今昔百鬼拾遺 鬼 (講談社タイガ)

著者 :
  • 講談社
3.60
  • (49)
  • (141)
  • (152)
  • (14)
  • (4)
本棚登録 : 1507
感想 : 155
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (274ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062940351

作品紹介・あらすじ

「先祖代代、片倉の女は殺される定めだとか。しかも斬り殺されるんだという話でした」 昭和29年3月、駒沢野球場周辺で発生した連続通り魔・「昭和の辻斬り事件」。七人目の被害者・片倉ハル子は自らの死を予見するような発言をしていた。ハル子の友人・呉美由紀から相談を受けた「稀譚月報」記者・中禅寺敦子は、怪異と見える事件に不審を覚え解明に乗り出す。百鬼夜行シリーズ最新作。
   

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 昭和29年3月、記者の中禅寺敦子の元に、女学院の生徒で14歳の呉美由紀から「どう考えてもおかしい昭和の辻斬り殺人事件」が持ち込まれた。
    美由紀の先輩の女学生片倉ハル子が連続猟奇殺人事件の七人目の被害者となって斬り殺されたのが、おかしいのだという美由紀。
    ハル子は日頃から「鬼に祟られている。呪われている」とおびえていた、と言い、犯人はハル子と交際していた19歳の施盤工の男、宇野憲一、通報者はハル子の母親の片倉勢子。
    三代続いた日本刀による同じ血筋、片倉家の女性殺害。
    関連性はあるのか。三人目の犠牲者のハル子が口にしていた、祟り、呪い、鬼とは一体何なのか。
    本当に鬼の祟り、呪いなのか。
    研師の大垣喜一郎は言う。
    「刀は人殺しの道具」「出来るから殺したくなるんだ」。

    このお話は、勘のいい方なら、最初の数ページで、謎が解けたと思います。材料は全部出揃っています。
    私は、最後の最後まで真相はわからなかったけど、読後感は悪いお話ではなかったです。

    • くるたんさん
      まことさん♪

      読了おつかれさまでした♪
      鬼と呪いと因縁と…複雑に絡み合って読ませる作品でしたね♪
      「河童」はさらに読みやすく笑えますよ(⁎...
      まことさん♪

      読了おつかれさまでした♪
      鬼と呪いと因縁と…複雑に絡み合って読ませる作品でしたね♪
      「河童」はさらに読みやすく笑えますよ(⁎˃ᴗ˂⁎)
      2019/08/15
    • まことさん
      くるたんさん♪
      ミステリーなのに、最後の美由紀のセリフと、大人のロマンスにちょっと感動しました。「河童」も、今読んでます(^^♪
      くるたんさん♪
      ミステリーなのに、最後の美由紀のセリフと、大人のロマンスにちょっと感動しました。「河童」も、今読んでます(^^♪
      2019/08/15
  • 刀に纏わる因縁を絡めながら通り魔事件の真実を解明していくストーリー。
    気軽な気持ちで手に取ったけれど、なかなかどうしてページ数以上の読み応え。

    なんだか言葉が、文章がぐいぐい迫って入り込んでくるような感覚がたまらない。この世界に取りこまれ絡めとられた気分になる。
    終盤は特に次から次へと言葉が、胸の内の言葉が、人たるもの、人の心というものが迫ってくる、そして必死にその言葉たちを自分の中に取り込む。

    特にあの子の言葉は斬りかかってくる感覚でしばし息を忘れるぐらい圧倒される。面白かった…心地良い疲労感に包まれ読了。

    • まことさん
      くるたんさん。おはようございます!
      やっと読みました!久しぶりの京極さん♪
      最近、書店に全然行っていなかったので、くるたんさんのレビュー...
      くるたんさん。おはようございます!
      やっと読みました!久しぶりの京極さん♪
      最近、書店に全然行っていなかったので、くるたんさんのレビューを拝見するまで、発売されているのを知りませんでした。
      姉妹編も読もうと思っています。読みやすい長さで、とても面白かったです(^^♪
      ご紹介どうもありがとうございました!!
      2019/08/15
    • くるたんさん
      まことさん♪おはようございます♪

