神さまのビオトープ (講談社タイガ)

著者 :
  • 講談社
4.08
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本棚登録 : 914
レビュー : 54
  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062940672

作品紹介・あらすじ

うる波は、事故死した夫「鹿野くん」の幽霊と一緒に暮らしている。彼の存在は秘密にしていたが、大学の後輩で恋人どうしの佐々と千花に知られてしまう。うる波が事実を打ち明けて程なく佐々は不審な死を遂げる。遺された千花が秘匿するある事情とは? 機械の親友を持つ少年、小さな子どもを一途に愛する青年など、密やかな愛情がこぼれ落ちる瞬間をとらえた四編の救済の物語。

感想・レビュー・書評

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  • 結婚して、2年で夫の鹿野くんを交通事故で亡くした、高校の美術の非常勤教師のうる波と、うる波にだけ見える幽霊になった画家の鹿野くんの周りで起こる事件を描いた4つの連作短編集。

    幽霊って…あんまりメルヘンっぽい話は苦手と思ったらメルヘンではありませんでした。
    4つとも読ませるストーリーで面白かったです。

    「アイシングシュガー」は大学の後輩の恋人同士の佐々と千花の話で、佐々が不審死を遂げます。書き方が違えば、サスペンスにもなった話。

    「マタ会オウネ」は友だち同士の人間とロボットの春くんと秋くんのお話。春くんと秋くんは本当の友だちとは何か、どうして自分たちが友だちだと認めてもらえないのか、ロボットと人間の違いはどこにあるのかを考えています。

    「植物性 ロミオ」は大学2年生の金沢くんと、小学4年生の秋穂ちゃんのお話。金沢くんがうる波の絵画教室に通ってくるのは両思いの秋穂ちゃんと親に隠れて会うためだと発覚します。

    「彼女の謝肉祭」はうる波が勤める高校の三年生の立花さんと安曇くんの二人のキャラクターが後半、爆発!炸裂!という感じで、爆笑しました。でも、鹿野くんじゃないけど、二人の将来は気になりました。

    エピローグの西島さん夫妻の話もよかったです。

    4篇とも、会話が生き生きとして、その世界に入り込みやすく、鹿野くんの幽霊も自然で、短編とは思えないくらい、どの話も満足感がありました。

  • 普通とか常識と思っている事はあるけど、愛のカタチって本当は色々あっていいのかもしれない。愛とは心で感じてしまうものであり、感じてしまうことに必ずしも蓋はできない。しかし世間は普通でないものを異質とみなしてしまう。愛のテンプレートを押し付けがちだ。ところが人間はもともと神さまが不完全に設計したものではないかと思う。みんな同じではないように作られているんじゃないだろうか。本人達は普通でない事に悩み苦しむ。でも本当に試されているのは周りの人間なのかもしれない。果たして大きな愛情をもって接することができるだろうか

    • まことさん
      kanegon69さん♪こんにちは!

      この作品も素敵というか、面白いというかよかったですよね(*^^*)
      『わたしの美しい庭』はケチ...
      kanegon69さん♪こんにちは!

      この作品も素敵というか、面白いというかよかったですよね(*^^*)
      『わたしの美しい庭』はケチって図書館に予約していたのですが、図書館が、コロナで昨日から、休館になってしまいました。
      買おうかどうか悩んでいます。
      コロナといえば、フランスは日本よりもかなり大変みたいですね。
      同僚の皆さんご家族が心配ですね。
      kanegon69さんも、どうぞお体にお気をつけてお過ごしください。
      2020/04/03
    • kanegon69 さん
      まことさん、単行本は高いですから悩みますよね。本はとても良かったですよ。

      フランスではロックダウン中で、本当に大変みたいです。どうにか終息...
      まことさん、単行本は高いですから悩みますよね。本はとても良かったですよ。

      フランスではロックダウン中で、本当に大変みたいです。どうにか終息しとほしいですが、しばらくかかりそうですね、、
      2020/04/03
  • 人には人の生き方がある。
    それを否定することはできないなぁと思った。
    ただ夢の中で生きることは、私はできない。

  • 何で紹介されていたのか……忘れてしまった。
    小説に触れる機会が少なくなっていたので読まないとという気持ちでページをめくり始めたのだけど、どの章にものめり込んだ一冊になった。

    ある日、唐突に夫「鹿野くん」を亡くした、妻うる波。
    彼女はそのことに耐えられず絶望するが、ふと声をかけられ、側に「鹿野くん」が幽霊として存在していることを知る。
    個人的には、うる波の鹿野くん呼びがお気に入り。二人の絶妙な距離を表しているのが分かる。

    こんな風に始めると、現実味のないお話のように思うのに、うる波と鹿野くんの調和がとても自然で、また「いなくてはならない」切実感に満たされている。
    だから、こうも思う。かけがえのない人を亡くした経験を持つ人は、この小説の在り方に受け入れられない気持ちを抱く人もいるかもしれない。

    蛇足だけど、たまたまこの本を読んだ後に、米津さんのlemonが聴こえてきた。
    この曲がタイアップされていた「アンナチュラル」も大好きだったのだけれど、うる波のプロローグと重なって聴こえた。

    うる波は「鹿野くん」が戻ってきた現実に癒され、でもいつか知れない別離に怯え、その生活を正しいとも、認めて欲しいとも思わない姿勢に、その人にとっての「今」があって良いんだと私は取った。

