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本 ・本 / ISBN・EAN: 9784063621853
感想・レビュー・書評
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『センゴク外伝 桶狭間戦記』は銭を重視したことが織田弾正忠家の躍進の理由とする。経済重視は農作物の搾取一本槍と比べると一つの進歩である。ただ、経済重視と一口に言っても、そこには二つのパターンがある。一つは特定の商人に特権を与えて、そこから利益を得ることである。戦国時代の前から中世の寺社は、この特権商人保護政策をとっていた。これは特権付与者以外の自由な経済活動を阻害することになり、むしろ経済の発展を損なう。
もう一つは自由競争を促進して経済全体を発展させることである。これは織田信長の楽市楽座である。ところが、『センゴク外伝 桶狭間戦記』の織田弾正忠家はどちらの経済政策か分かりにくい。信長と言えば楽市楽座であるが、『センゴク外伝 桶狭間戦記』の津島や熱田の商人は特権商人的である。特に熱田は熱田神宮の座のように見える。
むしろ、『センゴク外伝 桶狭間戦記』では今川義元の方が既存の規制をなくして商業を振興しているように見える。信長は当初、特権商人保護であったが、城下町を築くようになって楽市楽座に変わったのだろうか。現実に信長の楽市令は、今川氏真の永禄9年(1566年)の富士大宮の楽市令の後である。
小和田哲男・静岡大名誉教授は以下のように述べる。「義元は東海道の陸路、太平洋の海路を生かし、金山開発や町衆自治の容認で商品流通を活発化させた。桶狭間の戦いで2万5000人もの大軍を率いたのも充実した国力があってこそ。江戸時代の大名家の軍役基準に照らすと、兵力2万5000人は100万石の国力に相当する。駿河・遠江・三河は合計で70万~80万石しかなかったが、米の取れ高が少ない分、他国に先駆けた経済政策で補った点からも卓越した手腕が分かる」(「「公家かぶれ」でも「凡将」でもない?生誕500年、今川義元に“復権”の兆し」読売新聞2019年6月16日)詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
通常版でも良かったかな。
内容自体は上手くまとまっていて(当然史実通り義元死ぬけど)爽やかな読後感。
初期から繰り返し出てきた「小氷河期」「銭」等の要素をしっかり展開に組み込み、戦国時代とは何か、戦国大名とは何かを描き切った良作でした。
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