道徳の時間 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 90
レビュー : 22
  • Amazon.co.jp ・本 (448ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062937344

作品紹介・あらすじ

乱歩賞問題作、文庫化で大幅加筆、完全リニューアル!!


ビデオジャーナリストの伏見が住む鳴川市で、連続イタズラ事件が発生。現場には『生物の時間を始めます』『体育の時間を始めます』といったメッセージが置かれていた。そして、地元の名家出身の陶芸家が死亡する。そこにも、『道徳の時間を始めます。殺したのはだれ?』という落書きが。イタズラ事件と陶芸家の殺人が同一犯という疑いが深まる。同じ頃、休業していた伏見のもとに仕事の依頼がある。かつて鳴川市で起きた殺人事件のドキュメンタリー映画のカメラを任せたいという。十三年前、小学校の講堂で行われた教育界の重鎮・正木の講演の最中、教え子だった青年が客席から立ち上がり、小学生を含む300人の前で正木を刺殺。同期も背景も完全に黙秘したまま裁判で無期懲役となった。青年は判決に至る過程で一言、『これは道徳の問題なのです』とだけ語っていた。証言者の撮影を続けるうちに、過去と現在の事件との奇妙なリンクに絡め取られていくが、「ジャーナリズム」と「モラル」の狭間で、伏見はそれぞれの事件の真相に迫っていく。

感想・レビュー・書評

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  • 呉勝浩の初読み。

    しばらく前に見かけて気になってはいた一冊。
    気にはなったけれど、「古本で出回ってからでもいいか」と、そっと棚に戻した一冊でもあり。

    しがない小遣い制既婚勤め人には、初読み作家を新刊で買うのには勇気がいるもので(苦笑)。

    同僚からの誕プレを開いたら出てきたのが、この一冊だという偶然。同僚に感謝。

    かな~り久しぶりに「ページをめくるのが止まらない」という程にのめりこんだ一冊でもあり♪

    かといって、題名に沿って道徳とは何か?などと語る気はない。(もちろん、道徳とは何かと考えさせられる要素は多々あったけれど)

    自分はこの作品を、、、、
    報道の在り方を問う物語として、
    父と子の物語として、
    友情の物語として、
    夫婦とは何かを改めて見つめる物語として、

    そして、己の矜恃を問い直す物語として読んだ。


    筆者のデビュー作だというのにも驚き。「作家買い対象作家」にエントリー♪

    ★4つ、9ポイント半。
    2017.11.21.新.贈。

    ※関西と、関東・東北とでは学校文化が異なるのか?・・・小学校に「部活」があるという設定だけは、違和感ありありだった。

    ※巻末解説で記された、「乱歩賞選考時、動機のリアリティが疑問視された」との記述・・・いやいや、ありえなくはないんじゃないか、と思う。

    ※同じく巻末解説文に触れられた、「2015年6月に太田出版から刊行された一冊の本の存在」に、全く思い当たるふしが無い・・・・どなたかこのレビューを読んだ方、教えてください!

  • 道徳の時間を始めます。
    殺したのはだれ?―有名陶芸家の死亡現場で、殺人をほのめかす落書きが見つかる。
    同じ頃、VJ(ビデオジャーナリスト)の伏見にかつて町の小学校で起きた殺人事件の映画撮影のオファーが。
    伏見はふたつの事件の奇妙なリンクに搦め捕られていく。
    選考会も紛糾した江戸川乱歩賞受賞作を完全リニューアル。
    □□□
    以上、裏表紙の内容紹介から。
    いや、聞きしに勝るスリリングな展開。
    かなり複雑に入り組んだストーリーなので、頭の中を整理しながら読み進めましたが、筆力があるのでぐいぐい読ませます。
    新人賞受賞作は、このくらいの熱気がなきゃ、ですね。
    本筋とは離れますが、63ページにこんな場面があります。
    主人公の伏見と新人ディレクターの越智が、ドキュメンタリー論を戦わせるシーン。
    「いかに多くの人間に届けるのか。いかに上手く届けるのか。それによって、どれだけの人間に影響を与え得るのか、変えることができるのか。それがパワーではないですか」
    と越智。
    この言葉を伏見は反芻します。
    「いかに上手く、届けるか。つい最近、自分が似たような発言をした記憶があった。しかし、それをすぐに思い出すことはできなかった」
    実は、この42ページ前に、全然違うシーンで、友達を殴った我が子を伏見が叱るシーンがあります。
    「―説得できんかった時は、どうしたらええの?」
    と訊く息子に、伏見は
    「もっと上手く伝えるしかない。もっと上手く、相手に届くように、響くようにな」
    と諭します。
    こういうのを読むと、うまいなぁ、と感じちゃいます。
    細部まで配慮が行き届いていると、作者を信頼してしまうのですね。
    もっとも、帯にもある通り、受賞作はかなり瑕が目立ち、出版に当たって全面改稿したのだとか。
    原本も読んでみたいものです。

