我々はなぜ我々だけなのか アジアから消えた多様な「人類」たち (ブルーバックス)

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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065020371

作品紹介・あらすじ

地球上に存在した「人類」は我々ホモサピエンスだけではない。彼らはなぜ滅んだのか。我々はなぜ生き残ったのか。人類学の最新成果!

感想・レビュー・書評

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  • 最近のサイエンス系の新書は良書が多いですね。
    興味のある分野やテーマは、本来なら専門書を当たるべきとは思います。
    ただ、サラリーマンをしていると、現実にはなかなか難しい。
    その点、新書は手っ取り早く概略を掴めるので重宝しています。
    前置きが長くなりました。
    本書も道新の「本」欄で紹介されていて気になったので、慌てて図書館に注文しました。
    別に慌てる必要はないのだけれど。
    早速、本書の肝を紹介したいところですが、その前に備忘録的に人類の進化についておさらい。
    人類にはだいたい700万年くらいの歴史があります。
    この間、どのように進化したかというと、①初期の猿人②猿人③原人④旧人⑤新人―と5段階で進化してきました。
    これを書いている私も、これを読んでいるあなたも、あなたの恋人も等しく新人、ホモ・サピエンスです。
    以前は、それぞれの地域で原人が旧人になり、旧人が新人になるという「多地域進化説」も一定の支持を集めました。
    ただ、今では、アフリカの旧人から進化して、その後しばらくしてからアフリカを出て全世界に散らばっていったという「アフリカ単一起源説」が人類進化の定説となっています。
    ホモ・サピエンスが世界に広がりかけた後に、各地にいた人類は絶滅したのですね。
    だが  。
    ここからがいよいよ肝ですが、ホモ・サピエンスがアフリカを出た時点では、まだ人類はずっと多様で、各地に旧人も原人もいたのです。
    特に、私たちの住むアジアには、多様な人類がいたのですね。
    たとえば、ジャワ原人。
    しかも、アジアのジャワ原人は、同時代のアフリカのジャワ原人より歯が小さく、進化していたのです。
    インドネシア・フローレス島で2003年に発見された「フローレス原人」の化石は世界中に衝撃を与えました。
    何と言っても身長は大人でも1メートル余り。
    これは「島嶼効果」が働いたそうなのですね。
    島嶼効果とは、利用可能なリソースが限られた島嶼環境では、大型動物は代謝が小さく性成熟も早い小型の身体を持った方が有利なため矮小化する一方、小型動物は捕食者が少ないため隠れやすいよう身体を小さく保つ必要がないので大型化しやすいというものです。
    他の動物とは一線を画した進化を遂げたホモ属が矮小化するというのは、それまでの定義を覆すものでした。
    フローレス原人だけではありません。
    2008年には台湾沖の海底から、「澎湖人」と呼ばれる、インドネシアのジャワ原人やフローレス原人、中国の北京原人とは異なる特徴を持つ「第4の原人」の化石が発見されたのです。
    アジアにはことほど左様に多様な人類が、ほぼ同時期に存在していたのですね。
    アジアはまだまだ未知の世界で、今後も新たな発見があるかもしれません。
    ワクワクしながら注目し続けたいと思います。

  • 現在生息している人類は我々だけらしいです。世界中に色々な人種がいますが、アフリカの一人の女性の子孫という事でほぼ決定です。なんとも物凄い壮大な話であります。

    話は逸れますが、昔、大地の子エイラという本が有りました。ホモサピエンスの子エイラが、ネアンデルタール人に育てられる話でした。ネアンデルタール人との子供を産んだりして、それこそ種の起源を思わせる壮大極まりない名作です。あの本を思い返させるようなワクワクするノンフィクションでした。

    さて、この本は、何故ホモサピエンスだけが生き残って、他の人類は生き残っていないのかという事が幹になっています。本当の所はその時代を見なければ分からない事ですが、何とか解き明かそうと研究と議論を重ね、次第に人類の起源に迫ろうとする人々の情念に感動します。他の原人たちがホモサピエンスに駆逐されたという証拠も無いし、各地で別々に派生した人類を置き去りに、我々だけが地球で繁栄したのは何故なのでしょうか。完全に疑問が解消する事は今後も無いのでしょうが、想像すると時間というものの不思議さ、今もどんどん過去になっていくという現実がひしひしと感じられます。

