我々はなぜ我々だけなのか アジアから消えた多様な「人類」たち (ブルーバックス)

著者 :
制作 : 海部 陽介 
  • 講談社
3.78
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本棚登録 : 367
レビュー : 37
  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065020371

作品紹介・あらすじ

地球上に存在した「人類」は我々ホモサピエンスだけではない。彼らはなぜ滅んだのか。我々はなぜ生き残ったのか。人類学の最新成果!

感想・レビュー・書評

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  • 最近のサイエンス系の新書は良書が多いですね。
    興味のある分野やテーマは、本来なら専門書を当たるべきとは思います。
    ただ、サラリーマンをしていると、現実にはなかなか難しい。
    その点、新書は手っ取り早く概略を掴めるので重宝しています。
    前置きが長くなりました。
    本書も道新の「本」欄で紹介されていて気になったので、慌てて図書館に注文しました。
    別に慌てる必要はないのだけれど。
    早速、本書の肝を紹介したいところですが、その前に備忘録的に人類の進化についておさらい。
    人類にはだいたい700万年くらいの歴史があります。
    この間、どのように進化したかというと、①初期の猿人②猿人③原人④旧人⑤新人―と5段階で進化してきました。
    これを書いている私も、これを読んでいるあなたも、あなたの恋人も等しく新人、ホモ・サピエンスです。
    以前は、それぞれの地域で原人が旧人になり、旧人が新人になるという「多地域進化説」も一定の支持を集めました。
    ただ、今では、アフリカの旧人から進化して、その後しばらくしてからアフリカを出て全世界に散らばっていったという「アフリカ単一起源説」が人類進化の定説となっています。
    ホモ・サピエンスが世界に広がりかけた後に、各地にいた人類は絶滅したのですね。
    だが  。
    ここからがいよいよ肝ですが、ホモ・サピエンスがアフリカを出た時点では、まだ人類はずっと多様で、各地に旧人も原人もいたのです。
    特に、私たちの住むアジアには、多様な人類がいたのですね。
    たとえば、ジャワ原人。
    しかも、アジアのジャワ原人は、同時代のアフリカのジャワ原人より歯が小さく、進化していたのです。
    インドネシア・フローレス島で2003年に発見された「フローレス原人」の化石は世界中に衝撃を与えました。
    何と言っても身長は大人でも1メートル余り。
    これは「島嶼効果」が働いたそうなのですね。
    島嶼効果とは、利用可能なリソースが限られた島嶼環境では、大型動物は代謝が小さく性成熟も早い小型の身体を持った方が有利なため矮小化する一方、小型動物は捕食者が少ないため隠れやすいよう身体を小さく保つ必要がないので大型化しやすいというものです。
    他の動物とは一線を画した進化を遂げたホモ属が矮小化するというのは、それまでの定義を覆すものでした。
    フローレス原人だけではありません。
    2008年には台湾沖の海底から、「澎湖人」と呼ばれる、インドネシアのジャワ原人やフローレス原人、中国の北京原人とは異なる特徴を持つ「第4の原人」の化石が発見されたのです。
    アジアにはことほど左様に多様な人類が、ほぼ同時期に存在していたのですね。
    アジアはまだまだ未知の世界で、今後も新たな発見があるかもしれません。
    ワクワクしながら注目し続けたいと思います。

  • まず、とにかく読みやすくて面白い!なかなか学者さんが書いたのではこうはいかないだろう。
    人類の進化、我々はどこから来たのかといったSFジャンルがあるが、リアルの世界でも随分と新しい発見が続いていることがわかる。
    「かつていた多様な原人がなぜ滅びたのか」という謎を解く壮大なSF誰か書いてくれないかな。

  •  アジア地域での人類進化の研究報告。さすが、ライター筆だと文章もストーリーも分かりやすい。
     布教のために、中学の教室後方の本棚(とか)に紛れ込ませたい。