    そういう意味で、「アイシングシュガー」は怖い。
    「私もうる波さんのような『現実』が欲しい」と思い込み、世界を手づから構築することは、ただのウソだ。
    でも傍目には、千花もうる波も変わらない。
    だから、怖い。

    「植物性ロミオ」における、プラトニックな幼女愛も怖い。
    小学四年生の女の子に対して、好きだけど取り立てて何かをしたいわけではないという在り方を、“なぜいけない”のかと金沢くんが説く場面。

    大人になれば年齢差の大きな夫婦なんて沢山いる。
    好きだという気持ちは自然に生じるもので、いたずらしたり、性的な関係を持とうという思いだってないのなら、良いじゃないか。

    いや、でも。
    私はその想いにある種の「暴力」を感じ取ってしまう。
    少女の持つ、身体的な未熟さ、恋といって何も知らないいたいけさは、守られなければならないと思う。

    その考えで、金沢くんが排除されることになっても。
    だから、私は私の世界ではすべての人を守ることは出来ないと思った。

  • 表紙の絵がほのぼのとしていますが、軽くはない本です。

    何が正しくて、どこからが間違っているのか、普通というか常識というか一般的な基準というものがいかに間違っているかを思い知らされた本でした。

    登場人物は皆、否定的な見方をしていなくて、評価は読者に任されているところも良いですね。

    これからうる波さんと狩野くんはどうなるのか、色々想像してしまいました。

    おすすめの一冊です。

  • いろんな愛の形や、いろんな繋がり方がある。
    たどり着く果ては天国でもあり地獄でもある。
    現実も幻想も天国も地獄も全ての価値観は自分だけのもので、
    一人で抱えていく覚悟や苦悩はついて回るけど傷つけられる必要はない。
    正論は凶器で簡単に人の心を傷つける。
    だけど、自分の価値観や正論の中でも生きられず、
    駄目だと思いながらも選択さえせずに与えられたものを受け取ることもある。
    それなのに選択したとして正論で覚悟を問いただしてくる。
    そんな自信も覚悟ももっている訳もない。
    だから誰かに受け入れて欲しい、大丈夫と言って欲しい。
    万人の共感よりも、唯一の人の大丈夫に救われることもある。
    相手のためによりも、自分のためにというエゴを含んだ願いの方が求められている気がする。
    そのエゴを含んだ願いを向けられたその一瞬が、大丈夫と繋がっていく。
    自分の愛を信じながらも自分の言葉で自分を傷ついて、それでも大丈夫と鹿野くんに言って欲しいうる波ちゃん。
    うる波ちゃんのそばにいれはいけないのにそばにいたい鹿野くん。
    秘密を抱えて天国でも地獄でもある果てで生きている西島さん夫妻。
    春くんと生きる世界を作りたい秋くん。
    弱い自分を受け入れて一緒にいて欲しい立花さんと安曇くん。
    佐々くんも千花ちゃんも、金沢くんも秋穂ちゃんも
    みんな自分のエゴのために生きている。
    だから安心する。

  • とても良かった!
    歪んでいるのだけど、どこかフワフワと柔らかく、そして切なくて本当によかった。
    鹿野くんとうる波ちゃんの絶妙かつ冷静な問いやつっこみにクスっとなったり、千香ちゃんの狂気に背筋が凍る思いをしたり、秋くんの純粋な気持ちに考えさせられたりした。
    文章もあたたかく、ストレートに届いた。
    ラストも納得!

  • ご〜ん。結末に唸ったところ、最後のエピローグ「秘密II」に撃ち抜かれた。まず主人公の名前「うる波」が好き。独善的な千花、ロボットを最愛の友とする少年、ロリコン、ストーカー疑惑の無骨な美大受験生。どの短編も刺さる。いろんな幸福の形。もともと許容範囲の広い自分でも(笑)考えさせられる。それにしても物語が進むにつれうる波の夫、鹿野くんをどんどん好きになる。彼はうる波の妄想?生み出す未来はないけどうる波には触ることすらできる……なんだか羨ましいと思ってしまった。とても良かった。

  • 歪んでいて、優しくて、狂気すら孕んでいるのに、やっぱり優しいと感じてしまう。そう感じる自分もどこか狂っているのかもしれない。
    正解なんてどこにもなくて、心はいつでも自由で、だからこそ苦しくて、誰かの近くにもいたいよね。
    鹿野くんがいつまでもうる波のそばにいてくれますように。

  • 凪良ゆうさんらしい作品。
    登場人物が、みんな所謂「普通」ではなくて、心惹かれるというか、応援したくなるというか、自分がいいと思うなら、いいんだよなあと思わせてくれる人柄ばかりだった。
    読了感は、よくおすすめ。ほわほわした不思議な気持ち。読みやすく、一気に読める。

    ただ、『流浪の月』といい『わたしの美しい庭』といい全てが似た展開?テイスト?人物像?になってしまってる感はあるから、違った感じのも読んでみたいなと思った。

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著者プロフィール

凪良ゆう(なぎら ゆう)
小説「花丸」冬の号『恋するエゴイスト』(白泉社)でデビュー。『雨降りvega』(イラスト:麻々原 絵里依)、『365+1』(イラスト:湖水 きよ)などの作品を手がける。主にボーイズラブ系で活動。
作品多数。主な作品に、『積木の恋』『未完成』『美しい彼』『ショートケーキの苺にはさわらないで』『おやすみなさい、また明日』『2119 9 29』『雨降りvega』など。
『悩ましい彼 美しい彼3』がBLアワード2020 BEST小説部門第1位を獲得。

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