惜しい漫画。打ち切りEND。
同じモーニング連載マンガ「暁星記」を近い間隔で読みましたので、自然と比較してしまいます。どちらもストーリーの枠外から、物語の世界を支配する「神」の立場で主人公たちを観察するキャラクターが存在し、その「神」の想像を超えるような行動を起こして運命を打ち破るようなお話。しかしながらこのReMemberは打ち切りであるため、その神殺しというか絶対にありえないような大逆転を説得力ある主人公の成長を描ききる事無く物語が終わってしまうために、完全にわけが分からない状態になってしまっていると思います。
特に1945年側はある程度の話ができているのに対して、23世紀側に関しては記憶の片隅にイメージとして存在する描写しか無いため、何のために戦っているのかどういう世界なのかがさっぱりで、目的が見えなければ達した時の凄さも分からない。
現在にも続くこの米軍の支配について、明らからに現在よりも1945年の方が米軍の存在が大きかったはずなのに、物語の中では主人公の近い脅威として中国人マフィアが強く描かれています。それは進行上で後々進駐軍を描く流れだったのかもしれませんが、書かれている部分だけで考えますと、この世界の支配者である「猊下」が米国の立場として暗に示しているのかなぁと思います。
作者の王欣太さんは1巻の作者コメントで「本当に書きたいものは何なのかと考えて書き始めた」と書いているのですが、果たしてそれが何だったのかは読み取れませんでした。最終巻にコメントとして「様々な問題が噴出した現代をすべての始まりである戦後からやり直す必要がある」のような事を書いていた気がしますが、それならばやはり明治からじゃあ無いかと思うのですが、そう考えると次は明治維新モノを書いてくださると勝手に考えております。支配者を超える物語を。
これは恐らくですがループものとして何度か転生した後でストーリーを進めるという考えもあったのではないか?と考えると大変勿体無く思います。「闇市」「焼け跡」の好きな世界観でした。
大変良かったのは登場人物ジーザスを用意していたこと。これが大変なトリックスターで機械仕掛けの神でハイパワーに物語を進行させる救いになったと思います。