我々はなぜ我々だけなのか アジアから消えた多様な「人類」たち (ブルーバックス)

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 408
レビュー : 43
  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065020371

作品紹介・あらすじ

地球上に存在した「人類」は我々ホモサピエンスだけではない。彼らはなぜ滅んだのか。我々はなぜ生き残ったのか。人類学の最新成果!

感想・レビュー・書評

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  • 最近のサイエンス系の新書は良書が多いですね。
    興味のある分野やテーマは、本来なら専門書を当たるべきとは思います。
    ただ、サラリーマンをしていると、現実にはなかなか難しい。
    その点、新書は手っ取り早く概略を掴めるので重宝しています。
    前置きが長くなりました。
    本書も道新の「本」欄で紹介されていて気になったので、慌てて図書館に注文しました。
    別に慌てる必要はないのだけれど。
    早速、本書の肝を紹介したいところですが、その前に備忘録的に人類の進化についておさらい。
    人類にはだいたい700万年くらいの歴史があります。
    この間、どのように進化したかというと、①初期の猿人②猿人③原人④旧人⑤新人―と5段階で進化してきました。
    これを書いている私も、これを読んでいるあなたも、あなたの恋人も等しく新人、ホモ・サピエンスです。
    以前は、それぞれの地域で原人が旧人になり、旧人が新人になるという「多地域進化説」も一定の支持を集めました。
    ただ、今では、アフリカの旧人から進化して、その後しばらくしてからアフリカを出て全世界に散らばっていったという「アフリカ単一起源説」が人類進化の定説となっています。
    ホモ・サピエンスが世界に広がりかけた後に、各地にいた人類は絶滅したのですね。
    だが  。
    ここからがいよいよ肝ですが、ホモ・サピエンスがアフリカを出た時点では、まだ人類はずっと多様で、各地に旧人も原人もいたのです。
    特に、私たちの住むアジアには、多様な人類がいたのですね。
    たとえば、ジャワ原人。
    しかも、アジアのジャワ原人は、同時代のアフリカのジャワ原人より歯が小さく、進化していたのです。
    インドネシア・フローレス島で2003年に発見された「フローレス原人」の化石は世界中に衝撃を与えました。
    何と言っても身長は大人でも1メートル余り。
    これは「島嶼効果」が働いたそうなのですね。
    島嶼効果とは、利用可能なリソースが限られた島嶼環境では、大型動物は代謝が小さく性成熟も早い小型の身体を持った方が有利なため矮小化する一方、小型動物は捕食者が少ないため隠れやすいよう身体を小さく保つ必要がないので大型化しやすいというものです。
    他の動物とは一線を画した進化を遂げたホモ属が矮小化するというのは、それまでの定義を覆すものでした。
    フローレス原人だけではありません。
    2008年には台湾沖の海底から、「澎湖人」と呼ばれる、インドネシアのジャワ原人やフローレス原人、中国の北京原人とは異なる特徴を持つ「第4の原人」の化石が発見されたのです。
    アジアにはことほど左様に多様な人類が、ほぼ同時期に存在していたのですね。
    アジアはまだまだ未知の世界で、今後も新たな発見があるかもしれません。
    ワクワクしながら注目し続けたいと思います。

  • まず、とにかく読みやすくて面白い!なかなか学者さんが書いたのではこうはいかないだろう。
    人類の進化、我々はどこから来たのかといったSFジャンルがあるが、リアルの世界でも随分と新しい発見が続いていることがわかる。
    「かつていた多様な原人がなぜ滅びたのか」という謎を解く壮大なSF誰か書いてくれないかな。

  •  アジア地域での人類進化の研究報告。さすが、ライター筆だと文章もストーリーも分かりやすい。
     布教のために、中学の教室後方の本棚(とか)に紛れ込ませたい。


