八月十五日に吹く風 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
4.09
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本棚登録 : 394
レビュー : 62
  • Amazon.co.jp ・本 (432ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062937443

作品紹介・あらすじ

1943年、北の最果て・キスカ島―忘れられた救出劇。

迫真の筆致! 窮地において人道を貫き、歴史を変えた人々の信念に心震わされる。
―冲方丁(作家)

本書のテーマは、戦時下における命の尊さに他ならない。毎年、八月十五日が来るたびに新しい読者によって読み継がれていってもらいたい。
―縄田一男(文芸評論家)

太平洋戦争の戦記を読む。日本人にとっては辛いことだ。だがこの作品には、まさに爽やかな「風」を感じた。さらに、意外な「あの人」がからむ終戦時の秘史まで明かされるとは! 驚愕と感動が融合した稀有な一冊だ。
―内田俊明(八重洲ブックセンター)

多忙の外務省担当官に上司から渡された太平洋戦争時のアメリカの公文書。そこには、命を軽視し玉砕に向かうという野蛮な日本人観を変え、戦後の占領政策を変える鍵となった報告の存在が示されていた。1943年、北の最果て・キスカ島に残された軍人五千人の救出劇を知力・軍力を結集して決行した日本軍将兵と、日本人の英知を身で知った米軍諜報員。不可能と思われた大規模撤退作戦を圧倒的筆致で描く感動の物語。

感想・レビュー・書評

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  • キスカ島無血撤退。確かに奇跡だ。だけど奇跡の一言ですませたくない。そこには人の強い意志があるから。戦争を描いたものを読むとき、いつも“その日”を待つように読む。でも当時の人たちは、当然、その日がいつなのかを知らない。このタイトルの八月十五日は、“その日”の二年前の八月十五日だ。キスカ島から生還した彼らのうちには、また“次”の戦場に送られた人もいただろう。そして“次”は帰れると限らないのだ。奪う命・奪われた命に “次”はない。玉砕が尊いと思わなければ生きていけない矛盾に心底冷えた。アッツ島に向かい敬礼する甲板上の人々の姿に、ラスト近くの木村が妻子と海水を撒く姿に、言いようのない想いが湧きあがり胸が締めつけられた。

  • こんなに清涼感に溢れる戦争小説は産まれた初めて読みました。
    凄惨な場面もあるのに、なんて清々しいお話なんだろう! と本当にびっくりです。もう後が無く自決しか無いような人生の終点とも思える場面において、見え隠れする家族や自分が率いる部下などへの思いやりがたくさん詰まった一冊だと思います。

    島で窮地に追い込まれた全員が自決してしまいそうで、読んでいてはらはらしましたが、部隊を率いた隊長も隊員も付随してきた記者の気持ち全ての連携が上手くいったと思います。悲しい思いも背負うことになりますが、上に立つ人がとても立派だと思いました。

    戦争小説といえば、酷い有様や玉砕、特攻隊など無慈悲で悲しいお話が全部と言っても過言ではありませんが、そんな戦争小説のジャンルを1つ増やしてくれたまさに明るい希望が見えるお話で、とても感動しました。

    有名な戦艦や駆逐艦、作戦名などの名前も随所にでてくるので、歴史の時間軸的にもとてもわかりやすい作りだと思います。

    戦争のあらゆることは次の世代に伝えていかなければならないと思いますが、そんな中、こんなお話もあるんだよとぜひ多くの人に読んで欲しいと思いました。

  • 『黄砂の籠城』に続く2冊目を読破。前著に続き、冒頭に「この小説は史実に基づく」との記載があり、従来の固定観念にとらわれた戦前の日本の姿とは違う一面を描こうという著者の姿勢が表れている。
    とにかく、日本の近代史を冷静に見つめることは非常に難しい。これに対して真剣に挑戦している著者の姿勢は大いに応援したい。

  • なぜあまり知られていないのだろう?
    八月十五日と聞くと、日本人なら誰もが終戦記念日を思い浮かべる(最近は終戦記念日もピンとこない人たちが増えてる様子、怖すぎる)。
    でもその2年前、同じく八月十五日に起こった出来事がある。
    戦争があった時代に、こんなに人間味溢れる人たちが命を懸けて行った、日本人が日本人を救済する物語のような史実があることを私も知らなかった。

