本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • 本 ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062939140

作品紹介・あらすじ

変てこだったりグロテスクだったり極端だったりする、究極に純度の高い愛のアンソロジー。人気作家勢揃い! ●川上弘美●多和田葉子●本谷有希子●村田沙耶香 ●吉田知子●深堀 骨●安藤桃子●吉田篤●小池昌代●星野智幸●津島佑子


気鋭の翻訳家、岸本佐知子氏が「変な愛」を描いた小説ばかりを集め訳したアンソロジー。翻訳アンソロジーとしては異例の人気シリーズとなった、前作に続く日本版。
「変愛は純愛。日本の作品にも、すばらしい変愛小説がたくさんあることに気がつき」、「ここ日本こそが世界のヘンアイの首都であると思え」たという岸本氏が選んだ、現代の恋愛小説の名手による、変てこだったりグロテスクだったり極端だったりする、究極に純度の高い愛のアンソロジー。

「形見」 川上弘美
「韋駄天どこまでも」 多和田葉子
「藁の夫」 本谷有希子
「トリプル」 村田沙耶香
「ほくろ毛」 吉田知子
「逆毛のトメ」 深堀 骨
「カウンターイルミネーション」 安藤桃子
「梯子の上から世界は何度だって生まれ変わる」 吉田篤弘
「男鹿」 小池昌代
「クエルボ」 星野智幸
「ニューヨーク、ニューヨーク」 津島佑子

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 海外作家編では幻想を感じたが、こちらは会話やシチュエーションがリアルなためか違和感を感じるものが多かった。川上弘美・吉田篤弘はお馴染みの異世界。多和田葉子『韋駄天』本谷有希子『藁の夫』吉田知子『ほくろ毛』小池昌代『男鹿』が面白い。

  • 川上弘美さんの、愛した人の骨の話が、秀逸だった。自分には、強烈な作品もあったが、面白い企画だと思う。

  • 岸本佐知子さんの編んだ書き下ろしアンソロジー、タイトルに惹かれてまず読んだ津島佑子の短編「ニューヨーク、ニューヨーク」が素晴らしかった。読みながら、読み終わってから、幾つものことを思った。
    「ニューヨークのことなら、なんでもわたしに聞いて。それがトヨ子の口癖だった、という」冒頭のセンテンスを読んで、わたしも数年前の夏に数冊の本を読むことで行ったことのない「ニューヨークのことはもう分かった」と嘯いたことを思い出す。そこには彼女がニューヨークを思うのと同じように個人的で特別な理由があったのだけど。
    その後に元夫と息子がこの世にいない彼女について語り合うことで明らかになり“発見”される、今まで知り得なかった「彼女の孤独や哀しみやささやかな矜持や希望」あきらめ、恨み、失望は、編者あとがきで岸本さんが書いているように「私たちみんなが心の奥に抱えているもの」なのだと思えた。少なくとも、わたしは同じようなものを抱えていた。改めてそれらを見つめることになる。さらにその語り合い、解釈を通して「なにか肝心なものが欠けた存在」では、と思いはじめる元夫、名無しの“男”の人生に自分を省みて、思い出し落ち込み、わたしも「少し涙ぐむ」。
    そして、もういない人を語りあうこと、あるいは不在になったときに語られることについても考える。別の方向からの印象を聞き、ぶつかり合いすり合わされることで、新しい印象が浮かび上がる。それは勿論“正解”ではないのだけど、新たな、あなた、わたしが描き出される。何処までいっても憶測でしかないそれを、真実とその人自体だと思い込む、そうせざる得ないことは、実はとても恐ろしいことなのではと思い至る。しかし、人も含めた世界はそうやってしか捉えることが出来ないのなら、それは真摯に語られるべきだ。この小説のように。そんなことを少しこじつけて思う。とても素晴らしかったけれど、予想していなかった怖い思いもした短編小説だった。太宰治の娘だということはさっき知った。「電気馬」も読んでみたい。

  • 恋愛でも偏愛でもなく、変愛。変な愛の短編集。変だけど当人たちにとっては大真面目。
    幻想小説を読んでいるときみたいな、いつの間にか背後にこことは違う世界の気配がぶわっと広がって迷い込んでいくような没頭感を覚える作品が多め。
    一部文章が合わなくて読みづらい作品もあったけれど、そこを乗り越えたらすいすい読めた。
    形見…川上弘美さん
    梯子の上から世界は何度だって生まれ変わる…吉田篤弘さん
    クエルボ…星野智幸さん
    あたりが好み。

  • さまざまな形の「愛」が収められたアンソロジー。どれも一般の恋愛観からは少し外れた愛で、しかしそんな奇妙な愛こそが恋愛であるような気がする。どこか変でなきゃ恋愛なんてできないな、と感じた。

  • 普段、ほとんど読むことのない現代の日本人作家のアンソロジー。
    興味深く読んだ。
    もとは、深堀骨 の作品を読んでみたかったから手に取ったが、どれもなかなか良かった。ありそうでない話というファンタジーというか、不気味な話が多い。恋愛要素はどれも少なく見えるが、一応恋愛ものという括りらしい。