    【書誌情報など】
    著者――川端裕人 
    監修――海部陽介 
    カバー装幀――芦澤泰偉・児崎雅淑
    カバー写真――フローレス原人の復元模型(提供/国立科学博物館)
    本文デザイン――齋藤ひさの(STUDIO BEAT)
    本文図版――海部陽介、さくら工芸社

    発売日 2017年12月14日
    価格 定価 : 本体1,000円(税別)
    ISBN 978-4-06-502037-1
    通巻番号 2037
    判型 新書
    ページ数 288ページ
    シリーズ ブルーバックス 

     我々ホモ・サピエンスが出現する前、地球には実に多様な「人類」がいた。教科書に載っているジャワ原人や北京原人、ネアンデルタール人だけではない。身長わずか110cm、「人類の定義」さえ揺るがしたフローレス原人、台湾の海底で見つかった「アジア第4の原人」澎湖人など、とくにアジアの「人類模様」は、目もくらむほど多種多様だった。しかし、彼らはすべて滅び去り、いま人類は「我々」しかいない。
     なぜ我々は我々だけなのか? 彼らと我々のあいだには、いったい何があったのか? 人類進化学の第一人者に導かれ、答えを追い続けた著者が出会った衝撃の仮説とは?
     「サピエンス以前」の人類史が、いまアジアから塗り替えられる! 
    http://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000226686


    【目次】
    はじめに [003-006]
    目次 [007-012]

    プロローグ 「アジアの原人」を発掘する 013

    第1章 人類進化を俯瞰する 023
      発掘の現場にて  ぼくたちとは似て非なる「人類」  度重なる発見に沸くアジア

    第2章 ジャワ原人をめぐる冒険 049
      人類進化の5つの段階を考える  ハンブ樹上性だった「初期の猿人」  直立二足歩行が常となった「猿人」   脳が大きくなった「原人」――ホモ・ハビリス  アフリカを出た「原人」――ホモ・エレクトス  現代人に匹敵する脳容量をもった「旧人」  地域的多様性を失った「新人=ホモ・サピエンス  人類進化と地理的な分布の関係  系統樹から読みとる人類進化のシナリオ  「5段階の呼び名」は英語にはない

    第3章 ジャワ原人を科学する現場 089
    ピテカントロプスとの再会  P.e. 175M ONO 1891/93  「ピテカントロプスの予言」を追った男  ジャワ原人巡礼[4つの聖地」そしてサンギラン  タマネギ地層から出てきたサンギラン17号  「ミッシング・リンク論争」を決着させた男  いざフィールドへ!  「火山国」日本の意外な貢献  ジャワ原人が生きた風景  ジャワ原人の小説は書けるか  「生活の跡」が見つからない理由  出てきた地層が誰にもわからない!  ニューヨークでジャワ原人が見つかった!

    第4章 フローレス原人の衝撃 135
      あまりにも小さな「人類」  「ホモ属の定義」をも揺るがす  リャン・ブア(涼しい洞窟)にて  アジアでナンバーワンの原人標本  本当に「新種の人類」なのか  「サイズの問題」と「距離の問題」   舞い込んだ依頼  子どもではない、では病気なのか?  「病気ではない」という明確な根拠   「誰」が小型化したのか?  「初期のジャワ原人が進化した」というシナリオ  脳のサイズを正確に測る  ジャワ原人の脳サイズも見直す  身体の大きさと脳のサイズの関係  歯についての謎

    第5章 ソア盆地での大発見 185
      そこで、何かが起きた  衝撃の発掘現場  人類の骨かもしれない!  
    70万年前から小さかった!  人間の「人間らしさ」とは?  あらためて想像するフローレス原人の世界  目もくらむ多様性

    第6章 台湾の海底から 209
      「第4の原人」現る  「サルじゃない、人類だ」  きわめて特徴的な顎と歯  彼らはいつごろの人類なのか?  ハイエナが鍵をにぎる  「世界一」分厚い下顎  アジアの人類進化は謎に満ちている   ぼくたちはまだ多くのことを知らない