    実在する彼らの写真をググりながら、あなたは何を見てきたのですか?と問いかけながら読み進めた。
    あの時代に、仲間の命を最優先する軍人たちがいた。
    今までの、私の中の常識が覆された本だった。

    最後の解説にもある。
    「八月十五日が近づくにつれ、毎年多くの人がこの小説を読むことを願う」と。

    彼らのおかげで、今の私たちがある。
    それを目の当たりにした。

  • キスカ島の奇跡の撤退作戦の話。

    キスカ島における、奇跡の撤退作戦は知っていました。小説なので、いろんな脚色はあるでしょうけど、人命を大事にした木村昌福少将は、そんな感じの人なんでしょうかね?現代人の感覚からすると、この小説で描写されたような感じがぴったりくるんでしょうけど、当時の軍人ですからねぇ。しかも、将官まで登った人ですから、そこまでほのぼのとするような人だったかは疑問。

    物足りなかったのは、この作品のもう一つのテーマが、「人命を軽視する、狂気の民族」と言うアメリカの認識を一変させた出来事は何かと言うことなんですが、確かに、キスカ島撤退作戦は、人命を重要視したがための作戦ですが、それを目の当たりにした通訳官の、アメリカ軍上層部への過酷な占領政策の転換を呼びかける訴えの描写が、意外にあっさり。なんか、もう少し厚みを持たせられなかったですかね?「え?それだけ?」とちょっと思いました。

  • アメリカ兵、日本兵。
    ひとくくりにされてしまい、固定されたイメージを持ってしまう。
    この本を読んで、当たり前のことだけれど、一人ひとり違う人で、違う考えを持っているのだと実感できた。
    自分の行動一つ、決断一つが人の命に直結してしまう時代。今では想像もできない状況だけれど、その中で必死に生きていく人々を見てすべての人を応援したくなった。

  • 約一年前に読了したにもかかわらず、なかなか感想がかけなかった・・・。

    毎年夏になると、何か戦争に関わる本を読むことにしている。昨年読んだのがこの本だった。
    たまたま本屋さんでみかけて、タイトルだけを見て購入。そのため、終戦の日の話なのだと思って読み始めてしまった。

    恥ずかしながら、終戦のちょうど2年前にあったこの出来事を私はほとんど知らなかった。「キスカ島の奇跡の撤退作戦」については、なんとなく聞いたことある・・・という程度で、その日が8月15日であることや、その詳細については何も知らなかった。

    ーこの小説は史実にもとづく
      登場人物は全員実在する(一部仮名を含む)-

    というページから始まるこの物語は、あまりにも衝撃的でした。

    ただ「戦争」といっても漠然としているし「キスカ島撤退作成」といってもまだ足りない。その日のその出来事にたどり着くまでの作戦に関わる様々な出来事、それにかかわった様々な人々、そしてそこにいたひとりひとりにスポットを当てたときに、やっとほんの少し自分を置き換えて考えることが出来る。それでも本当にほんの少し・・・。
    戦争を経験した人が年々減っていて、そして今は平和で幸せなのだけれど、今の平和な日々は決して当たり前のことではないということを忘れたくない。忘れてはいけない。

    戦場で戦ったのはただの駒ではなく、一人の人間で、かけがえのない代わりのないたった一人の人間たちなのだということを、忘れてはならない。そして今後、もし戦争ということが起こりうるとき、その一人の人間に自分がなる可能性もあるのだということを想像しなくてはならない。

    キスカ島撤退作戦が成功した要因のひとつに、アッツ島の玉砕があったことを忘れてはならない。

    縄田一男氏が解説で「本書は、毎年、八月十五日が来るたびに新しい読者によって読み継がれていってもらいたいー」とあります。

    私もまったく同じことを思います。
    まずは妹にこの本を手渡しました。

  • ★4.0
    “終戦の日”と言われる1945年8月15日ではなく、その2年前となる1943年8月15日に纏わる出来事。アッツ島(熱田島)の名前は耳にしたことがあったけれど、キスカ島(鳴神島)と撤退作戦のことは初めて知る。あの圧倒的不利な戦況の中、陸海軍が協力した奇跡のような救出劇があったなんて!まさに、事実は小説より奇なり。そして、その救出劇が戦後の占領政策の方針を変えたことが何とも感慨深く、ひとりでも多くの人に読んでもらいたい1冊。また、登場人物の全員が実在(一部仮名)するので、彼らの著作も読んでみたい。

