涙香迷宮 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (464ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062938723

作品紹介・あらすじ

明治の傑物・黒岩涙香が残した最高難度の暗号に挑むのは、IQ208の天才囲碁棋士・牧場智久! これぞ暗号ミステリの最高峰!
いろは四十八文字を一度ずつ、すべて使って作るという、日本語の技巧と遊戯性をとことん極めた「いろは歌」四十八首が挑戦状。
そこに仕掛けられた空前絶後の大暗号を解読するとき、天才しかなし得ない「日本語」の奇蹟が現れる。
日本語の豊かさと深さをあらためて知る「言葉のミステリー」です。

感想・レビュー・書評

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  • ★5 暗号ミステリーの名作! 明治の鬼才作家、黒岩涙香が残した「いろは歌」の暗号を解け #涙香迷宮

    ■あらすじ
    囲碁の世界では有名な老舗旅館で殺人事件が発生した。主人公であるトップ囲碁棋士の智久は、刑事とともに事件解決を図っていく。
    一方、明治時代の作家、翻訳家である黒岩涙香の山荘が発見される。そこには「いろは歌」に関する暗号が隠されたいた。主人公、暗号解読の猛者、研究者たちが難解な暗号に挑戦するのであった。

    ■きっと読みたくなるレビュー
    こいつはすげぇ… 暗号ミステリーの名作ですね。
    バケモノ感が満載、しかも楽しく読めて勉強になる、素晴らしい作品です。

    まず本書の特徴としては、文学、ミステリー、いろは歌、囲碁や連珠など、様々なウンチクが盛りだくさんなんです。古いアナログゲームや文学の研究書を読んでるみたいなの。

    暗号ミステリーは『黄金虫』や『踊る人形』あたりは有名で読んでますが、他の作品についてもいろいろ紹介がされていて、興味深く読ませていただきました。

    また『五目並べ』は知ってはいますが、『連珠』なんて名称は知りませんよ。しかもこんな深いルールや歴史があったなんて勉強になるなぁ。そして昔の人はスゴイ。

    最近話題にもなっているは『ウミガメのスープ』も登場します。今はデジタルゲームが主流ですが、アナログな遊びやゲームも、残り続けてほしいですね。

    そして本書のメイン「いろは歌」ですよ。
    マジかよ、おいっ!て内容で、もう驚愕でしかありません。天才なのか変態なのか、あまりのすばらしさにド肝を抜きます。しかも終盤に出てくる奴なんてね… もうなんも言えねぇっす

    なお、物語としてもミステリーファンが納得する内容になっていますね。
    少しずつ不穏な空気になり、ついにはクローズドサークルに…
    特にお気に入りは、犯人の動機ですね。この作品だからこその動機で、すっかり感服しました。

    ■きっと共感できる書評
    現代はAIの時代で、これからもどんどん発展していくでしょう。
    チェスや将棋などの戦略ゲームの解析はもちろん、言語生成、画像や映像生成まですべて機械処理で可能です。

    それは素晴らしく便利で画期的ではあるのですが、どんなに情報整理が巧みになっても得られないものがある。人生を豊かに生きるには、個々人の経験や体験に勝るものはありません。

    いろは歌でも、囲碁でも、将棋でも、なんでも夢中になれることはホントに幸せですね。さて、今日も本を読もう。

  • パングラムとは「いろはにほへと」のようにある言語の文字をすべて使って文章を作る言葉遊びのことだそうです。例)色は匂へど散りぬるを…など

    本書はその「いろは」だけで四十八首も作成した黒岩涙香さんのパングラムが、それ自体暗号だったのでは?というミステリーでした。

    作者の博覧強記ぶりも去ることながら、やはり涙香さんの多才ぶりがすさまじいです。
    涙香さんといえば江戸川乱歩『幽霊塔』の原案者?くらいの知識しかありませんでしたが、とんでもないお方でした。
    日本ミステリーの祖なのはいうまでもなく、新聞社を経営して将棋欄や相撲欄を初めて作ったり、レ・ミゼラブルを『ああ無情』と訳したり、現在まで続くかるた大会を主催したり、囲碁やビリヤードは玄人はだしだったり、その万能ぶりは遊芸のレオナルド・ダ・ヴィンチと称されるほど、だそうです。
    なかなか渋いいろは歌。

    ふうりんのねよ さやけくも
    ときつあいろを わたらひぬ
    ゆめちるまへに こゑせしか
    むゐそおほえて すみれはな
    風鈴の音よ 清けくも
    時つ隘路を 渡らひぬ
    夢散る前に 聲せしか
    無為ぞ覚えで 菫花

    次は涙香さんに関する本を読んでいきたいと思います。

  • トリックが練りに練り上げられているなあという印象でした。私的にはトリックが凝りすぎていて追いつくのに精一杯だったので、途中で理解するのをやめちゃいました。トリック好きの人は楽しめると思います。

  • イヤーー前置、伏線が長い作品かなぁって感じです、ミステリーなのだけど、それに至るまでがとにかく長くですね、ようやくミステリーっぽくなったのが残り100ページでしたーー
    でも天才ってかっこいい^ ^

