- Amazon.co.jp ・マンガ (203ページ)
- / ISBN・EAN: 9784063757507
作品紹介・あらすじ
1491年、11月。フィレンツェの大富豪ロレンツォ・デ・メディチに見込まれたアンジェロは、各国から貴族や有力市民の子弟が集まる名門・サピエンツァ大学ピサ校に入学、一人の青年と出会う。彼の名はチェーザレ。スペイン出身で、父は教皇庁のナンバー2という名門貴族。はるか昔、全ヨーロッパを支配し巨大な帝国を築いた英雄と同じ名を持つ青年は、のちに現代政治学の祖・ニッコロ・マキァヴェッリの名著『君主論』のモデルとなり政治の天才と謳われた人物だった……。
闇に葬られた若き英雄が、今甦る。超美麗ルネッサンス絵巻!
カノッサの屈辱、破壊され封印された皇帝の墓。ダンテの『神曲』に隠された、500年間明かされなかった歴史の秘密とは?すべては謎の街、ピサに眠るーー。
感想・レビュー・書評
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借りたもの。
クリスマスのミサに挑むチェーザレ。同じ頃、ローマでも父・ロドリーゴ枢機卿とジュリアーノ枢機卿の対立・派閥争いもありながら、各々の教会で粛々とミサが行われる。その聖句は前巻の友人や腹心の部下による裏切りやアンジェロの負傷といったフィオレンティーナ団の傷心に寄り添い、庶民・貧しい貧民の慰めとなるのだろうか…
ピサ大聖堂で皇帝ハインリヒⅦ世の墓を前に、チェーザレは思いを馳せる。
ダンテ研究の第一人者であるランディーノ教授にチェーザレは教えを乞うた。
それはチェーザレ達が生きる時代――中世ルネサンス――に至るまでのイタリア(ピサ)情勢が語られる。
そこからチェーザレが導き出すのはダンテ『神曲』から導き出させる君主――統治者――の姿勢。そして、当時のイタリア半島において長く続く派閥争い――“教皇派”と“皇帝派”――についての解説でもある。
天秤の均衡――聖職者(教皇)と権力者(皇帝)の二元論により安定した統治――を目指すも、それは夢物語に過ぎない……
教皇権を拡大させたエピソードとして有名な「カノッサの屈辱」も、当事者(教皇グレゴリウスⅦ世と皇帝ハインリヒⅣ世)が意図したものとは異なり、後に教会勢力が利用したという。ヴィジュアルイメージを伴って、世界史の教科書で受けた印象が真逆のものとなる。俗世の介入を憂いてけん制するために苦肉の策を打ち出したグレゴリウスⅦ世と、どんな手段を取っても覇道を進苛烈な印象を与えるハインリヒⅣ世。
この“教皇派”と“皇帝派”の派閥争いが、イタリア半島ではずっと続いている。
それは詩聖ダンテの時代も同じ……ダンテは教皇派――フィレンツェ人、そして政敵に敗れ追放された人間――だった。
ローマ帝国の滅亡後、フランス、ドイツの大国に挟まれブレやすいイタリア半島……フィレンツェがフランスの子飼いであったこと……
世界史の流れが地続きになっていることを改めて理解する。
また、『神曲』がキリスト教的価値観の世界の中で皇帝至上主義を示しているという指摘を、私は初めて知った。
“権力と金――これに執着した時 聖人は俗人となるのです”
“どのような文献も解釈する側によって微妙にその色合いを変える だからこそ読み取る側も常に柔軟な心を持つべきだと――”
それは今の社会にも通じる名言に溢れている。
ピサ大聖堂の封印された皇帝ハインリヒⅦ世の墓と付属祭壇は衝撃的だった。
團名保紀氏が研究に携わっていたという。
ダンテとミケランジェロが出てきて満足してしまう私。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
いやはや、今号は本当に読み応えがありました。 やっぱり今号の白眉は「新説(? でもないか・・・)カノッサの屈辱」と「チェーザレ vs. ランディーノ教授の『神曲』談義」ではないでしょうか? 世界史の授業で学んだ「カノッサの屈辱」とこの漫画で描かれる「カノッサの屈辱」では結構違いがあるのもなかなか新鮮だし(とは言えども、これに似た話はどこかで読んだことがある記憶はあるのです。 その時はこの解釈にはちょっと懐疑的だったんですけどね 笑)、ピサ大聖堂に安置されているハインリッヒ7世の墓を見、そしてダンテの神曲を読んで、こんなにも多くのことを考えたチェーザレに驚嘆したりと KiKi にとってはなかなか刺激的なエピソードが満載でした。