  • この物語は、一般にはあまり知られていないが、終戦を迎える二年前に実際にあった史実だそうだ(読み手もこの小説で初めて知った)。
    当時は、特別攻撃隊あるいは生きて虜囚の辱めを受けず、などの日本兵の行動から、人命軽視が日本人の民族性ではないかとみられていた。そんな戦時下に、人道を貫き、北の最果てのキスカ島で五千二百人の兵員を救出した。この救出劇があったため、日本人は決して野蛮な民族ではないと、戦後の米軍の占領政策が転換されたとか。
    救出を図る木村少将を中心とした救出側及びキスカ島で救出を待つ日本兵たちと、キスカ島奪還を目指す米軍側とを、交互に描きながら、小説は救出劇のクライマックスへと続く。
    米軍の警戒網を見事にかわし、救出作戦が成功した個所では、作中人物たちとともに、思わず万歳!と叫びたくなる。
    登場人物の名前も実名で(アメリカ側の日本語通訳官ドナルド・キーンさんはロナルド・リーンとしてあるが)登場し、スペクタクルで良質のエンターテイメントになっている。

    それにしても、えげつないのは、玉音放送があり降伏を決めた日本に、国際規約を破って侵攻を企てたソ連。
    ややもすると、北海道全域がソ連の手に落ち分割統治を招く危機があった。それを食い止めたのが、徹底抗戦した樋口司令官率いる北方軍。彼らの奮闘がなければ、日本はどうなっていたか。
    北辺での戦いは、浅田次郎著『終わらざる夏』にも詳しい。
    やはりこれらの小説は、解説者が説くように「毎年、八月十五日が来るたびに新しい読者に読み継がれていってもらいたい」。

    • hs19501112さん
      読みごたえがありそうな、そして読後に「読んでよかった」と思わせてくれそうな作品ですね。

      レビューを拝見し、興味がわきました。「読みたい...
      読みごたえがありそうな、そして読後に「読んでよかった」と思わせてくれそうな作品ですね。

      レビューを拝見し、興味がわきました。「読みたい本」に登録させていただきます。
      2017/11/28
    • hongoh-遊民さん
      自分のレビューで興味がわいたとは、とても嬉しい限りです。hs19501112さんの読後のレビューを楽しみにしています。
      自分のレビューで興味がわいたとは、とても嬉しい限りです。hs19501112さんの読後のレビューを楽しみにしています。
      2017/11/28
  • 終戦から2年前の1943年。北太平洋にあるキスカ島からの救出劇を描いた作品。
    すでに敗戦色が濃厚になりつつあり、特攻精神などが崇められていた時代にこのような史実があったとは…
    太平洋戦争については、南方での戦いが描かれる作品が多い中で、この北の大地の戦いは全く知らなかった。
    冒頭のアッツ島の全滅は悲しい限りだが、その犠牲を無駄にすることなく、指揮をとった樋口、最後まで一人の犠牲者を出すこともなく5,200人の命を救った木村。戦時中にも命を大事にする軍司令部がいたことに、私は心が救われた。
    そして、この人道を貫いた行動が戦後の日本に影響を与えたこと。こういう話こそ、もっと現代の人たちに知ってもらいたい。
    「千里眼」シリーズ以降、作者の作品はライトノベル感覚で読んできたが、この作品で作者に対する印象もかなり変わった。読んで良かった。

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著者プロフィール

松岡 圭祐(まつおか けいすけ)
1968年生まれの作家。1997年に出した小説デビュー作『催眠』がヒット作となりシリーズ化される。1999年の『千里眼』も人気を博し、シリーズ化。
一番著名なのは『万能鑑定士Qの事件簿』をはじめとした「Qシリーズ」で、「面白くて知恵がつく 人の死なないミステリ」というキャッチコピーで人気を博し、映画化された。

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