アドルフに告ぐ(文庫版) (3) (手塚治虫文庫全集)

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  • Amazon.co.jp ・本 (456ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784063737721

作品紹介・あらすじ

混乱の戦争末期、3人のアドルフの運命は?密令を受け、戦争で荒んだ神戸に渡ったカウフマンは、ついに念願の極秘文書を手にする。その時、驚愕の知らせが……! 歴史のはざまを描いた大作、感動の完結編

感想・レビュー・書評

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  • ★子どもに殺しを教えることだけはごめんだ
    ★日本中が戦争で大事なものを失った 精一杯生きてる人間はすばらしい


    これは『週刊文春』に1983年から85年まで連載された、第二次世界大戦のナチス登場をバックにアドルフ名の3人の男性達、アドルフ・ヒトラーとアドルフ・カウフマンとアドルフ・カミルを核にして、ヒトラーがユダヤ人の血を引くという機密文書の存在から、彼らが歴史の渦の中に巻き込まれて幾多の登場人物が様々な試練に遭遇し、それに日本人の峠草平がぴたりと伴走し、ゾルゲ事件・ベルリンオリンピック・イスラエル建国・日独敗戦などの歴史的事件に関連するマンガです。

    沖縄の自決を日本軍が強要したことを隠蔽しようとしたり、戦争をやりやすくするために憲法第九条を改悪しようとしている自民党政府のような愚劣な非国民な奴らを他に知らへんわ、と京都の祖母(御歳90歳)が5年前に世間話の最後に言いました。

    ちょうどお盆で帰省していた私に普段は穏健な祖母は続けて

    強行採決やとか年金額は下がるわでもううんざりやわ。いくらお人好しの馬鹿な私でもいいかげん判るわ、もう沢山やわ。

    そのあと毎年この時期にはなされる戦争中の話は、人が死んだり空腹がいやだった実体験から、ついに反戦に至ることはありませんでした。

    反戦という根源的・本質的・徹底的な戦争への嫌悪・無意味さの認識・反対する意志を培うためには、工夫が必要なのかも知れません。

    『はだしのゲン』や『火垂るの墓』も名作ですが、私は毎年『アドルフに告ぐ』を再読しています。

    これは父が贈ってくれた小学校の入学祝いのプレゼントでしたがこの贈り物は、私にとってとても貴重なものでした。それは、今まで現実とか歴史は、手に届かないただそこにあるものとしか思えなかったのが、そうではなく私にでも変え得るということを知るきっかけになったのでした。

    それから祖父からは遂に戦争体験を聞くことが出来ませんでしたが、本来なら昔話を語り継ぐように各家庭で独自の固有の戦争体験が語り継がれるべきはずだと私は考えてきました。

    もう20年以上読んできたことになりますが、読むたびに新しい発見や感慨がある、単なる告発的な内容ではないエンターテイメントの傑作だと思います。

    5年前に祥伝社新書で『手塚治虫「戦争漫画」傑作選』も出ましたけれど、空襲警報が鳴ってもマンガを描くのをやめなかった彼の覚悟は、確実に私たちに伝わると思います。

  • 歴史漫画だけど
    歴史だけでない
    エンタテインメントだけでもない
    それらが融合した面白さ
    何ができるのか
    進んでいく物語
    歴史の中で振り回される物語
    歴史を振り回される物語
    大きな流れと
    個人の流れと
    その中に戦争があるからこその物語
    楽しさ

  • うちの蔵書。
    うちにあるのは文藝春秋版。
    版元によって多少内容違ったりするのかな?
    夫の蔵書なので、十数年ほど手をのばせばそこにあるような距離に置いてあった本なんだけど、今回初めて読んだ。

    きっかけは中一の子どもが学校の国語で『ベンチ』(『あのころはフリードリヒがいた』 ハンス・ペーター・リヒターの作品の一話)を読んでたから。ユダヤ人?ドイツ人?ヒトラー?みたいな感じだったので、じゃあこのマンガ読んでみな、と未読にもかかわらず『アドルフに告ぐ』をすすめていたわけで。

    ちょっと時間ができたので、二日かけて最初から最後まで読み。
    最後はパレスチナ問題まで踏み込む内容。
    男女の愛憎とか、虚栄心とか、保身とか。ナチスという舞台装置がそこにあっただけで人間の本質って結局変わらんのではないか、またこれからも同じような過ちは起きるのではないか、いや、実際起きてるな…と思ったりした。

  • 壮大な物語
    今も尚、解決の道が見えないほど問題は根深い。

    歴史を知りたい、学びたいという意欲を持ち続けるためにも読んで良かった。

  • この作品のテーマは「正義」。3人のアドルフ、それぞれの正義。世界中の人が自分の正義のために人を殺していたら、戦争はなくならない。あとがきにもあったが、最後があっさりしているのが勿体ない。

  • 完結。

    最後は、はしょっちゃった感じ。
    うーん、三題噺というよりは、ちょっと重い話ではあると思いますが、そんなにすごくおもしろいというものではないなぁ。

  • 同じ名前を持つ3人の数奇な縁とそれぞれの人生を描いた大河的スペクタクル。憎みあう人間の虚しさと愚かさよ。

  • ナチスの密命を受け、神戸に渡ったアドルフ・カウフマンだったが、戦争で荒れ果てた故郷に愕然とする。アドルフ・カミルらを拷問し、ついに念願の極秘文書を手にしたカウフマンに、アドルフ・ヒットラーに関する驚愕の知らせが……! 3人のアドルフを通じて憎しみあう人間のむなしさを描いた大作、感動の完結編!

  • 第二次世界大戦前後、ナチスの台頭から終焉までを背景として、日本とドイツで繰り広げられる人生劇場。アドルフ・カウフマン、アドルフ・カミル、アドルフ・ヒットラーの3人を主軸に添えた、ドイツ人、ユダヤ人、そして日本人の悲しい物語。手塚治虫作品の中でも最も頻繁に読み返す作品のひとつです。文庫本に収録されている、関川夏央による解説が秀逸。

    今年2008年は手塚治虫生誕70周年。『アドルフに告ぐ』に限らず、改めて各作品が再評価されることでしょう。

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著者プロフィール

1928年、大阪府豊中市生まれ。「治虫」というペンネームはオサムシという昆虫の名前からとったもの。本名・治。大阪大学附属医学専門部を卒業後、医学博士号を取得。46年、『マアチャンの日記帳』でデビュー。幅広い分野にわたる人気漫画を量産し、『ブラックジャック』『鉄腕アトム』『リボンの騎士』『火の鳥』『ジャングル大帝』など、国民的人気漫画を生み出してきた。

「2020年 『手塚治虫のマンガの教科書』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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