    終章 我々はなぜ我々だけなのか 243
      なぜアジアなのか  あらためて、アジアの多様な人類  「接触の証拠」は出てこない  アジアはさらにわからない  戦いはあったのか  行動することで「過去に赴く」  どこにでも行ける人類  均質化の未来  宇宙への拡散  ジャワ原人がぼくらの中に?  「南デニソワ人」とは  ホモ・サピエンスが出会った者  「デニソワ人」という種にも疑問符  パズルのピースが嵌まった  我々は我々だけではないかもしれない 
    謝辞(2017年11月 川端裕人) 272

    監修者あとがき(2017年11月 海部陽介) [274-275]
    参考文献 [276-279]
    さくいん [280-283]



    【抜き書き】

    ―――――――――
      監修者あとがき 

     本書は、かつてアジアにいた複数の原人について詳しく解説した、初めての本といえるでしょう。「私たちホモ・サピエンスが現れる前のアジアに、誰がいたのか?」という問いに対する基本的な答えが、ここで得られることを期待しています。
     私自身の過去24年におよぶ研究成果を中心に展開されていますが、川端裕人さんという科学ジャーナリストの鋭くフレッシュな眼を通して描かれることにより、最近判明してきたアジア人類史のダイナミズムがダイレクトに伝わる一冊になりました。精力的な現地取材も含めて、これをやり遂げてくださった川端裕人さん、そして編集の山岸浩史さんに椥礼申し上げます。

     本書は、川端さんの私へのインタビューを中心に進んでいきます。そのためどうしても紹介する学説の偏りは避けられませんが、私が内容確認した際には、わかりやすさを犠牲にしない範囲で、正確性とバランスに配慮したつもりです。〔……〕
    ――――――――――

  • すごくおもしろかった。
    アジアの原人の最新研究が、生き生きと読みやすく展開されていく。
    アジアには多様な種族が存在していたことがわかるが、タイトルの意味は、それなのになぜ今はホモ・サピエンスだけなのか。


    読書メモ:
    人類 700万年 五段階 初期の猿人、猿人、原人、旧人、新人
    300-200万年前 原人 ホモ・ハビリス
    100-60万年前 旧人現る ネアンデルタール人
    新人=ホモ・サピエンス アフリカ単一起源説
    ジャワ原人 ピテカントロプス・エレクトス →その後ホモ・エレクトスに デュボア @トリニール
    ソロ川流域 サンギラン、サンブンマチャン
    玉ねぎ地層
    ジャワ原人
    停滞していたと思われていたが、咀嚼器官の縮小や脳容量の増大と進化していた。
    しかし旧人や新人と違う特徴もあり祖先ではない。
    フローレス原人
    島嶼効果 大型動物は矮小化、小型動物は大型化
    ソア盆地での発見 初期のジャワ原人→ソア盆地の人類→リャン・ブア洞窟のフローレス原人
    アジア第4の原人
    澎湖人(ポンフー) 海底から底引き網の漁であごの半分→コレクターへ
    和県人
    アジアは多様なホモ属がいたのに、なぜ今はホモ・サピエンスだけの均質になったのか?
    ホモサピエンスは創造的な能力で地球上のどこにも行けたから均質になった。原人は行けなかった。
    多様/均質、どこにでも行ける/閉じ込められている
    宇宙への拡散
    デニソワ人はネアンデルタール人と地元原人との混血の可能性
    ジャワ原人とサピエンスの混血 アボリジニがジャワ原人と似た特徴を持つことを説明できる

  • 北京原人,ジャワ原人などは現在の人間の祖先ではなく,違う種類の人類と考えられています。

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  • なぜ、ホモサピエンスだけが残って他の原人たちがいなくなってしまったのか。著者の川端さんの本はわかりやすく何冊か読んでいるし、監修の海部さんの『日本人はどこから来たのか』も面白かったので、鉄板かなと書評をみて購入。やぱりおもしろかった。研究室の中のことばかりでなく、実際の発掘現場に行ったりしてリアリティがある。良書。

  • 著者が人類学者に聞いた内容をまとめた本でやや内容が薄い。
    フローレス原人の起源に多くのページが割かれているのが特徴。

  • フローレンス原人などの最新の研究成果を基にしたアジアの人類について。
    面白い!

