にこたま(5) <完> (モーニング KC)

著者 :
  • 講談社
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感想 : 71
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  • Amazon.co.jp ・マンガ (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784063871838

感想・レビュー・書評

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  • 【愛していなくても、結婚できる。家族も作れる。幸せにもなれる、という回答。或いはお茶碗を欠けさせたことについての罰】

    まず最初に特筆したいのは、この人はこんなに絵が上手かったのか!っていう驚き感。特に、最終話のあっちゃんの表情は「愛していないこと」と「幸せであること」を見事に表現しきっている。こういう、表情で描けるマンガ家さんは素晴らしいと思うね。感じとしては、「いちごの学校」を彷彿としました。


    浮気した男の人とそれを許してつきあい続けるのって、欠けたお茶碗を使い続けるみたいなことだな、と思っている。欠けた部分って絶対に戻らないし、忘れたふりをしても結局そこからひび割れが広がっていく。

    幸せなあっちゃんの最後の台詞は「おかえり 琴子」である。
    この瞬間の「晃平」の不在こそが、晃平のしたことに対する答えなのだ。
    あっちゃんは「(愛していないけど)家族を作りたいから、その構成要素になってよ」という。それは「大好きだから一緒に家族を作ろう」というのは大きな隔たりがある。

    だけど一方で、30も近くの女としては、この鳥が巣作りでもするような建設的さは非常によく分かる。
    良い?家族になる人を「条件で選り好み」するのなら、10年つきあった男以上の人はいない。そういう結論。そういう結論なんです。だけども、それでも幸せにはなれるって言うことなんです。
    ポケモンショックみたいなのも、わかる。でもそれってきっと10代20代の恋だから、今更幾ら食い入るようにテレビを見たってそんなにピカチュウは光らない。安全対策されてるから。十分に。


    また、もう一個このマンガを読んでいて考えさせられたけど、この話ってたぶん男の人と女の人と読んだ時の受け取り方が相当違うんだよね。
    だって、もう、女の視点で読んでると、一択高野さんと結婚(或いは、そこまででなくてもあっちゃんとは別れて、高野さんに養育費など金銭的に援助)で当然だと思うんですよね。
    まあ、そうすると寝取った女得という問題も出てくるは出てくるんですが、とにかく晃平が終始最低の男過ぎる。
    浮気して出来た子供がまだ浮気相手の腹の中ですくすく育っている状態で、「そろそろ結婚しても良いんじゃ無いか」とか思ってプロポーズ。「俺、あっちゃんに責任負いたいんだよ」の台詞には、全女子が「お前が責任持たなきゃならんものは他にあるだろ!!」と全力突っ込みを入れたハズ。

    でも、男の人側からは「一回の過ちなのに、産むって強行した高野さんの責任。むしろ晃平は被害者だし、それなのにベビーベッド組み立てたりして優しいなー」なのかなって思った!じゃないとこんな最低男描けないよ!
    もうね。子供が出来ることの責任は、子供を生むことを決断したことにより発生するんでは無いという点を、もう一度確認しておきたいですよね。その、子作り行為即ちセックス&射精に発生していると言うことを確認しておきたい。真剣に射精しても、不真面目に射精しても、生命が生まれたからには責任取らんといけないのですよ。


    そして、そんなこともまともに出来なかった最低の晃平君は、冒頭に述べたような甘い罰を受ける。

    ううーん、これ以上の最後は、なかったかもね。
    だって、高野さんと結婚して子育てしても、あっちゃんとやり直すことになっても、あっちゃんとも高野さんとも別れることになっても、結局全部高野さんとあっちゃんが負担を負うだけで、晃平はなんにも困らない勝ち逃げコースだったんだよね。
    そこで、「愛してるけど、愛されない」幸せな生活を一生送る、ということ。
    欠けさせたお茶碗のことや、産まれた子供(晃平が責任を全く取らなかった子供)のことを考えれば、これ以上の結論は無かった、かもね。

    • さとみんさん
      >幸せなあっちゃんの最後の台詞は「おかえり 琴子」である。
      この瞬間の「晃平」の不在こそが、晃平のしたことに対する答えなのだ。

