羊の木(1) (イブニングKC)

  • 講談社
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感想 : 45
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  • Amazon.co.jp ・マンガ (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784063523836

作品紹介・あらすじ

本年度漫画界,最高の話題作、ついに単行本化!原
作/山上たつひこ氏、作画/いがらしみきお氏、
ギャグ漫画の巨匠2人が奏でる「不安」「願望」そ
して「笑い」の先にある物語!

とある日本の地方都市。かつては海上交易で栄えた港町。名を魚深市という。その町が、犯罪を犯し刑期を終えた元受刑者を地方都市へ移住させる政府の極秘プロジェクトの試行都市となる。一般市民には何も知らせずに元受刑者の過去を隠し転入させるこのプロジェクトの全容を知るのは市長とその友人月末、大塚の3人のみ。移住するは、凶悪犯罪を犯した11人の元受刑者。はたして、このプロジェクトの行方は!?

感想・レビュー・書評

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  • じわじわと恐怖と不安感が増していく。
    原作の方は完結まで仕上がってるとの事なので、後はしっかりゴールまでたどり着けるかどうか。
    打ち切りになりませんように。

  • 今月公開になった映画のほうを楽しみにしていたので、原作は映画を観てから読もうと思って積んでました。原作が山上たつひこ、作画がいがらしみきおという異色の組み合わせ。いがらしみきおといえば「ぼのぼの」しか読んでいないし(流行ったなあ)、山上たつひこといえば「がきデカ」の人という認識しかしていないので、すべてが未知数。

    映画はとても面白かったのだけど(3回観た)原作からは大幅に改編してあると監督が明言されてたので覚悟はしてましたが、政府の極秘プログラムにより元受刑者を受け入れた地方都市・魚深という基本設定以外はキャラクターもほとんど違ってびっくり。でもこれはこれでとても面白かった。

    映画では錦戸亮が演じた市役所職員・月末(つきすえ)は、原作では仏壇店の店主で50代?の妻子あるおじさん。鳥原という市長が元受刑者の受け入れを決め、友人である月末と、大塚という食器屋?骨董品屋?の店主の二人に協力を依頼する。受け入れの理由は、映画にはなかった原作での必須事情があり、市長・鳥原の先祖がかつて流刑人たちを難破船から救って村に受け入れた経緯から魚深が選ばれたとなっている。これ重要。

    タイトルとなっている「羊の木」も、この市長の鳥原が飾っている絵で、「コロンブスの時代にヨーロッパの人々は綿を『羊のなる木』と思っていたとか。まったくうらやましくなるぐらい単純な発想だよ」と説明されていて、映画の解釈とは全く違う印象を受けた。

    元受刑者は映画では全員殺人犯で6名だったが、原作では殺人だけでなく詐欺、誘拐、強姦など様々で11人。映画と原作でほぼ罪状が同じだったのはDV彼氏を殺した清美だけかな。松田龍平が演じた宮腰は、原作ではどちらかというと北村一輝が演じた杉山に近い。代わりに寺田という若い受刑者が市長の娘の智子と恋に落ちる。映画のヒロインは月末の幼馴染の文(木村文乃)だったが、原作では智子が彼女のポジション。

    巻末の作者対談で、山上たつひこが、犯罪者に対する本能的な皮膚感覚、生理感覚について述懐していた部分が映画でも描かれていて興味深かった。いわく、

    4人殺した永山則夫がまだ生きていて仮釈放になったら、枕を並べて眠れるし、酒ぐらいつきあえる。 でも女を殺して細切れにして下水に流しちゃった奴とは絶対枕を並べて眠れない。 ヤクザの抗争で日本刀で三人ぶった切ったやつとは同じ部屋にいられるけど、借金を断わられた腹いせに相手を絞殺した人間には近づきたくない。

    ・・・なるほどわかる、と思います。映画を観てやはりこれは感じました。

  • 人が人を殺すときってどんな心境なんだろう?と考えた事がある。

    対象に明らかな殺意や憎しみを持って殺人を犯す人間と、平穏に日常を暮らす人間のとの溝は、たった一筋の溝ではあっても、想像を絶するほど、とても暗くて深い。

    殺人事件を起こした11人の受刑者を、平穏に生活するひとつの町が更正の為に迎え入れるところから物語がスタートする。

    作品中には、得体の知れない嫌な緊張感が張り詰め、ささいな事でその糸は切れてしまうのではないかという不気味さが漂う。
    普通の人間が殺人を犯した人間に対して感じる「恐怖と異質感」が作中つねに付きまとい、読んでいても心が落ち着かない。

