- Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
- / ISBN・EAN: 9784065104408
作品紹介・あらすじ
デビューから半世紀以上にわたり紡がれた膨大な作品群を辿り、作家・筒井康隆を改めて考える。筒井康隆論にして至高のブックガイド!
感想・レビュー・書評
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SFを中心にさまざまな文学的テーマに手を染めてきた筒井康隆のこれまでの仕事について解説している本です。著者は、『あなたは今、この文章を読んでいる。―パラフィクションの誕生』(2014年、慶応義塾大学出版会)で「パラフィクション」という概念を提唱しており、それが筒井の作品に反映されることになったという経緯もあって、筒井のパロディやメタフィクションなどの手法が文学の領域においてどのような意義をもつ試みだったのかということが、ある程度立ち入って考察されています。
本書の冒頭で著者は、「筒井康隆は二人いる」というテーゼを提出し、「筒井康隆は、天才にして秀才である」「筒井康隆は、実験小説家、前衛作家にして小説の職人、テクニシャンである」といった二項対立の両極をもちあわせた作家としてとらえるとともに、「筒井康隆は、作者にして読者である」というテーゼにもとづいて、彼のメタフィクションにおける業績を理解しようと試みています。
日本の現代思想界隈では、80年代以降に「メタ」と「ベタ」が直結するという問題についての考察が進められており、そのなかで筒井のメタフィクションがもちえてきたような批評性が保てなくなってきているのではないかという疑問を抱いています。著者は「メタフィクション」から「パラフィクション」への移行を語ることで、いわば「外部へ」という志向を打ち出しているのですが、こうした試みは柄谷行人が『内省と遡行』から『探究Ⅰ・Ⅱ』でたどった軌跡をもう一度くり返すことにしかならないのではないでしょうか。筒井のライトノベル作品である『ビアンカ・オーバースタディ』は、ちょうど吉本隆明が『マス・イメージ論』から『ハイ・イメージ論』へかけて消費社会に入っていくことでみずからの「思想」そのものが摩耗していく過程を自覚的に演じてみせたのとおなじようなしかたで、筒井はみずからのメタフィクションの批評性が摩耗してしまうような現代の文学を取り巻く状況を自覚的にえがいてみせたと考えたほうが、しっくりくるような気がしています。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
愛が濃すぎてところどころむせるほどだが、資料性と、決して万遍ではない評価が嬉しい。いい機会だと蔵書の筒井モノを年代順に整理。断筆後の作品は積んであるものが多い。
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とても丁寧な解説書です。全集をもう一度ゆっくり読み返したくなりました。筒井康隆と言う人の凄さを改めて感じました。30年以上前の自分の卒論と似たところがあるのも嬉しかったです。
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最後の方はよくわかんなかった・・・哲学というか、これが文学かーって感じ。「虚人たち」からが問題だなぁ
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筒井康隆の小説はどの時代でも新しく、いつでも面白く、常に新鮮な理由がわかった。
相反するものが共存することで、ナンセンスであり繊細な抜群の世界観が生み出されている。
安定しているわけではない両極端に振れることで保たれてるバランスがすごい。
自分を冷静に分析して新しい取り組みに挑戦する姿は圧倒される。 -
デビュー作から最新作までを辿りながら、巨人筒井康隆に迫っていく。
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現代日本文学の最重要かつ最強の作家 筒井康隆。SFから中間小説、純文学と小説のジャンルとスタイルを追求した膨大な作品を年代順にレビュー&解説している。ありそうでなかった最高の入門書であり最高のガイド本である。これを機に筒井作品を読み返していきたい。
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今まで筒井康隆の作品は、特にマイルストーンとなるようなものをちょこちょこと読んできたのだけれど、正直に言ってしまえば、そんなに評価は高くなかった。いや、もちろん面白くない訳では無いんだけど、自分にはその価値が正確に理解できていない感じだった。
なので、この新書を読んでそれが理解できるようになれれば良いなと思っていたのだけれど、うーん、なんだか、期待値が高すぎたかもしれない。膨大な著作を非常によくまとめていて、まさに『入門』に相応しい本になってはいるのだけれど、その著作の量が多いせいで、1作あたりに割くページ数が少なく、こちらの認識を改めるほどの評論は読めなかった。
ただ、自分は結構メタフィクション好きにも関わらず、『虚人たち』がイマイチはまらなかったのはなんでなんだろうと思っていたんだけど、あまりにもラディカルすぎるからなんだろうな、なんて思った。
もう一回読んできたのを再読した方がいいのかな…。 -
確かにタイトル通りの入門書と言えるだろう。同時に筒井康隆の解説本としても優れているんじゃないかな。
話題になった作品しか読んでなかったけど、さっそくあれこれと読んでみようかな。
著者プロフィール
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