  • 特に「なぜ我々だけなのか」については書いてなかった。こんなにたくさんの種類の原人旧人がアジアにいましたよーってのを専門家から聞き取って本にしたやつ。そんなに面白くなかった。タイトルが超ミスリード。

  • まず、とにかく読みやすくて面白い!なかなか学者さんが書いたのではこうはいかないだろう。
    人類の進化、我々はどこから来たのかといったSFジャンルがあるが、リアルの世界でも随分と新しい発見が続いていることがわかる。
    「かつていた多様な原人がなぜ滅びたのか」という謎を解く壮大なSF誰か書いてくれないかな。

  • ああ、そうか。
    本は明言を避けたというか、根拠ない事を断定はできないのだが、ヒントめいたものは書いている。我々はなぜ我々だけなのか。ホモサピエンスにかつての原人の血が混ざっていたとしても、我々は世界の至る所まで、ホモサピエンスのみだ。これは、別の人類を戦争で淘汰したか否か事実は分からないが、本著が書いたように、移動する能力により、混ざったのだ。閉鎖エリアで多様化した種は、戦争かウイルスや病気、あるいは気候変動か、はたまた平和的な交合か、いずれにせよ、移動する種により、混ざったのだろう。人間以外は、制限されたエリアほど、珍しい種が生存している。

    有史以前に何が起きたかは、分からない。分からないからこそロマンがある。ホビットのようなフローレス原人。まだまだ、新たな発見があるかも知れない。

  • 題名の問いに関しての考察を期待して購入。
    期待してた話は最終章の20ページくらいで、宙ぶらりんで終わる。若干残念。

    主にアジアの原人について、2010年代に新たに分かってきたことが主な内容。
    人類史の大きな流れも基礎を抑えつつ、アジアの原人について学べる点がお勧め。

    監修者の海部陽介とのやりとりや、考古学研究のフィールドワークについて、ジャーナリストの著者の目線で語られる。
    テレビとかでこの内容であれば結構面白く観れる展開のさせ方だと思う。
    こういう話が好きな人は面白く読めるかと。

  •  アジア地域での人類進化の研究報告。さすが、ライター筆だと文章もストーリーも分かりやすい。
     布教のために、中学の教室後方の本棚(とか)に紛れ込ませたい。


    【書誌情報など】
    著者――川端裕人 
    監修――海部陽介 
    カバー装幀――芦澤泰偉・児崎雅淑
    カバー写真――フローレス原人の復元模型(提供/国立科学博物館)
    本文デザイン――齋藤ひさの(STUDIO BEAT)
    本文図版――海部陽介、さくら工芸社

    発売日 2017年12月14日
    価格 定価 : 本体1,000円(税別)
    ISBN 978-4-06-502037-1
    通巻番号 2037
    判型 新書
    ページ数 288ページ
    シリーズ ブルーバックス 

     我々ホモ・サピエンスが出現する前、地球には実に多様な「人類」がいた。教科書に載っているジャワ原人や北京原人、ネアンデルタール人だけではない。身長わずか110cm、「人類の定義」さえ揺るがしたフローレス原人、台湾の海底で見つかった「アジア第4の原人」澎湖人など、とくにアジアの「人類模様」は、目もくらむほど多種多様だった。しかし、彼らはすべて滅び去り、いま人類は「我々」しかいない。
     なぜ我々は我々だけなのか? 彼らと我々のあいだには、いったい何があったのか? 人類進化学の第一人者に導かれ、答えを追い続けた著者が出会った衝撃の仮説とは?
     「サピエンス以前」の人類史が、いまアジアから塗り替えられる! 
    http://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000226686


    【目次】
    はじめに [003-006]
    目次 [007-012]

    プロローグ 「アジアの原人」を発掘する 013

    第1章 人類進化を俯瞰する 023
      発掘の現場にて  ぼくたちとは似て非なる「人類」  度重なる発見に沸くアジア

    第2章 ジャワ原人をめぐる冒険 049
      人類進化の5つの段階を考える  ハンブ樹上性だった「初期の猿人」  直立二足歩行が常となった「猿人」   脳が大きくなった「原人」――ホモ・ハビリス  アフリカを出た「原人」――ホモ・エレクトス  現代人に匹敵する脳容量をもった「旧人」  地域的多様性を失った「新人=ホモ・サピエンス  人類進化と地理的な分布の関係  系統樹から読みとる人類進化のシナリオ  「5段階の呼び名」は英語にはない

    第3章 ジャワ原人を科学する現場 089
    ピテカントロプスとの再会  P.e. 175M ONO 1891/93  「ピテカントロプスの予言」を追った男  ジャワ原人巡礼[4つの聖地」そしてサンギラン  タマネギ地層から出てきたサンギラン17号  「ミッシング・リンク論争」を決着させた男  いざフィールドへ!  「火山国」日本の意外な貢献  ジャワ原人が生きた風景  ジャワ原人の小説は書けるか  「生活の跡」が見つからない理由  出てきた地層が誰にもわからない!  ニューヨークでジャワ原人が見つかった!

