映画は撮ったことがない ディレクターズ・カット版

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 29
レビュー : 2
  • Amazon.co.jp ・マンガ (312ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784063650150

作品紹介・あらすじ

神山健治の名著、新生!

企画、脚本、演出、ポスト・プロダクション──。
制作全工程の具体的な解説を通して「映画の正体」に迫る!

神山健治が作品をつくりながら巡らせ続けた思考を記録した単行本に、庵野秀明監督との録り下ろし対談、ダ・ヴィンチ誌で連載されたコラム「映画を生む本棚」、そして現在の心境をつづったあとがきを収録した増補改訂版!

最新作(原作・脚本・監督)
『ひるね姫 ~知らないワタシの物語~』
2017年3月18日全国ロードショー

神山健治の名著、新生! 企画、脚本、演出、ポスト・プロダクション──。制作全工程の具体的な解説を通して「映画の正体」に迫る! 神山健治が作品をつくりながら巡らせ続けた思考を記録した単行本に、庵野秀明監督との録り下ろし対談、ダ・ヴィンチ誌で連載されたコラム「映画を生む本棚」、そして現在の心境をつづったあとがきを収録した増補改訂版!

感想・レビュー・書評

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  • 映画製作の現場を知る著者が語る、映画とは何者なのか探求した本。
    考察とともに、参考になる映画作品や書籍も紹介されている。
    著者である神山さんは、アニメーション作品に関わる経験をお持ちで、実写映画の世界とアニメ映画の世界を対比させた考察もあり、とても興味深く拝見。
    映画を語るうえでのキーワードがいくつか登場する中で、強烈に印象に残ったのが、
    「疑問と答えの連鎖」、「構造」。
    参考図書をアマゾンの「ほしいもの」に登録しておくことにした。

  • 「アニメーションや映画に限らず、作品がエンターテイニングするためには、『疑問と答えの連鎖』は必要不可欠」。

    脚本の体をなさない一番の要因は、「おそらく『時間』を書き留めることに失敗したこと」。「ここで言う『時間』とは…『劇外を流れる時間』のこと。」「本来『劇外で流れていたであろう時間』を、セリフなり行動なりに盛り込むことができなかったために起こる“嘘”」を見せられた場合、ごまかしが利かない事態となる。「脚本とは字ではなく、時間を描くものなり」。

    「劇外を流れる時間」以外に獲得しておかなければならない要素が「構造の構築」。「構造なき脚本はただのストーリーにすぎず、演出段階でそれを獲得することなど、これまた困難の極みである」。『カリオストロの城』には設定や構成とは別の動機付けがルパンに用意されている。「それはルパンとクラリスとの間に存在する『過去』。」「『過去』の存在こそが『構造』を構築する上での最もシンプルな手法」である。ルパンが昔クラリスに命を救われたというエピソード自体は単なる設定だが、「このエピソードを、『劇中の特定の人物と観客しか知りえない秘密』とした場合にのみ、ただの『設定』が『構造』になる」。「『構造』とは、この時観客とスクリーンの間に築かれる共犯関係、あるいは、劇中の設定を『特定の登場人物と観客だけが共有した特定の秘密(設定)のことなのだ」。

    「作家性などというものは、一度や二度作品を作ったくらいで醸成されるものではなく、それは映画を撮り続けていく中で、結果的に獲得できるかもしれない偶然の産物なのだ。」「制作現場において、決して一貫しないものがある。それは『制作状況』の存在だ」。制作状況の「流れを正確に読むことが、演出プランを具現化する最良の手段であり、逆説的に言えば、演出プランとは制作状況によって決定されなければならないのだ」。

    映像が映画になるために必要なのは、「欠落」を映し出すことだ。「それは多くの名作映画が映し出した“行間”であり、あるいは“フレームの外側”といってもいい。」「これらの欠落が存在することにより、観客は足りないピースを画面外に想像しイメージの中で補完しようと努力する。そして観客一人一人の中で熟成した映画は、ようやく“映画”になるのだ。」予算の制約が意図せずして欠落を生み、予算が豊富な続編が退屈な映像を生み出してしまう例はマトリックスやゴッドファーザー。ゴッドファーザー第1作は予算がなくてセットが組めず、ロケのためやむを得ず縦構図にしたことが非日常的で映画的な映像を生み出している。

    ロバート・レッドフォードにみる映画監督の作家性。「一般的示唆に富んだ作品であるかに見せながら、実は一般人とは程遠い“思い”を太く裏側の柱とする。これこそが映画監督が作家性を獲得する究極の構造である」。

    押井守「映画はダレ場が必要だ」…「観客が映画の内容を自分の中で整理する時間が必要」。「ダレ場の有無が『長いTV』と映画との差の1つ」。ダレ場とは、「ストーリーに流れている時間とは別に流れたであろう時間を、観客に想像してもらうシーン」。「その映画の外側にも世界があるということを獲得するものとして機能する」。

    「原作ものやTVシリーズの延長で作られた長編は、オリジナルの映画とまつたく別物」「2時間ほどの時間でゼロから説明して、それが足りているかどうかが勝負のメディア」「お客さんは、まっさらな状態で観て、でも観たあとは劇外にちゃんと世界や時間が広がっている感覚になることができる。そういうものでないといけないような気がしてる」。ダヴィンチ・コードを観て感じた違和感はこれだったのか!

    神山氏が『スティング』に“映画”的なものを感じたのは、「物語から受けた感動に、不可逆性と永遠性を感じた」から。『スター・ウォーズ エピソード4』は、続編により映画の中以外での登場人物の姿を見せられることにより、その永遠性は失われた。

    「“映画”とは、その一本のみで完結しており、続編も撮り直しもないそのままの存在で、『娯楽性』『時代性』「永遠性』『普遍性』を兼ね備えている、約2時間という時間の中に任意の時間軸を持って定着された映像」。

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著者プロフィール

1966年、埼玉県生まれ。アニメーション監督、脚本家。株式会社クラフター代表取締役 共同CEO。背景美術スタッフとしてキャリアを開始。2002年、『ミニパト』で監督デビュー。代表作に『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』シリーズ、『精霊の守り人』『東のエデン』などがある。2017年3月、初の劇場オリジナル作品『ひるね姫 ~知らないワタシの物語~』が公開。

「2017年 『映画は撮ったことがない ディレクターズ・カット版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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