ぼくの村の話 (1) (モーニングKC (305))

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  • 講談社
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レビュー : 2
  • Amazon.co.jp ・本 (219ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784063283051

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  •  「ぼくの村」とはいわゆる三里塚(千葉県成田市三里塚および同山武郡芝山町)のことである。もしかして若い世代には「三里塚ってなんじゃらほい」という人もいるかもしれないので、ちょっと説明を加えよう。話は一九六六年(あれからもう三〇年以上にもなるのだ)にさかのぼる。国はこの三里塚に新たな国際空港をつくる、と決めたのである。「それがボタンのかけちがいのはじまりであった」と言ってしまえば一言ではあるが、その村の人々にとってはそんな一言では済まされるものではないだろう。この物語の主人公は言う、「1966年7月4日 国は決めたんだ ぼくらの牧場を…… ぼくらの村をつぶすことを……!」(第三話 ベトナム戦争)と。
     今では莫大な数の人々がこの空港から世界へ飛び立ち、この空港を通って世界から日本へとやってきている。そのうちどれだけの人間が一瞬でもいい、この空港のために苦しみ、悩み、傷つき、そして多くのものを失った人間がいたことを思い起こすのだろうか。この『ぼくの村の話』は突然「ここに空港を造るから出ていけ」と言われた農民たちのたたかいの物語である。そして主人公の「ぼく」はその時小学生だった少年である。今の自己決定力を奪われ、セルフイメージを描けなくなった少年たちではない。この時代を知らない人には理解できないかもしれないが、自分たちが生きることを脅かされた子どもたちは少年行動隊を組織し、自らの生活と存在をかけて実際にヘルメットをかぶり、国家権力とたたかったのである。
     それにしてもここに出てくる教師の姿は悲しい。たとえば農民たちは反対派と条件派(買収等の条件を受け入れて土地を手放す人々)とに分かれていくのだが、そうした事情が子どもたちの間にもひびを入れるようになってくる。「条件派の子とは口をきくな」という短絡的な親の声に対して少年は「敵は公団だっぺ」と言い切り、友情を守ろうとする。しかし、教師のせりふはこうである。
     教師「哲平(主人公)……5年2組にはな……何人もの条件派の家の子がいる。そして反対派の子もいる。もし先生が空港に反対だといったら条件派の子どもたちは何と思うだろう……」
     哲平「……」
     教師「その逆も同じだ。だからおれは賛成とも反対とも言えんのだ。おれにとってはみんな大事な生徒たちだ」
     源次(条件派の子)「賛成でも反対でもねえだとよ。バッカヤロー。そんなこといってるうちになァ、ブルドーザーがやってきて学校つぶされちまうんだぞ!どうなんだよ先生。そうなっても賛成でも反対でもねえのかよオ!」                         (第七話 強権)
     子どもたちは反対派だろうが、条件派だろうが問題の本質を見抜いている。しかし、中立を気取る教師の口からはどの子も大事だといいながらどの子も傷つけてしまう偽善しか出てこない。こうした教師の姿勢は今どれだけ変わったのだろうか、この物語では子どもたちはこのような教師たちを偽善者として見限っていく。もしかして、今も子どもたちは教師を見限っているのではないか、なんてふと考えてしまった。三里塚闘争を舞台にしているが教育は誰のために行われているのか、問いかけてもいる力作。
     そうそう、登場する地名、人名、政党名、団体名は実在のものとは別の名称が冠せられている。さあ、歴史的に正しい固有名詞に戻してみよう。

    ◎現代史を活字で読むのが苦手な人に最適。自分の教師観が試される秀作。
       ★★★★

  • なぜにこの漫画の登録者がゼロ???
    『夏子の酒』の尾瀬あきらの代表作で、全7巻。
    成田空港闘争の話(事実に基づいたフィクション)。

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