反撃のスイッチ (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
3.19
  • (3)
  • (5)
  • (20)
  • (3)
  • (1)
本棚登録 : 89
感想 : 14
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062938020

作品紹介・あらすじ

大手人材派遣会社社長の娘を誘拐せよ。
〔派遣時給400円〕負け犬たち、崖っぷちの逆襲!

大手人材派遣会社社長・原沢は、弱者を社会のゴミ呼ばわりする発言が反感を買っていた。生活困窮者自立を支援するジョブトレーナーの沖田は就労生たちを金で誘い原沢の娘を誘拐するが、釈放の条件はむしろ原沢を困惑させる。社会の底辺からのリベンジは果たして成功するか? 書下ろしノンストップ・ミステリ。

柳瀬 真:大学院卒業後、社会に溶け込めずすぐに引きこもる。爆弾作りが趣味。
沖田郁男:生活困窮者支援のジョブトレーナー。誘拐を計画し柳瀬たちを誘う。
稲垣一星:ミュージシャン志望の金髪男。DVを受けて育つ。
上野美咲:AV出演までして、尽くした男に騙されたリストカッター。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 社会に上手く馴染むことが出来ない生活困窮者「負け組」達が社会不適合者という定義を作りそれをゴミとする産まれ持っての「勝ち組」の娘を狙う「誘拐事件」。身代金は「四百円」。
    主犯の男はメンバーに一千万を渡す約束をし、手伝いを頼む。彼の内に秘めたる想いとは。
    そしてそれを受け継いだのか否か一人残った男は何を感じ何を考え、どう動き出すのか。
    ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

    私にとって「趣味」が生活の中心でありそれをする為の「仕事」だ。どちらかに全ベットする事は出来ない。恐らく良い意味では無い「マイウェイですよねぇ」なんてセリフはこの人生で100万回言われてきた(産まれてから1日1回言われていたとして私の推定年齢2739歳)

    自分とは違う人生を送る人間を否定し、陥れ、敵とみなして攻撃をする行為は見ていて気持ちの良い物では無い。仕事一途 それもまた人生。
    自由と自堕落が紙一重な日々 それもまた人生。
    ただ、「自分一人の世界」ではないので周りの人間のことを考え、尊重し、それを踏まえた行動であればわざわざ否定する必要は無いと思っている。
    自分の行動に自信を無くし、他者を羨み、それを怒りの感情に変換してしまうのはとても勿体無い事ではないのだろうか。

    作品説明から感じ取れる通りエンタメ性の強い構築だ。軽く読みながらスムーズに後半戦に突入し、フィナーレ目前の姿勢を整える前に誘拐劇にピリオドを打たれる。ここからがこの作品の見所だ。
    沖田の信念と「誘拐犯」に身を落とすも消して失わなかった彼の心が、彼の意志を継いだ柳瀬の行動により勝ち組の権力に埋もれる事無く世に露呈される。

    「周りなんて気にする必要ない」が大きく取り上げられている現代だが、言わせる側 言う側 この二組は相反する組織としてでは無く、共存する事は不可能なのかなぁ。傍観者としてでは無く、しかしこれからも静かに、好きな事をし、人を妬まず生きていきたいものだなぁ。

  • どんどんと展開していく誘拐劇には圧倒されて、読むのが止まらなかった。その分、結末はこれでよかったのか…と思わざるを得ない。

    権力者は何かを失わない限り、弱者の気持ちを理解することはできないのだろうか。
    人の命の価値に差などない。いや、本当はあるのかもしれないが、それでも無いと声を上げていかなければならないのではないか。
    そうしなければまた次の柳瀬、沖田達を産むことになる。

  • 格差社会がテーマ。強者の論理、ノブリス・オブリージュ。持てる者と持たざる者の戦い。自己責任。競争社会が生み出した社会問題を鋭く抉る。鳩尾が痛くなる展開...。本音と建前を赤裸々にした本書は、読後感が不快になること間違いない。このモヤモヤの共有が現代社会に必要なのではないだろうか。

  • 社会の底辺と言われる沖田たち4人、彼らが計画した誘拐計画とは?

    生活困窮者の自立を支援するジョブトレーナー・沖田は、仲間3人とともに、過激な発言で注目される富豪の原沢の娘・詠(えい)を誘拐する。

    しかし、その要求する身代金は、なんと『400円』...
    なぜ、そんな金額を?

    そして、一旦、誘拐が上手くいったように見えたが、更なる裏があった。なんと...
    やがて、沖田の遺志を継いだ柳瀬が、第2の誘拐計画を実行する。その内容は?

    二転三転するストーリーに、はらはらドキドキします。
    あまり、謎解きの要素は少ないですが、最後は切ないですね。
    本当に、人は変われるのだろうか?

  • 大門剛明『反撃のスイッチ』講談社文庫。

    文庫書き下ろしの社会派ミステリー。身代金400円の誘拐とはなかなか面白いと思ったのだが、結局は…

    社会的弱者に対する差別発言を繰り返し、彼らを僅か100円の時給で働かせる大手人材派遣会社社長。そんな社長への復讐のためか、4人の生活困窮者が社長の娘を誘拐する。

    大門剛明作品としては非常に物足りない結末だった。弱者は弱者のままに…結局は何も変わらず。

  • 興味深いテーマだが,何となく中途半端。闇を描くならもっと真に迫ってほしい。
    あらすじ(背表紙より)
    大手人材派遣会社社長・原沢は、弱者を社会のゴミ呼ばわりする発言が反感を買っていた。生活困窮者の自立を支援するジョブトレーナーの沖田は就労生たちを金で誘い原沢の娘を誘拐するが、釈放の条件はむしろ原沢を困惑させる。社会の底辺からの掟破りのリベンジは、果たして成功するか?

  • 時給四〇〇円の貧者たち、崖っぷちの逆襲! 大手人材派遣会社社長が繰り返す弱者差別の発言に反感を持つ四人組は社長の娘を誘拐するが、釈放の条件はとんでもないものだった。社会の底辺からのリベンジは成功するか?書下ろしノンストップ・ミステリ。

  •  食品会社工場で働く柳瀬真は、社会の崖っぷちで働く日々に嫌気がさしていた。そんな中、同じグループのジョブトレーナー・沖田から、大手人材派遣会社・レヴィナスの社長・原沢知彦の娘を誘拐する計画をもちかけられる。

     身代金がたった400円、そして中盤で被害者から買収、誘拐計画者他多数が死亡という、先が読めない誘拐劇はそれなりに楽しめた。が、そもそも謝罪のシーンをネット中継していればよかったのにとか、警察が無能すぎるとか、気になるところも少々。原島の奥さんの人物像もブレてないかなぁ。

  • 展開に引き込まれ一気読み。

    敵として描かれている権力者が弱者を下に見て、とにかく馬鹿にしている。
    腹のたつ奴だが、口は上手くここぞというときの嗅覚がすごい。
    だてに一代で会社を急成長させてないなと感じる。

    主人公はどうしようもないクズだが、誘惑に踊らされるところが人間味あって良い。
    あと、中国人女性とのやり取りがほっこりして良い。

    窮地に追い込まれ、覚悟を決めた主人公には期待してしまう。

  • 2020.8.14-318

全14件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1974年三重県生まれ。龍谷大学文学部卒。『雪冤』で第29回横溝正史ミステリ大賞、及びテレビ東京賞をW受賞。ほかの著作に、『罪火』『確信犯』『共同正犯』『獄の棘』など。

「2023年 『正義の天秤 毒樹の果実』 で使われていた紹介文から引用しています。」

大門剛明の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×