家族シアター (講談社文庫 つ 28-19)

  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062938488

作品紹介・あらすじ

近くにいるから傷つけ合う。遠くにいてもわかり合える。
大好きだけど、大っきらい--読めばきっと、あなたの「わが家」に帰りたくなる。

弟はアイドルオタク、姉はバンギャ。趣味も性格も正反対。犬猿の仲の二人は顔を合わせれば衝突ばかり。ある日、盗み見ている姉のブログに不審な投稿を発見してしまった弟。日に日に覇気がなくなっていく姉の様子が気になって仕方ない(「サイリウム」より)。

息子が小学六年の一年間「親父会」なる父親だけの集まりに参加することになった私。「夢は学校の先生」という息子が憧れる熱血漢の担任教師は積極的に行事を企画。親子共々忘れられない一年となる。しかしその八年後、担任のある秘密が明かされる(「タイムカプセルの八年」より)。

真面目な姉を鬱陶しく思う妹。
趣味で反発し合う姉と弟。
うまく息子と話せない父。
娘の考えていることが理解できない母……

あなたの家族もこの中に。家族を描く、心温まる全7編。

感想・レビュー・書評

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  • あなたは『家族』が好きですか?

    さて、直球ど真ん中の質問にあなたは誰の顔を思い浮かべたでしょうか?誰にも形こそ違えど『家族』という存在がある、もしくはあったと思います。友だちや会社の同僚の関係性が”外”だとすると『家族』というものは、”内”の関係性とも言えます。一つ屋根の下で喜怒哀楽を共にするその関係性は何よりも濃いものです。

     『家族というのは、喧嘩をしても、いつの間にかまた口を利くようになる』。

    これは摩訶不思議なことだと思います。『同じ家で暮ら』すという前提ならではのことだとも思いますが、一体不可分の関係性ならではのことなのだとも思います。

    一方で、そんな『家族』の内側で何が起こっているかは外からは知る術がありません。窺い知ることができないことだからこそ他者から見ればそこにはドラマが見えてくるとも言えます。そう、『家族』の関係性の中にはさまざまなドラマが刻まれてもいるのです。

    さてここに、7つの短編が7つの『家族』のあり様を描く物語があります。『家族』の構成員の中にお互いを意識する関係性をそれぞれに見るこの作品。そんな物語の中に『家族』というもののあり様を見るこの作品。そしてそれは、『家族』だからこそ巻き起こるさまざまなドラマを描く物語です。

    『親族の席は、会場の一番下手だった』と、『「井上家・山下家」結婚式会場』で『一つ上の姉・由紀枝の結婚式』に参列したのは主人公の亜季。披露宴会場に『自分の席を確認に』入った亜季は、『手紙らしきものが立て掛けられてい』るのに気づきます。『どうやら私だけでなく、全部の席に置かれている』と気づいた亜季は百人近い招待客全員に『姉がかけた時間を思って、ひゃあっと声が出そうにな』りました。『姉らしいと思った。本当にあの人らしい』と思う亜季は封を切った中に『二枚の便箋』を目にします。『亜季へ。中学校時代の私、山下由紀枝にとって、唯一の ー』と始まる『最初の一行を見て』、『当時、中学二年だった私がこれを読んだらどう思うだろう』、『あの頃、私の胸にひっかかっていた姉についての謎の答えが、十年以上も経ってから明かされるなんて』と衝撃を受けます。
    『姉は「真面目な子」だった』と『時としてとても露骨で残酷な運命を』与える『年子として』『小学校も中学校も地元の公立に通った』あの時代を振り返る亜季は『太ってるというほどではないけどぽっちゃりし』『とてもかっこ悪かった』という印象を与える姉を見て『神様、私は姉とは違う道を辿ります』と決意したことを思い出します。『学校の勉強や、ピアノや書道など習い事での成績を誇った姉に対し』、『女の価値は顔。かわいかったら持てる技術は評価されるかもしれないけど、ブスでは顰蹙買うだけだ』と考える亜季。やがて中学に進んだ亜季は『セブンス・クライシス』に夢中になります。ある日音楽を聴いている中に電話を受けた亜季がヘッドフォンを外すと『その趣味の悪い歌、止めてよ。音、大きすぎて洩れてる』と呟く姉。『うっさいな。黙っててよ』と返して、友人の裕香とライブの予定を話す中、『私の分のもう一枚、遠藤にあげなよ』と言われます。『遠藤もセブクラ好きなんだって。知ってた?』と話す裕香に焦る亜季は『遠藤卓人をいいと思ってる』と裕香に話したことを思い出します。
    場面は変わり、チケットを遠藤に渡した亜季は『俺、セブクラすっごい好きなんだ』と言われ一緒に帰ります。『この人と一緒に帰ってるところ、誰か見ていないだろうか。私がこんなに幸せなところ、誰かに羨ましがって欲しい』と思いながら歩いていると、『計ったかのようなタイミングで、道の反対側に』『姉と似た、眼鏡に重たい三つ編みスタイル』の女子と歩く姉を見つけます。『遠藤は、夏に三年の先輩から告白されて、それを振ってる』、『姉たちの学年でも有名なはず』と思い姉を見た亜季は、目が合いました。『どうかしたの?』と遠藤に訊かれ、『お姉ちゃん』、『あそこ』と教える亜季は、『自分が幸せの絶頂だからかもしれないけど、顔を伏せ、逃げるように遠ざかっていく姉の姿がいつもより小さく見え』ます。『見た?羨ましい?遠藤、かっこいいでしょ』と思う亜季。
    場面は変わり、遠藤と帰ることに『二回、三回と回数を重ね』て慣れてきた亜季は『ちょっと顔伏せて』、『前から来るの、広瀬先輩』と遠藤に言われ動揺します。『中学に上がる時、「あの先輩に目をつけられたらおしまいだ」と噂されてた要注意人物』である広瀬は、『遠藤くん、それ彼女?』と声をかけてきました。『そんな彼女を堂々と振ったことで、遠藤はうちの学年でも先輩たちの間でも男の株を上げた』ということを思い出し『ごくりと唾を呑む』亜季。『頭の中が真っ白』になる亜季は『どうなっちゃうんだろう。私、多分、しめられる』と思います。そんな中学時代の思い出の先に今の姉を披露宴に見る亜季。姉妹の関係性を絶妙に描く最初の短編〈「妹」という祝福〉。姉妹の性格を好対照に描きながら姉妹の関係性を見事に見せてくれる好編でした。

