新装版 殺戮にいたる病 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
4.02
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本棚登録 : 1011
レビュー : 89
  • Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062937801

作品紹介・あらすじ

永遠の愛をつかみたいと男は願った―。東京の繁華街で次々と猟奇的殺人を重ねるサイコ・キラーが出現した。犯人の名前は、蒲生稔!くり返される凌辱の果ての惨殺。冒頭から身も凍るラストシーンまで恐るべき殺人者の行動と魂の軌跡をたどり、とらえようのない時代の悪夢と闇を鮮烈無比に抉る衝撃のホラー。叙述ミステリの極致!

感想・レビュー・書評

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  • シリアルキラーである蒲生稔が逮捕されるエピローグという始まりはなかなかに衝撃的な幕開けで、一息で読んでしまった。母である雅子、親しい女性を失った元刑事の初老の男、犯人である稔という三人の視点で物語は進むわけだが、作中の最大の仕掛けを隠すために仕込んだ細かい仕掛けは、まさに微に入り細を穿つ丁寧さと執拗さであり、文字通りコロッと騙されてしまった。

    大仕掛けそのものは単純で、読み手と作中の母親雅子が犯人だと思いこんでいた人物=息子は犯人ではなく、空気のように疎まれていた雅子の夫こそが犯人の稔であったという、謂わば誤認トリックである。思えば伏線、もとい騙すための仕掛けは随所に施されており、最初に大学構内でナンパをした相手が敬語であったりとか、二番目に遊んだ若い女の子がオジン呼ばわりした箇所であったりとか、再読して「ああ!やられた!」と思うポイントが多いのは作者の腕の成せる技だろう。秀逸なのは雅子パートで、読者が誤認している稔=夫に呼びかけた後、稔の外出後に息子の部屋に入る描写である。部屋にこっそり侵入するという行為は、普通先程まで会話して相手が去った後に行うはずだという読み手の先入観を逆手に取った素晴らしいトリックである。また年をまたいで意図的に時系列をずらしていたこともあって、仕掛けは時系列にあるものだと誘導させたのも上手い。実際は時系列はトリックの補強であってトリックそのものではないのだが、意味深に書かれた二月や前年といった単語にこそ、ミステリ読者はあっさりと引っかかってしまうのだ。当初は西暦が記されていないので、10年単位で時間が開いているトリックかと構えたわけだが、文字通りのレッドヘリングに騙されたわけである。おみそれしました。

    ただほんの少し不満もあり、それは夫である犯人の母親であり、雅子の義母である容子の存在だろう。これは夫と息子の誤認トリックであると同時に、母と祖母の誤認トリックでもあるわけだが、肝心の祖母の描写にほとんど紙幅を割いていないため、ややアンフェアなようにも思う。確かに稔パートで母と書かれている場面は全て容子のことを指しているのだが、その母がほとんど会話しないのは少しズルいと思ってしまった。痴呆であるとか、そういう理由付けが欲しかった気もする。これでは人物というよりは都合のいいパーツであり、また雅子が母と義母を使い分けていないのも違和感を覚えた。

    ただ、それでも気の触れた夫が息子を刺し殺し、実の母を殺して犯し続けるという描写は実に生々しく、ゾッとする落ちであった。また、どんでん返しのラストが記事の引用だけで終わるのも、ぶった切られたような余韻があり、客観的であるためトリックを読み手に伝えやすい。すでにエピローグが書かれているというのもあって、飾らない終わりなのがとても良かった。稔という男の犯人像もキャハハ系のサイコでなくて、異常者ならではの考えがあって実にいい。個人的に笑ったのはフリーターに対する作中の言及で、後の不景気を予測していたのには舌を巻いた。誰だって予測はできるが、1992年の段階でこれを書いたのは慧眼であろう。やはり名作ミステリは面白い。

  • うーん、騙された~!
    初めて読む作家さんで、予備知識なくさらさらと読み始めたのは失敗でした。
    叙述トリック(という言葉も初めて知った)が仕掛けられていると知っていたら、もっと注意深く読んだのに!
    犯人の異常性がテーマなのかと、何が原因でこうなったのかとそこばかりが気になり、また、同じような猟奇殺人が何件も事細かに綴られていたのに飽きて飛ばし気味に読んだため、文章の細かな細工に気が付かなかった~。
    それ故、ラストの展開に頭がついていかず、解説読んでやっと理解するという…。なるほど~そういう事か~、な感想に。
    我孫子武丸さん、次に読むときは心して読むことにしよう。

  • 最後の3行のためにある小説。
    最後のクライマックスに向けて、ん?どういうこと?となりながら読み進めて、読み終わった瞬間、
    えええええっ…となった。
    読みながら感じていた違和感の理由が、読み終わった時に分かる。

