ちぇんごく(下)

  • 講談社
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感想 : 6
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  • Amazon.co.jp ・本
  • / ISBN・EAN: 9784063761689

感想・レビュー・書評

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  • 武家社会を中心とした戦国時代の解説本。土地からお金へ。

  • 将軍権力の意味と戦国時代の理解、それから加地子と呼ばれる「新税」について。ちょうど消費増税法案投票の日に読んだので感慨深い。

  •  高校の日本史の授業は割りと好きな方ではあったが、こういう本を読むと、やはり歴史のBの側面(http://booklog.jp/users/tomiyadaisuke/archives/1/4062174332参照)にはまだまだ見せ方があると思わされます。
     社会システムから見た「戦国時代のリアル」がとにかく面白い!

     下巻の最初は名乗りについて。
     『センゴク』シリーズは、互いを呼ぶときの呼称にもこだわりがあり、諱(いみな・下の名前)で呼んだりしないわけです。これは言霊思想から来ていて、諱=その人なので、名前を大っぴらに呼ばわると、悪霊的なものに魅入られたり呪いをかけられたり、とそういう心配をしていたようです(なお、名前というのが呪(しゅ)であることについては、夢枕獏・岡野玲子『陰陽師』1巻にわかりやすいエピソードがあります)。
     だから「羽柴籐吉郎秀吉」だと、「秀吉」(諱)で呼ぶのはNG。「籐吉郎」(幼名・字)と呼ぶのが礼儀です。そして、官位を名乗るようになると、「筑前守」ないし「筑前」と呼ばれるようになるわけです。
     これは現在でもその人を職名で呼ぶ(課長、部長、など)ところにも通じているのではないかと思います。

     ちなみに、これは三国志でも同じで、諱(例えば劉備なら「備」が諱)を呼ぶのは主君か親、後は敵方に捕まって首を刎ねられそうになってる相手くらいです。
     だから、そのために相手を呼ぶ名前として字(あざな)があるわけです。諸葛亮を「諸葛孔明」というのはそういうことで、正しい表記としては「諸葛亮」(姓+諱)か「諸葛孔明」(姓+字)で、「諸葛亮孔明」というのは表記としては邪道だそうです。
    (以上は高島俊男『三国志きらめく群像』参照)

     脱線ついでに言うと、西郷隆盛の本名は西郷吉之助隆永です。明治に戸籍制度が作られた際、幼名か諱かどっちかしか名として登録できないことになり、板垣退助は幼名の方を登録し、大久保(一蔵)利通は諱の方を名として登録したわけです。
     で、このとき、西郷の戸籍を「ワシがやっといたる」と親友の大久保が登録したわけですが、「吉っちゃんの名は確か…隆盛やったような…」と隆盛で登録してしまい(確か、隆盛というのは西郷の父親か血縁者の名前だったと思います)、後で西郷は「ホンマは、おいどんは『隆永』じゃのに…」と苦笑した、という話を井沢元彦『言霊』で読みました。

     更に言うと、徳川慶喜(よしのぶ)の名を「けいき」と音読みしたりするのは敬意の表れなんだそうです(これは高島俊男『お言葉ですか…』のどこかで読みました)。戦前の刑法学者・滝川幸辰(ゆきとき)も「滝川コウシン先生」と呼ぶのも間違いではなく、むしろ敬意の表れである、と。『信長公記』を「しんちょうこうき」と読むのも、カッコイイ以外にそういう意味もあるはずだと思ってます。
     これ、一つは源頼朝以来のDQNネーム文化から来ている現象ではないか、と私は考えています。朝を「とも」とは読まないわけで(これはパオロ・マッツァリーノ『パオロ・マッツァリーノの日本史漫談』の指摘)、人名に変な訓読みをあてていたのは昔から、ということです。
     しかしそうすると、諱が読めないわけです(漢字表記だとDQN訓読みの仕方は残りませんから)。徳川十五代将軍ともなれば訓読みが残りますが、下々の人間だと残らないしわからない。そこで、諱を直接呼ばわうことを避けると同時に、読み方のわからないDQN訓読みを回避する手段として諱の音読みが定着していったのではないかな、ということをつらつら考えてみました。

     …って、かなり脱線をしてしまいました。冒頭で黒田官兵衛が「孝高(諱)と呼ぶな!」と言っており、この辺の話がチラッと書いてあったので熱くなってしまいました。
     本来朝廷からもらう官職を勝手に名乗ったり、家来に与えちゃったりするようになったのが戦国時代だそうですが、その事実の持つ意味についての考察まであり、非常に読み応えがあります。

     上では、長々と関係ないことを述べたようですが、本書の楽しみは、実はこういうところにあります。
     歴史を知って楽しむときに、当時の文化的背景や価値観などを知ると、それまで学校や歴史小説、時代劇や大河ドラマで知ってた知識が、ガラッと意味づけが変わることがあります。
     「あ、それはそういうことやったんか!」
     「何か変な話だなぁと思ってたけど、なるほど、そういう事情を踏まえればそうなるわな!」
     と、単なる「へぇ~」というトリビアを越え、今まで知っていた世界が全く違って見える瞬間、そこでの知的興奮こそが史学の醍醐味なんだろうと思います。

     本書では合戦の勝敗や、戦国時代の家族像などがテーマとして取り上げられています。歴史小説や時代物が好き、という方に特にオススメですが、以降、歴史小説を読んだときに「実際にはこんなことあらへんって!」とツッコミを入れまくってしまうという"副作用"があるかもしれません。

     本書の上巻はこちら→http://booklog.jp/users/tomiyadaisuke/archives/1/4063820319

  • 戦国時代の人々の生活が見えてくるよ。

  • 待望の下巻でしたが、半兵衛先生は途中退場…。内容は上巻と引き続いて濃くて解り易かったです。

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著者プロフィール

漫画家 富山大学中退.2001年「ヤングマガジン」(講談社)掲載の『春の手紙』でデビュー.主な著作:『センゴク』全15巻 2004年~2007年.『センゴク外伝 桶狭間戦記』2007年より連載中.『センゴク天正記』2007年より連載中(いずれも講談社刊)

「2010年 『浜松の城と合戦』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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