  • ☆絶滅したアジアの人類たち、その最新の研究

  • 北京原人やジャワ原人、ネアンデルタール人とか、またはアウストラロピテクスやピテカントロプス、そんな名前は知ってるけど何がどれでいつ頃いたのかは全く知らない。この本ではそのあたりがわかりやすく書かれている。てっきり、全部つながってて時代の違いだけだと思ってたわけだけど全く違った。「別の種類」だった。要は人類は1種類じゃなかったわけでこれには驚いた。今いる人間はすべてホモサピエンス。この種類。あとはいない。絶滅したわけだ。同じ人類だったはずなのに。これはミステリーだなと思う。フローレンス島にしたフローレンス原人はホビットと呼ばれていて身長は1mしかなかったのだとか。これも驚きだな。今でも黒人や白人など人種の違いはあるけど、もっとこう違う生物というかそういう多様な人類が存在したわけだ。もちろん交わったことも遺伝子的に判明しているようなので、我々の中にも数%ネアンデルタール人が混じっていたり、オーストラリアの先住民アボリジニーにはジャワ原人が少し混じっていたりということがあるらしいが。どんな生活をしてどんな進化を遂げていたのか。マジでロマンだなと思う。
    そして彼らが何十万年前に海を渡ったように、今の人類は空を超えて宇宙に飛び出し火星に住もうとしている。人類ってどこまでも行きたいんだね。何十万年後かには我々の今も人類史の1ページとして研究されるんだろうか。ロマンだ・・・

  • アフリカから世界に広がったホモサピエンスが現生人類の共通祖先だと思ってたけど、
    ことはそう単純じゃないらしい。
    アジアにも複数の原人がいて、フローレス原人や澎湖人など、
    あごの骨一個で歴史が変わってしまう。
    これからも意外なとこから意外なものが出て、「えっ!」ということになりそうで、
    わくわくさせられる。
    なぜシベリアのデニソワ人(旧人)のDNAがアボリジニーに受け継がれてるのかを解説する仮説も興味深かった。

  • 科学好きの後輩が「面白い」と貸してくれた本。『日本人はどこから来たのか?』の著者、人類進化学者の海部陽介先生の研究を、科学ジャーナリストの川端氏が、わかり易くまとめた。「私たちホモ・サピエンスが現れる前のアジアに、誰がいたのか?」という問いに対する答えを求める研究。アジアの原人(ホモ・エレクトス)の進化について、その驚くべき成果を、研究の進め方と共に活写する。

    昔、ピテカントロプス・エレクトスと習ったジャワ原人。その化石の発掘調査の現場。研究室での CTスキャンによる化石の 3次元モデル化。頭蓋骨、歯、顎の化石標本を丁寧に調べ、他の原人や現代人のそれと比較する。ジャワ原人自体も進化したが、それはアボリジニなど現生人類につながるものではなく、現生人類のアフリカ単一起源説をサポートする結果となった。

    そして驚くべきは、さらにその東のフローレス島にいたフローレス原人。体長が 1m というホビット。丁寧な考察を重ねることにより、ジャワ原人が小型化したという仮説が有力になりつつある。

    アジアの原人の進化に関するエキサイティングな研究現場を描いている。

  • 読了。
    近年急速に研究が進む「人類の起源とその進化過程」。知的好奇心を大いに刺激するテーマ故に関連書籍も多く、まさに玉石混淆の様相を呈しているが、本書は、人類進化学者の最新研究を科学ジャーナリストが叙述している為、エビデンスと分かり易さが両立した良書であると言える。
    ただ、ちょっと想定外だったのが、この科学ジャーナリスト、「人類の進化」そのものよりも「人類進化学の進化(笑)」に関心が深いらしく、そっちの話がメイン。しかし、それはそれで非常に面白かった。