    【書誌情報など】
    著者――川端裕人 
    監修――海部陽介 
    カバー装幀――芦澤泰偉・児崎雅淑
    カバー写真――フローレス原人の復元模型(提供/国立科学博物館)
    本文デザイン――齋藤ひさの(STUDIO BEAT)
    本文図版――海部陽介、さくら工芸社

    発売日 2017年12月14日
    価格 定価 : 本体1,000円(税別)
    ISBN 978-4-06-502037-1
    通巻番号 2037
    判型 新書
    ページ数 288ページ
    シリーズ ブルーバックス 

     我々ホモ・サピエンスが出現する前、地球には実に多様な「人類」がいた。教科書に載っているジャワ原人や北京原人、ネアンデルタール人だけではない。身長わずか110cm、「人類の定義」さえ揺るがしたフローレス原人、台湾の海底で見つかった「アジア第4の原人」澎湖人など、とくにアジアの「人類模様」は、目もくらむほど多種多様だった。しかし、彼らはすべて滅び去り、いま人類は「我々」しかいない。
     なぜ我々は我々だけなのか? 彼らと我々のあいだには、いったい何があったのか? 人類進化学の第一人者に導かれ、答えを追い続けた著者が出会った衝撃の仮説とは?
     「サピエンス以前」の人類史が、いまアジアから塗り替えられる! 
    http://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000226686


    【目次】
    はじめに [003-006]
    目次 [007-012]

    プロローグ 「アジアの原人」を発掘する 013

    第1章 人類進化を俯瞰する 023
      発掘の現場にて  ぼくたちとは似て非なる「人類」  度重なる発見に沸くアジア

    第2章 ジャワ原人をめぐる冒険 049
      人類進化の5つの段階を考える  ハンブ樹上性だった「初期の猿人」  直立二足歩行が常となった「猿人」   脳が大きくなった「原人」――ホモ・ハビリス  アフリカを出た「原人」――ホモ・エレクトス  現代人に匹敵する脳容量をもった「旧人」  地域的多様性を失った「新人=ホモ・サピエンス  人類進化と地理的な分布の関係  系統樹から読みとる人類進化のシナリオ  「5段階の呼び名」は英語にはない

    第3章 ジャワ原人を科学する現場 089
    ピテカントロプスとの再会  P.e. 175M ONO 1891/93  「ピテカントロプスの予言」を追った男  ジャワ原人巡礼[4つの聖地」そしてサンギラン  タマネギ地層から出てきたサンギラン17号  「ミッシング・リンク論争」を決着させた男  いざフィールドへ!  「火山国」日本の意外な貢献  ジャワ原人が生きた風景  ジャワ原人の小説は書けるか  「生活の跡」が見つからない理由  出てきた地層が誰にもわからない!  ニューヨークでジャワ原人が見つかった!

    第4章 フローレス原人の衝撃 135
      あまりにも小さな「人類」  「ホモ属の定義」をも揺るがす  リャン・ブア(涼しい洞窟)にて  アジアでナンバーワンの原人標本  本当に「新種の人類」なのか  「サイズの問題」と「距離の問題」   舞い込んだ依頼  子どもではない、では病気なのか?  「病気ではない」という明確な根拠   「誰」が小型化したのか?  「初期のジャワ原人が進化した」というシナリオ  脳のサイズを正確に測る  ジャワ原人の脳サイズも見直す  身体の大きさと脳のサイズの関係  歯についての謎

    第5章 ソア盆地での大発見 185
      そこで、何かが起きた  衝撃の発掘現場  人類の骨かもしれない!  
    70万年前から小さかった!  人間の「人間らしさ」とは?  あらためて想像するフローレス原人の世界  目もくらむ多様性

    第6章 台湾の海底から 209
      「第4の原人」現る  「サルじゃない、人類だ」  きわめて特徴的な顎と歯  彼らはいつごろの人類なのか?  ハイエナが鍵をにぎる  「世界一」分厚い下顎  アジアの人類進化は謎に満ちている   ぼくたちはまだ多くのことを知らない