      コメントありがとうございます♪そして素晴らしいレビュー!!
      読んだ時の記憶がよみがえりました♪

      最初の...
      まことさん♪おはようございます♪

      コメントありがとうございます♪そして素晴らしいレビュー!!
      読んだ時の記憶がよみがえりました♪

      最初の数ページで⁇私も全然わかりませんでした(>_< )
      美由紀の啖呵をきるシーンが爽快ですよね。
      手に取りやすいボリュームなのも魅力ですよね。
      ぜひシリーズ楽しんでみてください♪
      2019/08/15
  • 京極夏彦先生の著書はあの分厚さに圧倒されてしまうので、ほとんど読んだことがなく、物心ついてからしっかりと京極先生の本を読んだのは本書が初めてかもしれない。

    本書が京極堂シリーズでの一部であるということは知っている。それなのに京極ワールド初心者の僕がスピンオフ的な本書から京極先生の本を読み始めるなどと言ったら、それこそ京極先生の熱狂的なファンに斬り殺されても文句は言えないのだが、とりあえずそこら辺は曖昧にしつつレビューを書いてみたいと思う(笑)。

    まず、京極先生の文章が独特だ。
    終戦から間もない時代が本書の背景なのだが、言葉使いが読みにくくはない程度に古風な言葉使いがされている。このあたりの微妙な文章加減が絶妙。慣れるまではちょっと読みすすめるのに時間がかかる。しかし、慣れてしまえばサクサクと小気味よく読むことができる。

    本書は題名にある『鬼』の因縁を持った人物が、鬼の怨念、祟りの宿った刀を所持したことによって次々と事件を起こしてしまうというお話。
    「昭和の辻斬り」という日本刀を使った通り魔事件が連続して発生し、最後に殺された女学生の恋人と名乗る男性が逮捕されるが、そこには違和感が漂う。本当にこの男性が犯人なのだろうか・・・。

    本作はミステリーというか謎解きというか、ほとんどが本書の主人公で探偵役でもある記者の中善寺敦子と女学生呉美由紀の会話のシーンによってすすめられるという独特の描写、なるほど、これが京極ワールドか。
    やはり、話の節々に中善寺敦子の兄・中善寺秋彦の存在がでてくるので、やはりシリーズ第一作で京極先生の処女作『姑獲鳥の夏』は避けて通れないのだろう。こちらはいずれ読んでみたい。

    そして、この本の最大の見せ場は、犯人がだれかという推理や新撰組の鬼の副長・土方歳三を絡ませた刀の由来もさることながら、やはりラストシーンだ。
    事件の全容を聞いた後、呉美由紀が激おこプンプン丸で大人達に正論をぶちかますところは読者の心をすかっとさせてくれる。
    非常に興味深く読めた。

    本書は今昔百鬼拾遺シリーズ3部作なので、次の『河童』、『天狗』と読みすすめていきたい。

    • くるたんさん
      kazzu008さん♪こんにちは♪

      これはボリュームといいストーリーといい読みやすい京極作品ですよね♪

      次なる「河童」はもっと読みやすい...
      kazzu008さん♪こんにちは♪

      これはボリュームといいストーリーといい読みやすい京極作品ですよね♪

      次なる「河童」はもっと読みやすいかと…♪
      ぜひ楽しんでみてくださいね♪
      2019/09/12
    • kazzu008さん
      くるたんさん、こんにちは!
      初の京極ワールド、堪能させていただきました。
      確かにこの『鬼』は京極ワールドの中でもライトで読みやすいですね...
      くるたんさん、こんにちは!
      初の京極ワールド、堪能させていただきました。
      確かにこの『鬼』は京極ワールドの中でもライトで読みやすいですね。面白かったです。

      いま、早速、『河童』を読み始めています。まだ女学生たちが河童の話できゃふきゃふしているところなので、なんの事件も起こっていません(笑)。
      楽しみながら読ませててもらっています!
      2019/09/12
  • 久しぶりの京極夏彦。新刊が出たので、既刊本から読み返し中です。

    こちらは主人公が若い女性なので、価値観や考え方がまた変わってとても面白く読めました。刑事さんの子供刑事ぶりがコミカルで笑えた。(子供刑事ってあだ名、すごく的をえてる!)
    鬼に関する講釈は、京極堂不在のため薄いので、ここらへんかなりページ数の削減になってる。続きが読みたい!