  • プロローグ 「アジアの原人」を発掘する
    第1章 人類進化を俯瞰する
    第2章 ジャワ原人をめぐる冒険
    第3章 ジャワ原人を科学する現場
    第4章 フローレス原人の衝撃
    第5章 ソア盆地での大発見
    第6章 台湾の海底から
    終章 我々はなぜ我々だけなのか

    著者:川端裕人(1964-、明石市、小説家)
    監修:海部陽介(1969-、東京都、人類学)

  • ☆信州大学附属図書館の所蔵はこちらです☆
    http://www-lib.shinshu-u.ac.jp/opc/recordID/catalog.bib/BB2508069X

  • 昨今の興味にマッチした一冊。ツボにハマって楽しく読めた。

     『私たちはどこから来て、どこへ行くのか』(森達也著)でも考察してる生命の起源、遠い将来の姿は答の得られない命題だし、宇宙の中で知的生命体は我々の他にいないのかは、まだまだ解明されない謎だ。
     一方、我々(ホモ・サピエンス)は、この地球上において我々だけなのか?という本書の問いは、完全な解答は得られていないまでも、どうやら「我々だけではない」という可能性が見出されてきた(「なぜ?」という問いの答としては不十分だが)。
     そう思えるだけで、非常に明るい未来の見える楽しい一冊だ。

     アジア各地における最新の発掘実績、最新科学的手法を用い、ヒトの進化にまつわる新たに導き出された仮説を、国立科学博物館の海部陽介教授とその関係者へのインタビューを交え科学ライターの著者が熱意を込めてまとめたものだ。
     前半のアジアの発掘現場でのフィールドワークも面白く、遺跡、化石にたいする地元民の理解不足から起こった当時のエピソード(報償ほしさに1個の化石を砕いてもちこんだケーニッヒスワルトと現地の人との話。化石1個につき、いくらという契約だったため起こった悲劇・笑)等、微笑ましい話も面白い。
     そして後半は現代の新たな発見事例や科博における研究などが紹介される。
     発見事例もさることながら、DNAによる検証ってスゴイ!と思わされる。

     「混血が何度かあったという証拠は、すでにDNAから得られている。」

     ネアンデルタール人は、ホモ・サピエンスによって滅ぼされた等々の説もこれまで見て来たけど、異種格闘による単に勢力争いによる淘汰だけではなかったようだ。

     人類の進化にまつわる発見は、過去、空白地域だったアジアで、今、進んでいる。
     今後の新たな発掘が、楽しみだ。

  • 爽快な読後感だった。最後に紹介されている論文を振り返るときの、良い映画を見た後にエンドロールを見、作中の音楽を聞いている時のような感覚を味わった。

    描き手と研究者の誠実で丁寧な仕事によって練られた、味わい深さがあった。

  • アジアの人類史は謎に満ち満ちている。

  • これまでの人類史はアフリカを中心に語られてきたが、アジアには昔から北京原人やジャワ原人がおり、最近にはフローレス原人や台湾でも原人の化石が見つかっている。
    猿人、原人、旧人という大きな流れの中で、最終的にアフリカ原人が人類の祖先となるわけだが、それまでには複数の猿人や原人が世界中に散らばっており、時には交配も行われていたと考えると、今の均質化された人類種が異様に思われてきた。
    この分野はまだまだ発展途上の分野であり、これからも多くの発見が期待できるので、今後の動きにも注視していきたい。

  • 数年前,「生命大躍進」という大変興味深い展示会を観ました。
    そのとき,私が学校で学んだときから,かなり人類の進化に対する研究が非常に進んだことを知り,かなり驚きました。

