- 講談社 (2005年11月20日発売)
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Amazon.co.jp ・マンガ (304ページ) / ISBN・EAN: 9784063720921
作品紹介・あらすじ
ほんとうはすべて知っていた。心の底流(undercurrent)が導く結末を。夫が失踪し、家業の銭湯も手につかず、途方に暮れる女。やがて銭湯を再開した女を、目立たず語らずひっそりと支える男。穏やかな日々の底で悲劇と喜劇が交差し、出会って離れる人間の、充実感と喪失感が深く流れる。 映画一本よりなお深い、至福の漫画体験を約束します。 「今、最も読まれるべき漫画はこれだ!すでに四季賞受賞作で確信していたその物語性と演出力に驚く。豊田徹也は心の底流に潜む、なにかの正体を求めるように静かに語る。」――(谷口ジロー)
みんなの感想まとめ
他人を理解し合うことの難しさを描いた物語が展開されます。主人公は夫の失踪をきっかけに、自分の内面をさらけ出す勇気を取り戻そうと奮闘します。その過程で、彼女を支える男たちとの関係が深まり、心の底に潜む感...
感想・レビュー・書評
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「自分のことをわかって欲しい」と言えない苦しみ。それは薄っぺらい承認欲求とは違って、本当は自分の心の奥底に沈めたままにしておきたかったものをさらけ出すことへの恐怖があるからだろう。そして、わかってもらおうとすることをあきらめた閉ざされた心は、他人のそれに気づかなかった。夫がある日突然何の理由も言わずに失踪してしまう事件をきっかけに主人公が「わかってほしい」と言える気持ちを取り戻そうとする歩みと、それを見守る男たちの物語。男たちと書いたのは、もちろんメインは主人公の経営する銭湯に新しく働きにきた男だが、脇の探偵や近所の爺の果たした役割もまた大きいと思った。おそらくキャラのモデルであろうリリー・フランキーは映画版でまたまた儲け役だったなぁ。
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他人をわかるってなんだろう。改めて考え直す漫画でした。登場人物には語らせず表情などから考えを読み取らせるような構成がよかったです。
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映画を観てから。映画がすごく丁寧に作られてたのがこちらを読んでよく分かった。原作を一本の映画を観ているような、と評するものがあったが、確かに。
映画のパンフで、原作のラストは完璧、との監督の言葉があった。でも堀さんが去るのをやめたのかどうかを読者に任されたことよりも、映画の方が良かった。 -
逃げずに悲しむこと、赦すこと、助けを借りること。
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小説のような漫画、見事な漫画だった。
人をわかるってどういうことですか。 -
お借りした本。
小説みたい。すごくいい、温度感。
映画になるのかな。たのしみ -
まいった。人の底流。ほんとうのあなたの心の奥底に流れているものは、誰かに伝えていますか。
これは傑作。 -
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銭湯「月之湯」を継いだ主人公・かなえには夫が居たが、2ヵ月前に突如失踪。暫く営業を休んでいたが、改めて再開することにした。組合から技師である堀を紹介され、彼の寡黙ながら真面目な仕事ぶりに助けられつつ、順調に銭湯は運営される。しかしかなえには夫の失踪のほかに、ずっと心の奥に閉まっていた辛い過去があった。
本作で出てくる登場人物はみんな極端に口数が少ないけれど、内に各々想いを抱えながら生きている。多くは語らずとも、登場人物のちょっとした心の動揺や変化が伝わってくる絶妙な描写。結局のところ何も変わらないかもしれない。でも、それぞれが前に踏み出せればいいなと思う。 -
稀有な作品だ。カチカチと鳴る時計の文字盤の下に確実なメカニズムが存在するように、目に見える人間関係の[底流<undercurrent>]でじょじょに形をなす因果が描かれる。豊田徹也はひとコマひとコマに緻密な計算をほどこしつつ、あまりにさりげなくその意図を隠す。これもまた本編の[アンダーカレント]である。なんども読み返して、作者の意図を読み解いていく……そんな至福を期待できる、オレ的には2005年ベストの大人マンガ。
なんの前触れもなく夫が失踪。しばらく呆然としていた主人公だが、なかば惰性で家業の銭湯をとりあえず再開した。夫の失踪の真相は? 人手の足りない銭湯を手伝うようになった無口な男の正体は? それでもなにげなく進む日常の奥底で、深く静かに物語が動き始める。
ふつう「失踪モノ」といえば、だんだんと「失踪した人」の意外な素顔とかが浮かび上がるのが定跡というもの。ところが、この話、「失踪された側」しか描かない。作中で、調査を請け負った探偵が主人公に「人をわかるってどういうことですか?」と問いかける。言葉につまる主人公。私は夫の何を見て、夫のことをわかったつもりになっていたのか。読者は主人公とおなじ情報しか与えられないまま、最終回に向けた残りの3話で主人公と同様に振り回される。
