大正箱娘 見習い記者と謎解き姫 (講談社タイガ)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062940221

作品紹介・あらすじ

人と夢幻が共存した最後の時代。一人の少女が謎の詰まった箱を開く。

新米新聞記者の英田紺のもとに届いた一通の手紙。それは旧家の蔵で見つかった呪いの箱を始末してほしい、という依頼だった。
呪いの解明のため紺が訪れた、神楽坂にある箱屋敷と呼ばれる館で、うららという名の美しくも不思議な少女は、そっと囁いた――。
「うちに開けぬ箱もありませんし、閉じれぬ箱も、ありませぬ」
謎と秘密と、語れぬ大切な思いが詰まった箱は、今、開かれる。

感想・レビュー・書評

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  • 家を飛び出して、新米新聞記者として働く英田紺。
    旧家の蔵で見つかった呪いの箱の処分を依頼された紺は、上司の紹介で神楽坂の箱屋敷に住む、うららと出逢う。
    「箱と名のつくもので、うちに開けられぬものもありませんし、うちに閉じられぬ、ものもありませぬ」
    けれどね、記者さん
    「開けないほうが、よい箱もありますよ」

    表紙とタイトルから、袴姿のお嬢が活躍するのかなと思っていたら、過去を抱えて家を飛び出した新米記者と、謎めいた箱娘が暴く怪しくて仄暗い人の闇のお話。
    地方の旧家の呪いの箱
    身分違いの男女の悲恋を描く舞台の台本の行方
    姉の婚約者に文を贈っていた妹の真実
    旧家の嫁からの再びの文
    じっとりとまとわりつくような闇。
    それぞれの事件がじりじりと紺の心の蓋を開いていくよう。
    家長や因習に逆らえず、生きる女性たち。
    彼女たちを救おうと奔走する紺、なんだけど、女性の立場が!とか、女性の幸せは?!とか声高に描くけれど、何気に男性が雑に扱われてる気が。
    刃に触れて亡くなった彼も、死が舞台のヒットに繋がった彼も、こんな手紙を何通も受け取った彼も、最後の婿殿たちも、なんだかお気の毒。
    続編があるそうなので、紺と家の確執とか、うららの秘密もだんだんと明らかになるのかな。

  • 箱娘の存在、謎解き、キャラ、文体も含め作品全体が好み。箱や手紙に限らず、閉じた蓋を開けるのはちょっと怖い気持ちはわかる。資料としてあたったのが横溝正史だそうで納得。続編が楽しみ!

  • ちょっと久々の紅玉さん作品。
    新刊出たのいつ以来だろ?

    うららは一体何者なんだろう?
    屋敷から出ることは出来ない。
    スミさんのとこのお屋敷の牢屋?には現れた。
    陸軍の人達が迎えに来る立場にある。
    また、陸軍を通して警察上層部を動かすことが出来る。
    箱屋敷へ行くと警察上層部へ連絡が行き、行った者の素性を調べられる。
    叉々は一体何者なのか?
    あの牢屋に連れて行ったのは叉々だよな?
    うららが外へ出たいと言った時に連れて行くためにいるんだもんな。
    うららも叉々も妖怪の類?
    室町はこの国、時代の守護であると言ってたからそんな感じのものであるよな。

    それにしもスミさんはほんとあの屋敷にいたままで良かったのかな?
    大奥方がスミさんに対して愛情があるのは分かったけど、あのままあの屋敷で暮らしていくのは大変だと思う。
    徳三、潮、そして現旦那。
    ちょっと関係が難しいよなぁ。

    次は怪盗カシオペイヤがメインになるのかな、あとがきにあったタイトル的に。
    カシオペイヤは秘密を暴くってとこが、うららとその周りの秘密にも近付きそうな気がする。
    次早く読みたいな。

  • 『箱』から連想されること。箱入り娘、密室、その息苦しさほの暗さ、閉じ込められる不安に守られる安心、何が飛び出すか分からない玉手箱…。想像力が相変わらず飛んでるなあ。まだまだ女が生き難かった大正時代を舞台にする事で、ジェンダー問題を背負ったミステリーとなり、ちょっと心理的に重苦しいのだが、それだけに読みながら登場人物たちに救いがあることを求めたくなる。

  • ★すべての箱を開けることが、正しいことだとはうちは思いません(p.189)
    ・文章に書かれたとき初めてこの世界に現れてきたような、それまでの人生、これからの人生が感じられない書き割り的キャラクタたち。女性と社会、女性の生き方などが表面的なテーマかと。実際には「箱娘」という発想を追求しただけかも? ずっと以前読んだ『ミミズクと夜の王』の前半がユニークだったので手に取りました。

    「箱娘」記者。箱娘。甲野スミ。呪いの箱。
    「今際女優」自殺した戯曲家扶桑牧ヲ。今際女優と呼ばれる出水エチカ。
    「放蕩子爵」秘密を暴く怪人カシオペイヤ。自殺した娘。
    「悪食警部」甲野スミ。事件。紺は容疑者に。警視庁の室町警部。