    本書は,その最新の知見について分かりやすく説明したもので,大変面白く読みました。
    アジアには同時代に多様な人類の種類が存在した可能性があり,また旧人と我々人類は交雑したこともあるにもかかわらず,なぜ我々は我々だけなのか,この問いに対する答えが出るには気の遠くなるような研究の積み重ねが必要ですが,これほど興味の尽きないテーマもありません。

    同じテーマを取り扱った本も読んでみようと思います。

  • 100殺!ビブリオバトル No.31 午後の部 第4ゲーム(1班)

  • 「我々はなぜ我々だけなのか」
    我々人類がアフリカに端を発したホモ・サピエンスと言う種であることは知っての通りである。また、ネアンデルタール人は人類と共存した時期もあり、絶滅してしまっているがいろいろと研究が進んでいる。
    その一方で、アジアに存在した北京原人やジャワ原人についてはそれほど知られておらず、研究も進んでいないように思える。
    しかし近年インドネシアでジャワ原人の化石と石器が見つかっていて、ジャワ原人から進化したのではないかと思われるフローレンス原人の化石の一部も見つかっている。そして、人類が繁栄する前に多様な原人が存在したことがわかりつつある。
    本書はジャワ原人を中心としたアジアでの原人の発掘、化石の鑑定を元にした進化についての本である。
    タイトルからするとまるで人類がアジアの原人たちを絶滅に追いやった進化史を想像させるが、内容はさにあらず。地道な学問的な内容が主であり、ダイナミックな人類史を描いているのではないので少々がっかりした。
    それでも、日本の調査チームが地道に研究、検証を積み重ねている様子は感心する。
    著者は専門家ではなくサイエンスライターなので、発掘現場の様子や研究の様子などについての描写が多く、妙に思い入れが強く出て、感動的な描写になっているのが少々気になる。
    発掘される化石も少ないのでまだまだわからないことが多く、化石が発掘されないことにはなかなか研究が進まない。それでも、想定される石器を使って船を作り、海を渡ってみるなど冒険的な実証的研究も進んでいる。あの、ハイエルダールのコンチキ号漂流記のような冒険的実験である。いまさらそこまでやるものだろうか思いびっくりした。
    フローレンス原人は身長110cmとジャワ原人170cmから小さくなったと考えられている。人類も諸島効果で動物と同じように小さくなり、動物の進化が当てはまると思うと人間だけが特別という考えはおかしいことがよくわかる。
    その一方で人類は島の中に閉じ込められるということがなく、地球上の多くの部分に拡散したと言うことが他の原人たちとの本質的な違いのようである。そして、それを可能にしたのはおそらく知性なのだろうが、本書ではそこまで述べられていない。
    面白くはあったが、インタビュー的で少々深みに欠けたのが残念だ。

  • なかなか、興味深い内容だが、
    本の題名に対する答えは、
    得られない。

  • 地球上に存在した「人類」は我々ホモサピエンスだけではない。彼らはなぜ滅んだのか。我々はなぜ生き残ったのか。人類学の最新成果!

  • 私たちは、ホモサピエンスの末裔だと思っていますが、それが出現する前には、アジアには多様な「人類」がいたそうです。この本にはそれらについて、実際に発掘現場に行かれた、本書の著者である川端氏によって書かれています。

    歴史の好きな私ですが今まで触れてきた「古代史」は、すでにホモサピエンスが我々のような生活をし始めてからのものです。それ以前に世界はどうなっていたのかについて思いを巡らす上で、良い機会を与えてくれた本でした。

    以下は気になったポイントです。

    ・人類には大体700万年くらいの歴史がある、初期の猿人、猿人、原人、旧人、新人、これらの5段階を通って人類が進化してきたと考えられてきたが、一直線に変化してものではないと今では考えらている(p24、41)

