彼女は一人で歩くのか? Does She Walk Alone? (講談社タイガ)

著者 :
  • 講談社
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感想 : 240
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  • Amazon.co.jp ・本 (264ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062940030

作品紹介・あらすじ

ウォーカロン。「単独歩行者」と呼ばれる人工細胞で作られた生命体。人間との差はほとんどなく、容易に違いは識別できない。研究者のハギリは、何者かに命を狙われた。心当たりはなかった。彼を保護しに来たウグイによると、ウォーカロンと人間を識別するためのハギリの研究成果が襲撃理由ではないかとのことだが。人間性とは命とは何か問いかける、知性が予見する未来の物語。

感想・レビュー・書評

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  • ウォーカロン(walk-alone)。「単独歩行者」と呼ばれる、人工細胞で作られた生命体。人間との差はほとんどなく、容易に違いは識別できない。
    研究者のハギリは、何者かに命を狙われた。心当たりはなかった。彼を保護しに来たウグイによると、ウォーカロンと人間を識別するためのハギリの研究成果が襲撃理由ではないかとのことだが。
    人間性とは命とは何か問いかける、知性が予見する未来の物語。
    「講談社タイガ」より

    AIだけでなくその先まで行っている内容.「人間とは」.究極には哲学なのかな.続きを読むことにする.

  • 面白かった!!!
    さすが森博嗣さん。
    「すべてがFになる」を読んで森さんの作り出す世界に、いつのまにか入り込み我が家の壁までが真っ白な研究室のそれに感じたくらい一気に読んだ、あの感覚が戻ってきました!!!
    いやぁ、、、面白かった。
    来たるべき未来。
    人間はウォーカロンという人工知性体を作り出し、苦役や単純作業、さらにはペットのような癒しの対象まで生活のあらゆる場面を担う「ロボット」?を作り出す。一方、自らの体は細胞交換で不死のように長生きする術を得るのだが子どもが生まれないという時代になるという設定なのです。
    「これって、かなり今の科学技術に対して警告を発しているよね」と思いながら読み進みます。
    「生きるとは何か」「死ぬと何か」そして「人間とは何か」なぜ人間でなければならないのか、、、などなど究極の質問を直球で投げてくる著者。
    読者である私はタジタジになりながら、ジャストミートを試みるも投げられたボールはみんなコロコロとあらぬ方向に転がっていくようなそんな不安を覚えながら読みました。
    それくらい、この本は哲学であり、心理学であり、医学であり工学でありそしてミステリーであるのです!
    途中の謎にも引き込まれるものがあり、
    全体として、話の進み方も計算されて、こなれています。
    が、
    そんな私でも最後の結びこそが森さんの伝えたかったことでは、と確信しました。
    それは、
    「結局のところ、人の心をどう捉えるかという問題に帰着する。生まれるとは、人間とは、社会は誰のものか、、、、、とりあえず暴力的な行為だけはやめてもらいたい。そんな非生産的なエネルギー消費は不合理だ、、、、、」。(要約です)

    今の世の中を穿つ言葉だとしみじみと思いながら本を閉じました。
    この本、多くの方が手にとって、それぞれの方がそれぞれの読み方をなさればいいな、、と思いながら今、レビューを書いています

  • Audible読了
    突き抜けるような知性的な面白さ。これまで未来系SFは割と避けてきたので、『火の鳥』『攻殻機動隊』『ガンダム』みたいな比べ方になるが、そのノリで言ったら『ドラえもん』に最も近いのではないか。

    (草薙素子とか含めた)人間と、ロボット。そのちょうど中間に位置するウォークアローン。人間が生殖能力を失って、ウォーカロンが大量生産されるようになると、いや、まさにその寸前の世界が来るとしたら、こういうアレルギー反応が起こるんだなーというすごい納得感がある。肌感覚でリアリティーを感じさせる世界観が完成している。

    ドラえもんは大量生産ロボットだ。かといって、簡単に捨てたり壊したりする気にはなれない。
    ただ、世の中がドラえもんだらけになるかっていうと、やはりそれは違う気がする。
    この近未来のような世界を、カチカチの理系脳である主人公のフィルターを通して見る。徹底的なまでに感情とか感性とかを拒絶する。それが、この上なく痛快。このシリーズはクセになる。


    (感想キリ番100⭐︎もっとがんばるぞー)

  • ヴィルヌーブの『Blade Runner 2049』とキュアロンの『Children of Men (トゥモロー・ワールド)』が複合的に組み合わさり、著者のエッセンスがふんだんに散りばめられたような作品。ブログでブレードランナーの続編を観た氏が森博嗣が作りそうと形容していたように、驚くほどすんなりと物語が頭に入ってくる。
    当然、このシリーズも四季のいる世界の延長線上にある。最初はSF小説を書きたいのかなと思ったけど、根底にあるテーマは最初から一貫しているように思えます。私たちはどこに行くのか。どこにも行かない。そのはずだけれど、どうにも違う気がする。エキソダスを書こうとしているのかなと想像。だからSFのようでいて、非なるものを、あるいは本当にあるかもしれないいつかを描いているような、どこか不思議なシリーズ。