      自分...
      >幸せなあっちゃんの最後の台詞は「おかえり 琴子」である。
      この瞬間の「晃平」の不在こそが、晃平のしたことに対する答えなのだ。

      自分もラスト読んで「おや?」と違和感あったのですが、
      ↑のように書かれていたのを見て、ぞわっとしてしまいました。
      ほんと、その通りですね。
      2013/04/29
    • tokyochocolateさん
      ありがとうございます。

      あっちゃんが、晃平を選んだもう一つの理由は、あっちゃんは子供か産めないと言う負い目があるけど、晃平は浮気して外で子...
      ありがとうございます。

      あっちゃんが、晃平を選んだもう一つの理由は、あっちゃんは子供か産めないと言う負い目があるけど、晃平は浮気して外で子供がいるって負い目があるからですよね。
      石田さんの「自分の子供を抱く機会」を奪うことには躊躇して身を引いたのに、晃平には「養子を取るための父親役をやってくれ」と言う話を持っていけてしまう。それは、やっぱり「まあ、君の子供はもういるしね」という晃平の弱みをついて、なりふり構わず家族を作ろうとするあっちゃんの強い意思を感じます。

      女の人は赦したりしないということがガッツリ書かれている話だなぁと思いました。
      それであれどうであれ、幸せにはなれる、ということも。
      2013/04/30
  • これだけ男女が並列に扱われるようになってきても、昔からすれば不可能だったことが可能になっても、基本的には生殖の仕組みは変わらない。

    ドライというか、どこかクールなあっちゃんだからこの結論になったのかなぁ。

    むるたん、どう思う?

    人と人の関係は突き詰めれば、出会ってから一緒に居続けるか、離れるかの二択。一人でいるか、誰かといるか。

  • 落ちつくべきとこに落ちついて嬉しい。ただ、最後にこうへいくんが悩む場面が心に残った。こういうところがリアル。

    物語は終わったけど、この先が気になる。2人とも幸せになってほしい。

  • 第三次性徴白書と謳っていますが、そのココロは心も体も成長したいい大人の最後の思春期のおはなし。
    あらすじを書くと、この話おもしろいの?と言いたくなるような話です。
    コーヘーはほんとにヘタレだし、
    あっちゃんも高野さんも、同じ女として否定はしないが共感だってしないよ。
    この女性二人は、もどかしくも清々しい。男前。
    コーヘーはとことん女々しいのに、ほれぼれするほど男前。

    内容は実はかなり重い。が、軽いタッチが絶妙で妙に生々しい。
    泥沼化しないのが逆に怖い。
    最後を読んで、えー、えー、やっぱりそうなるのー?ってなってしまうのは、否めないよねー。

  • ダヴィンチで紹介されてたので大人買い。
    これ、実話だったら、もーっともーっと
    ドロドロするんじゃ?
    とか思いながら、一気に読破です。

    最後に二人で選択した答えが正しいのかどうかは分かりませんが、
    それだけしんどくても誰かといたいと思うことがすごいな。
    つか、この人といたいと思える人に出会えるのがすごいわ。

  •  重たい人間関係が描かれ続けた「にこたま」ついに最終巻。それぞれの求めるものとそれに答えることが描かれていました。

     足し算引き算ではない相手。良い条件を足していけばデカイ数字になってしまうプラスな相手とダメな条件を挙げればキリがないマイナスな男どちらが良いか。まぁ普通に考えれば良い条件だと思いますが自分のパーツと相手のパーツが合ってないと意味もないんですかね。好きといった感情を考えれば考える程味気なくなってしまうとむるたんは言いましたが、なんとなくで付き合うのが一番ラクちゃラクなのかなぁと考えてしまう自分はまだ玉ねぎ剥いてる途中みたいです。女子の切り替えの良さにはリアルでもフィクションでもすごいと思ってしまいます。