    ・大きなくくりの、ホミニドは、大型類人猿と人類の共通祖先から進化した全ての子孫を含む、チンパンジー・ボノボ・オランウータン・ゴリラ、それよりも範囲が狭く初期の猿人(ラミダス猿人、アウストラロピテクス等)が、ホミニン、そしてその後の原人・旧人・新人は、すべてホモ属である(p46)

    ・オランダは300年以上にわたって、インドネシアを植民地にしており、19-20世紀初頭には現在のインドネシアのほぼ全土を手中に収めていた(p55)

    ・島嶼効果とは、利用可能なリソース(生息環境、食料資源など)が限られた島嶼環境では、大型動物は、代謝量が小さく性成熟も早い、小型の身体を持ったほうが有利なため、矮小化しやすい。フローレス原人は、島にいたほかの動物と同様に、島嶼効果によって矮小化してしまった(p143)

    ・今の時点で本当に一つだけ言えるのは、アジアには北京原人とジャワ原人がいました、だけではないということ(p240)

    ・移入種が在来種を駆逐するとき、直接バトルするというよりは、生態系の中での位置を奪う形で入れ替わる、血なまぐさい戦争をするわけではない(p252)

    ・新人サピエンスと、旧人・原人との違いは、サピエンスはいろんなところにあっという間に行けたということ(多様化しなかった)、旧人・原人は行けない(閉じ込められる)から多様化した、ホモサピエンスの均質化は、地球を股にかけることができる能力(創造性)の裏返しである(p256、257、258)

    ・ホモサピエンスがやってきたとき、今のインドネシアにいた古代型人類は、ジャワ原人かフローレス原人である(p267)

    2018年2月25日作成

  • 人類学の最新知見を,この分野の第一人者たる海部さんの監修,読みやすい筆致の川端さんの執筆によりまとめたもの。メインタイトルだけ見るとわかるようなわからないような気がするけど,本文を読んでいくうちにこのタイトルの意味がわかった。これまでは科博へ行っても人類の化石がたくさん並んでいるのを漫然としか見ていなかったけど,これを読んでそれぞれがどういう位置づけでどこがエキサイティングなのかが(はずかしながらやっと)わかった。まだ(2018年2月時点)展示には並んでいない,台湾で見つかった人類化石の話や航海プロジェクトの話もあって,これからの研究の進展が楽しみになる1冊。

  • アジアの人類としての古代史が、こんなにも興奮に溢れる場だとは知らなかった!

    ジャワ原人、フローレス原人、北京原人、名前は知ってるけど、はるか昔の曾祖父くらいのイメージしかなかった。
    しかし実際は生物種としての適応と繁栄と消滅といったダイナミズムをもつ存在だった。

    そして現在では我々は我々の種しかいないけど、それは昔からそうではなかった。多様な種が、祖先から綿々と旅をし、環境に適応し、進化し、そして(多分静かに)消えて行った、という壮大な物語の一端を味わえて大満足。
    これからの研究の進展にも期待したい。

    それにしても我々しかいないのは、拡散の速度が速すぎて均一化してしまった、というのは、宇宙はなぜこんなにも均一なのかというインフレーション宇宙論にも通じるものがあるなあと思ったりして、これもまたおもしろい

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著者プロフィール

川端 裕人(かわばた ひろと)
1964年、兵庫県明石市生まれの小説家、ノンフィクション作家。東京大学教養学部卒業後日本テレビに入社し、記者として科学技術庁、気象庁を担当。
1995年『クジラを捕って、考えた』を執筆し、ノンフィクション作家としてデビュー。1997年日本テレビを退社後、1998年『夏のロケット』で第15回サントリーミステリー大賞優秀作品賞を受賞し、小説家デビュー。
その後も小説とノンフィクション二つのジャンルで活躍を続け、2000年『動物園にできること』で第31回大宅壮一ノンフィクション賞候補、2004年『せちやん 星を聴く人』で第25回吉川英治文学新人賞候補。2018年『我々はなぜ我々だけなのか』で科学ジャーナリスト賞、講談社科学出版賞をそれぞれ受賞した。

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