我が姫にささぐダーティープレイ (講談社ラノベ文庫 お 8-1-1)

  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (299ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784063816457

作品紹介・あらすじ

文武両道なエリート少年・鎧塚貝斗は、生徒会副会長として『王』たる存在を支えることに喜びを見出していた。
だがある日、彼は異世界に転生してしまう。
そこで出会ったのは、騎士公爵家の一人娘、ラライ・アッフィードだった。
名門王立女学園に通う彼女は、家柄だけは優秀なものの、学問ダメ武芸ダメ努力なんて大嫌い、さらには性格も悪くて友人もゼロな問題児。
それでも生徒会長になりたいという彼女。
そんな彼女が、執事となった貝斗に下した命令は――
「執事くんが私のライバルみーんなの足を引っ張ればいいんだよ!」
そして貝斗は、ダメお嬢様のためライバルの少女たちを籠絡し……!?
いずれ王とならんとする少女のために執事が暗躍する物語、開幕!

感想・レビュー・書評

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  • 王になろうと突き進む主人公を描いた物語、王になる英傑を支える従者を描いた物語は幾つも読んできたつもりだが、そのどれもが共通していた点は王になろうとする人物は必ず王の器を有していた点だ。特別な運命の下に生まれていたり、誰もを惹きつける素養が有る等々、その人物が将来王者になったとしても違和感が無い人間性を持っていた。
    けれど、本作はそういったタイプに含まれないかなり異色の物語

    本作の特徴として主人公のカイトが支えることになるラライには王の器は無いし、特別な才能もない。人望もないし何かしら努力しているわけでもない。親に甘やかされ、ただひたすらに自分は大器晩成型であると信じ切っているだけの空っぽの人間
    普通ならこんな人間が主人公によって持ち上げられる展開なんて無いし、何者かになる展開すら無い。けれど、カイトが有能な人間であり且つ病的なまでに王を支える行為に生き甲斐を見出してしまうタイプであったこと、そしてラライが悪魔よりも恐ろしい誘い文句を使えた為に二人の境遇は変わっていく。
    ラライは本当に空っぽだから、自動的に王位につける道なんて無い。従者のカイトが何か何までしないとまともな評価を受けることすら有り得ない最低の人物。
    相性は最悪の筈の二人がこんな形でぴったり結びついてしまうなんて予想外にも程がある

    本作のもう一つの特徴はカイトはラライを勝たせるために何人も罠にかけるのだが、その結果として誰かを不幸にはしない点。
    前述したようにカイトは無能でやる気のないラライを王位につけるためにはあらゆる裏方を担当しなければならない。普通なら陥れた相手のことなんて気に掛ける必要なんて無いし、標的があくどい行為をしていると嘘の告発をして退場させてしまう手段だって有る。けれど、カイトは転生前の人生で誰かを不幸にすればその報いは返ってくると身を持って知り、新しい人生では誰かを不幸にすることは辞めようと決意する。
    だから本作で罠にかけられた3人の少女も、その結果不幸になどなっていないしむしろカイトに出逢う以前よりも諸問題が解決されたことで幸福そうに見える。これはかなり特徴的な点であるように思える。
    脳筋剣士で非常にストイックな生活を送っていた為に孤独だったファナが八百長負けを目的として籠絡された結果、堕落した人間になってしまうのではなくカイトとの語らいを楽しみ、我慢していたスイーツを美味しそうに食べる幸福な人間に変わってしまう。カイトとラライだけが得することだけを目的とした罠なら有り得ない変化は特筆すべき点なのではないかと思える

    これらの要素だけでも充分楽しめるのに、ラストに驚愕の真実が明かされる。ああ、あのような背景があるなら納得だわ。確かにラライは無能でやる気がなくて空っぽな人間だけど、必ず王になって更にもっと上を目指さなければならない存在だと納得できる
    カイトとラライ、二人のダーティープレイがどこまで辿り着けるのか今後の展開も楽しみで仕方ない

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著者プロフィール

2014年、『「英雄」解体』で第25回BOX‐AiR新人賞を受賞。2016年、同作で講談社BOXでデビュー。「飽くなき欲の秘蹟」シリーズ(ガガガ文庫)、「我が姫にささぐダーティープレイ」シリーズ(講談社ラノベ文庫)を各社で執筆するほか、VRアドベンチャーゲーム「東京クロノス」でメインシナリオライターをつとめる。

「2019年 『渋谷隔絶 東京クロノス』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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