    “「家族」で起こる、ささやかな大事件。家族を描く心温まる全7編”と内容紹介にうたわれるこの作品。書名にもうたわれる通り家族の関係性を7つの短編の中に丁寧に描いていく短編集です。それぞれの短編間に繋がりはありませんが、辻村さんの作品の場合、作品間での繋がりが大きな意味を持つ場合があります。私は辻村さんの作品を現時点で40冊読了、あと少しでコンプリートできるところまで来ていますが、この作品については今までほぼノーマークできました。そのため、辻村さんの作品で重要視される所謂”辻村ワールドすごろく”、読む順番のことを完全に忘れていました。そして、読み始めてビックリ!この作品の読む順番を間違えたことに気づきました。ということで、これから辻村さんの作品のコンプリートを目指される方のために、2021年3月にレビューした「図書室で暮らしたい」に書いた”辻村さんの作品の読む順番”を差分更新したいと思います。講談社が公開されているX上のものよりさらに豊富に作品を含めた永久保存版です!(笑) なお、さてさて氏の辻村深月さん「図書室で暮らしたい」のレビューも是非併せてお読みください!(苦笑)

     ● 辻村深月さんの作品はこの順番で読もう!ver1.1
      注1) (必須)扱いにした7作品は確実に押さえたい
      注2)(14)・(15)は(13)以前の作品とは関連しない

      (1)「凍りのクジラ」(必須)
       ※ドラえもんの道具が各章のタイトル。伏線の妙…。
      (2)「冷たい校舎の時は止まる」(上下巻)(必須)
       ※デビュー作。無機質な学校に閉じ込められた8名に迫り来る…。
      (3)「ロードムービー」
       ※「冷たい」の彼らの過去と未来を紡ぐ短編集
      (4)「子どもたちは夜と遊ぶ」(上下巻)(必須)
       ※グロテスクな死に方を晒すためだけに登場する人物たち…。この作品はハードルが少し高い。
      (5)「本日は大安なり」
       ※「子どもたちは」の彼らが活躍するドタバタ劇
      (6)「ぼくのメジャースプーン」(必須)
       ※大切な友達のために”ぼく”にしかできないことを探し求める物語
      (7)「スロウハイツの神様」(上下巻)(必須)
       ※網のように張り巡らされた伏線の妙を堪能する物語
      (8)「V.T.R」
       ※「スロウハイツ」の作家チヨダ・コーキのデビュー作という想定の作品
      (9)「名前探しの放課後」(上下巻)(必須)
       ※(7)以前の作品の彼、彼女が勢揃い
      (10)「光待つ場所へ」(必須)
       ※(7)以前の作品の彼、彼女のその後
      (11)「島はぼくらと」
       ※「スロウハイツ」のあの人が美味しいところを全部取り
      (12)「ハケンアニメ」
       ※「スロウハイツ」のあの人が大胆に登場(感涙)
      (13)「レジェンドアニメ」
       ※「ハケンアニメ」のスピンオフ。再びあの人の名前が!
      (14)「家族シアター」
       ※7つの短編のうち〈1992年の秋空〉は必読
      (15)「この夏の星を見る」
       ※「家族シアター」を先に読むことで物語の奥行きが別物に!

