夢から覚めたあの子とはきっと上手く喋れない (モーニング KC)

著者 :
  • 講談社
4.12
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  • (10)
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本棚登録 : 1189
レビュー : 71
  • Amazon.co.jp ・マンガ (226ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784063883381

作品紹介・あらすじ

初作品集『変身のニュース』/第二作品集『僕は問題ありません』(各全一巻)、両作品とも「俺マン」トップ10入り&「このマンガがすごい!」にランクイン!! 業界最注目の新鋭が、あらゆる種類の「さみしさ」を描いた最新短編集。

好きなものは世の中にいっこでいい。大切なものに代えがあるのは、さみしいから。…第一話「明日も触らないね」よりこれまでにないマンガ表現を模索する絵柄や描写で、評論家や目利きの書店員から2010年代を牽引する逸材として注目を集める宮崎夏次系の最新作。今作では、人間のあらゆる種類の「さみしさ」を描いた短編九本が収録されている。

感想・レビュー・書評

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  • うはーーーおもろい…絵の荒さが気にならないすごい…

    「好きなものは世の中にいっこでいい 失くしたらおしまい そんな感じの だってさ 大切なものに代えがあるのはさみしいから」  

    これ好きだ、相反することをしてもいるけど、こういう尊さを求めたいなという気もする。
    わたしは好きなものが増えると、その好きな物の数だけ未来が楽しみになるから、ある意味生かす術になってる、わたしの日々は好きなものをどれだけ見つけられるかの旅みたいなとこあるとおもってて、でもほんとは今それら全部なくなってもひとつだけ残るよって言えるものがあったらすてきだね、
    みたいなことを考えました。

    背景とかすごく細かく書き込まれてて、人物はぱっと見手抜きなのかなって思うような書き方なんだけど、ちゃんと漫画への愛が見えてくるというか、絵の荒さが気にならないってそういうことかなって思った
    少年少女の彼ら彼女らの表情が、すごく繊細な微妙な差のタッチで、ちゃんと伝わってくるのが、虚無だった少年少女の目にどんどん光が留まってくる感じが、分かる分かるっていうか、読み終わったときの胸がいっぱいになる仕掛けはそういう小さいなところにちりばめられてる。気がする。暗くてかなしくて絶望のかたまりな始まりが多いから、どんな夢も希望もないオチになるんだろうって流し読んでたはずなのに、読み終わったら嬉しくて泣きそうなんだよ。そういう感情を読者におぼえさせるのってすごいことだ。

    言葉のチョイスも絶妙!ちょうどよいボリュームで、絵と文をさらさらと読める。そこで感情も拾えて、芽生えて、想像もできる。テンポが最高なのだとおもう。

    さみしさとかかなしさとか悔しさとかを大したことのないような普遍的なものとして、これによってすごくダメージを負ってるわけじゃないという、そういうことがあって当たり前と感じてしまうひとたちを、そういう世界を描くのがとてもうまい。
    でもほんとはそのひとたちはダメージを負っていて、抱えてるものはあって、そしてその爆発する瞬間を描きたいのかな、ともおもう。

    感情が揺り動かされる漫画が好きだから、これ、すきだなーーーとおもった。

  • 市川春子の短編より分かりやすくて肌に合う
    「そういえば昔BSで流していた映画で アル中の男が酒瓶を隠すために アパートの外にロープで吊るしていたシーンがロマンチックだったなと思い出します」
    《あの子は 弱い者無しにこの家が成り立たない事 知ってるんだ》
    《僕は 好きなものはいっこでいいんだ 明日も会いたいと思える そんな感じの》
    《隣人よ 耐えろ 私達は 生まれる場所を選べない……》
    《僕は おとーさんが変になって良かった 嫌だったの ずっと ばーちゃんが死んでもキヨサダが死んでも みんな大丈夫になってくのが》
    《祈ったらめっちゃ腹減りません?メニュー貰ってきますわ》
    《昔から 触れてはいけないものばかり好きになる 気づかなければ 幸せになれるものばかり 私は》
    《自分の弱さを 呪う 彼女が嘘をあきらめてからやっと》

    寂しさ、暴力性

  • 暴力性の潜み具合がよかった

  • カバーをとれば、さがし絵。『明日も触らないでね』星型の顔の母は主人公の生き別れ。不遇な彼も「いついこう、尾瀬」で救われる。表題作、夜な夜な全裸で屋根に立つ少年は、普段は車椅子の生活。心を病んだ母によって川に捨てられる。遠くから想いを寄せる少女。4頭身に細い手足、ランドセルが可愛らしい。「志は共にある」、そして彼の留守電に涙する。『ごらんJ組の様子を』委員長は部下の女子にも見捨てられ、なおもJ組を糾弾し続けるが、テレビアニメの最終回に図らずも涙し、J組の思いに共感。J組の子らは喪に服し、高い高い肩車する。その他、彼女の鈍感さ(?)に「ふと殴りたくなる」青年の話、先生の死に際を笑ってしまった思い出を共有する女の子たちの話など。

