小説の神様 (講談社タイガ)

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 1247
レビュー : 144
  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062940344

作品紹介・あらすじ

いつか誰かが泣かないですむように、今は君のために物語を綴ろう。

僕は小説の主人公になり得ない人間だ。学生で作家デビューしたものの、発表した作品は酷評され売り上げも振るわない……。
物語を紡ぐ意味を見失った僕の前に現れた、同い年の人気作家・小余綾詩凪。二人で小説を合作するうち、僕は彼女の秘密に気がつく。彼女の言う“小説の神様”とは? そして合作の行方は? 書くことでしか進めない、不器用な僕たちの先の見えない青春!

感想・レビュー・書評

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  • 「小説を書くこと」と
    「小説を読むこと」は違う

    「小説を読むのが好きな人」なら
    楽しめる内容だと思う。

    どの作者も最初は、初めから万人のために書くわけではなく、誰かのために書き始めるのだろう。
    情熱の火で暗闇を照らして、
    自分を信じて前に進むしかない。
    どこかに、誰か伝わる人がいると
    信じてひたすら進むしかない。

    情熱の火が消えたら
    暗闇の先も見えず、何もできない。

    好きなモノを「嫌い」にしないと
    やりようがない気持ちってのが
    痛い程わかる…
    自信がなくなり、成功している方法に飛びつく、自分を見失う。
    小説家としてデビューしたものの
    ネット上のレビューで酷評
    売上部数も伸び悩む状態
    物語が書けなくなってしまった主人公は、その火が消えてしまっているところから始まる。

    そして、同時期にデビューした天才作家であり頭脳明晰、誰からも好かれる顔を持つが美少女作家と出会い、二人で作品を創ることになり…

    「ボーイミーツガールモノ」で
    「作家モノ」と分類することができる。
    主人公視点の描写は男子高校生のアレ
    でヒロインに「卑猥」と叱られても仕方のない感じでしたけど、小説への想いは二人ともとてつもなく熱い。

    プロの作家として見てきた「現実」と物語がもたらす力を信じる「理想」がぶつかり合いながら、前に進んでいく
    二人の熱量に、「小説を書きたい人」なら、読むのが苦しい、辛い…

    でも、更に心の火がもっと燃えるかもしれない。そんな物語。

    ・苦労して書いた作品も、その数分の一の時間で読んだ読者の評価に左右されてしまう。
    普段、このレビューもそうですが
    好き勝手書かせてもらってます。
    その弊害にも触れるし、出版業界の問題にも触れる。押さえるところはちゃんと押さえていて素晴らしい。

    同じ講談社タイガの「絶対小説」
    の混沌ぶりも「創作の想いの爆発」という印象を受けたけど、この作品も二人とも想いが破裂し合いつつ、新たな希望を膨らませてラストに向かって行くのが苦しいけど心地良かった。

    九ノ里は、いい奴…
    成瀬ちゃんも、いい子…
    主人公の妹は、痛いオタク…

  • 「辛くて、辛くて、たまらない……。わたし、今まで、小説って楽しいから書くものなんだと思っていました。どんな作家も、書くのが楽しくって仕方なくて、だからあんなにも楽しい物語が生まれているんだって。教えてください。千谷先輩。物語って、どんなふうに生まれるんでしょう──」

    売れない高校生作家と美少女人気作家のふたりが、一冊の合作を作ろうとする物語。
    タイトルとあらすじだけ見て、「男子高校生で売れっ子ライトノベル作家をしているけれど、年下のクラスメイトで声優の女の子に首を絞められている。 -Time to Pray-(時雨沢恵一)」みたいな話かなと思いましたが違いすぎた。


    これは、魂の叫びだ。
    全編が、子どもたちの慟哭で出来ているような、そういう小説だ。


    映像化作品特集から、凄く熱い感想をhttps://booklog.jp/users/heavycandy/archives/1/4062940345拝見して、読んでみました。ありがとうございます。