  • 牧場智久シリーズ。前半、読むのがしんどいからって、途中で辞めたら後悔しますよってタイプの本。黒岩涙香、囲碁や連珠についてのアレコレで埋め尽くされた前半を読むのは辛かった…。ようやく事件が動き始めた後半からは、涙香の隠れ家、台風の中のクローズドサークル、いろは歌に込められた暗号と、面白さ目白押し。犯人の動機もやや弱いが、連珠が好きな人ならもっと楽しめたのかな。とにかく、暗号を仕掛けた、作者作の大量のいろは歌は圧巻!しかし…最後の推理ゲームの答え、全然分からないんですけど…

  • 完全に主役は「いろは歌」。その狂気じみた圧倒的ボリュームに呆然。
    黒岩涙香については山田風太郎作品で触れた程度の知識しか持ち合わせていなかったので、その多芸ぶりと破天荒な経歴に驚いた。
    冒頭の殺人事件と涙香といろは歌。とても自然な流れなのに、おそらく配分の問題だろうか、奇妙なアンバランスさを感じてしまったことは否めない。
    そこに面白さを感じられるかどうかで好みがわかれそう。
    水平思考クイズの答えが気になる…。

  • 暗号ミステリってちょっと腰が引けちゃうというか、あまり考えずに読んで「へー」ってなりがちなタイプなんだけど、これは凄かった。いろは歌は日本人には馴染みのもので、読んでいて「なるほど」と思うことも多くどんどん没頭した。
    それにしてもこの怒涛のいろはには圧倒された。どんな頭脳の持ち主なんだろう!だいたい旧仮名遣いやら古語やら、こんなに自在に操れるなんて凄すぎる。
    小1のこどもに普通にオセロで負けてしまう私にはとても考えつけそうにないけど、チャレンジしてみようかな(笑)

    黒岩涙香については、たぶん高校時代に日本史で軽く教わり、萬朝報を創刊した巌窟王や噫無情の翻訳者であるということくらいは知っていたけれど、こちらも読んでいて圧倒された。すごい人だ。だいたい最初の新聞社で24歳で主筆、30歳で萬朝報創刊。こういう若くして活躍する人がいたのが明治の時代なのかな…と思ったりもした。

    牧場智久を探偵役とする小説はシリーズものなんだね。
    類子ちゃんと智久くんの可愛いカップルのシリーズなのかな。囲碁も将棋もさっぱりだけど、他のものも読んでみたい。

  • この著者の涙香愛は半端ないですが、いままで連珠と競技かるたのルールを決めた人、ぐらいにしか思ってなかったので、涙香こんなに凄すぎる人とは知らなかった。なんで日本人の評価あまり高くないんですかね。
    その昔、ファミコンの五目並べで花月とか型の名前が出てきて、周りの人に聞いてもわからなかったけど、本屋で調べたら、それが五目並べではなく実は連珠のルールだったと知ったことを思い出した。
    当時は連珠ってそれなりに一般的なのかと思ったけど、未だに他の人と話が合わないので、マニアックな部類の話だと思いますが、これがよくこのミステリーがすごいで国内編1位になったなと。
    いろは歌の暗号はもうマニアックというか変態の域に入っているし、古文の知識も必要なので、どう考えても一般受けしない部類の話だと思うし、ミステリー小説として見るとどうなのだろうか?ちょっと物足りないという評価になってしまうだろう。
    高校生同士の会話が、今どき不自然に古臭いのは、この著者だから仕方ないのか。高校生という設定はやめたほうが良かったと思う。

  • 本格ミステリ大賞! このミス第1位! 

    空前絶後の謎解き IQ208の天才囲碁棋士・牧場智久は怪死事件を追いかけるうちに明治の傑物・黒岩涙香が愛し、廃墟となった山荘に辿りつく。そこに残された最高難度の暗号=いろは歌48首は、天才から天才への挑戦状だった!

  • 2022.5.7読了。

    恥ずかしながら黒岩涙香という人を存じ上げず、タイトルの文字面の美しさと作者が竹本健治だということ(信頼感)で購入した一冊。

    とにかく蘊蓄がすごい。
    黒岩涙香の名前すら知らなかったのに、読了後は偉人伝を読んだかの如く彼の人の功績や趣味幅の広さを知ることに。
    同時にこの本を書く種になったと思われる、大量の作者創作いろは歌に引くほど驚いた。

    ジャンルはミステリなのだけど、涙香の仕掛けた謎の部分&殺人事件よりも涙香についての蘊蓄の方がボリュームが上。

    読み物としては知識も増えたし頭も使ったけれど、ミステリとしては捻りもどんでん返しも無くシンプル。
    もちろんドキドキもワクワクも無し。
    へぇ〜なるほど〜な一冊だった。

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著者プロフィール

竹本健治:
一九五四年兵庫県生れ。佐賀県在住。中井英夫の推薦を受け、大学在学中に『匣の中の失楽』を探偵小説専門誌「幻影城」上で連載。デビュー作となった同書は三大奇書になぞらえ「第四の奇書」と呼ばれた。
ミステリ・SF・ホラーと作風は幅広く、代表作には『囲碁殺人事件』『将棋殺人事件』『トランプ殺人事件』の「ゲーム三部作」をはじめとする天才囲碁棋士・牧場智久を探偵役としたシリーズや、自身を含む実在の作家たちが登場するメタ小説「ウロボロス」シリーズなどがある。近著に大作『闇に用いる力学』。

「2022年 『竹本健治・選 変格ミステリ傑作選【戦後篇Ⅰ】』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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