失踪した夫のほかに、主人公にはもうひとつ失ったものがあることが、だんだんとあきらかになっていく。それは幼いときの記憶。その代わりによく見る夢がある。泣いている自分をやさしくなぐさめてくれる誰かに、首を絞められたまま深い水の中に沈められる……。
銭湯の手伝いにあらわれる不思議な男。昔はやくざだったという馴染み客のすけべじじい。頼りになるやらならないやらようわからんサングラスの探偵。主人公の前に現れる人物ひとりひとりが触媒となって、すべての伏流がさいごにざっぱーんと波をたててひとつになる。
ストーリーテリングが秀逸なだけではなく、この話は「演出」がものすごくよくできている。風呂に溜まっていくお湯をじーっとみつめる第1話の主人公。最終話を読んだ後このさいしょの一コマに戻れば、きちんと最終話の姿に収斂していく作者の意図が見えるはずだ。主人公と「探偵」との出会いという、前半のキーポイントを迎える第4話。扉に出てくるのはエリック・ドルフィーの『OUT TO LUNCH』のジャケットの切れ端。ジャズファンなら、ドルフィーの怪しげで危うげなフルートが頭の中にひびいてくるはずだ。(そもそも「アンダーカレント」って、ビル・エバンスのアレだろうし) 主人公が見上げる空に見える網の目のような電線。ぴしっとセットしたはずの主人公の髪が、心の乱れとともにじょじょにほつれてくる様子。突然来たはずなのに、まきでタバコに火をつける様子が妙に手慣れている手伝いの男。読めば読むほど、ひとつひとつのコマに、作者の偏執的なまでの計算……いや、そうじゃない……「確信」が隠されているのがわかってくる。この伏線の巧みさが、この物語のもうひとつの「アンダーカレント」だ。
今、渚で白い頭をのぞかせている波は、ここにたどりつくまで海の底で、どれほどの上下動を繰り返してきたのだろう。夫の失踪……という、ある意味手あかのついた感じもするできごとに、どれほどの因果がめぐっているのだろう。人を理解すると言うことはいったいなんだろう。どうして失ってからしか気づけないものがあるのだろう。
『アンダーカレント』は、マンガという表現にどこまで深みを持たせられるかの、ひとつの挑戦であると思う。そして、ものすごい密度と冷たいまでの抑制で、きちんと物語を描ききった好例であるのだ。 -
死にたいと思ったことは無い。死のうとしたこともない。
そんな”能動的”な感情にすらいたらない。
満足感もない。ただなんとなく生きている。
お腹がすくから食べる。眠たくなるから寝る。息をしないと苦しいから息をする。
ただそれだけ。
ただひたすら虚しい。
無意識に隠しにしてきたそんな虚無感を意識下から引きずり出されて思い知らされてしまう漫画だ。 -
名作。
読み終わったときの余韻が
初期村上春樹を読んだ後に似ている。 -
銭湯を継いだ一人娘に婿入りした同級生だった男は、ある日理由もなく失踪した。友人の紹介で夫の捜索を頼んだ私立探偵と、住み込みで銭湯に雇われたポーカーフェースの謎の男。静かに緩やかに氷解していく隠されていた事実。嘘つき女と嘘つき男。
この人は本当にただの漫画家なんだろうか? かつて漫画は映画であると本に書いた手塚治虫の教授を久しぶりに思い出した。まるで良くできたドラマを1本観終えたような感動が静かに心を揺らす名篇だ。
気まぐれに手にした「珈琲時間」があまりにも面白かったのでずっと探していた豊田徹也の長編は、やっぱりただの漫画とは思えないほど完成された上質の物語だった。道化探偵の山崎がここでも活躍している。ただもう素晴らしいとしか言いようがない。 -
面白かった。また読みたい。映画も見てみようと思う。
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この作品、他者へのイメージの投影と知ること、思考の放棄っていうのも題材にしていると思いました。そして作者はそれに警鐘を鳴らしているのかな、と。
また、どうしても人は人が一面的ではなく多面的なものということを忘れがちですが、そういうのも物語に組み込んでいると思いました。
まず、主人公のかなえは小さい頃から知ってるはずのサブ爺のことも長く生活を共にした夫のことも新しい従業員である堀のことも調査を依頼した山崎のことも知らないし、深く知ろうとしない。人と会った時には必ず、かなえないしは周りの人が「〜みたい」な人、「〜な」人と言った見た目から来るイメージを投影しています。そして人々はイメージの投影で満足し、他者を知ること、思考を放棄します。
また、かなえ自身も小さい頃に〜な子というイメージを投影されていることから、周りからの評価に沿うような振る舞いをしています。(さなえに対する罪滅ぼし的な同一化ともとれる)
これらを物語上に散りばめながら、他者理解とイメージの投影の危険性を訴えているんじゃないかと。
物語の最後にはかなえが他者を自らのイメージで固定することから脱却する第一歩を踏み出します。 -
記録
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