惡の華(11)<完> (講談社コミックス)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・マンガ (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784063951165

作品紹介・あらすじ

ボードレールを愛する少年、春日高男。ある日、彼は、放課後の教室に落ちていた、大好きな佐伯奈々子の体操着を、思わず盗ってしまう。それを、嫌われ者の少女・仲村佐和に見られていたことが発覚!! 盗んだことをバラされたくない春日に、彼女が求めた“契約”とは‥‥!?

常磐と生きていくため、仲村に会いに行くと決めた春日。海沿いの町で穏やかに暮らす仲村と、春日は3年半ぶりの再会を果たす。夏祭りの日、あの瞬間まで春日は信じていた。仲村と二人“クソムシの海”から抜け出すのだと‥‥。それは、ずっと春日の心を過去に縛り付けていた疑問。かつて二人で見た夕焼けと同じ空の下、春日はあの時、自分を突き飛ばした理由を仲村に問いかけるが‥‥!?

感想・レビュー・書評

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  • 「血の轍」「漂流ネットカフェ」は無料で読めるところまで読んでいた。
    そして「浦沢直樹の漫勉Neo」でこの作品を今更に知る。
    どうやら、作者ご本人のティーンエージャー時代の鬱屈とした感情を主人公に投影させた物語らしい。

    「思春期を乗り越える」までの、主人公たちの、この年齢になってからではだいぶ痛々しい感情の波打ちにちょっと置いていかれることもあったが...。
    クリスマスのあの決死の覚悟で挑んだ一言と、それに見事に撃ち抜かれた文の表情が忘れられない...。

    徐々にフェードアウトしていく物語の末筆。
    文をしっかり抱きしめながら主人公が見た夢の中で、それぞれの思春期を乗り越えた登場人物たちに、安らかな表情を重ねて描いてくれた作者。
    なんとも言えない、感謝の気持ちで滲んでいった読後感だった。

    そして、物語は、また誰かの心の中とリンクしていくように、思春期真っ只中の(困ったちゃん全開の)佐和にループしていく。

    平成の中学生だったけど、令和の中学生も同じような感情抱いているんだろうか。

    作者が考える思春期は、きっと時代が変わっても、皆が、もがき苦しむ普遍的なものなんだろう。

    ----
    読了された方へ。
    下記リンクのインタビュー記事、とてもオススメ。
    何度か引用される名シーンを思い返すと、また読み返したくなる。

    ちょっと、突拍子もなかった感のあるあの夏祭りのシーンが、あの名画へのオマージュだったり、後半、セリフ(モノローグ)が極端に減っていったあの違和感も実は作為だったりとか。
    もっと作者と作品と近くなれること必至かなと。

    【インタビュー】“純愛”を考えていたら体操服を盗む話ができあがった。 『惡の華』押見修造【前編】
    https://konomanga.jp/interview/3807-2 [2014/06/14]

  • 思春期とはかくも醜く儚いものか。
    さも美しいかのように賛美するマンガは数あれど、〝自意識過剰な日常〟であることを読者に突きつけてくる意味で2000年代の古谷実とこの作品は双璧をなす。

  • 最終巻。
    初めて惡の華を買った時は「なんで買っちゃったんだ……」と頭を抱えました。思春期のエグイ部分をとにかくはぎとり、痛い痛すぎるの連続。恥ずかしいですが、わたしにもあった若い頃の破壊衝動を思い出させられ「もうイヤ……読むけど……」というかんじでした。
    高校生編に入ってどんどん普通になっていく物語を読みながら、そこに生じる空っぽの感覚に「もういいかな」という後悔がありました。
    しかし、9巻を読んで自分の過ちに気づきました。中学生編で終わらなかった意味、高校生編に続いた意味。涙が出ました。
    大抵の人は後悔しているであろう痛い過去を赦してくれる。それでいいんだよ、と背中を押してくれる大切なマンガになりました。
    普通である愛おしさ、苦しさ。同時に自分の中にある暗い気持ち。それでも幸せを掴みたいと思う気持ち。
    最終巻を読んで、穏やかな涙が出ました。集めた意味があったと心から思います。ありがとう。