  • 鬼、河童、天狗と3冊連続刊行、しかも別の出版社となるシリーズの第1弾。とはいえ、存在を河童で知って、鬼がなかなか見つからないということで、順序的には、河童の後となりました。河童は、多々良先生が出るのもあって、優先度上がったのもありますが。
    本編で中尊寺敦子と呉美由紀の出会いがありますが、その点は読む順にはあまり影響なくすんなり入るのですが、3作読むと、この本が一番暗さや陰惨さを感じるところがあるので、その点ではこの本が先でもよかったと思います。
    呉さんの関係者が絡むことで、他と感じが違うところもあるし、敦子さんも、理屈っぽさや後ろ向きっぽい感じがしてしまうからというのもありますが、何より事件の根本に関わる物のイメージがそうさせるのかもしれません。
    鬼自体の話は少ないというか、何かに執着する人こそが鬼なのかという感じがしました。

  • 「迚(とて)も恐い——と云っていました」

    から始まる物語。百鬼夜行シリーズのスピンオフに位置する作品。書痴である京極堂こと中禅寺秋彦の妹の敦子が昭和の辻斬り事件に挑む。被害者は7名。依頼者の呉美由紀の先輩にあたる高等部1年の片倉ハル子も被害にあった。犯人が用いた凶器は日本刀。ただの日本刀ではない...鬼の日本刀だ。片倉ハル子も被害にあう前に謎の言葉を残している。鬼の因縁...。調査が進むにつれて片倉家の歴史が紐解かれていく。

    鬼とは本来はないもの、存在しないのではなく、ないという形を指すらしい。さてこの事件は鬼とどうかかわりがあるのか。思いもよらない過去に繋がった時、ページをめくる手が止まらない。

    京極夏彦の構成大好き。漢字の使い方、表現の仕方もこだわりを感じる。京極さんにしては読みやすい分量でサクッと読める。この勢いで京極作品全部読んでいきそうだ。

  • いわゆる京極堂シリーズは読破してしまったので、京極夏彦からもしばらく足が遠のいていた。本書を手にしたきっかけは、文庫に書かれている紹介文に「中善寺敦子」の名を目にしたからだ。

    タイトルにもあるが、テーマは「鬼」である。憑きもの落としで、その能力、つまり言霊の力を使い、難事件を解決してきた京極堂の妹たる中善寺敦子が一体どんな推理を展開するか――興味を持った。日本刀による連続「辻斬り」事件。禍々しくはあるが、昭和という時代に果たして辻斬りなどという事件が起きるのか? 辻斬りと見える事件は、一見明治時代から続く因縁に捕縛されているかのような展開で、物語は進む。ここまでは、タイトルにもある通り「鬼の祟り」とも思える。

    敦子と辻斬り事件の最後の被害者であるハル子の友人、呉美由紀の会話を中心に、刑事、刀研ぎ師、被害者片倉ハル子の母親と片倉家の代々の人たちの話が絡みあい、物語は進む。因縁に呪われた一家としか見えなかった片倉家だが、敦子の慧眼により、「因縁」という不合理性の殻は破られ、そこから新たな、合理性に導かれた真実が明らかになる。京極堂ほどの長広舌はないけれども――それが本書を、「読み易い」頁数にしているのかもしれないが――、妹が発する言葉もなかなか力強い。それに畳みかけるように、若さがほとばしる言葉を美由紀が、最後に叫ぶように話す場面はクライマックスにふさわしいだろう。

    京極堂シリーズのスピンオフということで、本流のシリーズと比べて、テーマをひたすら深く掘り下げることはしない。深い洞察の結果、「この世に不思議なことなど一つもない」とうそぶく京極堂がいないのは、このシリーズの愛読者からすれば、やや物足りなさを感じるかもしれない。しかし、読み易い長さで、かつ小難しい歴史にまで分け入ることなく事件を解決する「今昔百鬼拾遺」シリーズは、京極夏彦の魅力を手軽に味わいたい読者の入門書として推奨されるべきであろう。これまで、あの千頁を超える物語の長さに敬遠していた者は、本書と続くシリーズで京極夏彦という作家の魅力を知ることになるだろう。

    すっかり京極堂シリーズに、つまり中善寺夏彦という拝み屋に魅了された人にとっては薄味であろうが、妹・敦子もなかなか理屈っぽい。しかしその「理屈」が徐々に、絡みあい混沌さを増す事件を解きほぐし、事件の構図を詳らかにしていく過程こそ、京極堂シリーズの真骨頂なのだ。これらのシリーズを通して、読者は言葉が持つ力の強さを知ることになる。

    「今昔百鬼拾遺」シリーズは河童、天狗と続くらしい。第一弾の「鬼」を手にした以上、近いうちにこれらも読むことになる。兄の周りほどは癖のある人たちはいないが、本書ではまだ女子高生という美由紀のキャラクターが、新境地を切り開いたように思う。残りのシリーズを読むのが、今から待ち遠しい。

