I Care Because You Do

  • 講談社
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感想 : 8
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  • Amazon.co.jp ・マンガ (280ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784063761191

作品紹介・あらすじ

高校生の僕らには神様がいた、庵野秀明、リチャード・D・ジェームス、そしてYOSHIKI。ゼロ年代最後のに語られた90年代のお話。

感想・レビュー・書評

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  • この本の題名になっている"I Care Because You Do"はAphex TwinことRichard D. Jamesが1995年にWarp RecordsからリリースしたLPのタイトルから取られてる。と、まあ、そんなことはどうでもいいんだろう。大事なのは「1995年」という時代。この作品は未来と終わりが交錯した1995年という一つの時代を駆け抜けた僕たちの物語だ。

    1995年という時代。Windows95の登場と共に「パソコン」が巷にあふれ、ちょっと遅れて「インターネット」が普及しだした。突如、僕たちは万能の機械と共に世界と繋がった。そして、その新しい世界にとまどいながらも、その可能性を夢見て、オンラインの世界を作っていった。

    1995年という時代。ポケベルからピッチ、ケータイへ。それ以降、僕たちは常に誰かと繋がることになった。文字で、声で。

    1995年という時代。3年前にWarpが打ち出したArtificial Intelligenceでテクノはフロアの快楽一遍主義から解放され、コンピュータで作られた音楽という緩い括りの元、新しい音が次々と生まれていた。クラブ/レイブという新しい音の楽しみ方は、翌年開かれた伝説の"Rainbow2000"に繋がってゆくことになる。

    1995年という時代。それは神戸を未曾有の大地震が襲い、化学兵器テロが東京を襲った年。終末思想の行き着いた先は、一般人を標的としたテロだった。来るべき1999年7の月に備えて、なんとなく「終わり」を意識していた時代に惨劇は起きた。

    今振り返っても凄い時代だった、と思う。数年前、バブルとかいうものが弾けて、景気は良くなかった。僕たちの眼から見ても大人たちは露骨に自信を無くしていて、これまでの価値観には随分とスキが出来てた。そのスキを突くように、僕たちの生き方を変える新しいモノが沢山登場していた。1つどころじゃない。そこらじゅうにいくつもあった。

    たとえば、この本に出てくる3人の神様。「庵野秀明とリチャード・D・ジェイムズ。そして、YOSHIKI」。なんてことだ、神様が3人もいる。でも、この中での僕の神様はリチャードだった。エヴァは見てないし、X Japanに至ってはその曲を1曲も知らない。ごめんね。

    とはいえ、僕はクラブにも行かずにWired日本版を片手にOrbitalやThe Black Dogの美しい旋律にうっとりするのが好きなヤツだった。The Black DogにEPに書かれていた"I sit in my room and imagine the future"という言葉を地に行っていたわけで、この本で描かれている青年より重症で痛痛しかった、とも言える。そんなだから、この本の主人公たちが、それぞれの形であの時代を謳歌してる様子は、ちょっとまぶしくもあるわけで。

    1998年。たかが3年。されど3年。パソコンや携帯はあっという間に「当たり前」の存在になり、インターネットは安定期を迎えつつあった(2ちゃんねるの登場は翌年)。テクノはすっかり息を潜めドラムンベースを中心としたブレイクビーツ勢に主役の座を明け渡してた。そして、Wired日本語版も休刊。あんなに広かったと思っていた未来は、すこしづつ、でも確実に狭まっていってた。そして、神様であるリチャードは"Richard D. James Album"を放ちはどこかへいなくなった。

    00年代。エレクトロニカとgoogle。10年代に入った今はさしずめ、ダブステップと初音ミクの時代とでも言おうか。社会人とやらになって10年近くがたとうとしている。僕は何とか時代について行こうとはするけれど、でも、ふと気づくと自分の根っこは95年につながっていることを気づかされてしまう。それが、おっさんの懐古主義以外の何者でもないとはわかってはいるんだけれどね。

    この本の題名になっている"I Care Because You Do"はAphex TwinことRichard D. Jamesが1995年にWarp RecordsからリリースしたLPのタイトルから取られてる。あれから17年。気がついたら、ついあの頃のレコードやCDを手に取ってしまう、2012年の僕たちに向けられた90年代の物語。

  • 1990年代。
    世紀末。
    「新世紀」と題したエヴァンゲリオンの世界が破滅を迎え、オウム地下鉄サリン事件が起こり、XJapanが解散してhideが死に、ヤンキーが幅をきかせ、オタク文化は今ほど市民権がなく、経済成長とは無縁。

    そんなシャカイで青春を過ごしたセダイの3人の物語。

    1975~85年生まれには、きっと響くものがあるだろう。

  • 105 馬場北

  • 自伝的な話かと思っていたら、主人公が3人もいた。じゃあ、神様が3人いても、普通じゃないか。

    ようするに、これは、おたくっぽいものに惹かれながら、おたくであることをやめた人の話。そして、そこが、作者の心を揺さぶるのだろう。

    でも、今現在も、多分おたくであり続けているボクには、あんまり関係ないな。
    というか、お前、自分で言ったんじゃないか?

    「俺はお前らとは違う!!」

    って。

    あるとき、おたくが、殴られる側の人間だと気づいて、殴る方になることを選択した。
    多分、前段にあるのはそういう話。
    その時点で、もう、溝が出来ちゃっている。でもそれは、おまえが作った溝だろう?だから、今さらなんか言われても……。

    と、これは、コッチの勝手な思いこみかもしれないけれど。

    そして、神様は表だけではなくて、裏も……。

  • 庵野秀明とリチャード・D・ジェイムズ、YOSHIKIの3人の神をめぐる青春の物語。レビューを見ていたら同世代じゃなきゃわからないんじゃないか的な感想があったけど、大丈夫じゅうぶんわかるよ。こういうのは我々の年代が元祖だ。80年代に置き換えると、オウム真理教事件は宮崎勤の幼女連続誘拐殺害事件か、3人の神は誰だろう…。

  • 作者の個人史を登場人物に振り分けたと思しきモザイク状のキラキラした青春感と異常なまでの白さが圧倒的、「それもうimoutoidって人が・・・・」のコマはいつも心に留めておきたい。

  • 読者を選ぶと思う。
    90年代に青春を送った僕のような人にはものすごく共感できるけど、そうでない人にはピンとこないんじゃないかな?
    AphexTwin、エヴァ、X-JAPAN。
    三人もいる神様の話だけど僕は他人事ではなく、リアルでこのムーブメントにいて、今こうしてレビューを書いている。
    星は年代が合わない人には面白く無いだろうから3つにしました。
    西島大介ファンで、90年代を駆け抜けた人なら文句なしの星5つ。

  • 装丁がよくて買った。中身はいつもの西島節。僕は背のびしてギリギリわかる感じ。

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著者プロフィール

漫画家。『世界の終わりの魔法使い』シリーズ、『凹村戦争』、『ディエンビエンフー』、『電子と暮らし』ほか著書多数。

「2022年 『世界の終わりの魔法使い 完全版 6 孤独なたたかい』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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