- Amazon.co.jp ・マンガ (234ページ)
- / ISBN・EAN: 9784063723960
作品紹介・あらすじ
1491年、11月。フィレンツェの大富豪ロレンツォ・デ・メディチに見込まれたアンジェロは、各国から貴族や有力市民の子弟が集まる名門・サピエンツァ大学ピサ校に入学、一人の青年と出会う。彼の名はチェーザレ。スペイン出身で、父は教皇庁のナンバー2という名門貴族。はるか昔、全ヨーロッパを支配し巨大な帝国を築いた英雄と同じ名を持つ青年は、のちに現代政治学の祖・ニッコロ・マキァヴェッリの名著『君主論』のモデルとなり政治の天才と謳われた人物だった……。
闇に葬られた若き英雄が、今甦る。超美麗ルネッサンス絵巻!
現教皇に死期が近づき、ローマでは次の教皇選を睨んだ戦いが始まっていた。チェーザレは、ロレンツォとピサ大司教との協調を画策。工場建設計画を立案し、ジョヴァンニを陰で動かすとともに、アンジェロを工事責任者につけ計画を進める。そんな中、チェーザレの働きによりラファエーレとジョヴァンニの会食が実現。両家の因縁は解消したかに見えたが、今度はピサに漂い始めた新たな陰謀の影が、チェーザレに近づいていた。
感想・レビュー・書評
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借りたもの。
チェーザレの妹・ルクレツィア。近親相姦の噂がついて回る美貌の姫君のお姿を遂に拝顔……可愛らしいそのお姿。
今では抵抗のある、女性に対しての教養不要論…(マナーや美しさは重要視されるけど)男の寵愛を争う女の闘いが不穏でもある。
当時のカトリックの価値観で、聖職者に妻帯は許されないにも関わらず、関係を持つ婚姻を結ばない女性を“淫売”と蔑み、その二人の間に生まれた子供は庶子となる……
領主のような当時の聖職者。彼らの抱える男性優位な矛盾は現代との差から一般人には抵抗を覚える。
チェーザレはメディチ家との繋がりを持って父ロドリーゴの教皇選出への後押しをする地盤固めをするものの、ロレンツィオの体調不良や工房の火災などのトラブルが。
間諜をこなすマキャヴェリの有能さよ。
彼の言葉から、フィオレンティーナの勢力争いの均衡の危うさが伝わってくる。サスペンス感がたまらない。
また、さらっとチェーザレの血――レコンキスタを支えたボルジア家一族――の解説もされる。その勇猛果敢・猪突猛進ゆえに世界に変革をもたらし、疎まれ破滅する……
後半のお忍びでフィオレンティーナの祭りを楽しむチェーザレとアンジェロ。街並み、人々の描き込みがやはり素晴らしく、活気が伝わってくる。
庶民の生活からだいぶ浮いてしまうチェーザレの言動に振り回されるアンジェロが微笑ましい。
“過ぎたるは及ばざるが如し”正に。
巻末の『マキャヴェリとチェーザレ・ボルジア』は、『君主論』にイメージされるマキャヴェリのチェーザレ礼賛ではなく、史実と照らし合わせ、マキャヴェリが冷静にチェーザレを分析していたことが伺える。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
策士のチェーザレ。いつか「君主論」を読みたい。
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第4巻では、美貌の妹ルクレツィア・ボルジアが登場します。時に1491年。チェーザレ16歳、ルクレツィア11歳という設定ですが、ふたりともませすぎです。
http://naokis.doorblog.jp/archives/Cesare_borgia4.html【書評】『チェーザレ 破壊の創造者』第4巻〜第6巻 : なおきのブログ
<目次>
Virtu 25 ルクレツィア
Virtu 26 兄妹
Virtu 27 約束
Virtu 28 継承する者
Virtu 29 火種
Virtu 30 優雅なる調べ
Virtu 31 知と理(サピエンツァとラジヨーネ)
Virtu 32 冒険
Virtu 33 祭り(フエスタ)
Virtu 34 影
<あらたな登場人物>
・ボルジア家
ルクレツィア・ボルジア
ホアン・ボルジア
ジュリア・ファルネーゼ
オルシーノ・オルシーニ
アドリアーナ・オルシーニ
・スペイン団
アルバロ
フェリペ
2017.04.30 読了 -
コミック
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ルクレツィア登場
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第4巻。妹ルクレツィア、工場の放火騒ぎ、フィオレンティーナ団ジョヴァンニとラファエーレ枢機卿との晩餐会、護衛なしで街探索。
ミゲルとアンジェロの関係にも良い変化があります。アンジェロのセリフ「自由とは場所に存在しているわけじゃないんだ。真の自由とは人の心の中に存在するんだ」は印象的でした。表向き、この時代では理想論にしかならないのでしょうが。
しかしミゲルがかっこいい。そしてまさかジョヴァンニにもほっこりすることになろうとは。マキャヴェッリの関連本も読みたくなります。 -
選民意識を軽蔑する一方、市政の人々の暮らしなど皆目見当もつかない。いつの時代にも見られる話。まさに歴史は繰り返すか。
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チェーザレ・ボルジアを軸にルネッサンス期を描くコミックの4巻目。
初巻は幕開けだから説明的なセリフが多いなぁと思っていたが、4巻になってもセリフは長目である。
チェーザレは、メディチ家・ピサ大司教をバックアップし、来るべき教皇選での父への2票を確実にしようとする。一方で反対勢力であるドメニコ会の敵意を買う。
ストーリーはぐいぐいと進むわけではないが、徐々にチェーザレが権謀術数を弄し始めていくというところか。
この巻でルクレツィア登場。11歳だがさぞかし美しく育つだろうという美少女である。4年前、チェーザレとルクレツィアが初めて出会う回想シーンも挟まれる。
側近・ミゲルはチェーザレに心酔しているのかと思っていたが、どうもそれだけでもなさそうである。ミゲルはミゲルで、何かしらの独自の世界観がありそう。その盲信しないところが、逆にチェーザレにとっては「信頼できる」部分であるのかも。
チェーザレはアンジェロを伴い、祭に繰り出す。庶民の暮らしとは無縁の世界で生きてきたチェーザレは、金貨を使おうとしたり、芝居の内容に講釈を垂れたり、射的で見事な腕前を披露してしまったり、場にそぐわぬ行為で浮きまくり。「命を狙うものもいるのに」とアンジェロははらはらし通しである。
この時代、ヨーロッパ全体の共通語はラテン語とされた。規則性があるために、地域的な偏りと関係なく習得可能とされていたためである(そのため、「文法」とはラテン語を意味したという)。いわば公用語であり、日常会話として用いられていたのではない。
各地の母語は俗語と呼ばれ,地域による差異が大きく、部外者には理解できないことも多かった。
チェーザレがアンジェロを祭に連れて行ったのはそれも1つの理由である。ピサの庶民の早口の会話など、貴族出身でローマ育ちのチェーザレには理解できないというわけだ。
会話の中で何気なく出てくる点で1つ。
この時代、ユダヤ人の医者というと、外科が専門であったらしい。
キリスト教信奉者は内科を専門とする。内科の医者は哲学にも通じているという。学問体系が興味深い。
こういうのがさらっと出てくるから、このシリーズは油断ならない・・・。
*祭の章の参考文献に「狂えるオルランド」が出てくるので、上演されている芝居がこれなのかと思ったのだが、この物語の成立は若干後の模様。基盤となる伝説や物語が流布していて、庶民にも親しまれていた、ということなのですかね・・・?