新しい1キログラムの測り方 科学が進めば単位が変わる (ブルーバックス)
- 講談社 (2018年4月18日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
- / ISBN・EAN: 9784065020562
作品紹介・あらすじ
腐食せず、摩耗にも強く、慎重に扱えば10万年は機能するだろうと言われていた「キログラム原器」。しかし、製作から約130年がたったいま、じつはその原器の重さがゆらいでいることがわかってきました。重さの基準が変わってしまえば、1グラムあたりいくらという約束によって成り立っている取引も安心して行えません。絶対に変わらず、誰にとっても納得できる「重さ」の基準とはなにか? 最先端の科学がその難題に挑みます。
感想・レビュー・書評
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第95回アワヒニビブリオバトル「テスト」で紹介された本です。オンライン開催。チャンプ本。
2023.1.14詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
609-U
閲覧新書 -
これまでキログラム原器やメートル原器といった、不変でないものを基準に単位の基が定められていたが、今回の単位の定義の改定により、不変のものを基準にしたということが大きな変化だということが理解できました。メートルなら光の速さが定義に、キログラムならプランク定数とアボガドロ定数が定義になっています。本書ではこのプロセスがわかりやすく説明されており、特にプランク定数とアボガドロ定数を比較するためのメトロロジスト(計量学者)の努力が伝わってきます。わかりやすく説明されているとはいえ、不確かさなどの専門用語も結構出てきますので、理解するにはある程度科学の素養が必要かと思われます。
キログラムの話では、キッブルバランスによりプランク定数が、アボガドロ国際プロジェクトによりアボガドロ定数が測定できたわけですが、こういう発想に叡智を感じます。また、写真で紹介されておりましたNISTの『キッブルバランス』が美しくて、思わず見入ってしまいました。
測定とは科学そのものだと実感しました。メトロロジストの叡智と努力に触れる事ができます。 -
何気なく使っている「単位」。その裏でこんなドラマがあるとは。
この話はぜひ中学校あたりで知ることができたら面白いのではないかと思いましたが,大人になって,「測る」ことに興味がでたから面白いのかもしれないとも思いました。
私たちの世界がいかに誰かの支えによって安定しているかがわかるお話でした。 -
単位の決定・統一の歴史からその改定やそれに関わる理論・技術についてとてもよくまとまっていてよかった.
諸々が量子標準になっていくのめちゃめちゃ正しい...
原子時計とプランク定数でドミノ倒ししていくの良すぎる.
あとアボガドロプロジェクトの国際競争・協力すごい. -
長さの定義がメートル原器から、光の速度を基準にしたものに変わったのはいつだったでしょうか?学生時代に友人たちと、重さの単位を恣意的な「もの」から、比較的普遍的な定義へ変えることは困難だ、といった議論をした記憶があります。
さて、今年2019年、重さの定義が原器によるものから、普遍的なものに変わります。ではどのように変わるのでしょう?
また、この本は重さだけでなく、それ以外の「定義」がどのように定められているかも述べています。詳しい必要はありませんが高校レベルの理科的な知識が必要だと思いますが、とても楽しく読めました。これぞブルーバックスといった一冊です。
最近は新書の劣化が激しく、あたかも新書地獄とでもいうような状況ですが、クズも多いものの良書もたくさん出てますね。 -
質量の基準が実体としてのキログラム原器から物理定数を基準とした抽象的な定義へと変わることを最近の報道で見かける。本書では、まさにその定義変更に携わった著者が、質量だけでなく、様々な「単位」について解説している。
もっとも、新しいキログラムの定義は、プランク定数やアボガドロ数を用いるなど、素人から見ると概念的で、正確さ(誤差)は減るものの、イメージはしにくい。その上、本書の前半の「長さ」(メートル)の定義の仕方について、原器から光速を基準としたものに変更する部分の記載で、「時間」(秒)が誤差なく決定できるということが何の説明もなく前提とされていて、そこで引っかかってしまった。
というわけで、少々読みにくい部分もあるが、様々な単位の再定義により、例えば、質量であれば、誤差は原器が負うことになるなど、基準の変更によって考え方や実態が変わるという部分は中々興味深かった。 -
物理法則から