  • S&Mシリーズから順に、ここまで読み進めてきました。もう名古屋でも大学でもミステリーでもないけど、ここまで着いてきた森博嗣ファンなら「むしろ待ってました」という感じのSF小説です。
    作中内で引用されている「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」とテーマは同じ。1968年に書かれた小説と同じテーマで、森博嗣さんの視点で、描かれる2世紀先の未来。
    1冊目のこちらはまだまだ序章。読み終えた後、どきどきして眠れませんでした。続きが楽しみです。

  • 黒幕はやっぱりあの人か。世界が変わりつつある現代にぴったりな近未来SFミステリ作品です。

    森博嗣さんのミステリを久しぶりに読みました。
    「すべてがFになる」などのこれまでの作品では強烈なキャラクタにストーリが引っ張られていく印象でしたが、本作では、それらがとても淡白。
    静かに世界の終焉に向かっていく近未来のディストピアが、淡々と語られています。
    こんな森博嗣があったのか、と驚かされます。

    まるで人と見分けがつかない人造人間(ウォーカロン)が世界に溢れている中で、じゃあ、人間の定義とは何か、という
    本質を探るライト科学ミステリといった様相です。
    SFではよく語られるテーマでありながら、主人公ハギリ先生の淡白な目線を通じて、独特な世界観が示されます。

    それにしてもハギリ先生のポンコツっぷりが凄い。
    世界の最先端の研究を黙々とこなす一流の研究者であるのは間違いなのだけど、博物館にいくと駄々をこねて暗殺者に狙われたり、勝手に街に繰り出して酔っ払ったり。そのたびに荒事を引き受けるウグイさんの苦労が偲ばれます。

    エンタテイメントとしてもバッチリ楽しめる良作。
    お家読書にぴったりです。

  • 相変わらず ちょっとウンチクっぽいと言うか 小難しいと言うか…
    でも 不思議と 入り込んでしまう
    この 独特の世界観は 魅力的なのだ
    中毒性がありありなのだ (笑

  • 本屋に積んであった本書を見付ける。英語タイトル「Does She Walk Alone」に魅かれて購入。当然、「すべてはFになる」から百年女王に繋がる長い物語の秘密を期待して。

    P.k.ディックの「アンドロイドは電子羊の夢を見るか」が巻頭や各章の頭に引用されているが、この本にでてくるウォーカロンはレプリカントに似て、極めて人間に近い人工的に造られた人間。人はなかなか死ななくなっているが、子供は生まれなくなり、結婚や家庭もないような社会。いつのまにかウォーカロンが増えている。
    主人公のハギリが研究に没頭する描写が如何にも森先生。襲撃や登場人物からもたらせるドキドキの情報や事件も次々あるけれど、淡々として冷えた文体がファンとしては気持ちいい。

    現在の技術が進めば、ウォーカロンは兎も角、この小説に近い社会が到来するだろう。生命に意味はあるのか。培養や養殖ではいけないのか。真賀田四季なら意味はないというだろうな。それを僕は否定できるだろうか。続篇も読むしかないよね。

    百年女王のウォーカロンはこんなに人間ぽくなくってロボットに近い存在ではなかったと思う。ちょっと、考えちゃったな。
    読後思ったけど、一人歩く彼女って彼女のことだよね。

  • Wシリーズ1作目。ウォーカロン(単独歩行者:walk alone)と呼ばれる人工細胞で作られた生命体。人間との差がほとんど無く、判別が容易にできない。研究者のハギリはウォーカロンと人間を識別する研究を行っており、何者かに命を狙われるも保護しにやって来たウグイに助けられる。人間とは何か、命とは何かを読者に問いかける近未来ファンタジー。

    人工細胞の反乱。人が死ななくなり、子供が産まれない世界はどこに向かうのか。長く生きることは正解なのか。あの天才博士も登場し、どのように続いていくのか楽しみです。

  • 【購入本】S&Mシリーズから飛んでWシリーズに着手。講談社タイガからの出版ということもあり、話の内容もかなりライトな印象。〈人間×ウォーカロン〉の世界。「人間」とは、「命」とは、何なのか。曖昧になった社会の中で、ハギリとウグイの''日常''が動き出す。ただ、森ワールド(仮)の中でここまで不明瞭な話の展開はあっただろうか。ミチルは人間か、真賀田四季は生きているのか。謎は謎のまま明かされることはない。次作が楽しみだ。

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著者プロフィール

工学博士。1996年『すべてがFになる』で第1回メフィスト賞を受賞しデビュー。怜悧で知的な作風で人気を博する。「S&Mシリーズ」「Vシリーズ」(ともに講談社文庫)などのミステリィのほか「Wシリーズ」(講談社タイガ)や『スカイ・クロラ』(中公文庫)などのSF作品、エッセィ、新書も多数刊行。

「2023年 『馬鹿と嘘の弓 Fool Lie Bow』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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