Aではない君と (講談社文庫)

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  • 講談社
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  • / ISBN・EAN: 9784062937146

作品紹介・あらすじ

第37回吉川文学新人賞受賞作

*選考委員のコメントより

伊集院静氏
思わず唸った。
薬丸岳という小説家の力量と才能に頭が下がった。

大沢在昌氏
より道のないまっすぐな物語は、最後まで密度を失わず、
重く暗い話でありながら、目をそらすことを許さない。
名状しがたい感動を私は味わった。

京極夏彦氏
提起された問題は読み手のい許に届き、
読者それぞれが「つけられない結末」を共有できる。

恩田陸氏
もし自分が主人公の立場に立ったら、と
胸が痛くなるような心地でハラハラしながら読んだ。

感想・レビュー・書評

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  • 息子が殺人を犯した容疑で逮捕される。
    我が子が加害者となった時、親として成すべきことは何かを問う、加害者の親の視点で描かれた物語。

    著者作品は本作で3作目。
    前読の「天使のナイフ」も少年法がテーマだったが、同じテーマでも被疑者と被害者の立場が異なるだけで、まったく別の重みを感じさせられた。

    もしも我が子が被害者に、加害者になったなら…を想像しつつ、心が大きく揺さぶられた。

    我々には必ず親が存在する。
    たとえば、そこに複雑な事情があれど、親がいて、断ち切れない血縁があって今の自分が存在する。
    よって誰しもが明日は我が身となる問題であると思う。

    作中、主人公である父が、自身が幼少期についた嘘を親に見透かされていたことを知り、老父へ何故咎めなかったのかと問う場面がある。

    「物事の良し悪しとは別に、子供がどうしてそんなことをしたのかを考えるのが親だ」と即答する老父。

    電撃が走った。

    作中、殺人を犯した主人公の子どもが、殺人に至る動機を父へ語る上で、問う場面がある。

    「心を殺すのと、体を殺すのとどちらが悪いことなの」

    衝撃を受けた。

    先般、DVDで視聴した湊かなえ作品【告白】において、私は以下感想を綴った。

    『少年法に守られた子どもは、何人殺しても罰せられない制度は、はたして世の中にとって良い事なのだろうか。』

    殺人は許されるものではない。
    この考えに未だ迷いも揺らぎもない。殺人は悪だ。

    ただ俯瞰するだけでなく、なぜ犯行に至ったのか。
    加害者、加害者家族の事情・葛藤、これから一生背負い生きていく心の傷を、自分ごととして想像し向き合うことも必要ではないかと、改めて考えさせられたのも事実だ。

    本作品は、加害者家族、被害者遺族の心理描写が細部にわたりとてもリアルに描かれている。

    少年犯罪をテーマにした小説に興味がある方へ、是非ともお勧めしたい作品である。

    • sakuragaiさん
      初めまして。
      いつも良いね をありがとうございます♪
      「心を殺すのと、体を殺すのとどちらが悪いことなの」
      このフレーズが私の感想と同じで…
      ...
      初めまして。
      いつも良いね をありがとうございます♪
      「心を殺すのと、体を殺すのとどちらが悪いことなの」
      このフレーズが私の感想と同じで…
      私はかなり前に読んだ本ですが、この言葉は今も鮮明に覚えています。
      同じ本を読んで、同じ様に感じるって嬉しいなと…(^^;;
      これからも宜しくお願いします。
      2021/11/03
    • akodamさん
      sakuragaiさん、こんばんは。
      こちらこそ、いいねとコメントまでありがとうございます。

      あのフレーズはインパクトが大きすぎますよね。...
      sakuragaiさん、こんばんは。
      こちらこそ、いいねとコメントまでありがとうございます。

      あのフレーズはインパクトが大きすぎますよね。
      薬丸岳が描く加害者は、ときに悲哀的で同情の余地を感じることがあります。

      共感ポイントが同じであったこと、私も嬉しいです!
      今後ともよろしくお願いします^ ^
      2021/11/03
  •  『天使のナイフ』に次ぐ薬丸岳さん2作目の読了でした。ウラスジに「少年犯罪に向き合ってきた著者の一つの到達点」とあり、(著者の他作品を多くは読んでいませんが)その形容表現に納得のいく作品だと感じました。

     それにしても、読み進めることが切なく苦しい、でも先が気になり止められない感覚でした。
     苦しい訳は、少年犯罪加害者の親の心情、加害者の更生、加害者の贖罪に関わる心理(弱さ・苦悩・覚悟)が巧みに描かれ、その半端ない重厚さとリアリティに凄みさえ感じさせるその筆致です。
     止められないのは、文章が比較的平易で、構成・展開が巧みで丁寧な描写故の力量と思います。

     人と人なので、我が子ととはいえ完璧な関わり方などないでしょうし、我が子が加害者となった時の、親として思考・判断・実践はどうあるべきかなども所詮想像の域でしかありません。
     本書は、この正解のない問いを読み手に考え続けさせながら、大きな課題を突き付けてきます。

