バビロン 2 ―死― (講談社タイガ)

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 470
感想 : 44
  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062940313

作品紹介・あらすじ

64人の同時飛び降り自殺――が、超都市圏構想“新域”の長・齋開化(いつき・かいか)による、自死の権利を認める「自殺法」宣言直後に発生!
暴走する齋の行方を追い、東京地検特捜部検事・正崎善(せいざき・ぜん)を筆頭に、法務省・検察庁・警視庁をまたいだ、機密捜査班が組織される。
人々に拡散し始める死への誘惑。鍵を握る“最悪の女”曲世愛(まがせ・あい)がもたらす、さらなる絶望。自殺は罪か、それとも赦しなのか――。

感想・レビュー・書評

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  • 「いつからこの小説が、ただのミステリーだと錯覚していた?」

     この小説の感想を書こうと思ったとき、まずこの言葉は書いておかないといけない、と思いました。いや、もうホントにこれはヤバイ。

     一巻を読み終えた段階で、この小説はヤバイという匂いがしていましたが、二巻に至ってそのヤバさが爆発します。

     そのヤバさの中心にいるのは、もちろん曲世愛。不可思議で邪悪な女、というのは一巻で感じていたのですが、彼女はもはやそんな言葉では収まりません。

     神話の世界にセイレーンという、海に住む化け物がいます。その歌声を聞くと船員は惑わされ、遭難や難破してしまい命を落とすそうです。

     曲世愛は文字通りのセイレーンでした。ミステリの枠を超え、曲世は人の命を喰らい続けます。終盤の絶望感は、もはや言葉では表現できません……

     曲世の陰に隠れがちですが、この巻のテーマである自殺の是非についても色々考えさせられます。この巻のもう一つのハイライトは、自殺法の是非を巡っての討論番組。

     各党の党首が倫理面、経済面などあらゆる側面から自殺法を否定します。しかし、それを凌駕してくるまさかの展開……。この展開を持ってくることができるのも、野崎さんの奇才ぶりを見せつけているように思います。

     もはや化け物と(僕の中では)化した曲世をとめることは可能なのか? そして、曲世と自殺法は世界に何を求めているのか。話は三巻へと続きます。

     

  • ぼろぼろぼろぼろ死んでいく。途中経過はすっ飛ばして彼女の正体さえはっきりしたらそれですっきりしてしまいそう。出生がはっきりしていないので今後背負ってきた影が明かされるという流れなんだろう。なんだろうなんだろこれは気になるぞ☆

  • 前巻よりも面白さ増し増しでした。
    前半の、登場人物が出揃って、これからかな?という感じと、後半の政治家の攻防。
    そしてラスト十数ページの畳み掛けるような衝撃。
    前半の政治家パートが堅苦しく現実的な展開だっただけに最後の曲世愛のターンは非現実的すきて寒気がするほどこの女が恐ろしかったです。
    面白い…これからどうなるのかすごく気になります。主人公大丈夫だろうか……。

  • これは実に目の『毒』だな… 次は9ヶ月後とは待ち遠い…
    私にも囁いて、あの絶妙な死を欲する体験を味わいたいな~なーんてな。。。

  • 『この本はやばい・・・』

    まず第一に、死にたい人は読んではいけません。そして、ちょっと情緒不安定かなぁの人もダメ。強い心を持ってると思い上がっている人もダメ。みんな、死にます。

    とにかくすごい。やばい。ぐっときた。偉そうなことは言いません。この本は確実に人の心に忍び込んで大事な部分を揺さぶります。すぐにじゃないかもしれない、鼻で笑い飛ばす人もいるかもしれない。だけど、死を恐れる心があるのなら、その甘い囁きをはねのけることは出来ない。


    あなたは踏切の前、思い出す。あの芳醇な女の匂いを。そして耳元に蘇る、あの優艷な囁きが。そして、貴方は微笑んで・・・・・・━━━になる。

    本当に怖い本です。読んだらダメ、だけど気になるでしょう。読んだら死んじゃう本だよ・・・なんて。おちゃらけてないと、飲まれてしまいそうで、怖いんです。お化けなんかよりよっぽど怖い。どうか、どこにも飛び込みませんように、私。

  • マジョリティの価値観に対する反証実験を物語で行っているように感じた
    つまり、重要なのは筋でなく語られている内容
    エンターテイメント性を持たせながら上手に語っていたと感じた

  • ここまで完膚なきまでに味方を失ってこれからどうやって解決?へ進むのか。悪について考えた結果正崎さんはどこにたどり着くのか、次を読むのが怖いです。
    好きな人物がことごとく死んでしまったのでもう正崎さんくらい呆然です。正崎さんは死なないでほしい。そして出来れば考えを変えないでほしいです。

  • たとえいつか答えにたどり着いたとしても、そこで考えるのをやめないことだ。正義とはなにかを掴んだと思った後も、正義とは何かを、ずっと、永遠に問い続けることだ。

    しんどい・・・アニメもほんましんどかったけど、文章でもほんまにきつい。陽麻、アニメオリジナルで原作にはでてこんことを祈ったけど、ほんなんけにはいかんかったか・・・きつい

  • 曲世を調査し踏み入った結果…
    流れはヴィランですね。
    挽回できるのか続きが楽しみ*°

  • 文雄、奥田の相次ぐ自死の後、正崎の事務官に就いた陽麻が女性であったことから、この章は陽麻と曲世の戦いとなるか、曲世が陽麻に化けて一層の阿鼻叫喚を生むかのどちらかかと思えた。して実態は中盤頃までに、陽麻はただの下働きに過ぎず、積極的に優れた頭脳や女性的思想、視点を事件に持ち込むことが出来ないお飾りだったことから陽麻の敗北は見えていた。無論前章の幕引きからすれば事務官が女性であるという程度のことにはいかほどの優位があるとも言えそうになく、読者にとっては(正﨑善と違って)元々大した希望でもなかったわけだが。

    そうであっても最終盤は衝撃的だった。それまでに開示された曲世の手札からは到底切り得ない、彼女の強みと無関係であるどころかそれを擲つ悪手に近い行動だったからである。だがその死角から振るってきた悪意の威力はあまりにも強烈であり、「過去に例を見ないという程ではない」惨虐の演出でさえも、その構えのない我々はただ呆然と読み進め、粛々と眺めているしかなかった。この劇的な無力感、凄絶なる悪のカタルシスたるや筆舌に尽くしがたく、「セブン」ジョン・ドゥの衝撃を上回る殺戮と感じた。

    強く引き込まれる物語だった。快作。いや、怪作か。最高。

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著者プロフィール

【野崎まど(のざき・まど)】
2009年『[映] アムリタ』で、「メディアワークス文庫賞」の最初の受賞者となりデビュー。 2013年に刊行された『know』(早川書房)は第34回日本SF大賞や、大学読書人大賞にノミネートされた。2017年テレビアニメーション『正解するカド』でシリーズ構成と脚本を、また2019年公開の劇場アニメーション『HELLO WORLD』でも脚本を務める。講談社タイガより刊行されている「バビロン」シリーズ(2020年現在、シリーズ3巻まで刊行中)は、2019年よりアニメが放送された。文芸界要注目の作家。

「2023年 『タイタン』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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