     広げられる男とは。遺伝子を繋ぐことが男の本懐、だけど生活を広げるのもパートナーとして務めと言われてしまうと自分はコウヘイと一緒でグルグル考えてしまうんですが作中でむるたんがステキなことを言ってくれています。「うまくいくかどうかは関わる人たちの意思と気持ちとあとは運じゃない?」この言葉は最後に運が入っていてくれるのが救いです。自分の気持ちにしたがってそれが失敗か成功だろうとあとは運次第といわれると少し荷が軽くなりますね。なんだかんだやってみないとわからないんでしょうが、準備としてこういう作品見れたのもいい機会だと思いました。

     最後は収まるところに収まった形ですが完全な答えがでないからこその終わりでした。あー結婚してー

    ※ブクログの感想みたあとの追記
     やっぱり女性の方たちの感想を見ているといかに自分が男性目線でしかモノが見えないんだなぁと思い知らされた作品でした。あっちゃんの出した答えがそういった捉え方もあるのかぁと納得させられました。はい女心全然わからないです。あっちゃんの1つの答えをハッピーに捉えてしまうのが自分の頭お花畑な部分なのかなとも思いました。
     だけど、男としてはパートナーの女性が決めた答えを自分なりに考えたいんだよなぁそれが見当違いでもさ。うむ女心全然わかんない!助けてむるたん!

  • それぞれの家族の形が示されて、これはこれで良かったと思う。

    あっちゃんが初めて大泣きした時は、少し安心した。冷めた様に見える人でも、心の中はいろいろな思いで渦巻いていると思うから。

    この後、彼らにはまた問題が起きて離れたりくっついたりするかもしれないけど、それも仕方ない…と思わせる話だった。

  • 傍から見たら新しい恋の予感のあっちゃん、
    でもコーヘーとの10年間ってのは重い……。
    コーヘーも新しい人生を!!と思っても、
    やっぱりあっちゃんがチラついてしまう。
    コーヘーは高野さんに
    『流され巻き込まれながら前に進んでる』と指摘され、
    あっちゃんはあっちゃんで誰かと生きてゆくことを切望。
    あっちゃんが一緒に生きたいと願った人は………。

    この話、着地点はどうなるんだろう?って思いながら読んだけど
    取り敢えず3人とも気持ちが固まって
    前に進んでコレはこれで良かった。

    久々女性として重い漫画を読んだ(~ヘ~;)ウーン

  • いろんな場面で胸がキシキシと痛んだ。
    あっちゃんとコーヘーくんが別れた場面がつらくて切なかったけど、あの場面が一番印象的で話的にもよかった。
    私としては、コーへー君より、石田さんと一緒になったほうがいいと今でも思ってる。
    だけど、あっちゃん、自分が子供生める体でないけど、家族がほしい、養子縁組を考えたとき、父親になってほしいのはコーヘーくんということでこの二人は一緒になったんだろうけど、
    コーヘーには、高橋さんとの間に血のつながる子供がいるわけで、
    コーヘーくんはそれでもあっちゃんと一緒に養子を迎えてでも一緒にいることを選んだことは
    いいんだろうけど、私としてはスッキリしない。
    本当に今でも石田くんのほうが・・・って思っちゃうんだよね。
    まぁ人それぞれなんだろうし、各々の人生だからこんな人生もありなんだろう。
    でも、私にはいまいちすっきりとした完結とは言えなかった。
    この二人は波瀾万丈な人生をおくりそうです。

  • 内容はすごく重いんだけど、さらっと描かれているのでさらっと読んでしまった。

    同年代の恋愛って、もうこんなに色々なんだってこと、
    改めて考えさせてくれた感じ。

    5巻のむるたんのセリフがすごい良かった。

    結末は、無理ないところに収まったかな、でも
    これが現実だったらこんなにうまくいくかな
    その両方が渦巻きます。

著者プロフィール

北海道出身。
2004年「ヤングユー」から『透明少女』でデビュー。その後「コーラス」や「エロティクス・エフ」など女性コミック誌を中心に連載。代表作に『東京膜』『ラウンダバウト』など。
今作が青年誌初連載!

「2013年 『にこたま(5) <完>』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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