  • 青春とは疾風怒濤、吹き荒ぶ風と、猛り狂う波と、
    そして海辺での殴り合いだ。
    それはもう、お決まりのパターンなのだ。

    青年期を「疾風怒涛」と表現したのはアメリカの心理学者G.S.ホールであるが、彼が提唱した学説に「心理的反復説」というものがある。
    個人の発達は生物としての人類が辿った進化の歴史に似た発達段階を繰り返す、というもので、
    要するに文化や時代は違えど結局人は、過去の人が繰り返してきた同じパターンの反復でしか成長していけないんだよ、ということである。

    結局みんなふつうに生きて、ふつうにセックスして、ふつうに死んでいくんだよ。
    それしかできないんだよ。
    それのどこがいけないの?

    物語は永遠に続く繰り返しとして、幕を降ろした。
    これは永遠に終わらない春日青年の思春期の記録であり、
    永遠に繰り返される人類の歴史の一部なのだ。

    …とまで言ったら、言い過ぎか。

  • 中学生編はあまりにも過激で変態的で、
    度が過ぎていたので途中ギャグに思える程でした。
    どんどん侵食されていく春日、狂っていく佐伯さん、
    リビドーに目覚めていく二人を開花させた仲村さん、
    ドロッドロの展開と開き直った春日と仲村の狂気、
    そして場面は転換され第二部の高校生編になると、
    ダークサイドから一転、何かを探していく物語に。
    取り戻すように動く春日は結局仲村依存状態か?
    仲村視点は蓋を開ければやや陳腐な感じはしたが、
    まあそうでもないと収拾がつかない気もした。
    最後は、まあそうだろうな、という終わり方。
    おやすみプンプンやシガテラのような日常エンド。
    まあ美しいといえば美しいし、無難ではあるけど、
    一気読みした後にはなんとも言えないような、
    感慨深さは残ると思う。私はちまちま読んだので、
    機会あればまた一気に読み直してみたいものです。


    これアニメを観てた人いるだろうか。
    アニメの絵柄は全編ロトスコープを用いた作品で、
    漫画のキャラデザと全然違います。衝撃です。
    でも当時の私はアニメから入った人だったので、
    押見の絵の方に違和感を感じてしまいました、が、
    今ではこの絵にしてこの物語、と思っています。
    そしてアニメの絵柄は既に忘れていて、
    検索して出てきたものを見て懐かしくなりました。笑
    こっちはこっちで絶妙に気持ち悪くて好きでした。

  • うわー!めっちゃ良かった。これは文学だな。無音のコマで訴えかける押見修造先生の思想が心に刺さる。どんな作品か形容するのは難しいが、閉鎖的な空間で思春期の少年少女のリアルが描かれていた。

  • 終わった。いや終わってないわ。春日くん幸せになって良かった。

  • 押見修造らしいラストだったかな。
    ぐるぐる。

  • -

  • 1巻を読み始めた時は最後まで読めそうもないなぁと思った。
    中学生編はやっぱり気分が悪くなるというか理解しがたい。
    どんな思春期を送ったかで、この作品の受け止め方は違うんだと思う。私には刺さらなかった。

    けれど、どんな人間でも多かれ少なかれモヤモヤした気持ちで過ごした学生時代を経験しているだろうから、広い心で受け止めれば中学生編の行動は理解こそできないが拒絶もできない。

    最終話の仲村さん視点の話は、登場人物の中で初めて人として認識したのが春日で、その彼によって彼女の人生も左右されたのかと思うと複雑な気分。

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著者プロフィール

★漫画家。2002年、講談社ちばてつや賞ヤング部門の優秀新人賞を受賞。翌年、別冊ヤングマガジン掲載の『スーパーフライ』にてデビュー。同年より同誌に『アバンギャルド夢子』を連載した後、ヤンマガ本誌にて『デビルエクスタシー』などを連載。2008年より漫画アクションに連載した『漂流ネットカフェ』は、テレビドラマ化された。翌2009年より別冊少年マガジンにて『惡の華』を開始し、大好評連載中。

「2011年 『NEMESIS No.5』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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