- 本 ・マンガ (290ページ)
- / ISBN・EAN: 9784063724714
作品紹介・あらすじ
終戦直後の日本に生きる家族を縛る「血」と「土地」。そこに一人の少年がいた。永遠の生を持って「人間」を見つめる不思議な少年が。
永遠の生を持ち全能であるがゆえに少年はちっぽけな人間を愛し、憎んだ。小さな田舎町。そこに住む少女がある日感じる、恐ろしい疑問。「猿」と名乗る不思議な老人が見せる、綺麗な水晶の世界。一族を無惨に殺された男、復讐心のみで生き抜く事ができるのか。人が持つ思いは、果てしなく大きく深い。その真実に触れて少年は、時に安らぎ、時に戸惑う。少年が持つ永遠の時の中、ほんの一瞬だけ「人間」がかいま見える。
感想・レビュー・書評
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2025.4.19市立図書館
柳沢教授シリーズをだいたい読み終えて、その巻末に載っていた新連載の情報もずっと気になっていたので借り始めてみる。永遠の生を持つ「不思議な少年」が古今東西のさまざまな場面に転生して俯瞰する「火の鳥」のような連作スタイルで、人間の光と闇をえがく。「由利香」は恐ろしいし悲しかった。
初出は、「モーニング」2005年10号、19号、42号、43号
11 由利香(天真爛漫な田舎の中学生の別の世界)
12 水晶玉の猿(諸国を渡り歩く人嫌いのペテン師)
13 ベラとカリバリ(前後編/モンテ・クリスト伯のような脱獄からの復讐譚、ベラがほんとにかっこいい)「山下和美音楽短編集 コンチェルト」で既読だった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
負の感情は人間を大きく成長させる。
モヤモヤするけれど実際そういうことは珍しくない。
人間、生きていればいろいろある。
負の感情を持つような状況にはなりたくないけれど、うまく利用できた人は尊敬する。 -
少年は、ときに女性として人間にせまる。
復讐モノは、復讐を果たせないことが案外多い。 -
●由利香
性善説。
脳機能を欠落させた一部のサイコを除き、
人は善なるもので生まれてくると私も思う。
本人の自覚も大切だか、周りが悪に導く事が多々ある。
子どもは幸せ育てられるべきだ。
彼女にこんな人生もあったはず。
●ベラとカリバリ
不思議な少年が男にも女にも。
今で言うところの、LGBTQ
性に囚われない、生き物。
何者でもないし何者でもある。
当時にしては前衛的だ。 -
人間ってなんなんだ…
大きな犯罪を犯した人の、もうひとつの世界線って、きっとあるよね。 -
未来に起こり得る戦争、について考える時間が増えている。
人は恐怖の対象を駆遂するものに付き従う。
本書のなかのセリフだが、戦争にいたる過程で大衆のこころをひとつにするのはこの真実じゃないだろうか。
戦争は起こるもの、ではなく起こすものなのだから。 -
人を待っている車の中で読んでいたら、来た人に、
「今、不思議な顔をしてたよ…」
と言われてしまった。
ちょうど、4巻ラスト、ベラがついに復讐する相手に会うあたりでした。
この話は、少年が女の姿になったり、そのまま年をとったりと、なかなか新機軸でした。
うーん、普段は、あんまり人と関わらずに、傍観している感じですが、この話では、かなり積極的にかかわっている感じです。
そのあたりの違和感というか、不思議な感触が、顔に出ていたのかも……。 -
ベラとカリバリは素敵な話であった。復讐心の連鎖を止め、ベラは旅に出る。ロム族の自由にも似た姿に戻る。
彼のその後が気になる作品だ。 -
第十一話「由利香」を読んだとき、ぼんやりと自分が考えていたことに作者が応えてくれたように思えて、なんだか安心した。
一見とても怖くて重いけれど、優しい 優しい話だと思う。
人の真実の姿
その人にとって その姿が最も美しい。
たとえパッと見 その人が貧相に見え
小さく見えても
きっと 本当の姿は別にある。
今は苦しい時代だと思う。
なかなか自分の望む仕事や、夢、パートナーとの出会いなど…叶いにくいことばかりなのかもしれない。
自分を解放したい。
きっとみんなそう思っているんじゃないか。
人の内面に可能性(救い?)を求めるかのような話に、とても感動した。 -
何か怖い話ばかりだな。柳沢教授はイノベーション(発見)の物語で明るい話ばっかだけ、「不思議な~」は輪廻とかタナトスとかのようするに『火の鳥』だから、手塚よろしくで暴力的な話ばかりになってるなぁ~
著者プロフィール
山下和美の作品