    ■箱娘についての簡単なメモ

    【一行目】新聞記者である英田紺がその屋敷を訪れたのは、陽の落ちかけた夕刻のことだった。

    【英田紺/あいだ・こん】→紺
    【出水エチカ/いずみ・えちか】女優。今際の際の演技が上手い。《芝居のような生き方しか、知らぬだけなのかもしれない。》p.103。《人は人が、死ぬところを見たいのよ》p.106
    【潮/うしお】甲野家の女中。
    【うらら】回向院うらら(えこういん・うらら)。「箱娘」と呼ばれる。《開けられぬ箱はありませんし、閉じられぬ箱もまた、ないだけです》p.117。なにをもって「箱」とするか。
    【回向院うらら/えこういん・うらら】→うらら
    【大奥方様】甲野家の現当主。
    【小布施/おぶせ】紺の上司。太っている。自分ではうららと会おうとしない(理由があるのかもしれない)が紺にはつなぎを持たせたいと考えている。ぶっきらぼうなところはあるが突き放したり丸投げしたりすることはない。
    【怪人カシオペイヤ】盗賊。金でも人間でもなく、秘密を盗む。
    【甲野栄之助/こうの・えいのすけ】スミの再婚相手。婿として入った。
    【甲野スミ/こうの・すみ】呪いの箱が出てきたN野の甲野家の未亡人。帝都出身。最近、蔵から出てきた刀のせいで夫を亡くした。
    【紺/こん】英田紺(あいだ・こん)。帝京新聞記者。担当は三面記事の怪異譚。童顔の十七歳。物怖じしないタイプ。ひとりよがりな正義を振りかざすが理由はある。《男も女も、生きてこそだと思います》p.106。《わたしは、嫌なんです。女が、尊厳なく扱われることが》p.111。とはいえ自己の価値観に合わない生き方をしている女性を勝手に救いたいと思ってしまうのでかなり傲慢なタイプかもしれない。
    【紺の出自】T県K市S町生まれ。父は英田善治(よしはる)、母は英田ハツ、妹は英田泉(みず)、祖父は英田善悟(ぜんご)、元陸軍憲兵少尉で剣道師範。
    【叉々/しゃしゃ】うららのところの使用人? 《うららが出たいと言った時に、いつでも出してやるのが俺の仕事なのさ》p.92
    【ダブル】時村燕也が入り浸っている撞球場。
    【手紙】《手紙というものが、紺は好きではない。ナイフを持って封を開ける。破った紙の隙間から、こぼれ落ちてくるものがある。それが、呪いではないと一体誰が保証してくれるのだろう。》p.155
    【時村燕也/ときむら・えんや】丸岡潔子の婚約者。時村子爵家の三男坊。
    【徳三】甲野家の下男。栄之助の少し前に入った
    【呪いの箱】N野の甲野家の蔵から出てきた。正確にはその家では蔵から箱が出てきたらそれが呪いの箱となる。女を近づけてはならない。ちなみに刀が出てきたら男を近づけてはならない。
    【箱】《箱はいいものですよ、記者さん。閉じ込められる箱は息苦しいけれど、閉じこもる箱は安心する。母親の腹の中のように》p.85
    【箱娘】→うらら
    【扶桑牧ヲ/ふそう・まきを】戯曲家。
    【丸岡佳枝/まるおか・かえ】自殺した。その事件は「文通心中」と呼ばれた。怪人カシオペイヤに秘密を暴かれ逮捕された鉱石密輸事件の主犯と思われる豪商の末娘。
    【丸岡潔子/まるおか・きよこ】佳枝の姉。紺と同じ十七歳。
    【泉/みず】紺の妹。十三歳で嫁ぎ、嫁ぎ先で死んだ。
    【室町稀彦/むろまち・まれひこ】警視庁の警部。口八丁で真実をねじ曲げ自分の好きなように事態をおさめる。真実を暴くよりもおさめる方に主眼を置いている柔軟なタイプとも言える。

  • 【紙の本】金城学院大学図書館の検索はこちら↓
    https://opc.kinjo-u.ac.jp/

  • ラノベ感があったけど、表現や言葉の言い回しは好きかなーと思いつつ。
    『箱』の定義が様々で、それも箱なのかーと思いつつ。
    次回作に続くのかな。

  • 開けぬ箱も閉じれぬ箱もないと言う少女。新米記者の元に舞い込む謎。大正時代の女たちの物語。舞台が整い人物が揃い謎と秘密が開かれる。
    実に好みの要素の詰まった作品でした。既視感も強いが時代が持つ女というものに焦点を合わせた点が面白い。

  • かわいらしいお話だろうと気楽にページをめくったら、横溝正史とか江戸川乱歩とか小野不由美とかみたいな、濃ゆい大正推理不思議ホラーテイスト小説でした。

    レイワの世ですが、一見持ち上げられているよううでいて、とかく女の歩く道は開けていない気がする。

    続きが気になりました。

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著者プロフィール

1984年、石川県金沢市出身。金沢大学文学部卒業。『ミミズクと夜の王』で第13回電撃小説大賞・大賞を受賞し、デビュー。その後も、逆境を跳ね返し、我がものとしていく少女たちを描き、強固な支持を得ている。

「2022年 『雪蟷螂 完全版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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