知らなかった世界を教えてくれた、興趣と色気にあふれる長編漫画の最終巻に、あまりケチなどつけたくはないものだけど。
やっちゃいましたね。やってしまった、としかいいようのない最終巻でした。
以下ネタバレ。
収録されてるエピソードは3つ。
そのうち最終話を除く2篇に渡って、死んだ八雲師匠と、彼を彼岸で出迎えた人々による、霊界おもしろ珍道中が繰り広げられます。
といえば、この最終巻のバランスのおかしさが少しは伝わるでしょうか。
あれほどの尊厳をもって芸の道を求め、美しくも生々しく生きた主要キャラクターの死を、ああいう適当で曖昧模糊とした死生観のもとで取っ散らかして、作者はいったい何をやりたかったんだろう。
第一、読んでて実に退屈でした。「面白いけど、これでいいの?」というんではなくて。
ただただ退屈な脱線話でしかなかった。
その脱線で初めの2篇を浪費して、最終話では話が数年後に飛ぶわけだけど。
ここでの強引な大団円にも、僕はもうついていくことはできなかった。
あれやこれやと辻褄を合わせて、やっぱり世の中は愛と情と人の縁よね、人生そう悪いことばかりじゃないよね、ってだけの終わり。
小夏さんに活躍の場が開けたことには多少の救いを感じたけど、もはや焼け石に水というか。
一言でいうとこの最終巻は、野暮。ということに尽きていたと思います。
粋と風流の芸能である落語をテーマにして、多少の問題は抱えつつもとうとうと紡がれてきた長編漫画の最終巻が「野暮」。
これでよかったんですかね。僕はいいとは思えない。
惜しい。
あまりにも惜しい作品になってしまった、というのが個人的な感想です。
「終わりよければすべてよし、なんてェ申しますが、その逆もまた然りとあって、世間にゃァ笑えねぇ話もあるようでして…」