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本 ・本 (544ページ) / ISBN・EAN: 9784062938761
作品紹介・あらすじ
大手銀行の出世コースから子会社に出向、転籍させられそのまま定年を迎えた田代壮介。仕事一筋だった彼は途方に暮れた。生き甲斐を求め、居場所を探して、惑い、あがき続ける男に再生の時は訪れるのか?シニア世代の今日的問題であり、現役世代にとっても将来避けられない普遍的テーマを描いた、大反響ベストセラー「定年」小説。
「定年って生前葬だな。これからどうする?」
大手銀行の出世コースから子会社に出向、転籍させられ、そのまま定年を迎えた主人公・田代壮介。仕事一筋だった彼は途方に暮れる。年下でまだ仕事をしている妻は旅行などにも乗り気ではない。図書館通いやジムで体を鍛えることは、いかにも年寄りじみていて抵抗がある。どんな仕事でもいいから働きたいと職探しをしてみると、高学歴や立派な職歴がかえって邪魔をしてうまくいかない。妻や娘は「恋でもしたら」などとけしかけるが、気になる女性がいたところで、思い通りになるものでもない。
惑い、あがき続ける田代に再生の時は訪れるのか? ある人物との出会いが、彼の運命の歯車を回す──。
シニア世代の今日的問題であり、現役世代にとっても将来避けられない普遍的テーマを描いた、大反響ベストセラー「定年」小説。
感想・レビュー・書評
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定年退職後の生活について今まであまり考えたことがなかったが、心も体も健康な状態で仕事しない毎日って相当暇だろうな。
人付き合いもあまり好きではないし、自分はどんな老後を過ごすんだろう。
プライドが高すぎて「終わった人」になりきれない田代。厄介だなー。
千草も大変だぁ。
だけど後半の千草の言動はよくない。
許せないからと何ヶ月もツンケンしていてはお互いにやりづらい。
家庭内のギスギスした空気がめちゃくちゃリアルだった。
ラストはようやく前に進んだが、「卒婚」ってなんだかな。中途半端な感じ。
スッキリしないなと思ってしまった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
1.著者の内館牧子さんは、三菱重工で、約13年間社内報の編集を担当していました。妥協を嫌い、自分流を通しながらも、上司からも同僚からも可愛がられ慕われていたそうです。氏は、脚本家としてデビュー。テレビドラマの脚本で、橋田壽賀子賞を始め、アジアテレビジョンアワード賞等、数々の賞を受賞しています。小説家・エッセイストとしても活躍しています。相撲好きで、横綱審議委員を努め、大相撲研究の為に、東北大大学院入学し、修了しました。無類の相撲好きの成せる業かつ学びの達人なのでしょう。
2.本書は、「定年って生前葬だな」から始まります。主人公は、東大法学部を卒業し、メガバンクに入社。出世街道を走っていました。しかし、子会社に突然出向となり、定年を迎えます。定年後、小さな会社の社長になりましたが、倒産し、老後資金をほとんど失います。このように、出世競争に敗北したエリート人間の晩年を書いた小説です。
3.先ず、私の琴線に触れた箇所を、感想を添えて3点書きます。
(1)「本部は俺を必要としていなかった。人材なら幾らでもいる・・・ 俺は終わった。熱く面白く仕事をしてきた者ほど、この脱力感と虚無感は深い」
●感想⇒主人公は、東大卒で、エリートコースを歩んできました。肩書がなくなると相手にされなくなるのは、勤め人の性なのです。定年後は24時間すべて自分のものになります。主人公には、好きなことが出来るという心の柔軟性が欠如していたのではないでしょうか。これもエリート特有のプライド意識がなせる業と思います。仕事第一主義の人に良くあるケースです。私は、仕事も重要だが、まず家族があつて、次に仕事と思っています。衣食住を共にし、喜怒哀楽を共にする家族がいてこそ、仕事に打ち込めるのです。
(2)「企業というところは、人をさんざん頑張らせ、さんざん持ち上げ、年を取ると地に叩きつける。そうした末に”終わった人”が、どうやって誇りを 持てばよいのだ」
