彼女がエスパーだったころ (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 262
感想 : 27
  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062938945

作品紹介・あらすじ

吉川英治文学新人賞受賞作。

進化を、科学を、未来を――人間を疑え!

百匹目の猿、エスパー、オーギトミー、代替医療……人類の叡智=科学では捉えきれない「超常現象」を通して、人間は「再発見」された――。
デビューから二作連続で直木賞候補に挙がった新進気鋭作家の、SFの枠を超えたエンターテイメント短編集。

感想・レビュー・書評

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  • 『あとは野となれ大和撫子』を読んでから、気になっている作家さん。(その割に『ゲームの王国』の小川哲と記憶混同していたけど。)
    以下、ネタバレ有。注意。



    「百匹目の火神」がサルによって火を熾す話なら、「水神計画」では原発事故によって汚染された水を、人が言葉で浄化する話があったり。
    ロボトミーならぬオーギトミーという脳手術で、暴力衝動を破壊する「ムイシュキンの脳髄」は、ミステリーとして面白く読めた。

    今作の推しは「彼女がエスパーだったころ」からの「佛点」。
    スプーン曲げアイドル千晴ちゃんが、後の作品にかけて変わっていく姿が、愛おしい。
    科学と非科学。科学者と宗教とエスパー。
    後作は世界の転換点である「沸点」を、人為的に創り出そうとする話なのだが、その中で性と倒錯を伴うカルトにおける救いは果たして是が非か、という非常に微妙な問いに語り手と千晴がぶつかっていくシーンが出て来る。

    どの話(疑似科学シリーズという名称らしい)にも、それをペテンと一蹴出来ない、純粋な危うさが混じっている。
    そして、私の勝手な考えだけど、人は高度な知能を持ってしても、それを見破らせない本能すら兼ね備えているような気がする。
    だって、それが本当に信じて良いものかどうかを完璧に見分けてしまったら、恐らく救いが訪れないから。だから、時に大きく間違う。(つまりは、多数の人がそれは間違いであったという判断を下す)

    「佛点」では、いわゆる正義と呼ばれる前向きな行動によって追い詰め、「救われていたはずの人々」の破滅をもたらす。その結末に、レーニン、スターリンを持ってくる所がすごい。

    孫引きになるけれど、宮沢賢治の引用文が鳥肌過ぎるので、載せる。

    「けれどもしおまへがほんたうに勉強して実験でちゃんとほんたうの考とうその考とを分けてしまへばその実験の方法さへきまればもう信仰も化学と同じやうになる。

    『銀河鉄道の夜』宮沢賢治(第三次稿より、第四次稿にて削除)」

    あとがきより。

    「暴くのは簡単だ。むしろそこには、なんらかの快楽さえ宿ることだろう。しかしこの快楽を、ぼくは排したかった。そうでなく、科学的な知見を大切にしながら、かつまた、あの静かな空間を引き戻すことはできないか。ついでに、スプーン曲げがあるともないとも定まらない世界でミステリを成立させることは可能か。こうした一連の実験を、SFとして仕立てあげることは可能か?」

  • 私は好きだけど、「これが世界水準だ」と謳われちゃっても???

  • 初宮内悠介作品。
    とっつきにくい部分もあるが、興味深いテーマが取り上げられた一冊。
    最後の「沸点」はうらぶれたサンクトペテルブルクに希望が灯されて好きなエンディングでした。

  • 「わたし」が似非科学と対峙する連作短編だ。
    と言っても、「わたし」は決してその似非科学を暴いてやっつけるようなヒーローではない。
    ただそれを「見る」だけだ。

    SFともミステリーとも言い難い本作。
    スプーン曲げや代替医療など扱う題材は面白い。
    しかしながら、どうにもうまく表現できないが、私にとっては読みにくく、そこまで厚いとは言えない文庫本を読むことにいささか難儀した。
    著者と私との波長が合わない、それが最もぴたりとはまる表現なのだろう。

    シンクロニシティと崇拝、言霊と水質浄化、プラセボと終末医療......。
    どれもこれも弱った心にするりと入り込んで狂信的とも言える信仰を集める。
    それゆえに私の心はその描かれた疑似科学を拒んだのかもしれない。
    知れば洗脳されてしまうかもしれない。
    第六感、それも似非科学だろうか、本能が危険だと知らせた。
    これは作り話、そう思っていても、簡単に人の心は流されてしまうものだから。

    そんな考えこそが、いや、真実を突いているかも、いや、それも科学じゃない、いやいや、科学だって万能じゃない、仮定の話ばかりだ.....。
    堂々巡りが、「かも」が、私の頭を埋め尽くしていく。

  • 普通の情景を読んでいるつもりが、気がつけばビューンととんでもないところに連れていかれている感が。
    あいかわらずすごいな。

  • 気がつけばどんどん読み進めていた。
    不思議な話だった。

  • 疑似科学を扱ったルポ形式の短編集で連作っぽくなっています。スプーン曲げ、火を使う猿、ロボトミー手術、ホスピス、新興宗教といったテーマ。疑似科学そのものよりそれを取り巻く人々の考えや行動が物語られています。後半、重いテーマが続きますが、最後はすっきり終わった感じですね。

  • 論文見たいな語り口。最後に驚き

  • テーマははっきりしているのにどこかつかみどころのなさを感じました。
    「疑似科学シリーズ」と銘打ってしまえば簡単ですが、科学で解き明かすことが常に最良とは限らないのでしょうか。

  • 2021/10/23購入

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著者プロフィール

1979年東京都生まれ。早稲田大学第一文学部卒。2010年に「盤上の夜」で第1回創元SF短編賞選考委員特別賞(山田正紀賞)を受賞しデビュー。『盤上の夜』で第33回日本SF大賞を受賞。2014年『ヨハネスブルグの天使たち』で日本SF大賞特別賞。2017年『彼女がエスパーだったころ』で吉川英治文学新人賞、『カブールの園』で三島由紀夫賞、『あとは野となれ大和撫子』で星雲賞、『遠い他国でひょんと死ぬるや』で芸術選奨文部科学大臣新人賞を受賞。

「2021年 『OTOGIBANASHI』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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