     メディアで、第三者が用いる人権保護の観点から氏名を特定されない仮の名称「少年A」ではなく、父の立場で真剣に向き合った「君」は、更生・贖罪にたどり着けたのでしょうか? 父は、親としての責任を果たせたのでしょうか?
     十字架を背負う重さを深く深く考えさせられ、全身が粟立つほどの入魂の一冊でした。

  • 先輩作家達を唸らせた傑作と評判になった作品。吉永の父親の言葉「子供がどうしてそんなことをしたのかを考えるのが親だ」親としての苦悩は計り知れない。人間洞察に脱帽。

  • う〜ん…重い…

    子供に愛情たっぷり注いで、こんな悲劇が起こらんようにする事が一番やけど…

    自分の子供が、人殺しか…
    確かにイジメとかあったかもしれんけど…
    どんな理由があれ…あかん事やしな…
    でも、実際に起こったら、自分自身が子供にどんな態度を取るか…
    理想論では、自分の子供は、どんな事があっても、寄り添っていかなあかん!…
    ほんまにできるんかな…って不安になるけど、自分の子供やから、やるしかない!
    翼くんは、犯罪犯したかもしれんけど、中身はまともな感じがする。親殺しとかの事件がある昨今を考えるとね…
    これから、どうするなんてのに、答えはないから、子供に寄り添って、試行錯誤しがら、更生していくしかないんやろな…
    考えさせられる内容に、語尾が「…」だらけ(^_^;)
    薬丸さん、相変わらず重いのありがとう……………(「…」連打…)

  • 薬丸さん読むのは昨日に続き2冊目。

    個人的な感想ですが、序盤ダラダラ、後半加速のような内容の小説が多い中、薬丸さんは序盤から惹きつけられます。

    自分の親族が加害者なら?自分の会社にマスコミきたら?とか、もう感情移入しまくりでした。

    ニュースにならなくとも日本の中で毎日少なからず、このような悩みを抱えてる家族がいるのかもしれないと思うと、明日が我が身のように、、引き込まれて、、、。。。

    昨日今日と休日は、薬丸さん日和となりました。笑明日仕事休んで本読みたいなあ、、なんかずっーーと忙しい。。

    集中して他のこと忘れられる読書は最高だ〜♡
    薬丸さんも最高だ〜♡^ ^

  •  人を殺したら苦しまなきゃいけないの?
     心とからだと、どっちを殺したほうが悪いの?

     主人公である吉永の中学生の息子、翼が同級生の殺人容疑で逮捕される。事件について翼は何も語ろうとしない。犯罪加害者の家族として、マスコミに追い回され、仕事場での立場も人間関係も失い、何をするべきなのか、何ができるのか。

     少年院を出てしばらくして、被害者の父親に会いに行こうと吉永は言う。被害者の父親から、いつか更生した姿を見せてほしいと言われていたからだ。翼は言う。「ぼくは、更生したの?」更生とは、どんな状態を言うのか。少年院のロールレタリングにも、謝罪の気持ちは書かれていない。そして吉永は、「今の翼は心から笑っているように思えない。きちんと謝罪の思いを伝えることで、初めて笑うことが許されるような気がする。」と考えている。翼も吉永も、この時点では、加害者の立場にされてしまったという被害者意識の方が勝っているように思わされる。
     事件のことを打ち明けてからのユキオや周囲の人たちの態度と、吉永が出した「心とからだとどちらを殺した方が悪いか」への答えと、何があっても子どもを受け入れようとする覚悟が、最後の場面につながったのだろうと思った。
     
     翼が受けたいじめの中で、どう命令されて、どんな仕打ちをされようともペロの命は奪ってほしくなかった。翼のことを信頼しきっているペロの瞳を思い浮かべて悲しくなった。

  • 去年読んだはずなのだが、ブクログへの登録を失念していたようなので、
    今更ながらの登録(^-^;

    あまりの大作で放心状態になり、登録するのを忘れてしまったのか・・・。



    同級生殺人の罪で息子が逮捕されたことを知る吉永。
    弁護士を依頼するも、息子は沈黙をし続ける。
    父親が接見しても、息子は何も話そうとしない。

    父親が手配した弁護士との面会を拒否する息子に、弁護士が新しい女性弁護士を紹介する。

    女性弁護士 神崎の協力を得ながら、父親は息子に手紙を書き、息子に寄りそおうとする。

    ある日息子は自らの罪を認めるも、事件の動機を話そうとしない。
    神崎から弁護士に対して反感を持っている?のではと訊かされた吉永は、自分が付添人になることを決意する。