その話に入る前に描かれている降誕祭のシーン。 こちらも秀逸です。 KiKi はクラシック音楽も大好きで殊に40代に入ってからはいわゆる「宗教音楽」にもかなりやられちゃったクチなのですが、このシーンでは本当に多くの「キリエ」が絵から流れ出て、頭の中でリフレインしているような不思議な感覚に捕われました。 惣領さんのすごさを感じたのは、単にミサの雰囲気を精緻に映した描写をされているのみならず、その「キリエ」がキリスト教徒のみならず、ユダヤ人(ミゲル)、マラーノ(ユダヤ教を偽装棄教し表面上キリスト教徒となったユダヤ人;チェーザレの護衛の面々)、そして街の片隅でぼろをまとって恐らく亡くなった(?)と思われる貧民の上を流れていくという描写をされていることで、このシーンでは多くのことを考えさせられました。
(全文はブログにて) -
大人の漫画です。
何も考えずに手を出すなかれ。
それ相応の覚悟をしてね。
派手さはないし、イベントはないし、かっこいい男も美女も少ししか登場しないし、だけど、この漫画は静かにすごい挑戦をしている。
中世イタリアの歴史の洗い直し。
この巻では「カノッサの屈辱」にページを割いてます。
カノッサの屈辱って、めちゃくちゃ渋くね?
教皇による皇帝の破門と贖罪…今となっては教会の権威を示すエピソードだけれど、その当時は違う意味を持っていた。
それを物語と絶妙に絡めてみせます。
なるほどなあ、教会、教皇、皇帝、言葉での知るだけでは本当の意味ってわからないんだなあ、と思う。
その時代に生きる人々にとっての常識が今の時代のそれとは全く違うのだから、私が言葉として知っている教会とか、教皇をもとに理解しようと思うとずれちゃうんだねえ。
そういう意味で、この漫画は、この時代に生きる人の価値観をより身近なものに感じさせてくれる気がする。 -
キリスト降誕祭の日、チェーザレもパンプローナ司教としてミサに望みます。ピザ大聖堂には、教会には似つかわしくない世俗君主ハインリッヒ7世の墓が祀られています。1077年のカノッサの屈辱、それから約3世紀後のダンテとハインリッヒ7世との交友、権力のあり方に対するチェーザレの姿勢が固まっていくストーリー展開です。チェーザレがなぜ、世俗君主を凌駕する地位を富とを約束された枢機卿の地位を投げ捨てたのか、サチェルドーテがどう解釈しているか、今後が楽しみです。
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中世ヨーロッパの皇帝と教皇について、よく分かる。内容が濃いので飲むのに時間がかかります。
ダンテとハインリヒ7世の関係。「神曲」を読み直そうと思います。永井豪版で。 -
今回はダンテと「カノッサの屈辱」の話でした。
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第7巻では1491年のピサでのクリスマスから始まり、チェーザレがダンテ研究の権威・ランディーノ教授から皇帝・教皇の対立、教皇権確立の歴史を学ぶ。登場する歴史的事象は主に2つ。カノッサの雪辱とピサ大聖堂に眠る皇帝ハインリッヒ7世。
http://naokis.doorblog.jp/archives/Cesare_borgia7.html【書評】『チェーザレ 破壊の創造者』第7巻 : なおきのブログ
<目次>
Virtu54 聖夜
Virtu55 問う者
Virtu56 二つの太陽
Virtu57 カノッサ
Virtu58 向かい合う者
Virtu59 玉座に座る者
Virtu60 神の望むもの
Virtu61 機知(サジェッツァ)と精神(ヴァローレ)
2017.05.07 読書開始
2017.05.14 読了。 -
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