    土着の祭り、「のろろ祭り」の詳細も気になって仕方がないが、次巻、必ず「ただならぬ何か」が起こるような余韻を残して1巻は終わった。

    次巻以降が楽しみな漫画がまたひとつ増えた。
    文句なしに面白い。

  • 町の極秘プロジェクトははたして
    成功だったのかどうかは、結局の所
    読者に委ねる形で幕を閉じたけど、
    この危険な状態の連続に終始ドキドキさせられた。
    人は変われる部分もあるし、どうしても
    難しい部分もある。割り切れるものじゃない。
    元犯罪者との共存について、私たちであれば
    どう接し考えていくべきなのか。
    大きなテーマを与えられた気がした。

  • 凶悪犯罪を犯した受刑者たち
    その受刑者たちの受け皿になろうとしているのが
    過疎化が進む魚深町。

    その秘密を知るのは市長をはじめとする3人のみ。
    もやっとした違和感が漂いながらも
    新住人たちと住人達は伝統の祭りにとりかかるが…

    ひい~
    なんだこのマンガ!
    思わず笑ってしまうところがあるけど
    全体に漂うこの不気味さともやもやした恐ろしさ
    ラーメンエピソードとか
    トラックでストーカーとか
    鶏エピソードとか
    包丁エピソードとか
    読んでたら笑っちゃうのにゾワゾワする~!

    2巻へ続く!

  • 元受刑者を受け入れた町の行く末
    16.09.09 新規up

    1-04巻 続

  • 「危ういバランス感の上に繰り広げられる日常」

    元受刑者を地方都市へ移住させる政府の極秘プロジェクトが巻き起こす、ある漁村の顛末記。山上たつひこのストーリーと、いがらしみきおの記号的で空虚な絵のタッチが不思議なマッチングを見せている。日常風景に民俗的なホラーとギャグが重なり、展開の緩急も読めない。名作の低予算映画を見ているような、マンガでは珍しい魅力があった。怖い(気持ち悪い)もの見たさの感覚が刺激され続ける。最終巻の最後ではちょっとしたタネ明かし的な一幕もあり、意外と読後感は良い。
    (本多正徳)

  • 市長が元受刑者を極秘に受け入れるプロジェクトから市井の人々が変化していく様を描く。
    ぶつだんやの親父の顔は面白いがなかなかの漢。

  • 「がきでか」の山上たつひこと「ぼのぼの」のいがらしみきおの合作・・・ではなく、「光る風」の山上たつひこと「Shrink」のいがらしみきおの合作。

    その昔、図書館の書架で、山上龍彦の名前を見つけ? あれ見たような名前の作家・・・と思ったらあの山上たつひこだったのでびっくり。
    なんてことのない物語ながら、ヘンな感じのする小説がちょっとひっかかってた。

    で、羊の木。
    11人の犯罪者が過疎に悩む海辺の街に移住する。
    犯罪者の更生とか前科者への差別だとか、そんなテーマではなく、平和の街に犯罪者がくることで、周りの人がおかしくなっていく、それも直接的影響というよりも何か共鳴されて徐々に歪んでいく話・・・、かと思えば、なんか思いもよらないところへともってくる。

    ちょっと11人の犯罪者というのが多い・・・え?これにあの人を加えるとイエスの使徒と同じ12人? じゃあ、イエスは?

    第2巻の祭の夜の何かが起こりそうな緊張感、第5巻の事件、あいまあいまのギャグなどさすが山上たつひこといがらしみきお。どこまでが山上の原作で、どこからがいがらしのアドリブかを思いながら読むと楽しい。

    謎を残しつつ、物足りない気もしながらも、まとまった終わり方はよい。

    そう、人を気絶させる難しさの描写がリアル。マンガや映画みたいに頭部をガツン、ウッと気絶しないからね。
    そういえば、鈴木邦男が、見沢知廉らが起こしたスパイ粛清事件について触れたとき、「映画の真似して気絶させようとして殴っても、そうはいかないから死んでしまった。映画はちゃんと描くべき」と言っていたような覚えが・・。

  • 後味は悪いが読めてよかった。

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著者プロフィール

1955年宮城県中新田町(加美町)に生まれる。24歳で漫画家デビュー。代表作に「あんたが悪いっ」(1983年漫画家協会賞優秀賞)、「ぼのぼの」(1988年講談社漫画賞)、「忍ペンまん丸」(1998年小学館漫画賞)、「I(アイ)」、「羊の木」(2015年文化庁メディア芸術祭漫画部門優秀賞)、「誰でもないところからの眺め」(2016年漫画家協会賞優秀賞)など。現在「ぼのぼの」がフジテレビ系列でアニメ放映中。仙台市在住。

「2023年 『IMONを創る』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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