    翼の従妹から愛猫ペロが死んだ時の話を聞き、その時期に違和感を持つ。
    そこから次第に真実が見えてくる。


    重たく、苦しい話だが、かなり惹きつけられる作品だった。

    複雑な家族関係。
    動機が見えず、もがき苦しむ父親。
    息子とのやりとり。
    そして見えてきた真実。

    この物語をどうやって落としてくるのだろう?と不安にすらなるが、最後はきっちり嵌るべきピースが嵌るような感覚に。

    読み終えて放心状態になるような、重厚な作品だった。


    読み終わった本は、全て実の叔母に回しているのだが、叔母も甚くこの作品を気に入ったようだった。

  • 薬丸岳『Aではない君と』講談社文庫。

    確かに途中、胸を打たれる展開もあったが、読後は暗澹たる気持ちになった。そういう意味では初めて薬丸岳に裏切られたように思う。決して、面白くなかったのではなく、余りにも終盤の展開が重過ぎて、打ちのめされてしまったのだ。どうして、薬丸岳はこうした難しいテーマを題材にしても真っ向勝負で納得のゆく決着を描けるのだろうか…本当に凄い作家だと思う。

    同級生の殺人容疑で14歳の息子・翼が逮捕される。両親や弁護士の問いにも頑なに口を閉ざす翼は事件の直前、父親に電話していた…果たして真実は…

  • 同級生を殺害した罪で逮捕された14歳の翼。以前に夫婦は離婚し、元妻が親権を持つ。父親の吉永は順調に会社員をしていたが、息子の逮捕により生活が一変する。息子は同級生の殺害を一切喋らない。吉永と元妻が自責の念が高まる中、吉永は「翼の計画的犯行を否定」したものの、翼はそれでも明言を拒否。その後、翼は2年間少年院入院生活を終え、吉永への一言、「あの時は殺意があった」。翼は死ぬまで背負わざるを得ない十字架。被害者とどう向き合うべきか?父親として、少年Aではない翼に何ができるのか?贖罪の意味について考えさせられた。

  • 著者の作品は初読みでしたが、ブクログ内でのフォロー&フォロワーさんの評価が高くずっと気になりながらも積読となっていた一冊です。

    切なくて、苦しくて、なにより重たい作品でしたが、迷わず☆5つ。

    本作の主人公は14歳の息子が同級生を殺害した容疑で逮捕された息子(翼)を持つ父親・吉永。

    決して許されることのない罪を犯し、14歳という若さで加害者として十字架を背負うこととなった息子を持つ父親の姿、殺人を犯してしまった少年がいかにして自分と向き合い、家族や友人と向き合い、そして罪と向き合う姿。

    子を持つ親として、本書は超弩級の衝撃作。

    加害者の視点で書かれる作品は何冊か思い出しますが、加害者(少年)の親の視点ってどうしても自分ならどうする?と比べてしまいます。

    単身赴任とコロナ禍を言い訳に、私自身も吉永のように最愛の我が子と自然と距離があいてしまいました。

    誰よりも側にいたい最愛の娘。

    親と子、それは単なる血の繋がりだけではなく、もっと根幹の部分で繋がっている。

    しかし、それに甘んずること無く、側にいて、触れてやることも親の務めだと改めて思わされました。

    読みながら「北斗 ある殺人者の回心(石田衣良)」、「とんび(重松清)」を思い出しました。

    未読の方は是非‼︎

    説明
    内容紹介
    同級生の殺人容疑で逮捕された14歳の息子。だが弁護士に何も話さない。真相は。親子は少年審判の日を迎える。吉川文学新人賞受賞作


    第37回吉川文学新人賞受賞作

    *選考委員のコメントより

    伊集院静氏
    思わず唸った。
    薬丸岳という小説家の力量と才能に頭が下がった。

    大沢在昌氏
    より道のないまっすぐな物語は、最後まで密度を失わず、
    重く暗い話でありながら、目をそらすことを許さない。
    名状しがたい感動を私は味わった。

    京極夏彦氏
    提起された問題は読み手のい許に届き、
    読者それぞれが「つけられない結末」を共有できる。

    恩田陸氏
    もし自分が主人公の立場に立ったら、と
    胸が痛くなるような心地でハラハラしながら読んだ。
    内容(「BOOK」データベースより)
    あの晩、あの電話に出ていたら。同級生の殺人容疑で十四歳の息子・翼が逮捕された。親や弁護士の問いに口を閉ざす翼は事件の直前、父親に電話をかけていた。真相は語られないまま、親子は少年審判の日を迎えるが。少年犯罪に向き合ってきた著者の一つの到達点にして真摯な眼差しが胸を打つ吉川文学新人賞受賞作。
    著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
    薬丸/岳
    1969年兵庫県明石市生まれ。駒澤大学高等学校卒業。2005年、『天使のナイフ』(講談社文庫)で第51回江戸川乱歩賞を受賞。連続ドラマ化された刑事・夏目信人シリーズがある(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

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著者プロフィール

1969年兵庫県生まれ。2005年『天使のナイフ』で第51回江戸川乱歩賞を受賞しデビュー。2016年、『Aではない君と』で第37回吉川英治文学新人賞を受賞。他の著書に刑事・夏目信人シリーズ『刑事のまなざし』『その鏡は嘘をつく』『刑事の約束』、『悪党』『友罪』『神の子』『ラスト・ナイト』など。

「2023年 『最後の祈り』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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