黒博物館 ゴースト アンド レディ 下 (モーニング KC)

  • 講談社 (2015年7月23日発売)
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本 ・マンガ (288ページ) / ISBN・EAN: 9784063884784

作品紹介・あらすじ

決闘代理人はなぜ、劇場の幽霊となったのか? 死の瞬間を思い出した時、グレイと女装の美剣士・デオンの因縁も動き出す。一方、野戦病院の改善に突き進むフローに対し、クリミアの陸軍医務局が暗殺計画を発動! そして奇妙な「ふたり」の冒険物語の最後の舞台は、20世紀の、ある夏の日のロンドンへ…。『スプリンガルド』に続く『黒博物館』シリーズ第2弾、フィナーレ!!

感想・レビュー・書評

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  • たとえそれが「偽善」でも、貫き通さねばならない「偽善」がある。「偽善」でしか成し遂げられない「善」があるのです。

    藤田和日郎は長編よりもこの位の短くて濃厚な作品の方が、より魅力的かもしれません。
    必ずしも、勧善懲悪や大団円のハッピーエンドとはならなくとも、暖かい読後感もある冒険譚でした。

    様々な舞台のセリフが引用されるところもあり、芝居とは相性が良さそうです。
    劇団四季のミュージカルも鑑賞予定で、そちらも楽しみです。

  • うーん。
    最後の終わり方あんまりだな。

  • 藤田先生の「うしおととら」が今まで読んだ漫画の中で1番大好きで、もう、崇拝しております、そんな人間の感想なので、贔屓目でお目汚しください汗

    クリミア戦争とフローレンス・ナイチンゲールの活躍という史実に基づくフィクション、先生お得意の冒険奇譚となっております
    ナイチンゲールはもちろん名前は知ってても、看護師さん?くらいな浅はかな知識しかなく、クリミア戦争とか、もう…(遠い目)、もちろん全てこの物語通りではないことは承知の上で、本当に勉強になりました

    壮絶な現場の悲痛な声と、それが全く届かず、机上の理論で現場を苦しめる上層部

    という構図はいつの時代も全く変わらないのだ、と慄然とするばかりですが、もちろんそんなことで先生もフローも諦めません(フローにももちろん諦めていることもあるのですが…)

    今年、劇団四季でとうとうミュージカルが上演となります、本当にこんな相性のいい、ふさわしい作品があるのか、目の付け所が違う方にただただ感謝です
    というのは、このお話のもう1人の主人公、劇場に長く取り憑く幽霊、グレイが様々な有名なミュージカル(シェイクスピア)の珠玉の台詞を物語の中に効果的に挟み込み、フローたちは舞台の演者なのだ、高じて私たち一人ひとりが「現実」という舞台に立つ主人公なんだよ!というメッセージを実際に舞台で表現するというまるで入れ子構造という企みがこの上ない相乗効果をもたらすと思うのです(からくりサーカスも「出し物」という性質を効果的に配していたけど、こちらはもう「演劇」そのものが物語のエッセンスとなっています)

    やはり、この時代にこの作品のことを語るのに、「戦争」について記すのは避けて通れません
    藤田先生なりの「戦争の恐怖」が提示されます
    もちろん、このストーリーありきなので、それが先生の全ての意見ではもちろんありませんが、やはり畏れを伴う作業だったと想像し、心から敬服するばかりです

    ただ、ぼくが最も心震わすのは、先生が登場人物を通して示す熱い人生譚です

    選びきれないのですが、今ぼくに1番響いた文章を引用させてください

    「偽善」でしか成し遂げられない「善」があるのです

    例えば、ぼくの近くに、苦しんでいる人がいたとします
    何かできることないかな、ってその人の苦しみに思いを馳せます
    でも、何もできることなくて、落ち込みます
    自分の中の誰かが呟きます
    え、結局何もせんの?じゃあ苦しむだけ無駄じゃん、なに安全地帯から偉げに宣ってんの、偽善者ぶんないでよ、逆に迷惑なんだけど(く、暗すぎる、我ながら…)

    でも、また違う誰かが呟きます
    その人助けたいって思ったんだよね、何もできなかったら、その気持ちは無駄なん?人のこと慮ることが本当に無駄って思ってる?

