バビロン 1 ―女― (講談社タイガ)

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 682
感想 : 64
  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062940023

作品紹介・あらすじ

東京地検特捜部検事・正崎善は、製薬会社と大学が関与した臨床研究不正事を追っていた。その捜査の中で正崎は、麻酔科医・因幡信が記した一枚の書面を発見する。そこに残されていたのは、毛や皮膚混じりの異様な血痕と、紙を埋め尽くした無数の文字、アルファベットの「F」だった。正崎は事件の謎を追ううちに、大型選挙の裏に潜む陰謀と、それを操る人物の存在に気がつき!?

感想・レビュー・書評

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  •  小説、映画、ゲームにマンガ、アニメと、物語に触れていると、「こいつやばいやつだ……」というキャラに出会うことがあります。貴志祐介さんの『黒い家』なんかは、その典型です。

     しかし、このバビロンに出てくる「曲世愛」(まがせあい)もかなりやばい。第一巻で彼女がしっかりと出てくるのは、取り調べを受けるシーンだけなのですが、それなのにやばさが伝わってくるのです。

     具体的に何がやばいのか、と聞かれると、それはまた難しいのですが、強いて言うなら、つかみ所の無さ。主人公の検事の厳しい取り調べに対して、のらりくらりとかわし、いつの間にか自分のペースに持ってくる。そのかわし方が、なんとも言えない気持ち悪さなのです。言葉自体は無邪気な感じなのに、言葉の奥底に邪悪さが垣間見える、と言えばいいのでしょうか。

     野崎さんの小説は、今までも普通の小説はもちろんライトノベルでもなかなか出てこなさそうな、キャラが出てきました。そのキャラたちに共通するのは常人の「理解の範疇を超えた」存在だと言うことだと思います。この曲世愛というキャラは、そんな野崎さんが生み出したキャラの黒い部分の集大成のような気がします。

     一つの不審死から、始まった事件は大きな政治的な企み、そしてさらに思わぬ展開につながっていきます。二巻への引きも上手くて、次の巻へも思わず手が伸びてしまうのではないでしょうか。
     

  • 「読む劇薬」とは的を得ている

    東京地検特捜部の検事、正崎善。薬品会社の不祥事を捜査する中、全裸で死んでいた男が残した「F」から始まり、”新域”を中心に渦巻く陰謀や未曽有の事件を追うこととなる。黒幕はたった一人の異様な”女”――

    【原作既刊3巻(バビロン-死-)や、アニメにも言及する重大なネタバレがあります】


    書店を練り歩いていると「読む劇薬?ナニソレすげぇ」と目に留まり、随分な謳い文句だなと思いつつ面白半分で購入したのがきっかけの小説だった。
    購入当時、一人暮らしをしていたので夜中、独り静かに読んでいたのだけれども。

    いや、やばすぎませんか????????????

    いやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいや、こんな救いようのない物語ってあるの???????

    今までだってたくさん、好きなキャラが死んでいったけれど、そんなの比にならないほど悲惨。紙とインクで書かれた文字の羅列で、私はマジで死にかけた。
    劇薬どころか死に至る猛毒――いや最早、これは病気。
    誰だこんなの出版しようと言い出した人は!(天才です!)

    おそらく普通の人類においては最低最悪最凶のキャラクターであろう、曲世愛。彼女は耳元で囁くだけで人間を自殺へ追い込める。そんなオカルトのような能力――いや”現象”というべきか――のからくりはまだわからないが、もしそんな人がいたとしたら、おおよそこうなるであろう悲惨な事件が次々と起こる。
    何なら曲世愛も呼吸するように人を殺す。

    「正義って何かしら」

    純粋なその疑問に、私も喉を詰まらせる。
    い、いや確かに……正義ってなんだ?そもそも誰が決めてるの?なんで決められなくちゃいけないの――

    そして新域において制定される”自殺法”。
    死ぬことを選ぶ権利なんて普通は許されるわけないだろう――と思ったけれど、読み進めていくうちに考え方が変わる。「あれ?……どうして私たちは死に方を選んじゃいけないの?」

    自殺法を巡る議論、自ら死ぬことを選ぶ者たち、新域での様々な陰謀や利権争い。検察や刑事、政治家、大統領まで。いろんな立場のキャラクターが出てくる中で、どの立場から考えても「確かに。ううむ確かに!」となるからすごい。
    答えも救いもない道を延々と歩き続けているかのようで、読み手である私もなかなかの地獄だった。

    久々に”マジでヤバい”作品に出会えたと思いましたね。


    末恐ろしいのは、これがアニメ化されたということ!
    アニメももちろん見ました。
    既刊3巻分、ほとんどアニメ準拠でやってくれたので個人的にはなかなか見応えあるアニメだった(※正直アニメラストはいただけないところがあるけれど、原作バビロンが完結していない(よね?!)から配慮した形なのだろう)

    いやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやこれアニメ化よくできましたね?!?!?!?
    さすがにヤバすぎる内容だから「あ~これアニメ化絶対やらんわ笑」と思っていたけど、私の想像力をブチ超えてきた。最近のアニメ化事情はすごい。

    というわけで、是非とも原作を読みつつ、アニメも十分見応えがあるのでどちらもお勧めです。

  • 野崎まどさんの作品。ほんわかした作品を読んだ後に、作家名で選んだ書籍。
    後半のスピード感が半端ない。
    来年、続きが出るのが楽しみだ。
    今から待ちきれない。

    表紙から、言い意味で裏切られた。
    どんどん引き込まれて行くけど、途中で本を閉じてもまたすぐに世界観に戻される圧倒さ。
    今流行りのタスクフォース的な、軽い話かと思いきや、新世界。
    現実社会とリンクしてるからこそ、新しい続きを感じる。

  • ある種の脅威をじっくり描いた後にさらにそれをアレしてドーンする野まど先生のお家芸が存分に発揮された作品。検察を主人公に据えて政治絡みの描写による現実感と女と新域についてのオカルトが混ざって読まされたなぁ。

  • 新たな行政特区設立の裏で起きた製薬会社の事件を追う検事の話。
    野崎まど作品は,ほっこりムードの中で天才が出てきて驚きの結末的な話が多かったが,今作は社会派。
    こういう話も上手く書く器用な作家だと感じた。
    続きが楽しみ。

  • 【自死とはいつの時代も、美しいものの代表である】

    死への渇望は、麻薬のように脳へ快感を伝える。よく晴れた空を眺めながら電車に跳ね飛ばされたい願望、愛する者を目の前にして空へ飛び立つ願望、憎むべき者に二度と忘れられない呪いを与え死する願望、全身をめちゃくちゃに切り裂いて溢れ出す血に染まりたい願望。

    死を強くイメージする事は、特定の人物にとって、幸福そのものである。そして、まるである一部の特殊な性癖のある人間だけであるように書いたが、人間という生き物には、必ず自殺願望という遺伝子が組み込まれている。

    どんなに溌剌とした性格な人間でも、死にたくないと望んでいても、人は死に魅了されてしまう。死とは未知なる状態であり、好奇心が強ければ強いほど、心の明るさなど全く関係がないほど、惹き込まれてしまう。

    この作品を読んでいて、昔似たような作品を読んだようなきがしている。死に取りつかれる話。その話の結末がどんなものだったか今必死で思い出そうとしている。

    誰かの死にたいを、人はひっくり返せるのか。

  • 陰謀渦巻くスピーディーな展開でぐいぐい読ませます。そして道理に合わない死と、それにまつわる底知れない不気味さが物語を彩ります。主人公が可哀想とまで思えてくるほど、見事なまでに翻弄されます。
    次巻も楽しみです。

  • 「鬼か、悪魔か、野崎まど、か。世界はまどに惑わされる」。

    東京地検特捜部検事の正崎善、臨床研究不正事件、麻酔科医の因幡信、紙を埋め尽くした無数の文字「F」、大型選挙等。

    死を許す時代、死を心の底から楽しみにする人、また、死を望ませた人間とはー?。

    初めての野崎まどsan。
    サブタイトルとなっている「女」がポイントですね。好きなキャラクターです。検事室での第一声が印象的でした。シリーズ2も楽しみにしています☆

  • 全体的なストーリー展開のテンポが良く、自然の引き込まれていった。最初は大物政治家が黒幕で最終決戦までいくのかと思いきや、各界の大物達が想定しなかった展開になってきているようで続編がどう展開していくのか予想できない。
    しかし、内容自体は評判通り重く、考えさせられる部分もある。徐々にダークになってくるといった情報もあるので他の作品も間に挟みながら続編にたどり着きたいと思う。

  • 本作続刊では物語を通じて死生観に対する思考実験が行われている
    本作自体はその特異な実験環境の構築を行なっている
    非常に巧み

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著者プロフィール

【野崎まど(のざき・まど)】
2009年『[映] アムリタ』で、「メディアワークス文庫賞」の最初の受賞者となりデビュー。 2013年に刊行された『know』(早川書房)は第34回日本SF大賞や、大学読書人大賞にノミネートされた。2017年テレビアニメーション『正解するカド』でシリーズ構成と脚本を、また2019年公開の劇場アニメーション『HELLO WORLD』でも脚本を務める。講談社タイガより刊行されている「バビロン」シリーズ(2020年現在、シリーズ3巻まで刊行中)は、2019年よりアニメが放送された。文芸界要注目の作家。

「2023年 『タイタン』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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