筒井康隆入門 (星海社新書)

著者 :
  • 星海社
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本棚登録 : 156
感想 : 14
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065104408

作品紹介・あらすじ

デビューから半世紀以上にわたり紡がれた膨大な作品群を辿り、作家・筒井康隆を改めて考える。筒井康隆論にして至高のブックガイド!

感想・レビュー・書評

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  • この本危険物だ。処女作から余すことなく紹介されてる筒井康隆諸作品を片っ端から読みたく(買いたく)なる。筒井康隆の魅力をあらゆる角度から丁寧に解説し、紹介されてる端から読み始めたくなる素晴らしい文章。書かれた当時の社会や事件などの背景も盛り込んでいるので理解しやすくなる。筒井康隆の実験的で前衛的な試行錯誤の道程を体系的にまとめているところも良い。時代に合わせて順番に読みたくなる。線引いて付箋貼って作品を読むたびにこの本も読み返したくなる。買ってよかった。

  • SFを中心にさまざまな文学的テーマに手を染めてきた筒井康隆のこれまでの仕事について解説している本です。著者は、『あなたは今、この文章を読んでいる。―パラフィクションの誕生』(2014年、慶応義塾大学出版会)で「パラフィクション」という概念を提唱しており、それが筒井の作品に反映されることになったという経緯もあって、筒井のパロディやメタフィクションなどの手法が文学の領域においてどのような意義をもつ試みだったのかということが、ある程度立ち入って考察されています。

    本書の冒頭で著者は、「筒井康隆は二人いる」というテーゼを提出し、「筒井康隆は、天才にして秀才である」「筒井康隆は、実験小説家、前衛作家にして小説の職人、テクニシャンである」といった二項対立の両極をもちあわせた作家としてとらえています。それとともに、「筒井康隆は、作者にして読者である」というテーゼにもとづいて、彼のメタフィクションにおける業績を理解しようと試みています。

    日本の現代思想界隈では、80年代以降に「メタ」と「ベタ」が直結するという問題についての考察が進められており、そのなかで筒井のメタフィクションがもちえてきたような批評性が保てなくなってきているのではないかと考えます。著者は「メタフィクション」から「パラフィクション」への移行を語ることで、いわば「外部へ」という志向を打ち出しているのですが、こうした試みは柄谷行人が『内省と遡行』から『探究Ⅰ・Ⅱ』でたどった軌跡をもう一度くり返すことにしかならないように思われます。

    かつて吉本隆明は、『マス・イメージ論』から『ハイ・イメージ論』の執筆を通じて、消費社会に入っていくことでみずからの「思想」そのものが摩耗していく過程を自覚的に演じてみせました。筒井のライトノベル作品である『ビアンカ・オーバースタディ』は、吉本とおなじようなしかたで、みずからのメタフィクションの批評性が摩耗してしまうような現代の文学を取り巻く状況を自覚的にえがいてみせたと理解することが可能だとするならば、著者の示している筒井作品の解釈に近づくことができるのかもしれませんが、わたくし自身はそうした自覚が筒井にあったのかという点については、やや疑問に感じています。

  • 愛が濃すぎてところどころむせるほどだが、資料性と、決して万遍ではない評価が嬉しい。いい機会だと蔵書の筒井モノを年代順に整理。断筆後の作品は積んであるものが多い。

  • とても丁寧な解説書です。全集をもう一度ゆっくり読み返したくなりました。筒井康隆と言う人の凄さを改めて感じました。30年以上前の自分の卒論と似たところがあるのも嬉しかったです。

  • 最後の方はよくわかんなかった・・・哲学というか、これが文学かーって感じ。「虚人たち」からが問題だなぁ

  • 2018/2/28購入
    2019/6/19読了

  • 筒井康隆の小説はどの時代でも新しく、いつでも面白く、常に新鮮な理由がわかった。
    相反するものが共存することで、ナンセンスであり繊細な抜群の世界観が生み出されている。
    安定しているわけではない両極端に振れることで保たれてるバランスがすごい。
    自分を冷静に分析して新しい取り組みに挑戦する姿は圧倒される。

  • デビュー作から最新作までを辿りながら、巨人筒井康隆に迫っていく。

  • ‪現代日本文学の最重要かつ最強の作家 筒井康隆。SFから中間小説、純文学と小説のジャンルとスタイルを追求した膨大な作品を年代順にレビュー&解説している。ありそうでなかった最高の入門書であり最高のガイド本である。これを機に筒井作品を読み返していきたい。‬

  • 今まで筒井康隆の作品は、特にマイルストーンとなるようなものをちょこちょこと読んできたのだけれど、正直に言ってしまえば、そんなに評価は高くなかった。いや、もちろん面白くない訳では無いんだけど、自分にはその価値が正確に理解できていない感じだった。
    なので、この新書を読んでそれが理解できるようになれれば良いなと思っていたのだけれど、うーん、なんだか、期待値が高すぎたかもしれない。膨大な著作を非常によくまとめていて、まさに『入門』に相応しい本になってはいるのだけれど、その著作の量が多いせいで、1作あたりに割くページ数が少なく、こちらの認識を改めるほどの評論は読めなかった。
    ただ、自分は結構メタフィクション好きにも関わらず、『虚人たち』がイマイチはまらなかったのはなんでなんだろうと思っていたんだけど、あまりにもラディカルすぎるからなんだろうな、なんて思った。
    もう一回読んできたのを再読した方がいいのかな…。

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著者プロフィール

佐々木 敦(ささき・あつし):1964年生まれ。思考家/批評家/文筆家。音楽レーベルHEADZ主宰。映画美学校言語表現コース「ことばの学校」主任講師。芸術文化の諸領域で活動を展開。著書に『増補・決定版 ニッポンの音楽』(扶桑社文庫)、『未知との遭遇【完全版】』(星海社新書)、『あなたは今、この文章を読んでいる。』(慶應義塾大学出版会)、『ゴダール原論』(新潮社)、『ニッポンの文学』(講談社)、小説『半睡』(書肆侃侃房)ほか多数。


「2024年 『「教授」と呼ばれた男』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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