    一作だけ、多和田葉子の漢字の話はすでに読んでいた。

    特に印象的だったのは、
    本谷由希子、迫力とリアリティと奇想天外で面白かった。
    村田沙耶香、細かく書き連ねて積み上げるのがうまい。
    吉田知子、多分この中で一番好きなタイプの作家。
    小池昌代、切れ味がよい。
    星野智幸、描写がうまい。

    というかんじ。
    編者は岸本佐知子。掃除婦の訳者だ。納得。

    • 111108さん
      mario3さん、こんばんは。

      岸本佐知子さん編にあぁなるほど〜納得するラインナップでしたね。海外編も読みましたか?
      深堀骨さんは初読みで...
      mario3さん、こんばんは。

      岸本佐知子さん編にあぁなるほど〜納得するラインナップでしたね。海外編も読みましたか?
      深堀骨さんは初読みでしたがかなり私には刺激強くかったです。本谷さんのこの話、ずっと思い出しながら『オズの魔法使』を先日読みました。
      2023/03/22
    • mario3さん
      111108さん、こんばんは!

      海外編はまだなんですが、ぜひ読んでみたいです。
      全編合わせると見事に岸本さんらしさを感じました。不思議です...
      111108さん、こんばんは!

      海外編はまだなんですが、ぜひ読んでみたいです。
      全編合わせると見事に岸本さんらしさを感じました。不思議です。
      深堀さん、すごい作家だなあと私も刺激深めでした。
      藁の夫、たしかにオズでも、こぼれた藁を詰め直すシーンとか、燃やしてやると魔女に脅されたりしてましたね。モデルかしら(^_^;)
      2023/03/22
    • 111108さん
      mario3さん、お返事ありがとうございます♪

      海外編もまた「変愛」らしさが独特で忘れ難い話が多くて楽しかったですよ!
      藁の夫はオズの子孫...
      mario3さん、お返事ありがとうございます♪

      海外編もまた「変愛」らしさが独特で忘れ難い話が多くて楽しかったですよ!
      藁の夫はオズの子孫かと勝手に思ってます(^.^)
      2023/03/23
  • ✳︎川上弘美 「形見」
    ✳︎多和田葉子 「韋駄天どこまでも」
    ✳︎本谷有希子 「藁の夫」
    ✳︎村田沙耶香 「トリプル」
    ✳︎吉田知子 「ほくろ毛」
    ✳︎深堀骨 「逆毛のトメ」
    ✳︎安藤桃子 「カウンターイルミネーション」
    ✳︎吉田篤弘 「梯子の上から世界は何度だって生まれ変わる」
    ✳︎小池昌代 「男鹿」
    ✳︎星野智幸 「クエルボ」
    ✳︎津島佑子 「ニューヨーク、ニューヨーク」

    多和田葉子目当てで買ったら読んだことある作品だった。どの作品も不思議な世界観で秋の夜長の読書にぴったり。
    「形見」「藁の夫」「梯子の上から〜」が好きだった。

  • 特に、カウンターイルミネーションと
    梯子の上から…がとても良かった。

  • 12編のアンソロジー。
    どの作品も変愛の名に相応しかった。この一冊に密度濃く詰め込まれたそれぞれの変愛。愛と一口に言っても当たり前ながら1つも同じものはない。
    その中でも特に好みだった2つについて書きたい。

    『藁の夫』
    2人の間に嫌な空気が流れる、その始まりはいつも些細なことなのだと思い出させる自然な流れだった。あんなに幸福そうだったのに、藁に火をつけることを想像させる経緯、鮮やかな紅葉にその火を連想させるところがたまらなく良かった。

    『逆毛のトメ』
    シニカルでリズムのいい言葉選びが癖になる。小説ってこんなに自由でいいんだと解放して楽しませてくれた。躊躇なく脳天にぶっ刺す様が爽快だし、愚かな人間の頭に邪鬼の形相のトメがいることを想像してそのコミカルさに取り憑かれる。気づけばトメのことが好きになっていた。

  • 「グロテスクな、極端な、へんてこなもの」
    岸本佐知子さんのセンスがgood!!

    こういう作品集だと 村田沙耶香も全く違和感なく読める
    というか 彼女の世界観を好む人にはとても面白い作品だと感じるはず

    個人的には 川上弘美「形見」本谷有希子「藁の夫」村田沙耶香「トリプル」が好きかな

    岸本さんのエッセイ本も読んでみよう!

全29件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

岸本 佐知子(きしもと・さちこ):上智大学文学部英文学科卒業。翻訳家。主な訳書にルシア・ベルリン『掃除婦のための手引き書』、ミランダ・ジュライ『最初の悪い男』、ニコルソン・ベイカー『中二階』、ジャネット・ウィンターソン『灯台守の話』、リディア・デイヴィス『話の終わり』、スティーヴン・ミルハウザー『エドウィン・マルハウス』、ジョージ・ソーンダーズ『十二月の十日』、ショーン・タン『セミ』、アリ・スミス『五月 その他の短篇』。編訳書に『変愛小説集』、『楽しい夜』、『コドモノセカイ』など。著書に『気になる部分』、『ねにもつタイプ』(講談社エッセイ賞)、『なんらかの事情』、『死ぬまでに行きたい海』など。

「2023年 『ひみつのしつもん』 で使われていた紹介文から引用しています。」

岸本佐知子の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×