    主人公は売れない作品を書き続けることに疲れて、でも物語を書きたくて、何度も何度も倒れ、立ち上がり、泣き言を言う。ウダウダして前に進めない主人公を読みたいだろうか?そう問いかける主人公を読む我々はまさに今、ウダウダして前に進めない物語を読んでいる。

    それが辛くて幾度も本を閉じてしまう。
    読者はもちろん、彼が最後には書けるだろうと思っている。だからページを捲ることが出来る。

    ある程度本を、特にヤングアダルトジャンルの本を読んでいる人は「売れ筋」の小説が定形化して似通ったものになっていることはよく分かっていると思うけど、それ以外の本も是非売れて、欲しいなと…思うのです。

    小説の神様って、なんでしょうね。

  • この人、たぶん泣きながら書きたんじゃないかな。そうだといいな。これを商業用に書いたわけじゃないって思いたいな。それこそ、物語の力を信じたいもの。
    明日泣かないために小説を読む。なんて素敵な言葉だろうね。


    【追記】
    この血の叫びを聞き届けたからには、この先も物語が絶えないように、自分はいつも誰かにとっての九ノ里でありたい。

    作者様と担当編集者様の想いが多くの人に伝わりますように。

    さいごに、わたしはこの作品が好きです!

  • このレビューを目にする人は居ないかもしれない。けれど、誰かに伝えたいと思ったので書きます。

    読んでいて、主人公と共に作者の叫び声が聴こえるような作品でした。物語の主人公を通じて、現実の自分を少しだけ好きになれた気がします。
    「表現」を仕事にしている人でなくても、この物語から感じることは沢山あるのではないでしょうか。
    少なくとも、今の私にとってこの物語は必要で、私を救ってくれました。
    このタイミングでこの物語を届けてくれた相沢沙呼先生、本当にありがとうございます。読んで本当に良かったです。

  •  小説の神様、と云ったら志賀直哉か星新一でしょう?


     とても切実な物語。
     最近流行りの出版業界の内側のおはなしであるとか、経験を切り売りするような内容を思わせているであるとか、そういった要素を除いても、
     ことば、を繰るものにとって、切実、というか。
     この一億総小説家時代に、だから出来上がってきたのかなぁ、という印象。
     物語構造としては単純で、一章を読めばラストが想像できるようなストーリィで、それはまぁもしかしたらエンタメとしては不出来なのかもしれないけど、二時間の映画で泣いたりするよりはずっとかまし。

     このプロットはきっと、小説に魅せられた者であれば誰もが一度は思い付いたことのあるものなんじゃないかと思う。
     書くこと、もっと広義に、言語を遣って表現することへの門を開いてしまったときから、宿命的に纏わりついてくるテーマなんだと、思う。
     だからこそ陳腐で、形にするとどうしたってこういう根暗なガキが出来上がるんだろうけども、
     それでも、どうしても、気持ち悪いわ、って本を閉じてしまうことは出来なかった、です。
     何故かって、結局わかっているのだ。ガキの云うことがいちばん正しい、って。

  • 小説を書く人が何人か出てくる。
    何度も何度も小説をなぜ書くのか、書いてどうなるのか、書いてどうしたいのかが問いかけられる。現実問題、売れないとお金にならないし。売れそうなものを書けばいいのか?
    小説を読むのが好きだし、さらっと読んでいるが、作者の本音の一部を登場人物に言わせてるような気がしてくる。読後感は、よかった。

  • 作者らしい高い文章力で読ませるヘタレな主人公とエッジなヒロインのスタンダードな青春小説.主人公のヘタレというか卑屈さが某柴犬くんにさらに輪をかけたなかなかなものなので,つらく感じる人もいるかもしれない.
    その一方でその卑屈さは主人公を通して作者の小説への思いをぶちまけたメタ的なものに思われ,本が手放せない本好きな人にはここまで卑屈な理由も多分に共感できると思う.私もテレビアニメになり累計XXX万部も売れている小説を2~3ページ読んだだけであまりの文章のひどさに挫折したことが何度かあるし・・・
    青春小説を堪能すると同時に,文章のかけない自分ではあるけど商業主義な世の中で「理屈抜きで文章を書くのが何よりも好き」な人たちをもっと応援できないかなと考えさせられる小説.結構満足.