  • 衆人監視の中で凶行を働いた青年。彼が残したのは「これは道徳の問題なのです」という一言のみ。謎めく過去の事件と、それに迫るドキュメンタリー制作に携わる主人公。時を同じくして過去の事件と関連が疑われるような事件も発生してくる。謎が盛り盛りでかなり興味をそそられる。それぞれの落としどころも良い。解説の紹介で他の作品も読んでみたくなりました。

  • 子どものいたずらと思われていた事件が、殺人事件へとつながっていく。自身も父子関係に悩む主人公が、事件の真相を探るミステリー。

    江戸川乱歩賞受賞ということで手に取った。
    ジャーナリズムのあり方や思春期の子どもの行動など深刻な問題を取り上げてはいるのだが、ドラマチックに盛り上げるための要素が多すぎて、逆に深みを欠いている。

  • 心の揺らめきや機微を表現する文章力はとても美しくて好き。
    ミステリーとしてもいろいろな出来事が絡まり合って収束していく様は素晴らしいと思うのだが、
    ボクにとっては少し複雑になりすぎていて、
    どの謎がどの段階で解消されているのかが分かりづらく、
    モヤモヤ感覚が残ってしまった印象です。

    出来事が多くあるため、読み進めていることの伏線がどこだったのか掴みづらかったというのが正直な感想です。

    作品としてはミステリー要素も多く
    読了感は悪くないです。

  • とある陶芸家が自宅で死体となって見つかった。
    服毒自殺と思われた部屋の壁には「道徳の時間です」の文字が。
    同じくして、過去に公演中に壇上に上がり演者を刺殺した犯人の
    ドキュメンタリーを撮る事になったカメラマンの主人公。
    その犯人が公判中に呟いた言葉が「これは道徳の問題なのです」

    主人公の地元で起こる連続イタズラと陶芸家服毒自殺事件とリンクして、
    過去の事件をインタビューとして浮き彫りにするこの作品。
    なぜこの映画を撮ることになったのか、犯人の目的は?
    最初は乗り気じゃなかったのに気がつけばグイグイと読んでしまった。
    作中で語られる「道徳」とは、実態が無いのに誰しもを押さえつける
    枷として描かれている。教育論とかそういう小難しい事も出てくるけれど、
    犯人や監督を動かす原動力を知れば最後は大いに納得できる。

    ミステリで言うwhyに力が入っている作品が好きな人にはおすすめです

  • 不思議な作品だった。ベタなどんでん返しといまいち詰めの甘いサブストーリー。序盤の読みにくさが途端になくなる文章。理解できないけど魅了される心理。はたして救いがあったのか無かったのか。

  • ★4.0
    “道徳”とは、「人々が善悪をわきまえて正しい行為をなすために、守り従わねばならない規範の総体」。が、善悪は、個人の価値観や時代によって変わる曖昧さがある。ということは、必然的に“道徳”の内容もぶれる。そんな“道徳”をタイトルに冠し、“道徳”をテーマにした本作は、子どもの描写が痛々しいながらも、面白くて夢中になって読んだ。最後、向晴人の動機が明かされるまでは。答えを出しにくいテーマとはいえ、あの動機はちょっと肩すかし。それはそうと、微妙にしっくりこない関西弁が気になった。伏見の東京生活が長いせい?

  • 呉勝浩『道徳の時間』講談社文庫。

    第61回江戸川乱歩賞受賞作。かなり変わったミステリーである。テーマや作中に散りばめられた材料や伏線は面白いのだが、嫌な後味が残るだけで、今一つ判然としない作品だった。

    有名陶芸家の死亡現場で、殺人をほのめかす落書きが見付かる。同じ頃、ビジュアル・ジャーナリストの伏見にもたらされたかつて町の小学校で起きた殺人事件の映画撮影のオファーとが、次第にリンクしていくが…

  • とても面白かった、解説を除いては笑

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著者プロフィール

呉 勝浩(ご かつひろ)
1981年青森県生まれ。大阪芸術大学映像学科卒業。2015年、『道徳の時間』で第61回江戸川乱歩賞を受賞。2018年『白い衝動』で第20回大藪春彦賞を受賞し、吉川英治新人文学賞候補にもなった。

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