    第4章 フローレス原人の衝撃 135
      あまりにも小さな「人類」  「ホモ属の定義」をも揺るがす  リャン・ブア(涼しい洞窟)にて  アジアでナンバーワンの原人標本  本当に「新種の人類」なのか  「サイズの問題」と「距離の問題」   舞い込んだ依頼  子どもではない、では病気なのか?  「病気ではない」という明確な根拠   「誰」が小型化したのか?  「初期のジャワ原人が進化した」というシナリオ  脳のサイズを正確に測る  ジャワ原人の脳サイズも見直す  身体の大きさと脳のサイズの関係  歯についての謎

    第5章 ソア盆地での大発見 185
      そこで、何かが起きた  衝撃の発掘現場  人類の骨かもしれない!  
    70万年前から小さかった!  人間の「人間らしさ」とは?  あらためて想像するフローレス原人の世界  目もくらむ多様性

    第6章 台湾の海底から 209
      「第4の原人」現る  「サルじゃない、人類だ」  きわめて特徴的な顎と歯  彼らはいつごろの人類なのか?  ハイエナが鍵をにぎる  「世界一」分厚い下顎  アジアの人類進化は謎に満ちている   ぼくたちはまだ多くのことを知らない

    終章 我々はなぜ我々だけなのか 243
      なぜアジアなのか  あらためて、アジアの多様な人類  「接触の証拠」は出てこない  アジアはさらにわからない  戦いはあったのか  行動することで「過去に赴く」  どこにでも行ける人類  均質化の未来  宇宙への拡散  ジャワ原人がぼくらの中に?  「南デニソワ人」とは  ホモ・サピエンスが出会った者  「デニソワ人」という種にも疑問符  パズルのピースが嵌まった  我々は我々だけではないかもしれない 
    謝辞(2017年11月 川端裕人) 272

    監修者あとがき(2017年11月 海部陽介) [274-275]
    参考文献 [276-279]
    さくいん [280-283]



    【抜き書き】

    ―――――――――
      監修者あとがき 

     本書は、かつてアジアにいた複数の原人について詳しく解説した、初めての本といえるでしょう。「私たちホモ・サピエンスが現れる前のアジアに、誰がいたのか?」という問いに対する基本的な答えが、ここで得られることを期待しています。
     私自身の過去24年におよぶ研究成果を中心に展開されていますが、川端裕人さんという科学ジャーナリストの鋭くフレッシュな眼を通して描かれることにより、最近判明してきたアジア人類史のダイナミズムがダイレクトに伝わる一冊になりました。精力的な現地取材も含めて、これをやり遂げてくださった川端裕人さん、そして編集の山岸浩史さんに椥礼申し上げます。

     本書は、川端さんの私へのインタビューを中心に進んでいきます。そのためどうしても紹介する学説の偏りは避けられませんが、私が内容確認した際には、わかりやすさを犠牲にしない範囲で、正確性とバランスに配慮したつもりです。〔……〕
    ――――――――――

  • アジアでの旧人、猿人について。

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著者プロフィール

1964年兵庫県明石市生まれ、千葉県千葉市育ち。文筆家。東京大学教養学部卒業。日本テレビ勤務中、1995年『クジラを捕って、考えた』でノンフィクション作家としてデビュー。退社後、1998年『夏のロケット』で小説家デビュー。小説に『せちやん 星を聴く人』『銀河のワールドカップ』『算数宇宙の冒険』『ギャングエイジ』『雲の王』『12月の夏休み』など。ノンフィクションに『PTA再活用論』『動物園にできること』『ペンギン、日本人と出会う』『イルカと泳ぎ、イルカを食べる』など、著書多数。現在、ナショナル ジオグラフィック日本版および日経ビジネスオンラインのウェブサイトで「・研究室・に行ってみた。」を連載中。

「2020年 『「色のふしぎ」と不思議な社会』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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