人類と気候の10万年史 過去に何が起きたのか、これから何が起こるのか (ブルーバックス)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065020043

感想・レビュー・書評

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  • タイトル通り。興味があればぜひ。

  • 「過去に何が起こったか」に情報量がかなり寄っている

  • 『#人類と気候の10万年史』

    ほぼ日書評 Day712

    カーボンオフセットやガソリン車廃止等の「温暖化対策」には全く意味がない…という結論にも至りかねない、驚きの現実が明かされる一冊(無論、著者の主張はそれではない)。
    地質学的に見た場合には、現在問題になっている「温暖化」というのは、非常に気候の安定している、いわば例外的期間における微小な変動でしかないというのだ。

    今日問題となっている温暖化とは百年に数℃というもの。一方で、氷河期と間氷期の境目においては、わずか数年で平均気温が7 ℃も上昇した形跡が認められる。7度といえば、東京が沖縄になり、モスクワが東京になるレベル。

    こうした大変動が10万年周期と2万3千年周期の組み合わせで起きている。
    前者は地球の公転軌道が楕円と真円に近い形の間を行き来する期間。後者は地軸の傾きが1回転する期間(歳差運動周期)。これにより、地球と太陽の距離が近くなったり遠くなったりし、夏に近ければより暑くなるという単純な話だ。

    これは理論上だけの話ではなく、きわめて状況の安定した湖の堆積物(著者が主に研究しているのは、福井の水月湖で、7万年分の「年縞」と呼ばれる堆積物の年輪のようなものが湖底に保存されている)を調べることで、実際にあったことが証明されている。
    具体的には、湖底の堆積物をボーリングし、含まれる花粉や落ち葉の化石を調べることで、当時の草木の植生が手にとるようにわかり、その背景にある気候変動も明らかになるのだ。
    さらに、こうした「年縞」を標準の年表とし、放射性同位体の多寡と組み合わせることで、異なる地域間の年代特定も可能となり、同湖から得られた情報(気候変動の証左)がこの特定地域だけに限定されるものではないことも証明されるという。

    この万年単位の変動が、徐々にではなく数年程度のスパンで発生する(前述の数年で7℃)となった場合に、多少の差はあれ気候の安定を前提とした農耕に支えられる現代文明は極めて脆いものとなる。
    そこまでの規模でないにせよ、マヤ文明は9年の間に6度の飢饉(降水不足)で滅びたし、日本も1993年細川内閣当時のコメ凶作で国内備蓄では間に合わず「タイ米」を緊急輸入したことなど、評者世代には記憶に新しいところ。
    本書で警鐘の鳴らされるような事態を想定外とするのではなく、可能性としては考えておく必要がありそうだ。

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  • 2023/08/26再読する

  • 【目次】(「BOOK」データベースより)
    第1章 気候の歴史をさかのぼる/第2章 気候変動に法則性はあるのか/第3章 気候学のタイムマシンー縞模様の地層「年縞」/第4章 日本から生まれた世界標準/第5章 15万年前から現代へー解明された太古の景色/第6章 過去の気候変動を再現する/第7章 激動の気候史を生き抜いた人類

  • 温暖化現象を否定する本を読んだこともあり、世の中で言われているような単純なものではないと知っていましたが、ここまで複雑なことだとは思っていませんでした。
    気候の変動が単純なシミュレーションで予測できるものではないことがよくわかります。
    湖の地層(年縞)から当時の気候を測る作業について詳しく書かれていますが、読んでいるだけで気が遠くなるような緻密な作業です^^;
    最終章の人類の狩猟生活と農耕生活における、耐性の違いをシミュレーションした話がおもしろかったです。
    農耕生活は急激に気候が変化する時代には不向きで、それが寒冷期に多くの地域で農耕が始まらなかった理由ではないかというのが、著者による考察でした。

  • 「地球温暖化防止」に関わる報道を見聞きすると頻繁に違和感を感じる。
    いわく「歴史的責任」「共通だが差異ある責任」「将来世代への倫理的責任」などの他者への責任追及。
    化石賞授与など、誰かを糾弾し晒しあげるやりくち。

    しかし、追い求める理想の世界の姿は、運動の先にあるのかどうか。
    相当程度確からしさに欠けることを根拠に過激に運動する。

    騒いでいる人たちは、本当に地球温暖化防止を追い求めて運動しているのか。
    そう信じるのはナイーブな見方ではないか。

    地球温暖化防止は、二酸化炭素排出抑制・防止の別名と言ってよいだろう。
    つまり、化石燃料を利用し、経済活動を行う権利の分捕り合戦ともいえるもの。
    国家間の経済戦争という表現を使う人もいる。

    しかし、化石燃料の浪費や枯渇、結果として生み出される二酸化炭素の濃度上昇は、不可逆的な変化であることは間違いないので、慎重な態度で臨むことが必要であることは間違いないと思う。

    「地球温暖化防止」「化石燃料の有効活用」は大切な論点を含むものだけに、その議論の際には、感情的な、扇情的なものいいは差し控えるべきではないか。

    日本の世論の形成に大きな影響力を持つメディアの皆さんにも、冷静な評価軸を持ってもらうため、環境省やWWFのプレスリリースを見るだけでなく、こうした、学術的な考察を分かり易く紹介した本を読んでもらいたいもの、と思った。

著者プロフィール

1968年、東京都生まれ。1992年、京都大学理学部卒業。1998年、エクス・マルセイユ第三大学(フランス)博士課程修了。Docteur en Sciences(理学博士)。国際日本文化研究センター助手、ニューカッスル大学(英国)教授などを経て、現在は立命館大学古気候学研究センター長。専攻は古気候学、地質年代学。趣味はオリジナル実験機器の発明。主に年縞堆積物の花粉分析を通して、過去の気候変動の「タイミング」と「スピード」を解明することをめざしている。

「2017年 『人類と気候の10万年史 過去に何が起きたのか、これから何が起こるのか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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