湾岸ミッドナイト (34) (ヤングマガジンKCSP)

  • 講談社 (2006年5月1日発売)
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本棚登録 : 83
感想 : 2
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  • 本 ・本
  • / ISBN・EAN: 9784063614428

感想・レビュー・書評

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  • ヤングマガジンコミックス

  • 「湾岸ミッドナイト」と聞いて、

    あぁ、あの絵の下手な漫画。

    と思う方は多いと思います。
    (というか、推薦しようとする自分でさえそう思います笑)

    ほとんどキャラの描き分けが出来ていない事に加え、
    肝要のクルマの絵も、たまにポルシェ911とS30Zを
    混合しそうになるほど(苦笑)

    それでも、この漫画が「特別」な理由としては、

    まるで諭すかのように語られる「言葉の強さ」以外にありません。

    この34巻(~36巻)ではユウジという青年と腹違いの山本チューナーとの話が中心に語られます。
    メインは父親の話。
    写真家であった父親の遺した言葉を振り返るかのように、
    一つ一つ重みのある言葉が紹介されていきます。

    その中でも特に印象的なのは「内圧」の話。体圧と書いていたかもしれません。

    英語に直すとするなら、プレッシャー。

    人生は常に圧との戦い。物質・人、様々な万物が圧を持っているとしたうえで、
    外から受ける外圧と、自分の内からわき上がる内圧、そのせめぎ合いだと諭します。

    例えば雨が降れば、低気圧によって「何となく気分が乗らない」。
    これは外圧に影響されているといえます。
    しかし、そんな日でもうまくいきそうな感じがある。
    それは自分の内圧が外圧に負けていない。もしくはきちんとバランスが取れている
    状態であると説明されます。

    テンションとは違うという説明がされるプレッシャー。
    テンションはメンタル(心的)で体圧は身体の圧、
    つまりテンションが高くても体圧が低いコトがあると説明されます。

    内圧がせり上がってきた時に人々はどうやり過ごすか。
    簡単なのは「食う・買う・寝る」であっても、それは見て見ぬ振りと同義で、
    つまりは圧に対し向き合わなければ自分の圧を作ることなど出来ないと書かれます。

    人間関係でも同様で「何となく苦手」と思った意識を引きずったままでは、
    その状態が解決する事はほとんどなく、むしろもっと溝を深めるのみです。
    何が苦手なのかを考えながら、同時に深く関わろうとする事で、
    思っていたよりも簡単に解決する事も多くあります。
    それは圧の話に直せば、相手の圧を感じ取りつつ、自分の圧を作っていく作業ともいえます。

    公道バトルという非日常的なものを描いているが故に、
    こういった精神的な言葉もまた多く描かれているのかもしれませんが、
    そのまま何かに転用出来そうなくらい高いレベルの概念を、
    きちんと伝えようとして言葉に直しているように思います。

    もちろん高度なクルマの話も多々出てきますが、自分の中では、
    それはメインであっても副次的な印象に留まり、
    「自分で発見した言葉」「自分で発見した気づき・考え」を
    惜しみなく伝えようとする登場人物たちの姿、
    またその背後にはっきりと見える作者の姿に尊敬を覚えます。

    再び最初に戻ると、この漫画は明らかに「言葉が勝ってしまっている」漫画といえます。
    漫画というメディアより、もっと他にあったんじゃないかと・・・。
    もし漫画のレベルによって広まるものが広まらないのであれば、とても残念に思えてしまう。
    そういった種類の漫画であると思います。

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著者プロフィール

1977年、『あこがれの白いスポーツカー』でデビュー。代表作は『あいつとララバイ』、『シャコタン★ブギ』、『湾岸ミッドナイト』など。車漫画では、日本を代表するトップランナー。

「2023年 『首都高SPL(9)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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