    終章 我々はなぜ我々だけなのか 243
      なぜアジアなのか  あらためて、アジアの多様な人類  「接触の証拠」は出てこない  アジアはさらにわからない  戦いはあったのか  行動することで「過去に赴く」  どこにでも行ける人類  均質化の未来  宇宙への拡散  ジャワ原人がぼくらの中に?  「南デニソワ人」とは  ホモ・サピエンスが出会った者  「デニソワ人」という種にも疑問符  パズルのピースが嵌まった  我々は我々だけではないかもしれない 
    謝辞(2017年11月 川端裕人) 272

    監修者あとがき(2017年11月 海部陽介) [274-275]
    参考文献 [276-279]
    さくいん [280-283]



    【抜き書き】

    ―――――――――
      監修者あとがき 

     本書は、かつてアジアにいた複数の原人について詳しく解説した、初めての本といえるでしょう。「私たちホモ・サピエンスが現れる前のアジアに、誰がいたのか?」という問いに対する基本的な答えが、ここで得られることを期待しています。
     私自身の過去24年におよぶ研究成果を中心に展開されていますが、川端裕人さんという科学ジャーナリストの鋭くフレッシュな眼を通して描かれることにより、最近判明してきたアジア人類史のダイナミズムがダイレクトに伝わる一冊になりました。精力的な現地取材も含めて、これをやり遂げてくださった川端裕人さん、そして編集の山岸浩史さんに椥礼申し上げます。

     本書は、川端さんの私へのインタビューを中心に進んでいきます。そのためどうしても紹介する学説の偏りは避けられませんが、私が内容確認した際には、わかりやすさを犠牲にしない範囲で、正確性とバランスに配慮したつもりです。〔……〕
    ――――――――――

  • ⭐️4つに近い3つ。

    大変な知的興奮や価値観の転換を迫るような何かがあるわけではないけれど、よくまとまっていて分かりやすい。人類学に興味のある人の入門書に最適だと思う。

  • アジア地域にかつて生息していた原人についての最新の発掘成果を綴った書。

    アジアには、「ジャワ原人」(旧名ピテカントロプス・エレクトス)、「北京原人」(旧名シナントロプス・ペキネンシス)の他に、インドネのシアフローレス島で発掘された身長1メートル足らずの「フローレス原人」、そして台湾の海底から発掘された「澎湖人」の四原人いたことが分かってきたという。そして、ホモ・サピエンスとこれらの原人が混血していて、アボリジニ等のDNAにその痕跡が残されているかもしれないという。

    今後も新たな発見が次々に起こる可能性があり、我々アジア人のルーツが徐々に明らかになっていくというから、ちょっとワクワクする。

  • 信州大学の所蔵はこちらです☆
    https://www-lib.shinshu-u.ac.jp/opc/recordID/catalog.bib/BB2508069X

  • 「人類学系の読み物として最高の一冊」

     達成感と興奮が入り混じった、なんとも言えない感じ。この一冊を読み終わって、最初に抱いた感情を私なりに表したものだ。
     第2章の中盤からは次のページをめくる指が止まらない。それくらいに私たちの祖先への興味が1ページ毎にかき立てられる一冊。「さすが科学ジャーナリストが書く本は違うな」と感じさせられた。
     他のブルーバックスのように「専門を学ぶ入門書」というものよりは、「専門を旅する読み物」といった感覚の一冊と思って頂ければ。

     私たちを私たちたらしめているのはテクノロジーであって、テクノロジーの進化によって種としての進化を代替している訳でもある。そしてそのテクノロジーは、世界を1つにし、世界からガラパゴスをなくし、均質なものとすることで、種としての進化のストッパーにもなっている。

     著者も問題提起していた現代の我々の大きな命題である「ダイバーシティ・アンド・インクルージョン」。果たして我々は「生物」として、この命題に取り組む必要はあるのだろうか?もしかすると1万年後、我々は全員が同じ感覚を持つ種となっているかも知れない。

