- Amazon.co.jp ・マンガ (224ページ)
- / ISBN・EAN: 9784063882285
作品紹介・あらすじ
遺伝操作が産業として発達し、異種動物のキメラ体が生産される世界。遺伝操作を生業とする生体操作師・音喜多(おときた)の元に、様々な事情を抱えた者たちが訪れるーー。寿命が迫る異種キャリアが最後に残したいものはーー「花と揺れる嘘」。代々伝書鳩を操る異種キャリアたちの矜持――「金色を渡る鳩」。急遽「出荷」が決まった食用人魚の行く末はーー「人魚が融ける指」。3編を収録。
感想・レビュー・書評
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SF
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面白いわあ……ずるいわあ……
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これもまた、「読ませる」漫画の一つ
数えて覚えておく事も出来ぬほど歳を重ねてきたからか、それとも、私の漫画読みとしてのレベルが上がりつつあるのか、ここ最近は、シンプルに面白い作品だけでなく、この『螺旋じかけの海』のような深みのあるモノを読みたくなる
漫画ってのは心のモヤモヤを取り除くために読むモノだ、少なくとも、私の中では
この『螺旋じかけの海』は、単に澱を払うのではなく、その澱の正体は何なのか、を考えさせるキッカケをくれる
『小林さんちのメイドラゴン』(クール教信者)や、『モンスター娘のいる日常』(オカヤド)のように、可愛い人外っ娘が出てくる作品も当然、好き。そこは誤魔化せない
この『螺旋じかけの海』に、その手の可愛さがあるのか、と聞かれたら、「ない」と答えるしかない
けど、イイ漫画であるのは確かなので、お勧めしたい
ストーリーを展開させるのは、獣化が進んでしまっている人間
だからこそ、「人間」とは何なのか、を改めて考えに耽りたくなる、読むと
人間の定義とは、外見で決まるのか、性格で決まるのか、血筋で決められてしまうのか、環境で決められてしまうのか、それは分からない
ただ、自分が何者であるか、を周りの意見に左右されず、芯を持っていれば道は閉ざされず、世界は狭まらない、と私は思った、読みながら
キャラクターたちは様々な境遇に、己を置いている
ストーリー的にスカッとするものはあるけれど、善と悪に分かりやすく、二分化されている訳ではなく、「人間らしい」者ばかりだ
綺麗なトコも、汚いトコも、ごちゃごちゃに混ざり合っているのが人間なんだろう
一度、読んだだけでは設定が突飛だと感じるかも知れないが、幾度も読んでいると、「こんな未来もありえるかもしれない」と背筋が寒くなる
未来ってのは、良くも悪くも不確定。現在の行動一つで如何様にも変化するのだから、人が、人でないモノが混ざった人を、人扱いしない時代が来ても、何らおかしくない
この朧な現実感こそが、『螺旋じかけの海』の強みなんだろう
その魅力は、永田先生自身が、この作品、テーマと向き合っていなければ出ない
目立ちこそしていないが、確実に注目されているはずだ、漫画を評価するプロに
どの回も真面目に読みたくなるモノばかりだが、個人的に好きなのは、「花と揺れる嘘」だ。悲恋モノ、けど、哀しいラストではない。相手が大切だからこそ、隠したい自分がいて、終わりの刻が来るまで辛い嘘を吐き通そうとする。けど、それは結局、自分も相手も傷つけてしまう
相手を想い合いすぎる男女の為に、何も出来ないからこそ、自分に出来るコトを全てやるオトの切ない心情がグッと来た
好きな人と一緒に幸せになるのは難しく、そして、易しい
この台詞を引用に選んだのは、オトのシブさが出ているからだ。多くの生と死、生き方と死に方を目の当りにしてきたオトだから、薄っぺらくないんだろう。いてくれるだけでいい、そんな人が人生で見つかるのは、男でも女でも最高だ。けど、それが思ったようにならないのが人生だ。だから、面白い -
世界観と、その重みがいい。婆ちゃんかっこいいな…!
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自分の寿命を悟り、自分の身体を切り売りして収入を得るキャリア。どんなことでもして力になりたい、治療を受けさせたいと願う存在。同じ時間を過ごせただけで、人生の時間を重ならせてくれてありがとう、とい言葉が重く。食用に開発した人魚に買い手がつかず、飼育していた飼育員が、いざ買い手がついた途端、一緒に逃亡を図る。心が通じ合ったと思えば、どうして食用に供することができよう、と。ただSFの設定だけど、どこまでが人間か、という線引きには考えさせられる。それが恣意的に運用されれば、人ではないから何をしてもいい、という世界になる可能性も秘め。