●感想⇒会社人間にありがちなパターンです。私も会社勤めの経験があります。勤務した会社は、この物語と違い、温かい日本的企業でした。OBからもここに書かれているような話を聞いたことがありません。このような会社は、早晩、社会から見放されるでしょう。一方で、個人も人生を会社任せにせずに、独立心を持って生きなければなりません。
(3)「嫌な人とはメシを食わず、気が向かない場所には行かず、好かれようと思わず、何を言われようと、どんなことに見舞われようと”どこ吹く風”で 好きなように生きればいい」
●感想⇒こうした考えでは、よき人生を全う出来ません。人間が生きていく 上で、他人からの支援は必要不可欠です。人に対する感謝の気持ちは社会生活の潤滑油です。思うだけなら許せますが、こういう考えで生活してはいけないと、切に思います。
4.まとめ;
本書は東大卒のエリートという特異な設定でストーリーを組み立てています。世の中には、種々雑多な人々が暮らしています。従って、この小説のようなパターンはごく少数のエリートが陥るジレンマと思います。確かにビジネスストレスは半端なものでないという事は理解できます。また、定年と言っても、若い人にはピンとこないでしょう。これからは定年年齢も60歳から70歳位まで引き上げられると思います。定年後生活の心配は、50歳以降に考えれば十分です。若い人でも興味があれば読むとよいです。人は、主義主張や生活環境に違いがあります。自分流に生きればよいのです。ちなみに、私は、渡部昇一氏(故人)の「知的生活の方法」の中の記述、「いっさいの義務から解放された状態で、次から次へと新刊を取り寄せて朝から読んでいられる定年後の人生が、今では待ち遠しいような気がする」に憧れています。 -
胸を膨らませて、輝く田代壮介
出世競争で同期入社の者に負けてメガバンクから従業員30人の子会社に飛ばされて63才で定年を迎えた田代壮介は、再び輝きを取り戻すために仕事に恋にと直走る物語です。
退職後、仕事もせず、愚痴を言い、美容師として働いている妻千草に文句を言われて。やっと自分には仕事が一番だと気が付き、仕事を探し出した。東大法学部での学歴が、メガバンクで役員一歩手前まで行った職歴が邪魔するのか自分の思った仕事に就けない。
今まで誇りにし、俺自身を育ててくれたものがマイナスになるのはおかしい。学歴や職歴は俺を作っている。俺らしさはそこに有る。誇りは捨ててはならない。「終わった人」でも、誇りを持てる場はきっとある。そんな時に千草は、独立して美容院をオープンさせた。
田代も張り切り、東大の大学院に行くという目標を立てる。そのためにカルチャースクールへ行って東大受験の論文を書く。この考えに妻の千草は、あなたらしいと喜んでくれる。カルチャースクールで講師の浜田久里39才と知りあう。女と恋をするのはいいものだ。
退職して9ヶ月。田代は、ジムで知りあったオーナー社長の鈴木からゴールドツリーの顧問として入社してほしいと。快諾して、仕事を楽しんで3ヶ月あっけなく鈴木が亡くなった。皆に推されて田代が社長となった。
しばらくして大きな取引先の倒産で三億円の負債を背負い、そのうち社長として九千万円を負担してゴールドツリーを清算させたが。田代は、長年築いてきた財産は千五百万円になり、千草の今後の生活設計も大きく狂ってきた。もう贅沢は出来ない。
田代は、それからは「主夫」として千草を助けて家事にいそしみ贖罪の日々であった。そんな中で銀行時代に身に付けた経理や経営計画の作成が、故郷の盛岡の同級生を助けたことから、生きがいが生まれる。そこで千草と離婚するのでなく「卒婚」して胸を膨らませて盛岡へ向かう。
【読後】
退職後にソフトランディングできなかった主人公が、あがきに足掻いて最後には、単身、夢を抱いて故郷盛岡に帰ります。著者は、再生の物語と言っていますが。私は、何か、ジーンと寂しさを感じます。テンポが速く、音読していて次のページを捲るのが楽しくてなりませんでした。田代と千草が離婚でなく「卒婚」します。卒婚は、初めて聞きました。
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【音読】
2022年9月13日から23日まで、音読で内館牧子さんの「終わった人」を大活字本で読みました。この大活字本の底本は、2018年3月に講談社文庫から発行された「終わった人」です。本の登録は、講談社文庫で行います。埼玉福祉会発行の大活字本は、上下巻の2冊からなっています。