    〜個人メモ〜
    「分類学的範囲でどこまでが交雑が可能なのか?」「ホモ・サピエンスの多様性のレベル感は他種と比較してどれくらいのものか?」が今後必須の学習課題。

  • 人類の祖先にまつわるロマンと知的興奮にあふれた一冊!これは良い!なぜ、他の動物たちはあれほど多様な形態を残しているのに、われわれ人類は今のホモ・サピエンスだけなのか?今まで考えたこともなかった謎に迫る様子はめちゃくちゃ興奮。正にセンスオブワンダー!昔、ホビットのような小柄な人類がいた、と思うだけでワクワクしてくる!

  • アジアにはよく知られた北京原人やジャワ原人以外に様々なヒト属がいたという。それでも、そのような豊かな歴史がある一方で、なぜ今の現生人類だけになってしまったのか。
    現生人類は好奇心と移動力に恵まれて、均一なまま短期間に世界中に広がったが、実は混血を繰り返し、滅びたように見える旧人や原人は我々に中に生き続けているのではないか、という。
    本書は南シナ海を手作りの小舟で渡る実験をされている海部氏との共著のような作りになっている。専門的な内容も多いが、好奇心を呼び起こしながら分かりやすい説明をするのは、科学ジャーナリストならでは。

  • すごくおもしろかった。
    アジアの原人の最新研究が、生き生きと読みやすく展開されていく。
    アジアには多様な種族が存在していたことがわかるが、タイトルの意味は、それなのになぜ今はホモ・サピエンスだけなのか。


    読書メモ:
    人類 700万年 五段階 初期の猿人、猿人、原人、旧人、新人
    300-200万年前 原人 ホモ・ハビリス
    100-60万年前 旧人現る ネアンデルタール人
    新人=ホモ・サピエンス アフリカ単一起源説
    ジャワ原人 ピテカントロプス・エレクトス →その後ホモ・エレクトスに デュボア @トリニール
    ソロ川流域 サンギラン、サンブンマチャン
    玉ねぎ地層
    ジャワ原人
    停滞していたと思われていたが、咀嚼器官の縮小や脳容量の増大と進化していた。
    しかし旧人や新人と違う特徴もあり祖先ではない。
    フローレス原人
    島嶼効果 大型動物は矮小化、小型動物は大型化
    ソア盆地での発見 初期のジャワ原人→ソア盆地の人類→リャン・ブア洞窟のフローレス原人
    アジア第4の原人
    澎湖人(ポンフー) 海底から底引き網の漁であごの半分→コレクターへ
    和県人
    アジアは多様なホモ属がいたのに、なぜ今はホモ・サピエンスだけの均質になったのか?
    ホモサピエンスは創造的な能力で地球上のどこにも行けたから均質になった。原人は行けなかった。
    多様/均質、どこにでも行ける/閉じ込められている
    宇宙への拡散
    デニソワ人はネアンデルタール人と地元原人との混血の可能性
    ジャワ原人とサピエンスの混血 アボリジニがジャワ原人と似た特徴を持つことを説明できる

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著者プロフィール

川端 裕人(かわばた ひろと)
1964年、兵庫県明石市生まれの小説家、ノンフィクション作家。東京大学教養学部卒業後日本テレビに入社し、記者として科学技術庁、気象庁を担当。
1995年『クジラを捕って、考えた』を執筆し、ノンフィクション作家としてデビュー。1997年日本テレビを退社後、1998年『夏のロケット』で第15回サントリーミステリー大賞優秀作品賞を受賞し、小説家デビュー。
その後も小説とノンフィクション二つのジャンルで活躍を続け、2000年『動物園にできること』で第31回大宅壮一ノンフィクション賞候補、2004年『せちやん 星を聴く人』で第25回吉川英治文学新人賞候補。2018年『我々はなぜ我々だけなのか』で科学ジャーナリスト賞、講談社科学出版賞をそれぞれ受賞した。

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