透明なゆりかご(1) (KC KISS)

著者 :
  • 講談社
4.20
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本棚登録 : 705
感想 : 58
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  • Amazon.co.jp ・マンガ (176ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784063409574

作品紹介・あらすじ

看護学科の高校3年生の×華は母親のすすめで産婦人科院の見習い看護師として働くことになる。中絶の現場やその後処置を体験して一時は辞めそうになるが、出産の現場に立ち会い生まれる命の力強さに感動し、仕事を続けていく決意をする。「多くの人に教えたい、読んでほしい」回を追うごとに読者からの反響が大きくなっていった感動作、いよいよコミックスで登場!

看護学科の高校3年生の×華は母親のすすめで産婦人科院の見習い看護師として働くことになる。中絶の現場やその後処置を体験して一時は辞めそうになるが、出産の現場に立ち会い生まれる命の力強さに感動し、仕事を続けていく決意をする。「多くの人に教えたい、読んでほしい」回を追うごとに読者からの反響が大きくなっていった感動作、いよいよコミックスで登場!

感想・レビュー・書評

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  • 「子供は愛されるために生まれてくる」という言葉が嫌いだった。
    お腹の中で殺された赤ん坊や愛されなくても生きていかねばならない子の存在を否定しているから。

    「子供は望まれて生まれてくる」という言葉が嫌いだった。
    望まれず摘まれる赤ん坊や望まれず産み落とされた子の命を貶めているようで。

    理不尽はある。傲慢がある。
    善意から出た祝福の言葉に恵まれた者・持てる者の無自覚の優越を勘繰ってしまうのは、きっと私の性格が悪いからだ。
    ずっとそう思っていた。今でもそう思っている。
    でも×華がカナちゃんにかけた「生まれてきただけでカナちゃんは幸せになれる権利があるから」という言葉はスッとしみた。それは彼女が産婦人科で働く中で、幸せなだけじゃない、哀しい出来事や辛い出来事を沢山経験したから。
    中絶された胎児に一人一人声をかけながら小瓶に詰め、「光を見ずに終わるのは可哀想だから」と窓から景色を見せてあげるシーンで、涙がボロボロ流れて止まらなかった。
    絵が下手?それがどうした。下手だからいい絵じゃないと誰が言える?この作品にはこれしかない絵だ。何故って一人として同じ顔の赤ん坊がいない、同じ顔のお母さんがいない、愛くるしい赤ん坊がいない。
    読後感は重たい。ごっそり持ってかれる。後々までひきずって、お風呂に入ってる時や夜寝る前に思い返しては「はあ~……」とため息ばかりついてしまう。
    めでたしめでたしで終わる話もあれば、哀しい結末を迎える話もある。
    けれども×華は言う、虐待も疑われる授乳中の事故で死んだ赤ん坊、健太君は愛情につつまれて死んでいったと。

    信じる者は救われる。
    人には信じたいものを信じる権利がある。
    だからフィクションは支えになるし生きる芯にも成りえる。私もそうであればいいのにと願う、真相は永遠にわからなくてもそう信じていたいと思う。
    自分が信じたい事を、読者にそうあってほしいと願わせるのが良い語り部の条件なら、×華は十分にその素質がある。

    産婦人科の話だ。それも裏側の。

    めでたいだけじゃない。
    中絶が語られる。
    流産が描かれる。
    虐待が審議される。
    壮絶な体験がありふれた出来事のように淡々と語られて、自分勝手な人たちがしっちゃかめっちゃか話をひっかきまわす。

    目を背けたい。逸らせない。この人達がどうなるのか、幸せになれるのか知りたくて、どうか幸せになってと狂おしく願いながらページをめくってしまう。

    子供は愛されるために生まれてくるのか、私にはわからない。
    子供は愛してほしくて生まれてくる、その言葉には共感する。

  • ネットの無料試読で気に入って購入。産婦人科でアルバイトをした作者の経験に基づいたお話、7話。

    妊娠・出産は本当に奇跡の連続で感動的だけど、作者が産婦人科で見たのは人工中絶や育児放棄・性被害・虐待などの厳しい現実。シンプルな絵と、看護師見習いだからこその素直な思いが良い。作り込まれた絵や押し付けがましい雄弁なコメントよりも、断然、命の重さや厳しい現実がより胸に刺さり、心が痛くなる。

    【概要】
    ①人工中絶から考える命の重さ
    ②不倫の末に一度は子どもを置いて逃げた母と子どもの悲しい結末
    ③紙袋に入れて産婦人科前に赤ちゃんを捨てた高校生母が語らない心の内
    ④相手から望まれなかった妊娠で心に深い傷を負う女性
    ⑤母の再婚相手から性被害を受け続けていた少女の母への思い
    ⑥我が子を可愛いく思えない母親と、お腹の中で胎児が亡くなってしまった経験を経た母親から学ぶ母性の正体
    ⑦母親に虐待され離れて暮らした女性が感じる母親になる不安と希望と母子手帳