  • これは傑作ですね…! 少し前に読んだ長編作品よりも楽しめましたね。やはりこの著者は短編作品のが力を出せるのかも分からんですなぁ…。

    時たま心に刺さるセリフなどが登場人物の口から吐き出されるわけですけれども、もうたまらんですね…! この感じは…! というわけでアレですね、まだ読んでない短編作品もありますので、今後が楽しみな漫画家さんですなぁ…。

    というわけで、さようなら。

    ヽ(・ω・)/ズコー

  • 相変わらず巻数を経ても衰えないセンス。

    心の先を針の先で決してグサリとはいかずにちくちくと弄ばれる様な、そんな短編集。

    どの話も基本的に家庭に焦点が当たっている


    家庭ってやつは小さな社会の箱庭で、大抵決まったルーチンワークを淡々とこなして家族がそれぞれバランスを保っていたりする。

    根底には勿論相手に対する思いやりだとかストレスなく暮らすためだっていう想いがある筈だけれど、それも長年の暮らしの中で風化して、いつしか本質が見えなくなり、そのバランスを保つ事だけに注力する様になってたりするもんだ

    そこには諦観や、希望や、不満が内在していたりするけれど、結局どうしようもない現実があるだけで、結局連綿とその活動を続けていくばかりだけど

    そんな風にして幾重にも重なった想いは、ちょっとしたアクションで簡単に決壊したりする

    「今まで話すべき話を私達はしてこなかった」

    後に分かるのはそんな当然過ぎるくらい当然の感想で、なんだか少し以前とは違った空気を感じるけれど、結局また同じ様な毎日を繰り返していたりする

    家庭ってやつは実に面倒で厄介で呆れる程下らなくて、でも自分にとっては世界の一部で、決して手放す事の出来ないもの。

    そこに溢れる諦観と希望の混在した一見整然としていてその実ぐちゃぐちゃに感情が混ざり合った実におかしな環境の中で、私たちが出来るのは結局そこで生き続ける事だけだ

    全然関係無いけどこの人の作品はなんでどれも秋の匂いがするんだろう
    医者のシャツの柄がえらい可愛い

  • 母親の顔が星型だったり、父親が犬になったり、校長が盆踊りしながら悶え死んだり。こんな奇天烈な経験はもちろんないのだけど。
    この痛み、苛立ちには既視感がある。
    このシュールさに何故か見憶えがある。
    例えば満員電車の中のケンカ。
    ぎゅうぎゅうに人が押し込まれている車内に揉めている人の声だけが不穏に響く。
    例えばある朝突然に空席になった会社のデスク。理由は知らない。誰も関心を持たない。そして淡々と日々の業務は続く。
    時々見かける女子高生の脚は大腿骨の形がわかりそうなぐらい細い。
    救われて欲しいと無闇に祈ったりします。

  • 私たち現実味の分かんなくなる現実に、何かを挟んで寄り添っている。

  • ちとヤバいものを見た。宮崎夏次系さんの『夢から覚めたあの子とはきっと上手く喋れない』という短編漫画。帯に書かれた“「さみしさ」には、種類がある。”という文句のようにいろんな立場のちょっと上手くやれない人たちの視点が描かれる。

    ひとつ話が終わる度に鳥肌が立ってドキドキしている自分がいる。分厚いガラスに拳を突き立ててパリンと割ってしまうことがなんだか正義のように思えて、そうしてみるのだけれど、意外に強いガラスに弾き返されて痛めてしまった手首をぼんやり眺めるしかないような虚しさを感じた。それでもどの登場人物も最後に少しだけ救われていて、それは解決とかではないのだけれどとりあえず明日は生きようというところまで持って行ってくれる。極端に思えるかもしれないが、今のところ私は「とりあえず明日は生きよう」ってやつを毎日繰り返せていることに感謝したくなったのだった。

  • ますますドキッとさせられるコマや言葉が。

    「明日も触らないね」
    いつ行こう、尾瀬

    「夢から覚めたあの子とはきっと上手く喋れない」
    隣人よ 志はともにある
    隣人よ 耐えろ 私達は 生まれる場所を選べない……

    「リビングで」
    嫌だったの ずっと
    ばーちゃんが死んでもキヨサダが死んでも
    みんな 大丈夫になってくのが
    ずっと それが ずっと 嫌だったから ぼく ずっと
    うまく言えない

    「わるい子」

    「ごらんJ組の様子を」

    「毎日」
    なぜか
    彼女を ふと 殴りたくなる

    「石鹸」

    「なほちゃんの白いたまごやき」

    「妙な夢」
    なんだか 同じ夢の中に
    いるみたいで うれしい

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著者プロフィール

作者の初単行本『変身のニュース』が文化庁メディア芸術祭マンガ部門「審査委員会推薦作品」に選出され、評論家や目利きの書店員から2010年代を牽引する逸材として注目を集める。その後出した短編作品集『僕は問題ありません』が、「俺マン」トップ10入り&「このマンガがすごい!」にランクイン。他の作品集に、『夢から覚めたあの子とはきっと上手く喋れない』『ホーリータウン』『夕方までに帰るよ』『なくてもよくて絶え間なくひかる』(以上すべて全1巻)『培養肉くん』がある。

「2018年 『アダムとイブの楽園追放されたけど…(2)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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