  • 我孫子武丸先生の代表作です。
    綺麗に騙されれば極めて驚く結末が待っており、この上なく素晴らしい“やられた感”を味わえる叙述トリックの傑作!! 強烈な印象を残す1冊です。
    大技1本で勝負したシンプルさが潔くて堪らないですね~(*´`)

    1992年刊行。
    発売当時はあまり売れず、重版もかからなかったそうです。文庫化されてから徐々に売れ、そのうちに我孫子先生の小説作品の中で断トツの売れ行きを誇るようになったとのこと。

    昔、名作ゲーム『かまいたちの夜2』で遊んだことを思い出しました。寝る間も惜しんでプレイしたっけなぁ。懐かしいなー(*^^*) まだPlayStation2の時代でした。我孫子先生が脚本を担当していたあのサウンドノベル、とても面白かったんですよ^^ どういうストーリーだったかはもう忘れてしまいましたけれど(^_^;
    その頃の私はミステリを読んだこともなく、“我孫子武丸”という人物が実在するのかどうかすらわかっていないような奴でした(滝汗) その特徴的なお名前を記憶した程度です。
    しかし長い年月を経ても、その名を忘れることはありませんでした。
    ミステリに興味を持ち始め、ようやく手にした『殺戮にいたる病』。きっとこの作品のことも、“我孫子武丸”という名と同じように、何年経っても忘れないだろうと思います。

    叙述トリックものの代表作ですので、ミステリにご興味を持たれているのでしたら読んでおくといいかもしれませんね。描写が「グロい」「生々しい」「気持ち悪い」と言われておりますが、そういう場面が苦手ならば斜め読みしましょ(^-^)b もしかしたら、「言うほどでもないじゃん」と普通に読めてしまうかもしれませんし。


    売れていない頃の我孫子先生が、エアコンもない2Kアパートの一室で書いた渾身の一作。
    騙されないと損ですよ。騙された者勝ちです(* ´艸`)

  • 読むべき一冊
    叙述トリックにすっかり騙された。
    稔の異常性には恐怖すら覚え、殺害シーンはグロすぎた。が、しかし、読み続けなければならない程、自分がこの作品に引き込まれたのは秀逸。
    最後の最後であれとは驚愕!再読必至

  • 叙述トリックものの傑作という紹介をうけて読みました。最後まで油断できないまま、ラストで明かされた真相に見事に驚かされました。読後は「私はどこで騙された?」と1ページ目から読み直すハメに。ただ、前評判の通り描写のグロさは凄まじく人を選びます。気持ち良い読書体験でしたが、決して気持ちの良い内容ではありません。脳裏に浮かぶ凄惨な光景に耐えつつ、好奇心に逆らえずページをめくる。とても体力を使う一冊でした。

  • 速攻で読み返したくなる作品。
    読了後、え?は?やられた、嘘やん、は...........って呆然とし続けます。そして我に返り、速攻で2回目読み始めたくなります。二度楽しめる。

    終始狂っている、そして最後に違う意味でまた狂わされる。最高、素晴らしい叙述トリック。ずっと面白かった。
    本好きには是非読んで欲しい。凄く良い。



    (グロい表現がどうのこうのと言う人はいるだろうが、あれくらいしないと面白くない。私のように平気な人間からすると、最高でした。どこがそんなにグロかったのかな...だから平気な人にはめちゃくちゃ向いています。)

  • 東京の繁華街で猟奇的殺人事件を繰り返す連続殺人事件。平凡な中流家庭にとって、テレビの中で起きる出来事のはずが‥。
    複数の人間からの目線で展開するストーリーは一気に読み進めてしまう。
    結末の衝撃は凄い!

  • 再読。久しぶりに読んだので内容はほぼ忘れていたが所々朧気には覚えていた。当時読んだ時はミステリ初心者だったのもあってかなり驚いた記憶はあったのだが今回は再読という事もありそこまで驚く事はなく読了。こういうトリックは最近はそこまで珍しくはないと思うがこのトリック一本でここまで描けるのは流石の一言。

  • グロいが、その先にある衝撃が全てを吹き飛ばす。
    小説の面白さを一歩奥に進める作品です。

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著者プロフィール

1962年、兵庫県生まれ。京都大学文学部哲学科中退。同大学推理小説研究会に所属。
新本格推理の担い手の一人として、89年に『8の殺人』でデビュー。
『殺戮にいたる病』等の重厚な作品から、『人形はこたつで推理する』などの軽妙な作品まで、多彩な作風で知られる。
大ヒットゲーム「かまいたちの夜」シリーズの脚本を手がける。
近著に『怪盗不思議紳士』『凜の弦音(つるね)』『監禁探偵』などがある。

「2020年 『修羅の家』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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