闇の鶯 (KCデラックス)

著者 :
  • 講談社
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感想 : 20
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  • Amazon.co.jp ・マンガ (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784063756999

感想・レビュー・書評

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  • 2009年刊行、5篇が入った短編集。90年代から2000年代にかけて、諸星大二郎の最も脂の乗り切った頃の作品集のように感じる。著者のデビュー作品「不安の立像」の様々なバージョンが、エンタメや幻想・ホラー作品に装いを変えて描かれているようにも感じる。

    「闇の鶯」だけは少し古く89年連載の中篇をまとめたもの。山の神対パソコン少年、産土神と(原発含む)山中開発との愛憎関係を描く。ちょっと教科書的。パソコンが古い形でとても懐かしい。フロッピーも出てくる。

    妖怪ハンターの稗田礼二郎は、もう登場しないんだと思いきや、「それは時には少女となりて」では名前のみ出て来、「描き損じのある妖怪絵巻」では終始登場する。作品的に完成度の高いのは「涸れ川」(雨季のみ泥の中から甦り生活する部族の話)だと思うのだけど、好きなのは「書き損じ‥‥」である。因みに、「それは時には‥‥」では礼二郎だけでなく「書痴まんが」の表紙の原本の中に出てくる架空の書物「筆浮草」が登場する。もう、もはや想像と現実がごちゃごちゃになってくる。

    「書き損じのある妖怪絵巻」(「妖怪変化 京極堂トリビュート」2007年)
    冒頭、何処からか拾ってきた妖怪絵巻のパロディ絵と思われる絵巻が描かれる。絵巻の正体は‥‥という話なのだけど、感心したのはそこではなくて、稗田礼二郎が古い町にやってきてその謎を解こうとするお屋敷が、数年前に行った三次の町の雰囲気とよく似ているのです。三次の妖怪博物館(「百鬼夜行絵巻」の故郷なのだ)から抽出した絵や、町の建物と酷似している。諸星大二郎、此処に来たでしょ?いや、来たね。それでこれを仕上げた。そうに違いない。と思い出したら、また広島県三次に行きたくて仕方なくなった。

    今度の小さな旅は三次に決めた!
    という短編集でした。
    TSUTAYAの古本コーナーでゲットした本。

  • 諸星大二郎の短編集。幻想的なものもあればホラー的なものもあるけれど、特に『闇の鶯』の切ないながら未来を感じさせるラストと、『涸れ川』のやるせなさの中にも詩情がある物語構造が印象深かった。

  • 発売を承知でこれといった理由もなく
    何となくスルーしていた一冊を、
    今般『夢見村にて』のついでに同時購入。

    ……さっさと買っておけばよかった……
    浴衣に丹前!
    鼻血が出るかと思ったよ、浴衣に丹前!!

    ラストの「涸れ川」だけ趣向が異なりますが、
    他4編は妖怪ハンターシリーズ番外編的な話。
    鄙びた海辺の町・粟木に住む
    潮くんと渚ちゃんが登場する「それは時には少女となりて」――
    霊媒体質ではないかと稗田先生に言わしめる渚ちゃんだけど、
    このエピソードでは立場が逆で、彼女が潮くんの危機を救う。
    行方不明の姉の痕跡を追う青年の話「人魚の記憶」,
    旧家に伝わる巻物の謎「描き損じのある妖怪絵巻」,
    この3話は、異界から訪れるものとの遭遇、
    あるいは秘し隠されたものを垣間見るといった筋で、
    あからさまではないけれど、
    初期作品群に見受けられたクトゥルー神話風の匂い、味付けを感じる。
    殊に「人魚の記憶」はどうにも「インスマウスの影」というか、
    あれを映像化した
    佐野史郎主演「インスマスを覆う影」を彷彿させてならない……
    とは言い過ぎか(また観たいな、あのドラマ)。
    表題作は作者の昔の短編「城」――カフカの「城」のパロディ――
    のセルフパロディ×見るなの座敷×桃太郎の鬼退治
    といったところかな。

    採点は☆4つに「浴衣に丹前」の分を加点して満点としました(笑)

  • 稗田さんシリーズもちょこちょこ入っとるけど何となくホラーテイストな感じ。

  • 相変わらず良い雰囲気を演出してる
    人魚と絵巻の話が好き

  • この人のマンガは見つけた時に必ず買っています。そうしないと後では手に入りにくかったりもするので。稗田礼二郎も出てきて面白かったです。田舎に住んでいるので鶯さんはその辺の山にも居そうな気がしますね。

  • このネット情報の氾濫した、うすべったい時代によくもまぁ、
    こういったテイストをキープできるもんだねぇ。

    そんな思いでいつもあたしはこの人の作品を眺める。
    最初に読んだ時にはもう、故人かと思っていたもん。
    昭和のニオイたっぷりだもんね〜

    この作品集はそれぞれ、あたしのテイストにマッチしていて楽しめた。
    しかも1作1作がすごく、わかりやすい。
    たまにこの人の作品は不条理な終わり方をするんだけど、
    今回はオチがぐっと、クリアなのだ。
    海から来た異形のもの、山の神、書き損じのある妖怪図、人魚伝説と姉‥
    最後のページですべてが氷解。あー気分いい。

    さくさく軽く読めてあとに不条理が残らない。
    この本もとっても、御褒美読書でした。

  • 山姥ってその時代の人が違和感なく
    普通の人と安心して泊まるんだから、
    現代だとパソコンやワープロなど機器を使える人なんだなあ。
    現代に生きるいろいろな神話。

    海からやってくる「もっこ」も面白かったです。

  • モロ☆先生は「あっと驚く結末を描く(SF的)」と、「不気味な読後感を残し読者に想像させる(ホラー的)」を使い分けてると思うのですが、
    この本に収録の作品ではどうもストーリと終わらせ方がミスマッチを起こしている気がします。ちょっと残念。

  • ホラーはキライなんですよ。
    何故って?
    怖いからに決まってるでしょ(笑)

    ”人魚の記憶”・”描き損じのある妖怪絵巻”は怖いね・・・。

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著者プロフィール

1974年、「生物都市」で手塚賞入選。「週刊少年ジャンプ」で「妖怪ハンター」連載デビュー。民俗学、中国の古典、SF等を題材に、幅広い分野で活躍する漫画家。代表作に「暗黒神話」「マッドメン」「西遊妖猿伝」がある。その独創的な作風から、高い評価を受け、2000年に手塚治虫文化賞マンガ大賞、2014年に芸術選奨文部科学大臣賞、2018年に日本漫画家協会賞コミック部門大賞等、受賞歴は多い。ジャンルを越え、多くのクリエイターに影響を与えたとされる。

「2019年 『幻妖館にようこそ 』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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