    はい、デビュー作「冷たい校舎の時は止まる」から最新作「この夏の星を見る」までの作品の中で読む順番が鍵となる15作品の読む順番をまとめてみました。もちろん、それぞれの作品はそれぞれで完結しているために順番が違ったとしてもその作品を読む限りにおいては何の問題もありません。しかし、例えば「ぼくのメジャースプーン」を読んでいなければ「名前探しの放課後」は強引すぎる展開に違和感…という印象を持つでしょうが、順番を守って読んできた読者はそこには感涙しかありません。また、「スロウハイツの神様」を読んでいなければ”(11)”以降の作品に登場する、ある人物の名前は読み飛ばされるだけのものですが、順番を守った読者にはそこに熱いものが込み上げることは間違いありません。そうです。辻村さんの作品は作品間でゆるく繋がりを持つことで、それぞれの作品の奥行きを大きく、とてつもなく大きく広げていく、そういった作りになっているのです。辻村さんの作品のファンが多い理由はそこにあると思いますし、だからこそ一度ハマると繋がりを求めてコンプリートしたくもなってくるのです。辻村さん恐ろしや!ですね。ということで、この作品「家族シアター」も他の作品に見事に繋がる内容を持つ一作なのです。「この夏の星を見る」を読みたい!と思われている方に、ちょっと待った!まずはこの作品を読みましょう!そうお伝えしたいと思います。

    さて、そんな読む順番にも影響してくる重要な短編を含んだこの作品ですが、個人的には後半の4編に強く魅かれました。正直なところ前半3編では気乗りしない読書でスタートしていたのが後半に入って別物に集中して読み終えた、そんな印象が残りました。では、そんな7つの短編の中から3つの短編をご紹介しましょう。

     ・〈タイムカプセルの八年〉: 『いってきます』、『気をつけていくのよ』という息子と妻の声を聞いて『今日、あいつ初出勤だったのか』と戻ってきた妻に声をかけるのは主人公で大学教員の孝臣(たかおみ)。『幸臣の赴任する学校、比留間先生がいるんですって』と話す妻は『あの子の、六年生の時の担任の』と補足します。『あの先生に憧れて教師になるって言ってた』と今回の縁のことを話す妻に『二十歳になった僕は、先生になっていますか?』という『小学校卒業時のタイムカプセル』に入っていた『十二歳の自分が書いた文章』を読んで『先生なんてまだなってないって』と苦笑していた息子を思い出します。そんな孝臣は『親父会』へと出かけます。息子が小学校六年生の時から続くというその集まり…。

     ・〈1992年の秋空〉: 『はるかは、「学習」。うみかは、「科学」』とそれぞれを発売日に手にするのは主人公のはるかと『年子の妹で小学五年生』のうみか。『恋愛が中心の、絵がきれいな漫画が載る』『学習』を手にするはるかは『「科学」の方がいい』と、『「ホーキング、宇宙を語る」とか「マンガで読む相対性理論」とかいう本を、何時間でも読んでる』妹が理解できないでいます。『低学年の頃からちょっと変わってた』といううみかのことを思うはるかは一方で『似てる名前だけど、一つだけで見た時に、はるかは普通の名前で、うみかの方が個性的でかわいい感じが』して羨ましくも思います。そんなある時『お願いがあるんだけど』、『来月から「6年の科学」を買ってくれない?』と言われたはるかは…。