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終わった人
2021.05埼玉福祉会発行。字の大きさは…大活字。
2022.09.13~23音読で読了。★★★★☆
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東大出て、大手銀行に勤めて、63歳で定年を迎えて、仕事したくてもがく男性の物語。途方に暮れて、でもプライド高くて、ややこしい。生々しくて、人間の本性はみんなこうなんだろうと笑ってしまうぐらい面白かったです。
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分厚い本でしたが、文字が大きかったためすぐに読み終えました。
「定年って生前葬だな。これからどうする?」というキャッチーなフレーズが帯に書かれていて興味を持ちました。
主人公の田代壮介は東大法科卒、メガバンクを定年まで勤め上げたエリート。退職後もプライドが邪魔して老後を素直に楽しめず、他の学業や恋で何かを成し遂げねばと必死。
プライドは高いくせに優柔不断で行動に軸がない、あまり好感は持てないタイプの主人公。
浜田久里という女性にも執着しすぎでは?熱海で久里とワンチャン狙っていたことには驚きでした。
良くも悪くも映像的で、文面だけでは田代や他の登場人物の心情が読みづらいなぁ、と感じます。
映画ならもう少し面白いかもしれません。
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内館牧子さん2冊目。一線を退いた年代が主人公という点では前に読んだ作品と共通していたが、本作の主人公は東大法学部卒の元エリート銀行員、役員の一歩手前まで行った男性で、仕事色が強かった。リタイア世代の人たちは大変な仕事から解放され、自由な時間を好きなことをし悠々自適に過ごしているイメージがあった。だが、そうした年代を取り扱っている複数の小説を読み、仕事から退いた人たち、またはその家族も何もばら色の時間を過ごしているわけではないことをつくづく思い知った。結局、どの年代・境遇の人たちにもそれぞれの悩みがあり、隣の芝は青く見えているということなのかもしれない。本書のあとがきでは現役時代にどんな経歴を歩もうがリタイア後の着地点は似たようなもの、と書かれていた。やはり「今」を大切に過ごしていくことが何よりも大事な気がした。本作の主人公は岩手県盛岡の出身で東北、特に岩手の好きな私はそれも楽しめた。全体的に満足のいく面白さだった。
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勝手に垣谷美雨さんの「定年オヤジ改造計画」を想像して手にした本書でしたが全然違ってた!
定年後の人生を面白おかしく笑って読めるかと思いきや、定年後のジェットコースター人生を切実に感じながら読むこととなった。
何がどん底で何が幸せかは人によって違うのだろうけど。
ただひとつ、定年してもやっぱり人生は自分との闘いなのだなぁと…
現役の頃とはまた違った自分との闘いがそこにはあるのだなぁと…
何をどう選択するか、自分の気持ちとどう折り合いをつけるのか。
そして旦那さんの定年後の生き方により人生が変わってくる妻もまた闘いなのだ。
思い出と戦っても勝てない、「勝負」とは「今」と戦うこと!と羅漢は言うけれど、そもそも戦わない人生も、あっても良いのでは…
人それぞれですね。
内館さんの他の高齢者小説も読んでみようかな。 -
正直、作者さんについて良いイメージがなかったので避けていたところもあったが、いざ読んでみると面白い。先入観で思い込んだら駄目だよね。
定年退職後、時間を持て余しジム行ったり、カルチャースクールで淡い恋心抱いたり、フラフラしてるなあと展開が怠い前半。
ようやく充実した日々を手に入れるも、急上昇から急下降へ忙しい。
安いドラマとかだとここで救いの手が差しのべられるんだろうけど、そんなに甘くない。現実的。どうやって持ち直していくのかわからない。
とりあえずは先々は明るい展望が見られたので、やっとホッとできた感じ。
だけど基本的に金持ちのおじさんの話なので、大変だけども庶民からみたらそんなに不幸には感じられず共感は難しかった。格差って奴ね。
でも僻みを感じることもなく楽しめた作品でした。
著者プロフィール
内館牧子の作品