    偽善だって笑いたい奴にはまた、あんたの気持ち、話してみたらいいじゃん

    そんなせめぎ合いがしばしば繰り返され、それに対して先生が励ましをくださった、と勝手に嬉しかったです

    そして、本当はもう1つ引用したい文章があるのですが、この駄文を読んでくださり、漫画読んでみようという奇特な方のために、書きません、だって漫画で知る方が何万倍も強く響くから

    今、この漫画を読むことができて、本当によかったです、もうみんなに読んでもらいたい(だって上下、2巻なんですよ!すぐ読めます)、でも、絵が苦手って人も一定数いらっしゃる…(この絵だからこそ伝わってくるのに!…贔屓しすぎ汗)

    も、もう、ミュージカルが楽しみすぎます、それを待つのも幸せすぎる…

    また、大切な漫画が1つ増えました!
    そして、先生の深い造詣は、どれだけの時間と努力と忍耐が必要だったかとただただ感服し、でもお茶目な先生のことだから、え、全然楽しかったんですよ、ハアハア、とかどこ吹く風って感じですよね、絶対に!

  • 上巻は絶望的な雰囲気が多めでしたが、後半もなかなかどうして。(´Д⊂
    そんな中で、自身のなすべきことを頑張るゴーストとレディを見ていると勇気をもらえる気分です。
    最後もしっかりまとまって読後感爽やか。

    じっくり腰を据えて、もう1回、いや2回以上は読みたい作品。
    読むのに疲れますが、そこもまた良いのです。

  • ぐぅ…切ない…切ないよ、これは。

    史実を下敷きとし、実在の人物をモデルとしている以上、この脚色は否定意見が出てくるかと思いますが…それでもこんな事実があったとしてもいいじゃないか、と。フローが一人の女性としての幸せを得ていてもいいんじゃないか、と思うのです。
    そして、グレイがどうしようもなく、哀しい。救われていたのに、一緒に行く事が叶わないという事実。
    彼はそれが分かっていても、どうしてもフローに会わなければならなかった。会いたかった。
    きっと、今も国立劇場で「見たい芝居を見ている」のかと思うと…涙せずにはいられません。


    ともあれ。
    フローの成し遂げた事は改めてすごいと言わざるをえません。特に上巻ではひたすらに忍耐を強いられていましたから、ここで一気に彼女の願いと行動が結実する状況には強力なカタルシスを感じます。
    切ったはったのアクションでも策略をめぐらす頭脳戦でもありませんが、確かに大逆転と言える戦いがありました。

    それにしてもラグラン卿かっこいいなぁ…!
    登場するシーンはほんの数ページしかないというのに、この存在感。一つにはホール博士を完膚なきまでに叩いてくれるという点で物凄い爽快感を与えてくれるというのがあるのですが、何せビジュアルが凄まじい。ラスボスでもおかしくない風体ですw
    なのに、フローにただ礼をしたいという理由だけで馬を走らせる。そんな男気、気配りが超萌えます。ホォォォォル。

    それにソワイエもレフロイ軍曹も非常にいいキャラクター。
    フローに惹かれつつ、プロフェッショナルとしてかっこよさを見せてくれてます。少しずつ少しずつフローの味方が増えていく感じがなんともいえない救い。

    クライマックスのスタン…もとい、生霊も大迫力で素晴らしかった…。やはりこういう展開じゃないとね、折角だし!


    そんなこんなで、これぞ藤田漫画とばかりに楽しませていただきました。
    黒博物館シリーズの新作をお待ちしてます!!



    それにしても…あどけないフロー、たまらなく可愛いなぁ! あと色々エロい!!!

  • 話の綴じ方が実に美しい。

  • 上巻が序章なら、下巻は回答編という感じだった。
    どちらに正義があるか、順番に積み上がっていく様が面白かった。
    最後は不器用なハッピーエンドというのも、らしくて良い。

  • いや~面白かった!!!!
    この漫画家の人ものすごく歳いってるんだけど
    すごいね!歳とってもこんな漫画かけるんだもんなー。

    ナイチンゲールの話をこんな風に読めるとは思わなかったよw

  • 強い女は、美しい♪

  • ナイチンゲールを作者が、あーしてこーして味付けをして描いたらこうなりました。

    最高に面白い!!やっぱりこの作者の作品は胸が熱くなります!!

    「かち合い弾」は何故生まれたか。
    是非とも最後まで読むべき作品です。

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著者プロフィール

北海道旭川市出身。1964年生まれ。88年、『連絡船奇譚』(少年サンデー増刊号)でデビュー。少年サンデーに連載された『うしおととら』で91年に第37回小学館漫画賞、77年に第28回星雲賞コミック部門賞受賞。ダイナミックかつスピーディー、個性的ながらエンターテインメントに徹したその作風で、幅広い読者を魅了し続けている。他の代表作に『からくりサーカス』(少年サンデー)がある。

「2007年 『黒博物館 スプリンガルド』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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