     ・〈孫と誕生会〉: 『日本に戻ることになったから、一緒に住まないか?』と長男から連絡を受けたのは妻を亡くして一人暮らしで七十近くになった木原。『お世話になります』と嫁の美貴子に挨拶され始まった同居生活の中で、幼稚園に通う孫の実音(みおん)がガリガリなのを気にする木原は『お菓子みたいな粒に牛乳をかけて食べ』る実音に『それは何だ』と訊くと『コーンフレーク。知らないの?』と仏頂面に言われます。『「ご飯、あんまり好きじゃないんだもん」と言うのを聞いて、耳を疑』う木原。『英語、話せるのか』と訊くと『話せるよ』と答えるも、『話してみろ』と言うと『嫌だ。見世物じゃないし』と言われる木原。かつて懐かれていたのが『今はまるで別人のようだ』と木原は困惑を深めていきます…。

    3つの短編は、それぞれ主人公の妹が姉を意識する物語、主人公の姉が妹を意識する物語、そして祖父が孫娘を意識する物語とシチュエーションは微妙に異なりますが、それらは『家族』という枠組みに入れられるものです。他の四編も姉と弟、母と娘、そして父と息子というようにそれぞれの短編は『家族』の一員である主人公が同じ『家族』の他のメンバーを意識する物語が描かれていきます。このレビューを読んでくださっているみなさんにも『家族』と言える誰かしらの存在がいると思います。”外からはうかがいしれない”と言われる通り、そんな『家族』の内情は『家族』の面々しかわからないものです。この作品には「家族シアター」という書名がつけられていますが、一方でこの作品で描かれる『家族』の物語はたまたまこの作品で取り上げられる関係性を見るものであって、特別というものでは決してありません。あなたの『家族』にも、私の『家族』にも、さまざまな『物語』があるはずです。仲むずまじいようでいて、派手に喧嘩もする『家族』の面々。そこには、まさしく人生の喜怒哀楽を共にする深い繋がりの先に存在する『家族』の姿があります。そんな『家族』の繋がりを鋭い視点で、柔らかい筆致のもとに感情を込めて描いていく辻村さん。そこには、辻村さんだからこそ出せる『家族』の意味を再認識させられる、『家族』がとても愛おしくなる物語が描かれていました。

     『家族というのは、喧嘩をしても、いつの間にかまた口を利くようになる』。

    7つの短編に7つの『家族』の物語が描かれていくこの作品。そこには、『家族』愛に満ち溢れた優しい物語の姿がありました。”辻村ワールドすごろく”の重要なピースでもあるこの作品。短編とは思えない、物語の奥深さに驚くこの作品。

    辻村さんの作品の中でも地味な扱いを受けていることがあまりにもったいないと感じる、もっと読まれるべき素晴らしい作品だと思いました。

  • わかる。わかるぞーとしみじみ自分の家族を振り返る。
    兄とは仲は良くなかったけど、今でこそ大人になると近づいて大事さに気づくし後悔もする。

    最後の短編、ドラえもんだ〜〜〜!
    辻村作品を好きになったきっかけが「凍りのくじら」。
    そこでも出てきたので本当に藤子先生お好きなんだなーってうれしくなった◎
    ひみつ道具、のび太とおばあちゃん、グッとくるよね、、、。

  • 真面目を絵に描いたような姉と、それを反面教師のようにかわいくなろうと努めてきた妹(「妹」という祝福)
    特待生で高校に進学した娘の思わぬ失敗に気づき、それを受け入れる母(私のディアマンテ)
    辻村さんの表現力は本当に凄いです。
    文章が立体的で平べったくない。
    紙の上の出来事ではなく、物語が生きてる感じがする。
    そうか、だって「家族シアター」だもの。
    (タイムカプセルの八年)のお父さんも、(孫と誕生会)のおじいちゃんも、すごくよかった。
    家族にまつわる7つの心温まる物語。
    この本を読み終えたら、今よりももっともっと家族のことが好きになってると思う。
    最後の(タマシイム・マシンの永遠)は、ドラえもん愛に満ちたお話でした。
    辻村さんの長編をまだ読んだことがないので、いつか挑戦してみたいと思います。

