事仲間との関係だったり、本当にそれぞれ全く違う背景や思い・関係性が描かれていて、色々な生き方があるなというのが詰まった物語。

    「波打ち際のふたり」は「ハグとナガラ」という本に収録されている話だな。

  • 当たり前のことだけど、人によって かけがいのない人 は違う。
    かけがえのない人は生きる証にも生きた証にもなる。
    介護して段々終わりが見えつつある今だから この本がさらに響いたのかな。

    ところて?いつかトルコでアザーンを聞いてみたい。ルイス•バラガン邸を見てみたいな。

  • タイトルから、ハートウォーミングな話の集まりかと思っていた。
    が、読み始めたら主人公がそれぞれ、仕事を持ち自立した女性ばかり。
    彼女達は結婚に対して全く夢や願望を抱いていない。そしてそれぞれ、色々な経験をしていている。
    50代になったらここまで達観というか、冷静というか、向き合うことができるものなのだろうか。まだわからない。
    誰でも、何歳でも、誰かの大切な人であるというメッセージを感じた。
    ただ、よっしゃ!幸せ!ハッハッハー!ってキャピ感がなくて、何だか静かな読了感だった。

  • 心あたたまるとても読みやすい短編集。

    読みながら、美しい絵画やメキシコやトルコの料理、風景にうっとりと思いを馳せた。
    とくに料理!メキシコ料理を食べてみたくなる。


    月夜のアボガドという作品の中でのエスターの幸福についてのお話。
    大好きな人と食卓で向かい合って、おいしい食事を共にする。笑ってしまうほど単純でかけがえのないささやかなこと。それこそが本当は何にも勝る幸福なんだって思わない?
    このセリフがとても良くて、印をつけた。←私すぐに忘れちゃうので

    忘れちゃダメだね。
    食事中にすぐに子供を怒ってしまうのよくありません……。
    そしてそして、入院中の夫と早く一緒にごはんを食べたいな。


  • 積読の中からの一冊。貯まる一方なので少しはと月末には取り出して読みだす。それも苦手な小説を・・・。原田マハさんの本。独身でありながら仕事にイキイキと生きがいを見出して自由に過ごしている女性が六人登場。

    「人は結局一人なのだ」といわれながら、どこかで心を交わせる人を求めている、そこには「あなたは、誰かの大切な人」でありたいと願っている。

    そして「孤独」の崇高性、大人のいろんな生き方の参考になる6編の物語がここにはあります。

  • 月夜のアボガドが大好きです。泣きました。原田マハさんの作品がもっと読みたいです。

  • メメントモリ(死を想え)、ということばの重みを感じさせてくれる本。原田マハさんの短編は一人ひとりの人生を素朴に、でも鮮やかに描いてくれる。

    故人を想うことで自分がその人に生かされていたのだと気づくことがある。主人公は40代の独身女性なのだが、同世代の男性である私も共感できるストーリーで、吸い込まれてしまう。

  • 素敵な短編集でした。
    読み終わった時、切なくなるような、なんとも言えない温かい気持ちになりました。
    メキシコのルイス・バラガン邸に行きたくなる!!

  • しっとりと大人な女性たちの話かな。

    結婚、仕事、選ぶ道、選んだ道・・・。
    今、置かれている場所に後悔はないけれど
    こう生きるんだ!!と、頑なに背負い込んでる訳でもない。

    生活の中にある、決して派手な付き合いではないけれど
    とても大事な繋がりの人達。

    この人と居ると何か守られているような。
    とても良い時間の中にいる・・・そんな大人の本でした。

全502件中 1 - 30件を表示

著者プロフィール

1962年東京都生まれ。関西学院大学文学部、早稲田大学第二文学部卒業。森美術館設立準備室勤務、MoMAへの派遣を経て独立。フリーのキュレーター、カルチャーライターとして活躍する。2005年『カフーを待ちわびて』で、「日本ラブストーリー大賞」を受賞し、小説家デビュー。12年『楽園のカンヴァス』で、「山本周五郎賞」を受賞。17年『リーチ先生』で、「新田次郎文学賞」を受賞する。その他著書に、『本日は、お日柄もよく』『キネマの神様』『常設展示室』『リボルバー』『黒い絵』等がある。

原田マハの作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
辻村 深月
朝井 リョウ
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×