  • 「大事なことだから覚えるように 本当の第1位は
    アウス(人工妊娠中絶)だから」と言い放つDr.瀬戸がメチャクチャかっこよかった、NHKドラマ版。

    「胎児はエタノールにはいると
    鮮やかな朱色になって光り輝く」
    「もう死んでるのに キレイだーー」

    業者がきて火葬するなんて知らんかったなぁ〜。


    大好きな安藤玉恵さん出演の回、
    「私は健太くんは愛情につつまれて
    死んでいったんだと思いたかったーー」など
    各話毎の主人公の希望的回想シーンが
    ピュアで切実で尊くて泣ける。

  • 1997年当時の産婦人科事情ではあるけど、陽の部分ばかりじゃなくて、産婦人科における陰の部分にスポットを当ててるなーと思った。
    命の生まれる場所であると同時に、命が消される場所でもある。
    さまざまな事情があるにしろ、なんだか切なくて。
    『透明な子』『保育器の子』は読んでいてきつかった。

  • ドラマが大好きで漫画も読んでみた。
    母と娘や母性について考えさせられる。
    いつもエピソードの最後の言葉たちが素敵

  • 読んでいて辛かった。 作者が1997年にアルバイトをしていたと書いていたので実在していたらみんな自分と同い年のはず。 個人的に後藤さんの話が印象的で次に生まれた赤ちゃんはお兄ちゃんの思いとともにたくさん愛されて欲しい。 ミカちゃんのエピソードを読んでから母子手帳を見て見たけど何も書いてなくて悲しかった笑

  • ①そういえば、俺が母親の乳房以外は女性器を知らない頃に読んだポルノに、主人公の産婦人科医師の助手になりすまして、目星をつけている女が夫海外赴任中の浮気の結果を掻爬されるのを見学するという場面があった。いまから思えばドギツイが、そのときはなんとも思わなかった。
    快楽追及を至上の人生方針としてきた主人公は全巻の結末で「パイプカットを元に戻そうか」と勝手なことをほざく。

    12月10日の読売新聞投書欄に15歳の少女が「出生前診断で障害児の可能性があると知ると中絶するのはひどい」という意見を書いていた。一応、法律的には「母体の健康を守るため」以外は障害児であることではできないことになっているらしいが、「それでも生む」のは数%以下と読んだ記憶がある。選挙権のある歳になったら「厳格化」推進の政治家を応援するか。
    「中絶は女(母体)の権利」というフェミニスト女性政治家もいるようだが。
    占領軍は日本の人口膨張と米兵の子孫が日本に満ちるのを畏れ中絶条件に「経済的事由」を追加した。
    母体に差し迫った危険のある場合の除去は認めざるを得まいが、それ以外の場合「命はカネに替えられない」筈。「rapeなど望まれなかった妊娠」など様々な事情での中絶の許諾はいつもアメリカ大統領でいつも争点になるが。

    私は受精卵にすでに<魂>はあると思う。着床のごく初期には、母体が気づかぬうちに流産するケースもあると聞くが、そのようなケースを除いて、母体が悲しみに暮れるのは<魂>があった証拠ではないか。悲しみは母たちを狂わせる、あるいは成長させる。

    ② 本作には「乳児のちっ息死の原因の5割は添い寝」とあるが、
    その後、母体は寝ているうちにもある程度の意識はあり、子を押しつぶすような動きはしないとされた
    厚生省HPのSIDS=乳幼児突然死症候群を避けるガイドラインにも
    (1)うつぶせ寝をしない、(2)できるだけ母乳で、(3)受動喫煙の防止だけがあって、従来の「添い寝授乳に注意」はない。

    やはりSIDSで、束の間愛されたのち、天界に帰ったのだろう

  • これは読んでおかなくてはならない作品。

  • 2019/12/16

    726.1||オ||1 (3階マンガ)

    高校3年時の看護師見習い体験を元に、産婦人科医院で実際にあった出産をめぐる「喜び」や「悲しみ」をリアルに見つめ、「生と死=命の重さ」やその根源にある「人間の悲哀」を考えていきます。
    TVドラマにもなり、看護師希望でない方でも、感銘を受けると思います。 

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著者プロフィール

1979年、富山県生まれ。漫画家。『透明なゆりかこ』(講談社、既刊8巻)で第42回講談社漫画賞(少女部門)受賞。

「2020年 『父よ、あなたは…』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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