  •  京極堂シリーズ本編の現時点の最新作『邪魅の雫』が刊行されたのは2006年。スピンオフを含めても、2012年の『定本 百鬼夜行 陽』以来、久々の新刊である。今回は講談社タイガから刊行。3ヵ月連続で、異なる3社から刊行予定という。

     京極堂こと中禅寺秋彦は登場しない。探偵役に当たるのは、妹の中禅寺敦子である。「昭和の辻斬り事件」と称された連続通り魔事件。敦子は、7人目の被害者である片倉ハル子の友人、呉美由紀から相談を受け、解明に乗り出す。

     文章は比較的平易だが、相変わらず理屈っぽい。京極堂本人が出てきたら、この程度では済まないが。一ファンとしては、読みやすいような物足りないような。ところが、さほど複雑ではなさそうな事件の構図を探っていくと…。

     ある家系に不幸な事件が相次いだとする。ネット時代の現代であっても、因縁とか言い出す輩はいる。むしろ、ネット時代だからこそ爆発的に噂は広がるだろう。舞台は戦後間もない昭和29年。「稀譚月報」の記者である敦子は、あくまで偶然と考える。

     しかし、当事者が因縁と思い込んでいるのが厄介なところ。そんなときこそ陰陽師の出番…と言いたくなるが、探偵役は敦子。兄ほど弁が立たない彼女にできるのは、関係者に会い、事実を丹念に追っていくこと。それにしても皆饒舌だな。

     結局、人が人を殺すのである。刀が血を欲するわけではない。因縁とか何とかは後付けでしかない。その結論に至るのに、随分遠回りした気がしないでもないが、京極堂がやっているように、必要なプロセスであり、読者には醍醐味に違いない。

     タイトルにある「鬼」とは、日本人が思い浮かべるステレオタイプの「鬼」ではなく、概念としての「鬼」。本来は見えないものだという。まあ、こんな真相はにわかには信じがたいし、見えないもののせいにしたくもなるか…。

     軽めとはいえ、久々に味わったこの感触。続く2作も読んでみよう。

  • 「百鬼夜行シリーズ」の番外編かな。
    刀の話なんで審神者にはオススメかもw

    犯人はたぶんすぐわかっちゃう(^_^;) でもそれはどうでもよくて蘊蓄を聞いてるうちにストンと腑に落ちるのがこのシリーズの良さ。
    しかし主人公は京極堂ではなく、妹の敦子と呉美由紀なので憑き物落としにはならない。けれど、美由紀の若さとまっすぐさで読後感はさっぱりする。

    「これ、綺麗ごとですか? 私、子供だから綺麗ごと云いますよ」

    なんやかんやコンプレックスを抱えてる敦ちゃんには、彼女みたいな存在は救いかも知れない。
    いつもに比べると物足りない感じもあるけど、3部作らしいので全部読むと丁度いい?

  • 三京祭で鉄鼠の檻と虚談とヒトごろしの三つの話をうまいこと織り交ぜた短編を作って欲しいということで、その三冊集めると特典として読むことができた短編(といっていいのか?)が出版されたものが今作。

    見事に要素を取り入れてきてたのでやはりすごいなぁと。
    ヒトごろしの要素が一番強かったので、ヒトごろしを先に読んでいたほうが楽しめると思う。
    もちろん読んでなくても楽しめるようにはなってるけど。

    中禅寺敦子と呉美由紀のコンビもよかった。
    もともと好きなふたりだし。

    お互い影響をうけたあるふたりに似てきちゃってるのがなんだか微笑ましい。

全155件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1963年、北海道生まれ。小説家、意匠家。94年、『姑獲鳥の夏』でデビュー。96年『魍魎の匣』で日本推理作家協会賞、97年『嗤う伊右衛門』で泉鏡花文学賞、2003年『覘き小平次』で山本周五郎賞、04年『後巷説百物語』で直木賞、11年『西巷説百物語』で柴田錬三郎賞、22年『遠巷説百物語』で吉川英治文学賞を受賞。著書に『死ねばいいのに』『数えずの井戸』『オジいサン』『ヒトごろし』『書楼弔堂 破暁』『遠野物語Remix』『虚実妖怪百物語 序/破/急』 ほか多数。

「2023年 『遠巷説百物語』 で使われていた紹介文から引用しています。」

京極夏彦の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×