    • アールグレイさん
      こんにちは!
      m.cafeさん!こんな本があったんですよね。何年前に読んだのか、記録してあるかなぁ・・・
      もうどんな話だったのか忘れてしまい...
      こんにちは!
      m.cafeさん!こんな本があったんですよね。何年前に読んだのか、記録してあるかなぁ・・・
      もうどんな話だったのか忘れてしまいました。(>_<)
      再読したいと思い、一応本棚にはあるのです。
      私は今、「Day to Day」を読んでいます。これがブ厚い!図書館本なのですが、他に1冊借りていたので、間に合わないかも、返却期限。超超短編集です!
      読みたい本だらけです!
      o(^-^)o
      2021/05/11
    • アールグレイさん
      それから、「かがみの孤城」「島はぼくらと」この2冊がお薦めの長編かと・・・・
      それから、「かがみの孤城」「島はぼくらと」この2冊がお薦めの長編かと・・・・
      2021/05/11
    • m.cafeさん
      ゆうママさん。
      お薦め本、ありがとうございます。
      参考にさせていただきますね。
      私も積読が増える一方で、困ってます笑笑。
      分厚い本、頑張って...
      ゆうママさん。
      お薦め本、ありがとうございます。
      参考にさせていただきますね。
      私も積読が増える一方で、困ってます笑笑。
      分厚い本、頑張ってくださいね。٩( ᐛ )و
      2021/05/11
  • 辻村さんの「スローハイツの神様」の本の帯に「この順番で読めば、より楽しめる!(辻村ワールドすごろく)」と書いてあるのが気になって手に取った二作目の作品です。

    「家族」というキーワードでまとめられた7篇の短編集。今まで「家族」とは?という観点でその関係性を考えたことはありませんでしたが、基本的には、
    ・自分で決められない(夫婦は自分たちで決めますが)
    ・生まれてから死ぬまで関係が続く
    ・好き嫌いを問わず逃れられない
    ・人生を豊かにできるか、幸せと感じられるかを決定付ける基本
    ・相互に様々な影響を与え合う、、、、
    他にも人によって考え方は色々とおあるでしょう。

    あらためて「家族」って?と考えながら読むとなるほどね、気付かされることが多々あった作品でした。

    私は特に、
    ・「妹」という祝福
    ・タイムカプセルの八年
    ・1992年の秋空
    これらの作品が面白かった。というか、しんみりとしてしまいました。やはり辻村さんの心の襞の細やかな描き方は素晴らしい。

    ただ、この作品のどの部分が「スローハイツの神様」と関係しているのか?良くわかりませんでした。残念。

  • 何気なく手に取ってそのまま読んでしまいました。あっ、言っちゃった。からのリカバリが効くのが家族ですよね。

  • 姉と妹
    姉と弟
    父と子
    母と子
    紙でなく血でつながる家族

    そんな家族に対しては
    甘えが出るのかな
    言わなきゃいいのにって思ってても
    つい言ってしまうことってある
    それでも
    感じるズレを許したり怒ったり
    認めたり呆れたりするのが
    家族なのかも知れない

    なんて
    ちょっと家族について考えた作品でした

    短編集です
    文庫解説は武田砂鉄さん
    この解説もまた
    なるほどねーと思わせてくれます

  • 『ツナグ』、『ハケンアニメ!』に続く、3冊目の辻村作品。誰でも経験したことがある、家族あるあるや姉弟(姉妹)あるあるを絡めて、家族の素晴らしさを描いた全7編の家族小説❗

    面倒くさいことやムカッとすること、少し理解出来ないこともあるけれども、やっぱり家族っていいなぁと思える作品です♫

    好きな話しは、『私のディアマンテ』と『1992年の秋空』、『孫と誕生会』の三編です❗温かく優しい気持ちになれるとても素敵な作品です♫

  • 全7編からなる短編集。
    家族の微妙な葛藤や和解が描かれた家族小説。
    複雑な家族関係や日常の出来事から、家族のあり方や絆が丁寧に描かれていた。
    特に好きなのが「タイムカプセルの八年」。
    息子の本音や、親父会という集まりが、意外なほどの理解と絆を生むストーリーが魅力的だった。
    家族の絆や大切さを改めて感じさせられた。
    思わず涙を誘う心温まる作品。

  • 「私のディアマンテ」
    よかったー!
    なんてもどかしい母親なんだ、と読みながらそわそわしていたが、妊娠に気づいてからの対応、確かにこの人らしくていいなぁと思った。

    私も大学生の頃とか、卒業して数年は、
    妊娠とかデキ婚とかを
    失敗だ、自分の立場では絶対に許されることではない、人生終わっちゃう、って思ってた。
    まー結局デキ婚して離婚してるんだけどねー笑

    でもとにかく子どもというのは可愛くて可愛くて、
    イライラすることもしょっちゅうだけど、
    本当に宝物。
    妊娠中から幸せだったけど、
    子どもと一緒にいると、
    本当に毎日が幸せ。
    こんなにも幸せで良いのかと思ってしまうほど、
    子どもは可愛い。
    「絢子」も鈍感ながら「えみり」のことは可愛くて仕方なかったんだろうなぁと読んでてしみじみした。

