- Amazon.co.jp ・本 (424ページ)
- / ISBN・EAN: 9784063738704
作品紹介・あらすじ
手塚治虫が命を燃やして描いた未完の絶筆!人間に絶望した一ノ関教授は悪魔メフィストと取引し、魂と引き換えに新しい人生を手に入れた。彼は自らの手で生命を創造するという恐ろしい野心を抱くが……!?
感想・レビュー・書評
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原作はゲーテのファウスト
原作がどんな話か知らないし、本作が未完で終わってしまうのでどういう風に終わるのかがわからない。
説明しづらいけど、要所要所異常に引き込まれる。
力のある作品でした詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
バイオテクノロジーをテーマにしているというので、読んでみた。
朝日ジャーナルに1987年から連載され、1989年に手塚治虫の死により未完及び絶筆となった。手塚治虫の持つ深い問題意識が表出している。手塚治虫がこんなことを考えているのだということが、伝わってくる。連続性がなく、ツギハギのような感じを受けたが、それと格闘している様がよくわかる。手塚治虫が、自ら死に向かっている中で描いている。手塚治虫の心の中の葛藤が見える。
生命とは?人間とは?お金とは?悪とは?若返りとは?
ゲーテのファウストをモチーフにしている。
時期は、1970年直前。大学紛争の最中であり、大学の不正を暴き、ベトナム戦争に反対する学生運動が起こっていた。ノーベル賞の候補にもなる一ノ関教授。徹底した研究者。生命の秘密と宇宙の神秘を解き明かそうと苦闘していた。
一ノ関は、生命の謎を解き明かすべく、悪魔の女、メフィスト(牝フィスト)と契約を交わす。「満足する快楽生活に導いた場合に、魂を譲り渡す」という内容だった。生命の謎を解き明かすでなく、快楽を追求するところに不具合がある。
一ノ関は、赤線地帯のホルモン屋で、若返るが、記憶喪失となる。傍らには常に女悪魔が存在する。暴漢に襲われている男、坂根第造を助ける。坂根第造は日本における黒幕(フィクサー)のような存在。そして、名前を坂根第一と名付けられる。第一は、記憶を呼び覚ましながら、東京湾埋め立てを思いつく。第一は学者頭脳はずなのにビジネス脳もあるようだ。そのことが坂根第造を喜ばす。坂根第造にはケチであるが巨万の貯蓄があった。東京オリンピック、新幹線、首都高速道路などの大プロジェクトに食い込み金を貪り貯める。目標は3兆円だった。政治家には賄賂を配りまくる。しかし、第造は胃潰瘍として入院した。実は胃癌で死ぬ。これは手塚治虫も胃潰瘍で入院していたが実際は胃癌だった。その胃がんを知らされていなかったが、坂根第造を胃がんで死なせる。手塚治虫の想像力なのか、知っていたのか。第造は、巨万のお金を得ても、それをどう使うか知らなかった。そして、巨万の財産を坂根第一が受け継ぐことになる。
その巨万の財産で、生命を誕生させるべく、一ノ関教授の研究を追求し、大学の研究職になる。大学もほとんど買収してしまう。
そして、自分が一ノ関教授の若返ったことを知る。パラレルに進行する。
物語では、髙田まり子に恋をすることになるが、女悪魔の嫉妬によって、まり子は、精神の病に堕ちる。
結局、二部では、実業家になっている。そして、下書きが続いて、終わる。
第一は、生命体を作れずに、終わる。生命体をつくり、創造主となって、神になろうとしたはずなのだが。相変わらず、女悪魔は傍らに存在する。
テーマが大きすぎて、物語にし得なかった感じだ。それにしても、手塚治虫はそれと格闘していた。すごい漫画家だ。 -
手塚治虫の遺作の一つ。第二部未完。
続きが読めたならなぁ。
メフィストよ、手塚治虫をこの世に蘇らせ給え。 -
未完なんだぁくぅ。
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手塚治虫氏の未完絶筆3作品のうちのひとつ。
ゲーテのファウストをベースにして、舞台を戦後の高度経済成長期の日本に置き換えた作品。
ゲーテのファウストのストーリーと手塚治虫がいろいろな作品でテーマにしてきた生命や宇宙、そして執筆当時、体調を崩し、病床でも精力的に筆をとっていた晩年の手塚治虫の様子を織り交ぜると、物語の中に手塚治虫本人の作品に込めようとしていたメッセージ、情報が濃縮されていてとても興味深い作品です。
ゲーテのファウストのあらすじをなぞってこの先物語が進んだのかどうか。そして手塚治虫本人がこの先作品に何を込めようとしていたのか、頭の中で想像を膨らみます。
晩年の手塚治虫自身の考えも作品を通して込められている気がするし、未完に終わったのが惜しい。
読み応えのある作品です。 -
メフィストが女なのが気に入らない(多分あとがきで性別はどっちでもいいって書いてあった)が、ファウストを「第一」という和名にするセンスは大好き。
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朝日新聞社1989年4月25日第一版。手塚治虫未完絶筆。ファウストを題材にしているとのことだが、若返り+輪廻転生+生命誕生の神秘など、手塚治虫が取り組んできたテーマが網羅されている。
学生運動を舞台にしているのは、戦争に対する闘争として評価しているのか、日本の歴史の転換点として意識しているからなのか、もっと違う世界観を採り上げているのか。いずれにしろ学生運動を中心とした世界の矛盾を突き、ストーリー展開のトリガーにしているように思う。
第二部が開始しているところで筆が折れているわけだが、この作品が完成していたらどのような大作になっていたのか、想像するだけでも楽しいが残念でもある。 -
ゲーテの「ファウスト」に興味を持った。なぜ、これだけ多くの人間に読み解かれ、オマージュの対象となり続けているのか
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手塚治虫さんの漫画は大好き。子供の頃は家にあった兄のブラックジャックを繰り返し読んだっけ。これは大人になってから買ったものの一つ。
ネオファウストは大学闘争から始まる不思議なストーリー。メフィストは平気で人間を殺すとんでもない悪魔だけど、主人に恋したり嫉妬したり可愛い部分もあって魅力的。