  • 若き高校生作家、千谷一也(ペンネームは千谷一夜)
    彼は売れ行きの伸び悩みや、作品の口コミサイトでの酷評ぶりに耐えかね、自分の物語を愛せないでいた。
    そんな時に転校してきた美人作家、小余綾詩凪(こゆるぎしいな)(ペンネームは不動詩凪)

    「わたしには小説の神様が見える」

    人気作家である彼女は物語に必要とされる人間だった。
    そんな2人がタッグを組んで作品を作ることになる。
    ぶつかり合う才能、自分を受け入れられず常に弱気な一夜、それを叱咤する詩凪。
    彼らの物語の行方や如何に!?

    小説家と言う職業の苦悩が良く描かれていました。
    やはり、読者からの評価が良くも悪くも彼らの全ての様です。
    たった少しの自分の作品を愛してくれる人の為に物語を綴る。
    作家とは孤独な生き物ですね。
    だから好きな作家さんはもっと応援しないとと思いました!
    読者からの励まし、それが彼らの次作の原動力になるはず!

    話は変わりますが、青春モノに限界を感じました。
    もう、わたしの歳には響かない、物足りないようです。
    これもひとつのステップなのかな?

  • 書くことに苦悩する職業作家ふたり。ともに高校生。この内容を追いながら読み進めていると、これを書いている作家はどうなんだろう悩んでいるんだろうか、パソコンのモニターを睨んでいるんだろうかと考えてしまい、思いのほか一気に読了。電子書籍が一般的になってきた今日このごろ、手に取ってページをめくりながら読む本はハードカバーでも文庫でも貴重なんですかね。
    小説の神様はきまぐれかもしれない。悩める作家たちに微笑んでいてほしいものです。

  • ☆4.5 正直、前半は主人公やヒロインにイライラし読み進めたくなくなるが期待以上の作品。最初は文学少女の二番煎じかと思い読みながら辟易していた。しかも小余綾がテンプレヒロイン過ぎて、この作家のようなラノベ脳にはやれやれだぜと思ってしまった。しかし、彼女がテンプレヒロインとして描かれる理由が分かると納得しかない。金太郎飴のように量産されていく美少女は無意味な存在でしかないが、この作品では小余綾は小余綾でなくてはならない。
    「文芸部なんて幽霊部員の巣窟でしょ」と口にする輩にこの作品を読ませたい。後半の熱量に圧倒され、ページをめくる手が止まらなかった。愛しい作品。無理に恋愛感を強めず、あくまで「物語を生み出すこと」に軸を置き続けて最後まで書き切ったのも好印象。

    勿体ないのは、友人である九ノ里と後輩の成瀬さん、病弱な妹の存在や展開が都合良すぎる。どうしても、ご都合主義だと否めない。

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著者プロフィール

【相沢沙呼(あいざわ・さこ)】
1983年埼玉県生まれ。2009年『午前零時のサンドリヨン』で第19回鮎川哲也賞を受賞しデビュー。2011年「原始人ランナウェイ」が第64回日本推理作家協会賞(短編部門)候補作、2018年『マツリカ・マトリョシカ』が第18回本格ミステリ大賞の候補作となる。繊細な筆致で、登場人物たちの心情を描き、ミステリ、青春小説、ライトノベルなど、ジャンルをまたいだ活躍を見せている。『小説の神様』(講談社タイガ)は、読書家たちの心を震わせる青春小説として絶大な支持を受け、実写映画化が発表された。最新作『medium 霊媒探偵城塚翡翠』が『このミステリーがすごい!(宝島社)』『本格ミステリ・ベスト10(原書房)』『2019年ベストブック』にてそれぞれ1位を獲得し三冠を達成。

「2020年 『小説の神様(3)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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