    そして「えみり」くらい賢かったら、
    きっと子育てしながらも資格とったりして
    立派に仕事できるくらいになるんだろうなぁ。
    でもそのためには母親というかおばあちゃんの協力が絶対に必要なんだよね。
    そうやって家族はつながっていくんだ。


    「タイムカプセルの八年」
    これもいい。
    「比留間先生」があんな人だとは意外だったし、「私」が家族優先でなさすぎるから、もっといい父親であってくれと思いながら読んでいたのに、
    ラストでは、こんな父親いいなぁーって思ってしまう、話の作り方。
    さすが辻村さんです。
    熱かった。

    「1992年の秋空」
    これもよかったなー。
    私も「学習」買ってもらってて、
    でも「科学」の方が付録が豪華だからいいなー両方買ってもらえる子いいなーって思ってた。
    「科学」だけでいい、とはきっと思えず親に訴える力もなかった私は、「うみか」寄りなんだろう。
    でも6年生で「りぼん」「なかよし」は幼いな。6年生で「学習」のまんがを楽しみに行列並ぶってのもちょっと幼いけど、1992年ならそうなの?もう「フレンド」も「マーガレット」もあったと思うけど。
    私は5年生くらいから「別マ」「別フレ」に移行していってたもんなぁ。ちょっと刺激的な「デザート」「チーズ」とかも読んでた気がする。うーんこれは中学生かな?

    姉妹の絆が感じられたのと、「うみか」が貝殻から聞こえる音について語る部分、良かった。
    「なんで、海の音がするんだろう。貝が記憶して一緒に持ってくるのかな。」だって。
    「ONE PIECE」のトーンダイアルを思い浮かべた。あれはなんで貝殻なんだろうって別に疑問も抱かなかったけど、こういうことだったのかな。
    明日、104巻の発売日だから、繋げて感じてしまった。

    「宇宙兄弟」も思い浮かべながら、今回は漫画のことが自分の感想にも多いなーと思いながら巻末を見ていたら、この話は「We are 宇宙兄弟」に掲載だったとののと。わーお。

    「孫と誕生会」
    これもよかったなあ。
    距離の遠かった孫と近づく物語。
    「おじいちゃんは、あの子達が嫌いだ。」
    ここで泣いた。
    身内というのが、家族というのが、
    結局のところは一番だ。
    理由もなく、そうなんだ。
    それをとにかくよく感じる一冊であった。

    「タマシイム・マシンの永遠」
    これもめちゃくちゃいい。
    泣ける。
    「俺は今、伸太を通じて、自分が生まれたその頃の様子を、数十年の時を経て、我が子に見せてもらっているのだ。
     俺は大事にされ、愛され、いろんな人に成長を見たいと、それか叶わないなら覚えていてほしいと、祈られ、祝福されながら、この家の中心にいた。」
    タマシイム・マシンは、実現してるね。
    すごいね。

    私はそこまでドラえもんのこと好きではなく、映画で泣いたとかいう人の話を馬鹿らしく思っていたが、辻村さんを好きになって、ドラえもんをきちんと読みたいと思うようになった。

  • どの話も良かった。
    最初は好きになれない、もはやイライラするとまで思っていた登場人物を好きになる瞬間、これはやられた、と思う。そんな文章を書くなんて悔しいじゃないか、と。
    それは家族に対する気持ちとどこか似ている。
    嫌いだ、と思っていた次の瞬間にはもうまったく思っていなかったり感じ方が変わっているように、心をくるくると遊ばれる感覚があった。
    タマシイムマシンは、自分がいま1歳半の子供がいるからこそいちばん感情移入をしていちばん良いと思ったのかも知れない。でも、いまこの時この作品に出会えて本当に良かったと心から思える。辻村深月、最高じゃないか!

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著者プロフィール

1980年山梨県生まれ。2004年『冷たい校舎の時は止まる』で第31回メフィスト賞を受賞しデビュー。11年『ツナグ』で第32回吉川英治文学新人賞、12年『鍵のない夢を見る』で第147回直木三十五賞、18年『かがみの孤城』で第15回本屋大賞を受賞。『ふちなしのかがみ』『きのうの影ふみ』『ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。』『本日は大安なり』『オーダーメイド殺人クラブ』『噛みあわない会話と、ある過去について』『傲慢と善良』『琥珀の夏』『闇祓』『レジェンドアニメ!』など著書多数。

「2023年 『この夏の星を見る』 で使われていた紹介文から引用しています。」

辻村深月の作品

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